晩餐会スタート 百階への手がかりは?
百階
もうそろそろだな。
魔王様。
メインゲストをお呼びしろ。それから我が愛しのガーター姫を連れてこい!
忙しくなる城内。
部下の一人がガーター姫のもとへ。
おい、大人しくしていたか? 魔王様のお呼びだ。支度をしろ!
魂の抜けたガーター姫は何の反応も示さない。
どうした? ガーター姫。この期に及んでまだ抵抗する気か?
……
ガーター姫!
部下は急いで仲間を呼ぶ。
どうした。何があった?
まずい! ガーター姫の意識がない。どうしよう。
知るか! 自分で考えろ!
魔王様に早く報告しなくては。
馬鹿野郎! 死にたいのか!
だが何かあれば報告をと魔王様は日頃からおっしゃっていたのでは。
正直に言う奴があるか!
でも……
いいか。そんなことをしてみろ。お前だけじゃない。俺らだってやばいんだぞ!
どうすれば?
丁度いいじゃないか。大人しくしているんだ。引っ張っていけ。
ガーター姫は未だに意識が飛んでいる。
係りの者に事情を話し、任せる。
伝統的な婚礼衣装に着替えさせ準備を整える。
この時の為にボーリン城から無理矢理招いたメイドがいる。
時刻は六時
予定どおり晩餐会がスタート。
間もなく婚姻の儀へと進む。
ビッグサイズのタキシードを着た魔王がガーター姫の手を掴み入場。
純白のドレスを着たガーター姫の様子は下を向いているせいか窺い知れない。
もう間もなく二人は結ばれる。
いくら無理矢理とはいえ儀式が完遂すれば夫婦としてやっていかなくてはならない。
それがたとえ一国の姫であろうと。
魔王であろうとも。
誓いの儀へ
ガーター姫絶体絶命
会場には多くの参列者がおり複雑な心境で見守る近隣の招待客。
メインゲストにボーリン城の城主
ボーリン王が見守る。
娘の晴れ舞台。
嬉しいやら悲しいやら。
どうすることもできないもどかしさから頭を抱える。
王として認める。
それほど辛い事はない。
限られた参加者以外は魔王の部下。
モンスターで囲まれている。
魔王の命令以外で危害を加える事はないが見ていて気持ちいいものではない。
七時に鳴る祝福の鐘に合わせ誓いのキスで晴れて二人は夫婦。
もうその時刻も迫ってきている。
鐘が鳴るのが先か?
アキト達が着くのが先か?
十階
着いた!
アキト急ごう! 時間が無い!
分かってる。
ブッヒイイイ
トニーがこっちだと先導する。
右へ行ったと思ったらすぐに左へ。
直進し一度バック。最後に左に折れる。
今のところ敵の姿は見えない。
アップの実が自生している。
急いで口へ流し込む。
奥に進むにつれ量が増えていく。
危ない。危ない。
行き止まりには紛らわしいアップアップの実がある。
間違えて食べては大変だ。今レベルダウンだけは避けなくてはならない。
補充を完了。
レベルアップ。
アキトはレベル48
ターキーはレベル46となった。
いいぞ。トニー。導いてくれ。
トニーは臭いを嗅ぎだした。
するとすぐに目的のものに辿り着く。
エレベーターを発見。
予備の札を嵌める。
080
急げ! 急げ!
うるさいわね!
もう六時を過ぎた。ガーター姫が危ない!
大丈夫。彼らは祝福の鐘がなる七時までは手を出さないわ! それがこの世界の決まり事。
そうか。詳しいなターキー。
当たり前でしょう。小さいころから何度聞かされたか。
常識か?
あっ! またやっちゃった。
札を反対にはめる。
ターキーもおっちょこちょいだな。ははは。
うるさい! あんたが話しかけるから!
何度も何度も。勉強しないんだから。
人のせいにしないで! 最初はあなたでしょう!
大丈夫。反対でもちゃんと着くから。
扉が開いた。
80階
ほら着いた。
モンスターの姿は見当たらない。
うん?
どうしたんだい?
百階への行き方わかる?
唐突だな。まったく見当もつかない。
そうでしょうね。
どこかに札があるんじゃないか?
それは無いと思うな。無敵も言ってたじゃない。
ああ、札をよく見ろとか触ってみろとか。落としてみろとか……
ええ、それが百階への行き方。
あの、難しすぎて俺にはついていけないや。
馬鹿! 考えなさい!
仕方ない。あまり考えたくないがおさらいといこう。
その調子。もう時間が無いのよ。急いで!
だから焦らない。たとえガーター姫を救出できなくても俺たちはよくやったじゃないか。そうだろうターキー?
なにが言いたいの!
イラつくなよ。所詮はゲームの話。ゲームオーバーになるだけ。お互いクリアできないかもしれないがどうしようもないじゃないか。
何を言っているの!
ガーター姫には悪いがまた一階からリセットさ。
あのね! クリアできないと元の世界に帰れないのよ。分かってる?
うう…… 嘘だ!
今さら現実逃避? なんて人なの!
ターキー……
リセット? 一階?
どうしたのターキー?
もしかして……
何か分かった?
ええ、とにかくおさらいよ。
紙に数字を書きなぐる。
ランダムに札が落ちていてそれをエレベーターの枠に差し込む。
うんうん。
数字の階に行ける仕組み。
そう。簡単に言えばそう。
ランダムの為好きな階には行けない。
階段が無いからね。
運に身を任せる?
それしかないよ。いつかは百階の札を発見するだろう。
だから! いつかではダメなの。これは私のワガママでもなんでもないの。ガーター姫が魔王の手に落ちる前。タイムリットはもう三十分もない。いつ鐘が鳴るか分からない! いい、よく考えて!
分かってるって。だけど仕組みがわかってもなあ…… 肝心の百階への行き方が分からないのではあきらめざるを得ない。
弱音を吐くな!
だって……
果たして百階への手がかりはつかめるだろうか?
続く