83.ルート
リィがカペロのことを気になると言った時、頭が真っ白になり婚約破棄をリィの口から言われた時、目の前が真っ暗になった。
リィが俺以外の誰かを好き………そう考えただけで煮えくり返る。
出逢ってからリィだけなんだ俺の心を占めるのは………絶対に手放しはしない。
俺がいない間寂しくて寂しくて堪らなかったんだろう。
……………いろんな事が頭を巡り壁をガツンと思いっきり叩く。
むしゃくしゃして部屋の花瓶を素手で叩き割ると、ぽたぽた………と手から血が流れていた。
血だまりを一時見ていると少し冷静になれた気がする。
…………カペロが悪いわけではないがリィだけは譲れない。
リィだけは駄目だ。
リィの意思がそこになくとも俺は手を放してあげられない。
さっきもリィを離したくなくて………どんなに思いとどまったか。。
これからは離れた分だけ俺の気持ちをしっかりと伝えていくよ。
………早速会いに行くとしよう。元凶に。
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「なによ。今ごろ来るってことはやっぱり私の方がよくなったのかしら?」
「はっ。冗談早めろ。誰がお前みたいな女を選ぶんだ。」
リィは小さい頃からお前に怯えて過ごしてきたんだ。
理由はどうであれ、お前はリィに手を出したから許しはしない。
「残念ねー……………ってグレイセド様どうしたんですかその手。血が出てますよ!!しかも雰囲気変わりましたね…………特に目が据わってる気が……………はっ!!!!闇堕ちルート!!!?闇ルートに入ってませんか??」
なんだ?闇堕ちルートって??
こいつ………もしかしてリィと同じ転生者なのか?
リィからも聞いたことがない言葉だが…………。
今の俺を見て明らかに動揺してるが………。
手の血が気になるのか動揺しながらじっと見られてるな。
見られたくもない。
「すぐに止まる気にするな。」
自分でもわかるくらい冷たい声が出た。
今まで我慢してこいつに付き合ってた分とリィとのことでの苛立ちで…………俺も冷静にならないとな。
でもこいつに見られるだけで今は不愉快で仕方ないが。
「えっ??えっ??どういうこと??グレイセド様の闇堕ちルートってすっごく貴重で滅多にお目にかかれない幻のルートなのに…………。あんなに悪役令嬢を溺愛していたから急にこのルートに入るのはおかしい…………どうなってるの……………。」
ブツブツと目を見開いて俺を見ては一人で話しているが全く意味がわからない。
「確か……………闇ルートは稀にバグったときにグレイセド様が好きな人から拒絶あるいは離れたときに発生してたはず!!今は悪役令嬢と婚約も破棄して何もないはずだけど…………はっ!!グレイセド様、悪役令嬢と何かありました??」
拒絶…………離れる……………思い当たることばかりだ。
考えただけで頭のなかが真っ黒に染まっていくのがわかる。
「お前は知る必要がないことだ。」
だが、、その闇ルートとやらを詳しく知りたいな。
「ヴィゴ。始めてくれ。」
急に現れたヴィゴに驚いていたが、逃げる暇も叫ぶ暇もなくヴィゴがシュッと顔面に振りかけた。
「きゃっ。ななっなにしたのよ!?」
「黙れ!質問は俺がする。今の闇ルートとはなんだ?」
「グレイセド様の闇ルートっていうのは、グレイセド様が心から好きになった人がグレイセド様から離れるもしくは拒絶すると発生するルートで、このルートに入ると今までとは違う一面が現れ残虐な面やSが強くなるんです。愛情は歪んだ溺愛に変わり好きな人を軟禁して抱き潰し誰にも会わせず囲うのです。」
目を見開いて俺を見ながら喋り続けている自分の口を押さえてるが無駄なのにな。
「ファンからは溺愛+ブラックなグレイセド様が見れると人気のルートでしたが、怖い一面もあるため人それぞれでしたが………………私は好きでしたね~だって自分だけを愛して囲ってくれるなんて愛されてるーって思うじゃない。」
闇ルート……………確かに今の俺だとリィを囲って一生外に出さないだろうな。
………まぁ、現実問題リィには皇太子妃としていずれは后妃として公務もあるから無理ではあるが………気持ちは軟禁して誰にも見せたくないし、ずっと抱いていたいな。
「くくくっ。口を押さえても無駄だよ。気持ちとは裏腹に自分の口が勝手に喋るだろ。さっき振りかけたものは一種の自白剤だからな。まだお前には聞きたいことがあるから全部はいてもらおうか。」
「何を聞きたいんですか?それよりも私がブラックなグレイセド様を癒してあげましょうか?ふふふ。」
まだわかってないようだな。これがヒロインか?
リィからは純粋で可愛い………と色々聞いていたはずだが、当てはまったところがない。
誰でもいいわけじゃない。リィだから離したくないんだ。
リィは闇ルートのことを言わなかった………幻のルートと言っていたから存在事態を知らない可能性があるな。
それは好都合だ。知っているのはこいつだけか。