ボーリン城物語
夏が始まる
物語が始まる
タイムリミットは40日
カンバック マイ サマー バケーション
異世界に広がる幻想郷。幾多の争いによって傷ついたものの、大地に降り注ぐ大量の血は洗い流され、次第に元の形を取り戻した。
時は経ちボーリン王の手によって治められたボーラ地方。戦乱の跡は見られない。
長く続いた戦乱も終結し平和が訪れたのだった。
しかしその平和も長くは続かなかった。
魔王の出現によってボーラ地方は混乱の渦に巻き込まれた。
魔王の狙いは何なのか。
ボーリン王は再び平和を取り戻すことができるのか。
ボーリン城物語。
始まり。始まり。
プロローグ
姫! 姫!
城内に響く爺やの声。
ふふ ふふ
どこですか?
姫!
まだそんなところを探している。
今がチャンス。さあ出かけよう。
城外へ
明日なんですぞ!
分かってるのですか?
早く出てきてください!
聞こえてるのでしょう? 姫!
叫び声は遠ざかっていく。
ちょっとだけ。ちょっとだけよ。
ドレスを引きずりながら笑いを堪える。
逃げ切れるのか?
後ろを振り返る。
もう誰も追いかけてこない。
叫び声も止まった。
ふふ…… ははは……
後ろに気を取られ、近づく影を察知できなかった。
見知らぬ男。
これはお嬢さん。失礼しました。良かったら私の馬車にお乗りください。
面白そう! いいわ! エスコートを頼むわ!
身なりの整った紳士の誘いに乗る。
では行きましょう。
その後、姫の行方は不明となった。
第一章
おーい! 聞こえてるか?
ははは アキト!
うるせー!
だからこの後ボーリングに行こうぜ。
静かにしろ!
なあ、 アキト!
アキト!
分かったよ! 行くって!
よし、じゃあ駅前で待ち合わせだ。遅れんなよ!
うん。アキトも?
へーい。
おい! そこうるさいぞ!
近くにいた先生に注意される。
恥ずかしくなり後ろの二人を睨む。
まったく。もう夏休みだと言うのに何を焦ってんだか。明日でもいいじゃないか。
心の中で毒ずく。
今日は終業式。
後は困ったものをもらって即バイバイだ。
それにしても暑い。さっきから汗が止まらない。
校長先生の有難い長話が止まらない。
もう二十分は経っただろうか。一向に終わりが見えない。
暑い!
クーラーぐらい入れろよ!
喉が渇いた。
なんか変だ。
視界がぼやける。
耳鳴りもする。
誰か!
もうダメだ!
暑い!
意識が遠のく。
バタン
キャアー
アキト!
おーい!
君!
救急車!
早く! 早くしろ!
音だけが鮮明だ。
あーあ。ボーリング行きたかったなあ。
まあ、仕方ないか。
ボーリン……
第一章完
続く
登場人物紹介
アキト 夢見がちな中学生 本作の主人公 本名・春次秋人
ガーター姫 ヒロイン 行方不明
ボーリン王 ボーラ王国の王 ボーリン城の主
魔王 悪事を企んでいる
ターキー ダブルヒロインの一人 謎多き女戦士