89.裁判1
裁判に行ってほしくなかったみたいだけど、無理矢理クリスお兄様セディオお兄様、お父様にお母様頼んで連れてきてもらった。
特にセディオお兄様とクリスお兄様お父様はすごく反対した上にお父様は泣きながら私にしがみついてきた。愛されてるのはわかるけど………残念感が半端ないそんなお父様をお母様が冷ややかな目で見ていて「あらあらあら、困った人達だこと。あまりにだめだめ言ってるとリィに嫌われるわよ。うふふ。」と鶴の一声であっさりと行くことが許可された。
さすがお母様………うちの男性陣はお母様には弱いな。
しかしヒロインの行く末が気になる。
朧気だけど知っているストーリーと全然違う状況だから…………だって、裁判って何??
そんな現実的な制裁なかったんですけどー!!
…………だから気になる。悪役令嬢のポジションにいる私も今後何かしら歪みがあるのかな。。
ヒロインに何かした覚えはないけど、何故か見かけたときには嫌われてるみたいにめちゃくちゃ睨まれたりはした。。
席は、さすが公爵家と言わんばかりにど真ん中の一番前の席で周囲を騎士で囲まれての傍観席だった。
いやいやいや、かなり重苦しくないですか!?
私がキョロキョロしてるとお母様がにっこり笑顔で
「周りの騎士達はグレイセド様からよ。リィがよっぽど心配なのね。うふふ。」
と、とんでもないことを聞いた。
てことはあの優秀な人たちの集まりと言われる王宮騎士様達ではないですか!!
あわわわわ……ただの傍観で席についてるだけなのにどんだけ趣を置かれてるんですか!!
こっちが恐縮しちゃいますよ。
ちらりと裁判が行われる方を見ると座ってるグレイ様と目があった…………と思ったら立ち上がってこっちに近づいてくる!
ちょっちょっとなんでこっちに来るんですかぁぁ?!
「お前たちしっかりと守れ。」
あぁ、きっ騎士様達に言いに来たんですね~自分に来たと思って自惚れてしまいました。
でも………何か危険があるんですか??
「リィにとって残酷な内容もあるかもしれないがそれでも裁判を傍聴するか?」
そんなによくないことも含まれるのですね。
私は前世の記憶が戻ってからグレイ様に守られてきました。
ヒロインの行く末をしっかりと見届けなければならないと思ってます。
「はい。見届けたいと思います。」
しっかりとグレイ様の目を見て伝えると私の意思が伝わったグレイ様が頷かれた。
「リィ…………。」
「…………っ!?」
頬を赤らめて見つめてくるグレイ様。
いやいやいや、何ですかその甘い視線は!?
もうすぐ裁判ですよ!
そんな顔をしてる時じゃないと思うんですが………しかも、私たちって婚約破棄ってことなってましたよね!?
周りからみたらおかしい状況じゃないですか。
「えーーーと………グッグレイ様??」
この前みたいに変なことを言い出さないか………いや変なことではないが私が恥ずかしいと言うか………嬉しいような強烈なような………とにかくあのときと違って周りのことを考えるとグレイ様も自粛するとは思うが………。
何も言わないでくださいね!!と目でグレイ様に訴えかけると愛しそうな優しい微笑みを向けてきた。
えっ!?っつつ伝わってるよね!?
周りもざわざわと煩くなった。
わかります!わかりますとも!
こんな表情のグレイ様はあまり見たことないから貴重なのでしょう。
この表情は………キスする前とかいわゆる甘い雰囲気の時に見られる表情だ。
いつも完璧なグレイ様。
優しいグレイ様ですが………いつも笑顔は皇太子スマイルです。
だから………本当に微笑んだ顔は貴重で………そんな顔で私を見ている………今は裁判前だし………………………………………あまり人には見せたくないです。
はぁ………こんな風に思ってしまう私は最低だな。
「グレイセド、そろそろ始まるぞ。」
声のする方を見るとクリスお兄様とカペロ様がいた。
今日は主にグレイ様、補佐をクリスお兄様とカペロ様がすると言ってた。
「はぁ……わかってるよ。」
「色々と思うところがあるだろうが裁判を終わらせてからにしろ。」
クリスお兄様が何を言いたいのかわからなかったが、グレイ様の中で色々とあるんだろうな。
少し拗ねたような表情をしたグレイ様にクリスお兄様がしっかりと釘を指している。
「さっ、行くぞ。」
「あっ、待ってください。」
私の声に振り向いて手招きした私に近寄ってくるクリスお兄様達。
「どうした?」
「頑張ってくださいね。」
そう言ってクリスお兄様の頬っぺたにチュッとすると、周りの学園から見学に来ていたご令嬢達がざわめいた。
いやいやいや、いつも家でやってることだし珍しくないでしょう兄弟で。
「ふふふ。リィは可愛いな~ありがとう。」
クリスお兄様は満面の笑みで言うと私の頬っぺたにチュッとするとまたキャァァーと騒ぎだす。
私とクリスお兄様を見ていたグレイ様が近寄ってきたが少し………機嫌が悪そうだ。
「クリスだけズルいぞ。俺に声援は?」
「グレイ様もカペロ様も頑張ってくださいね。」
クスクス笑いながら声援を送ると、近づいてきて私の頬っぺたにチュッとキスをし私は目を見開いて呆然としてるとカペロ様も近づいてきて私の頬っぺたにチュッとキスをした。
これまた、私の思考を停止するのに十分なことでグレイ様とカペロ様を見つめ固まってしまった。
一瞬シーンとなったと思ったら割れんばかりのキャァァァーとご令嬢達の声が響いた。
「おい、カペロまでする必要がないだろ。どさくさに紛れてリィが固まったじゃないか。」
「それはお互い様だろ。俺の気持ちは伝えてるんだ。リーゼ以外にはしないよ。」
「……最近たかが外れすぎだぞ。」
「はぁ~おい二人ともいい加減にしろ!!」
そう言って二人を強制的に連れていくクリスお兄様を真っ赤な顔をして私は眺めていた。
お父様は複雑な顔をし、お母様は「あらあら、リィはモテモテね。さすが私の子だわ~ふふふ。」と呟いた言葉を聞いて私はさらに顔に熱が集中し俯いてしまった。