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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

通神回戦~Magic-Line-S-Witch-ing~

作者: 朱坂卿

「はーあ……」


 私千市碧(せんいちみどり)は、ため息をついた。

 今日も私は屋上で、一人でお弁当を食べている。


 理由は。


「さあさあここよ! ここが新しい食事の場所よ!」

「(!? 李葉(りば)!)」


 理由は、その声と共にこの屋上にやって来た。

 私は咄嗟に、物陰に隠れる。


「まあ、すごいわ李葉(りば)さん!」

「ほほほ、そうでしょ! ああいい眺めねえ、貧乏人なんかには到底釣り合わないわ!」

「(……李葉……)」


 取り巻きと共に、典型的なツインの縦ロールという分かりやすい風貌のお嬢様たる李葉(りば)――夜祭李葉(よまつりりば)が現れる。


 彼女は元々、私の幼馴染で親友だった。

 彼女のお父さんが、事業に大成功して家を裕福にするまでは。


「! くんくん……あら?」

「? 李葉さん、どうしました?」

「いいえ何でも……何か、貧乏人の匂いがするわ。」


 李葉は目ざとくも、私の残り香(?)を嗅ぎ取った見たいだけど。

 周りを見渡しても、私の姿はなかった。


 ◆◇


 当然だ、私は隙を見て抜け出していたのだから。

 既に早退すると、先生には言ってある。


「……おーけー、グローブ!」


 ――……はい、何でしょう?


 私がスマホで呼び出すは検索コンシェルジュ、グローブ。


 私がこの娘に聞くことは、ただ一つだ。


「……親友が元に戻る方法って、何かある!?」


 こう問いかけると、大抵返って来る答えは決まっている。


 ——……すみません、わかりません。


 そうだ、そんな質問機械が分かるはずがない。

 そう、分からないはずなんだけど……


 ——……それが、あなたの望みなのですか?


「……はい?」


 この時は違った。

 何だこれ?


 今までこんなこと、なかったのに。


 ――……それがあなたの望みならば、果たすべきです!


「は、はい?」


 もう、本当にどうしたのグローブ?

 熱は……うわ、ある!


 いや、まあそりゃスマホだからあるに決まってるか。

 ははは……


 じゃないの!


「な、何がいいたいの?」


 ――あなたのお望み、叶えましょう……さあ、私と一緒に! サーチ!


「へ!? さ、サーチ! トゥー リストア マイベストフレンド トゥー ザ フォーマー ステイト!」


 本当、何が起こってんの?

 私、英語できないけどなんか英語で話しちゃった!


 親友を元に戻す。


 まあ、合ってるかは分からないけど……


 ――セレクト hccps://S-Witch-ing-rpg.mal/ エグゼキュート!


 ん!?


 な、何この状態!

 な、何か身体があ!


 ◆◇


「おい起きろよ"あたし"! 返事しろよ!」


 ……ん? ……痛!

 頭を叩かれて目が覚めた。


 ん? 頭を叩いた?

 誰が?


「こら、"あたし"! "あたし"だよ、ほら!」


 ……え?

 ええええ!?


 わ、私が私自身を叩いている?

 し、しかも!


 慌てて手を止めようとするけど、止められない!

 わ、私は私を叩き続けている!?


「は……あ、そっか。いやあ悪い悪い、あたしは事前情報インストールされてるけど、"あたし"は何も知らねえんだったな! ははは!」


 ……え? 

 こ、今度は私の顔が口が、勝手に笑っているですって!?


 ふ、服装もなんか……あ、RPGのキャラクターみたいになってるし!


 ち、ちょっとおお!

 お巡りさん!


 叫ぼうとするが、その声は頭にガンガン響くだけで外には響かない。


 ど、どうなってんのよ本当お!


「だあー、もう五月蝿いな! "あたし"はあたしなんだよ! あたしは、"あたし"が」


 い、いやますます分かんないから! 

 どういうことなのこれえ!


「まあ、いいや……よしっ! "あたし"、一旦あの始まりの村に行こうぜ!」


 え?

 始まりの村?


 あ、なんか変な村ある!


 ◆◇


「おやおや、最近は新人さんが多くていいなあ! ほら、もう一杯!」

「はい、あざーっす!」


 あわわわ……

 ちょっとあんた!


 私の身体で勝手にお酒飲んでんじゃない!


 まあ、いいわ……

 ひとまず、この始まりの村?で酒場の親父さんが教えてくれたのは


 ・私はどうやら、通神回戦というRPGの世界に召喚されたらしいこと。


 ・このゲームは、それぞれに思い思いのゲームシステムを自作できるゲームであること。


「そうさ、この村いや! 今や全ての村で行われている知恵麦やその酒に使われている知恵葡萄の栽培も、元は知恵の樹人(ウィズダムズトレント)という電使言獣(スクリプティッド)――モンスターを飼い慣らして食料を得るっていうゲームシステムによるものだからなあ!」

「へえ、すごいじゃん!」


 作物つくるゲームかあ。

 なんか、どっかで聞いたことあるけど。


「……まあそうやって、昔は自由に皆が作ったゲームシステムで思いっきり遊べていたんだがな……」


 ん? 昔は?

 私がその親父さんの言葉に、首を傾げていると。


「いいから、この村の作物も家畜も寄越せっつってんだよ!」

「で、でも! まだお納めの時じゃないだろ!」

「は? てめえら、誰に口聞いてんだ!」


 何か外で揉め事でも起こったみたい。

 "私"も、村の酒場の外に出る。


「俺たちは言獣王(げんじゅうおう)様に召喚していただいた、王直々のゲストアカウント持ち直衛回戦士(スウィッチャー)たちだ!」


 言獣王?

 この世界の、王様ってことかな?


 なんかよく分かんないけど、鎧着た数人の男が、村人を足蹴にしてる。


「分かるだろう? 俺たちよりも下層の回戦士(スウィッチャー)たちに回戦術士(スウィッチャレス)の諸君! 分かったらさっさとこの電使言霊(ファミリアスピリプト)知恵麦や、そこの知恵葡萄に! あとは家畜共も渡せよ!」


 !

 これって……


 ――私よりももう下層の人間になったのよ、あんたは! さあほら、退いた退いた! 貧乏が感染るわ、もう!


 李葉……

 そうだ、こんなのおかしい!


「ん!? ち、ちょっと"あたし"……ちょっと、やめてくれませんか!」

「あ?」


 え?

 あれ、つい勢いで行ったけど。


 あれ、いつのまにか身体動かせてる!

 すごいすごい!


「おい、何の用だあクソアマ?」

「な! ブッチーン! だあれがクソアマよお、あんたたちこそ! 言獣王だか減税王だか知らないけど、誰よそれえ!」

「は? ははは! てめえ、言獣王様も知らねえのか……新入りは黙ってろ!」


 ぐはあ!

 私は思いっきり、言獣王の使いに押されて転がった。


 ――おいおい大丈夫か!? 


 ん! 今頭に響いたのは。

 これは、さっきまで表に出てた"私"!


 もう一人の"私"ね!


「ぐっ……負け、ない!」


 ――……え?


 私は、ゆっくりと立ち上がる。


「おやおや、中々しぶといなあ! だけどよ……高々その程度の権限レベルや通神回線占有率のお前が、俺たちに勝てんのかい? え?」

「ん? 通神回線占有率? ……あ。」


 だけど、目の前の厳つい兄ちゃんに凄まれ。

 私が首を傾げていると、何やら目の前にステータス画面みたいなものが広がった。


 その内の一つは。


 Magic-Line-Occupancy in this area:0.002%


 なるほど、これか!

 って、少な!


「ははは、馬鹿が! まあいい……お前も巻き込まれてくれたな、なら村諸共に逝けや!」


 そうこうするうちに。

 厳つい兄ちゃんは、剣を腰から引き抜き。


「hccps://S-Witch-ing-rpg.mal/、サーチ! マイ ソードスキル! ……セレクト、グラットニーフレイム!」


 何か呪文を唱えてそのまま、炎を刃に纏わせる!


「ひいいい!」

「ひっ! そ、そんなあ!」


 ――おい"あたし"、"あたし"だよ! あんたの望みは何だ?


 と、その時。

 私の頭ん中でまた私を呼ぶのは、またもう一人の"私"ね。


 望み?

 そんなん……決まってるでしょ!


「hccps://S-Witch-ing-rpg.mal/、サーチ! トゥー リストア マイベストフレンド トゥー ザ フォーマー ステイト!」


 私は高らかに、願いを唱えた!


「ははは、何だそれは! 苦し紛れに……ん!? な、何!」


 厳つい兄ちゃんは馬鹿笑いしていたけど、急に顰めっ面になる。


 剣が纏う炎が、みるみる小さくなっていくから。


 hccps://S-Witch-ing-rpg.mal/?q=Wishing_Level=Over_Giant


「ん? 何今の……って、え!?」


 そして私も一瞬変なのが眼前にちらついた後。

 はっきりと眼前に浮かんで来たのを見て、驚く。


 Magic-Line-Occupancy in this area:80%


 はああ!

 な、なんでこんなに爆上がりしてんの!?


「よくやったなあ、"あたし"い! さあ……hccps://S-Witch-ing-rpg.mal/、サーチ! マイ ソードスキル! ……セレクト、グラットニーフレイム!」

「!? な、ひいい!」


 そうして私が、驚く間に。

 えええ!?


 また、もう一人の"私"が表に出て来て。


 わ、"私"がいつの間にか持ってた剣を引きぬいて。

 厳つい兄ちゃんに向けて飛び上がり、降りざまに斬りかかっていく!?


「こ、このやろお! エグゼキュート!」

「エグゼキュート!!」


 厳つい兄ちゃんも慌てて反撃して斬りかかるけど、彼の剣の炎は小さくて、"私"の持つ剣の炎とは比べ物にもならず。


「ぐああ!」


 そのまま厳つい兄ちゃんの方が、真っ二つになった。


 ◆◇


「に、逃げろおお!」

「あーっははは、腰抜け野郎共がまいったか!」

「おおお……な、何と強いお方か!」


 えええええ!?


 き、気がついたら村人たち皆、私の前に平伏してるしいい!


 ◆◇


 い、いえいいんですそんな!

 お構いなく!


「おやあ、これも食っていいのか?」

「ああ、五月蝿いあの言獣王の手下共を追っ払ってくれたおかげだよ! ほら、バロメティックシープのソテーに知恵麦のパンもまだまだあるからさ!」

「やったー!」


 いや、もう一人の"私"!

 少しは謹みを覚えなさいよ!


 私のこの気持ちも虚しく。

 もう一人の"私"は、出されるご馳走を次々とがっついている。


「し、しかし……いやあ先ほどの技をもう一度お見せいただけませんか?」

「へ!? い、いやあ〜……ち、ちょっと……」


 うん"私"、無理だよそれは。

 だって、あの厳つい兄ちゃんが言ってた通神回線占有率?とかいう奴。


 Magic-Line-Occupancy in this area:0.002%


 もう、元に戻っちゃってるもの。


「おい親父さんたち! こいつをすっかり信用し切っているようだが……こいつが言獣王のスパイだって可能性はなきにしもあらずなんじゃないのか?」

「! こ、こら! 無礼だぞ"創り手"!」


 ん?

 何か私、同い年くらいのローブ着た男の子に睨まれてる?


 "創り手"?

 この子の名前かな?


「へえ? 何だいあんたは?」


 うわ、もう一人の"私"が!

 ま、また動き出した!


 ちょっと、そんな喧嘩腰じゃダメだよ!


「喧嘩腰なのはあっちだろ? ……おい、兄ちゃん! 調子乗ってちゃいけねえな!」


 うわ、"私"い!

 近くの椅子蹴飛ばしながら立ち上がっちゃって、完全に不良じゃんよお!


「そ、そもそも! お前だってNPCかプレイヤーかどうかも分からないだろうが"創り手"!」


 !? へ?


 しかし、私を庇って村人が"創り手"さんに言った言葉に私は驚く。


 ぷ、プレイヤーかNPCかも分からない人!?

 マジなの、"創り手"さん?


「ああ、そりゃこの村の全員にも、その女にも言えることだがな!」

「ああ、あたしは」

「おっと! 言わない方が身のためだぜ女。それがバレれば、確実に他のプレイヤーたちに付き纏われることになるからな。」


 うっ……

 マジですか……


 ま、まあそうは言ってもよ!


「そうは言っても……あたしは女なんて名前じゃない。あたしは」


 そう、今回ばかりは"私"の意見に同意して草生えるわ!


 私にだって、ちゃんと名前が


「おっと、名前も明かさない方がいいぜ! いいか、名は体を表すたあよく言う。名前はそのまま、弱点を突かれる元にもなるんだ。」


 む!

 もう、何もかも邪魔して!


「そうだ、この娘の名前は……"一閃の魔女"だ! "一閃の魔女"がいい!」


 え?


「ああ、そうだな……俺の"幻の創り手"と同じく、お前の二つ名であり呼び名だ。お前のあのゴリラ並みの強さにお似合いな名前だな!」


 い、いやあそれほどでも〜……って!

 だあれがゴリラだってえ?


 それに、い、"一閃の魔女"ですか〜……

 いやあそれ、乙女の名前としてはどうよ?


「何だって? あたしに喧嘩売る気かいい?」

「ま、まあまあ"一閃の魔女"さんそのぐらいに! ……"創り手"! まったくお前はいつもいつも!」

「あー、はいはい!」


 むう、また"私"に同意しすぎて草生えるわ!

 ムカつくなあ、この"創り手"!


「そうだそうだ"創り手"! お前なんか、戦えもしなかった癖に!」

「な……お、俺は回戦術士(スウィッチャレス)ジョブなんだよ! 戦いには不向きなんだ、代わりに農業ゲームシステム強化してやった礼は忘れたのか!?」

「それとこれとは別だ!」


 あらあら、優しい村人さんたちにまでこんな責められて。


 ぷっ、かわいそー!


「まあ……何はともあれ! "一閃の魔女"さん、あんたは村を救ってくれた英雄だ! 今日は一晩、ここで休んで行ってくれ!」

「え、あ、ありがとう!」


 あらあら、そんなに煽ててくれちゃって!

 照れちゃうじゃなーい!


 ……ん? 

 いやいやちょっと待って、一晩!


 いや、明日は学校が!


 ん、学校?


 ――何か、貧乏人の匂いがするわ。


 ……学校に何があるってんだ私。

 はい、お言葉に甘えさせていただきます!


「……ったく、これで油断しすぎだぞ! むしろ確実に言獣王には目をつけられたから、警戒しなきゃならねえって時に!」


 あら、まだ"創り手"君が何か言ってる。

 ふんだ、ほざいてなさいよバーカ!


 ……でもこの時。

 私はまだ、この後のことをまったく分かってなかったんだ。


 ◆◇


「も、申し訳ありません言獣王様!」


 ――ふん、なるほど……して、貴様らはその何やら訳が分からぬ奴にやられたと? それで尻尾を巻いて逃げ帰って来よったと?


「は、はい! も、申し訳ございません!」

「し、しかし我らは確かに見たのです! き、急に権限レベルが我らの足元にも及ばないはずのそいつが! つ、通神回線占有率を突如激増させたその瞬間を!」


 ――ふ……ふふふ、はははは! ああ、あああああ! 愉快だ……愉快だぞ!


「……へ?」


 ――ふふふ……さて、ならば私も返答せねばな。まだ断言はできんからそのプレイヤーよ、直接確かめさせてもらうぞ……


 城で言獣王が、部下たちの報告を聞いてにやけていた。


 そう。

 私は"創り手"の言う通り、厄介を呼び寄せちゃったんだ。


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