最終章特別篇 後編 カムバック・マイ・サマーバケーション
最終章特別篇 後編
カムバック・マイ・サマーバケーション
コツコツ
カッカッカ
残暑の激しい朝。
昨晩の熱帯夜が尾を引いているのだろう。
ピィ
おはようございます。今日も暑いですね。
反応がない。
次
お爺ちゃん。昨日お孫さんがお見舞いに来ていましたよ。よかったですね。
次
太郎さん。今日は体調どうですか?
反応がない。
滝は次の個室へ向かう。
滝は最近この病院で働き始めたばかりで過去の記憶がない。
医者の話ではすぐに全てを思い出すだろうとのこと。
滝さーん。頑張ってるわね。終わったら休憩にしましょう。
はーい。
同僚の助けもあって何とかやっていけている。
果たしてここにいていいのだろうか?
漠然とした不安がよぎる。
私は誰でどこから来たのか?
本当にこの世界に居ていいのだろうか?
嫌な気持ちを振り払い呼びかけを続ける。
呼びかけは朝の日課で意識のない患者とのコミュニケーションをとる絶好の機会。
もちろんほとんど反応が無いのが現実なのだが。
個室に入る。
眠り込んでいるのか今すぐにでも起きそうな雰囲気。
期待はしてはダメだ。
男の子。
私は誰ですか?
あなたは?
まずいまずい。ちゃんとしなくては。
アキト君! アキト君! 朝ですよ。
今日はお外でいっぱい遊びましょう。
ううん……
反応が見られた。
アキトくーん。 起きて。
アキトさん。 春次秋人さーん。
アキト! アキト! 起きなさい!
うん? ターキー?
ターキーなのか?
患者が意識を取り戻した。
訳の分からないことを言い始める。
ここは病院です。落ち着いてください。
患者を宥める。
アキト君。
俺は! 俺は!
気をしっかり。
うおおお!
早く知らせなくては。
先輩に応援を頼む。
滝さん。ここは任せた。家族に知らせてくる。
駆けて行ってしまった。
私にどうしろと?
仕方がない。患者の様子を見よう。
ターキ! ターキーなんだね?
いえ、私は最近配属になったばかりの補助の者です。滝と申します。
滝? ターキー?
どっちでもいいや。今日は何日?
ええ、八月の三十日です。おはようございます。
くそ! あれからどんだけ経ったんだよ!
俺の夏休みは明日までか。
返してくれよ俺の夏休み!
うおおお!
ちょっと騒がないの!
他の人の迷惑となります。お静かに!
そんな事言ってないで早く退院させてよ!
もう一日しかない!
お静かに!
だって。
家族が向かっています。それまで大人しくしていてください。
トイレ!
もう! ホラ掴まって。
一人で歩けるよ。
慎重に!
うわ!
ふらつき転びそうになる。
危ない!
男の子は何とか踏ん張ったがそのせいで滝がドアに頭をぶつけてしまった。
まずい! 医者! 誰か?
滝は一時的に意識を失った。
大丈夫? かなり強くぶつけたみたいだけど。
返事がない。
誰か!
大声で人を呼ぶ。
その瞬間手を掴まれた。
大丈夫。大丈夫。
あー良かった。
問題無いようだ。
アキトは胸を撫で下ろした。
遠くの方で大声が響き渡る。
アキト! アキト!
家族の方! 静かにお願いします。ここは病院ですから。
アキト! アキト!
ほら走らない!
お願いしますよ!
来てくれたんだ。おーい。
その時手を掴まれた。
滝が意識を取り戻したのか?
ふふふ。アキト。
ターキー?
ううん。
もしかしてガーター?
そう。来ちゃった!
ガーター! 姫!
アキト!
ガーター姫!
ア! キ! ト!
アキトの胸に飛び込み無理矢理キスをする。
ううん!
ううん?
きつく抱きしめる。
アキトも強く抱きしめる。
時間が許す限り抱きしめ合う。
二人の前に運命の扉が開いた。
最終章特別篇 完
FOREVER
LOVERS
END
ボーリン城物語をお読みいただきありがとうございます。
当初の予定とは大分違った展開になってしまいましたが何とか完結に持っていくことができました。
アキトとガーターの冒険は一応の終わりを迎えました。
最終章特別篇は本編と多少毛色が違うのではとお感じになったかと思いますがご了承ください。
最後に予告。
文豪の第二クールがスタート
『ただ旅がしたいだけ 文豪覚醒』
9月4日頃 予定
お楽しみに!




