81.決意の夜会8
「わかっていたなら何故やめなかった。ハアラの花は初めは何も感じなくても何度も服用すれば中毒になりまた求め服用する。…………お金、体力や気力、思考力までも奪っていくんだ。お前はただの憂さ晴らしだったかもしれないが、巻き込まれた令息や大人達は人生がめちゃくちゃだ。程度にもよるが完治するまでには相当………数年はみないといけない人もいる。」
「………………まさか!?」
「そうだ。カヴァル・シーファ令嬢が人生をめちゃくちゃにした人達は速やかに治療を開始している。会えなくなった者がいるだろう?」
グレイ様はにやりと笑いながらヒロインを冷たい目で見る。
「………………急に連絡を取れなくなったと思ったらそういうことね。みんな無事なの?」
「………数名は軽症だったが一人かなり重症がいる…誰かは想像つくだろう。……………完治できればいいが……今も苦しんでいるよ。カヴァル・シーファ令嬢、自分の欲のためにこれから先の輝かしい人生が駄目になった人達もいるんだ。」
ヒロインは何も言わずグレイ様をじっと見ている。
「カヴァル男爵の令嬢に対する態度は痛烈で辛い思いをしただろうが、だからといって自分自身も悪の道に行くことはなかったんだ。同情も免罪もしない。今まで自分のしてきたことを考えてほしい。カヴァル男爵と同様数日後に裁判が開かれる。何か言うことはあるか?」
グレイ様は苦しそうな顔をしてヒロインになげかける。
人一人を断罪するのはとても悲しい。。
「いいえ。…………個人的にグレイセド様に言うとしたら、『こんなに可愛いヒロインの私より悪役令嬢を選ぶなんて見る目ないわね』ってことかしら。どうぞ不敬罪にでもしてください。」
グレイ様を真っ直ぐに見めながら話すヒロインは清々しい顔をしていた。
………心の変化があったのか……わからないけど。。
「ハハッ、言ってろ。俺の目に狂いはない。」
グレイ様の言葉を聞いてから私の方を見て少し笑った気がした…………気のせいかな?
転生者だから………ゲームや小説を知ってるからヒロインは幸せになれるのが当たり前、結ばれるのが当たり前と思ってしまったんだろうな。
確かに私も小説やゲームのことを考えないことはないけど、出会えた人達は、みんな生きている。現実なんだよね。
リセットができるわけじゃないし………悪役令嬢の私も今まで全く違う人生になってる。
ヒロインがどうなるかわからないけど、ヒロイン自身の本当の人生を歩んでいけるといいな。
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夜会は早々に切り上げられ、客室にグレイ様、クリスお兄様、カペロ様とサムウィル様、カシリス様、が集まった。
久し振りのみんなの集結でひとまず終わったんだとはぁ~とため息が出た。
「クリスもカペロもよくやってくれた。サムウィルとカシリスもリィのことを守ってくれてありがとう。」
グレイ様はみんなを見渡してお礼を伝えると、「無事に終わってよかった」と口々にみんな呟いた。
「本当に無事に終わってよかった。リィもお疲れ様。」
「クリスお兄様……ありがとうございます。皆さんも私のことを守ってくださりありがとうございます。」
「数日後には裁判が開かれる。証拠や証言は揃っているから大丈夫だが一応話をまとめておきたい。クリスとカペロは明日応急に来てほしい。」
クリスお兄様とカペロ様はグレイ様を見てこくりと頷いた。
「直接話すのは久し振りだね、リィ。」
急に私に甘い表情で話をかけてきたグレイ様にドキッとしてしまう。
「お久し振りです、グレイ様。色々とありがとうございました。ふふっ。久し振りすぎて緊張してしまいますね。体調などお変わりないみたいで安心しました。」
「心配してくれてありがとう。リィに会いたくてたまらなかったよ。」
微笑んで私にだけ向けてくれるあの笑顔がたまらなく好き。
私の前だけで甘い表情になるグレイ様をギュッと抱き締めたくなる。
終わったらギュッーーーーて抱きついてグレイ様を満喫するぞぉぉぉぉ!って思ってたのに………………私もです…………と言いたいが、私は悩んでいた。
グレイ様を好きな気持ちは変わってないが、一瞬でもカペロ様に惹かれてしまっていた部分があるのに同等と私も会いたかったですと言うにはあまりにも自分勝手だと思ってしまう。
私からの返事がないからかみんなが不思議になっている雰囲気はわかってはいるんだけど………………。
「リィ、どうしたんだ?」
私が何も言わないから少し困惑した顔をしてグレイ様が私に近寄ってくる。
………………今の私にはグレイ様と面と向かって愛を語らうことなんてできない。
私のせいでごめんなさい。
「グレイ様、お願いがあります。グレイ様との婚約破棄は表向きでまだ続いてますが、……………………本当に婚約破棄してください。ごめんなさい。」
近寄ってくるグレイ様が私の言葉を聞いて目を見開いて固まっている。
クリスお兄様やカペロ様………みんな目を見開いて私を見つめていた。