82.告白
夜会の後、どんな風に帰ってきたのかわからない。
クリスお兄様が何か言っていた気もするけど……思い出せないな。
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「リィ、どういうことだ?」
私の言葉にみんな驚いて沈黙だったが破ったのはグレイ様だった。
「………ごめんなさい。言葉の通りです。」
私はグレイ様を見れず目を伏せて答えると近寄ってきたグレイ様に手を握られた。
「みんな悪いが今日はお開きにしよう。改めてまた集合をかける。今日は逃げないように軽めに拘束してるが裁判のこともある。クリスとカペロは明日話し合おう。………クリス少しの間リィと二人にしてほしい。」
「わかった。リィ、待ってるからグレイセドとしっかり話をするんだよ。」
みんな退室していき、最後のクリスお兄様が私の方に振り向いて一言いってドアを閉めた。
みんながいなくなって二人で佇んでいるとグレイ様が近寄ってきて私をぎゅっと抱きしめた。
「リィ、会いたかった…………本当に会いたかった…………。」
切実な声をだして『会いたかった』と繰り返すグレイ様に目頭が熱くなって視界がぼやけてきた。
「………………私も会いたかったです。」
数ヶ月しかたっていなかったけど、もう何年も離れていたように感じた。
いつも寂しくて抱きしめて欲しかったグレイ様の腕に包まれていると思うだけでたまらない気持ちになる。
「リィ、正直に話してほしい。俺はリィと婚約破棄する気はない。どんなことがあっても俺の気持ちは変わらないよ。」
私の頬に流れた涙を指で拭い、グレイ様が瞳を見つめながら切なそうな表情をして私に言った。
「………………わかりました。正直に言います。グレイ様の側にいることができなくなり寂しかったです。噂ではヒロインと恋仲だったり…………激しい噂もありました。私のためにヒロインから遠ざけてくれたのに寂しく思ってごめんなさい。それでも頑張ろうと思ってましたが………最近カペロ様にドキドキしてしまいます。グレイ様との婚約破棄は実行されていないのに私はグレイ様以外の男性にドキドキしてしまいました。こんな私がグレイ様の婚約者に戻れないです。だから婚約破棄をお願いしました。」
グレイ様の瞳を見て伝えることができず、目を伏せてすべてを伝えた。
婚約破棄に関しては少し前から考えていたことだ。
グレイ様が好きだと言う気持ちは本当だけど、少しでもドキドキしてしまったことを考えるとグレイ様には相応しくないだろう。
「………………寂しい思いをさせてごめんな。そっか…………カペロにか…………。」
甘い声ではなく、低い声でグレイ様が呟くと伏せていた私の顎を右手で上に向かせ真剣な目で見つめられた。
「いいか。俺はリィを諦めるつもりもないし婚約破棄する気は全くない。どんなにリィが嫌でもこれからは俺の側にいてもらうぞ。」
グレイ様………怒ってるよね。
声のトーンが低いしこんなグレイ様あまり見たことがない。
「リィ、リィだけが好きなんだ。他はなにも要らない。リィだけは譲れない。大好きなんだ、リィリィ…………………………。」
私の名前を呼びながら唇に近づくグレイ様にどうしたらいいのかわからず下を向くとまた顎を上に向けさせられすぐに唇を塞がれた。
「んっ……………。」
ちゅっとキスをされながらだんだんと深くなっていく。
「………ちょっ…………まってく…………ださ……………い……んッ………。」
グレイ様はやめようとしてくれず、私の唇を貪るようにキスをする。
手でグレイ様の胸元を押し返そうとしても唇を離さず私が動けなくなるくらいぎゅっと抱きしめてきた。
抵抗ができず、グレイ様から唇が離れるのを待つしかなくなった。
どれだけの時間がたったんだろう……………。
グレイ様が離してくれずずっとキスをされ抱きしめられている。
懐かしいグレイ様の体温がとても気持ちよくなってきて………キスも久し振りに感じるグレイ様に嬉しいような恥ずかしいような何とも言えない気持ちになってしまう。
「んっ……………グレイさ………まぁ。」
微かに唇が離れたときに名前を呼ぶと、ゆっくりと唇を離してくれたが腕からは解放されなかった。
「俺にはリィだけだ。愛してるよ。」
「グレイ様……………。」
「離れていた時間分、これからはたくさん一緒にいよう。………一旦ゆっくり考えるといいよ。リィの気持ちの整理をするといいが、何度も言うが俺は婚約破棄もリィを手放すことも絶対にしないからな。」
少し寂しそうに微笑んでゆっくりとグレイ様の顔が近づいて唇に軽くキスをされた。