88.執着
「はぁ……リィはお兄様たちに溺愛されてるから憧れが強いんだろうな。」
「えっ?!」
急にクリスお兄様達の話??
何故このタイミングで??
私が困惑した顔をしてたのだろう顔を覗きこみグレイ様が困った顔をしている。
「まっ、時期にわかるだろう。」
意味がわからない。
本当に意味がわからない。
困惑しながらグレイ様の胸元から見上げるようにじっと見つめた。
「うっ…………。……………はぁ……………リィを抱きたい。」
えぇ??
本当にどうしちゃったのですかグレイ様!!
私ももう成長しました。抱きたいという言葉が何を指すかわかってます。
顔が熱くなっていくのがわかって………グレイ様を見るのが恥ずかしくなって俯こうとした瞬間顎を持ち上げられて強制的にグレイ様の顔へ向けられた。
「だーめ。余所見せずずっと俺を見てること。」
なんだか、私に触れる手は優しいのに言葉や目からは圧を感じる…………………。
今まで小さな頃からグレイ様と一緒に過ごしてきたが今日のグレイ様はなんだか凄みを感じる。
逆らったらいけないと身体がひしひしと反応しているような感覚だ。
「大丈夫。今日はこれ以上のことは何もしない。全部片付いてからだ。」
目をギラリと光らせてにやりと笑うグレイ様に少し焦る。
ぜっ全部片付いたら何をするんですかぁぁぁ!!
と思っているとまたグレイ様の唇が近づいてくる。
「こっこっこれ以上はしないのでは??」
「これ以上はしないがここまではするよ。まだまだ全然足りない。本当はリィを拘束して誰にも見られないように監禁して貪りたいんだけどな。」
はいいいぃぃぃぃぃ??
最後の方…………いや、全体的に相当怖いこといいましたよね!!
「グレイ様…………………激しいですね。」
「言わないだけでいつも思ってることだ。」
「そっ…………そうなのですね。言われると恥ずかしいです。」
私も相当おかしいのかもしれない。
グレイ様にこんなこと言われて怖いと思わないんだから。
「婚約者はみんな毎日愛を囁き相手に想いを告げるんだよ。」
「えっ?そうなのですか??男性の皆さんこんなに甘い言葉や激しい言葉を囁いてるのですね!しかも毎日なんて……ロマンチックな人が多いのですね。知りませんでした。」
「そうそう。でも、俺が言ってるのは内緒にして欲しいな。リィにだけしか知られたくないしそれにみんなが囁いてると言ったら恥ずかしいだろうからそこは誰にも触れたらだめだよ。」
「囁いてる言葉のことをですか?わかりました。皆さん心の中で婚約者を監禁したいなど思われてると婚約者以外には知られたくないですよね!!誰にもいいません。」
唇に人差し指を当てて絶対に言わないです!!と意思表示をした私を見てグレイ様はぎゅーっと抱き締め頭や頬や唇や瞼あらゆるところにチュッとキスをしてきた。
「あぁーー。可愛すぎる。リィ好きだ。」
この後、窓の光が差し込むまで唇は離れず一体何時間していたのか…………その間もグレイ様からの激しい想いの言葉が降り注ぎ、キスと言葉に私の頭は思考を停止した。
―――――――――――――――――――――
―――――――――――――
「俺のリィが可愛すぎる……………。」
「「…………………。」」
俺とカペロがグレイセドの突然発した言葉に一瞬固まる。
「あぁ、リーゼは可愛すぎるな。」
おいおいおい。
もう隠す気はないのはわかるが火に油を注ぐなよ。
カペロがグレイセドに同調するように頬を赤らめて言うから洒落にならない。
「カペロでもリィだけは譲れない。婚約破棄はしないからな。」
グレイセドがギロリとカペロを睨み付けると、カペロはにっこりと微笑んでグレイセドに
「リーゼが決めることだからな。」
はぁぁ………カペロがリーゼに結婚を申し込んだのはグレイセドも知っている。
掴みかかろうとしたグレイセドを止めるのに大変だった………カペロにはいずれ仮を返してもらおう。
カペロもグレイセドも本気なのはわかっているが…わかっているが今はそれじゃないだろう。
「おい、二人ともいい加減にしろよ。裁判は明日なんだぞ。証拠に証言に揃ってはいるが最後まで気を抜くな、気を引き締めろよ。」
俺の言葉に二人とも渋々頷いたのを見て、二人とも完全にリィに溺れてるな。
兄としては妹をここまで思ってくれてるのは心強いが……………グレイセドはリィの婚約破棄宣言から少し……いやだいぶ病んでる。
前々からリィが絡むと恐ろしいまでに冷酷になるとは思っていたがそれがリィからの拒絶でたかが外れている……普段と変わらないが心から目が笑っていない。
カペロのリィに対しての気持ちも薄々気づいてはいたが………相手はグレイセドなのにここまで剥き出しに本気を出してくるとは思わなかった。
はぁ………二人とも見た目は好青年で完璧と呼ばれる部類ではあるが、リィに対してだと執着が恐ろしい。
リィが気づいた上で選ぶなら俺はどちらもいいんだが……一番肝心なのはリィの気持ちだからな。