64.婚約者候補4
クリスとリーゼを迎えに行ってるとクラスが騒がしい声が聞こえてきた。
「私は完璧王子さまのクリス様がいいな。愛をささやかれたら……………きゃぁぁぁぁたまりませんわ。」
「クリス様も素敵だけどぉ~カペロ様のあの大人の色気で見つめられると………身も心もお任せしたくなっちゃいますわぁぁぁ。」
「私は~サムウィル様…………………「私は~カシリス様……………「私はやっぱりグレイセド皇太子………。」」」
…………………俺達の話か。
今リーゼの婚約者候補の話でみんな騒いでるからな。
「見つめられると身も心もお任せだってよ。」
俺を見るクリスは意地悪な顔をしてくすりと笑っている。
「お前だって完璧な王子様だってよ。俺には魔王に見えるな。」
「ははっ。そうかもな。俺には初恋を拗らせた可愛い男に見えるけどな。」
「……………………………どういう意味だ。」
「そのままの意味だけど。」
完全な図星で動揺してしまう俺にクリスは不敵な笑みを浮かべて俺を見ている。
はぁ…………厄介なやつに知られてしまったな。
それでも、リーゼの側にいれることが嬉しいと思ってしまう。
「で、リーゼ様は誰なのですか?」
ちょっと待て!リーゼに選ばせるのか!?
グレイセド様って言うに決まってるだろ!
本音はそうだとしても今はリーゼの口から聞きたくない。
まだ婚約者候補の余韻に浸らせてくれ。
「はいそこまでにしようか。」
リーゼの答えを聞きたくなくて身体が先に動いていた。
リーゼの言葉を大きな声で遮り近づいていく。
「リーゼの答えは後にわかるよ。だから今はそっとしといてな。」
にっこり笑い女性達に向かって伝えると顔を真っ赤にしてみんなこくこくと頷いている。
答えを聞かないためならなんだってやってやる。
「さっ、リーゼ行こうか。」
リーゼを見つめて言う。
「はっはい。」
リーゼの手を取りクリスのもとに向かう。
繋いだ手が汗ばんでくる。くそっ。手を繋ぐなんて普通のことに緊張してしまう。
「………………笑うなクリス。」
言いたいことはわかるが………こっちは必死だったんだよ。
クリスは焦った俺に気づいただろう。
「あははっ。カペロどうしたんだ。もっとうまくやれるのに………くくくっ。」
「………………うるさいぞ。」
そんなこと自分で一番わかってる。皆の前で連れ出すのが精一杯だったんだよ。
リーゼが絡むと……………うまくやれないんだよ。
顔よりもリーゼと繋いだ手の方が熱い。
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「カヴァル男爵、初めまして財務官補佐をしていますリファエルです。今財務官は手が離せずご用件は私が代わりに承ります。」
「そうでしたか…………また日を改めて来ることをお伝えください。あの優秀な補佐官と言われるリファエル様とお会いできるとは何かの縁ですな。今度うちで開かれるお茶会に是非出席していただきたい。いろいろとお話をしたいですな。」
「このような私をご招待いただきありがとうございます。業務に滞りなければお伺い致します。」
カヴァル男爵は良い返事が返ってきてご機嫌に帰っていった。
去って行ったことを確認して部屋に戻り、椅子に手足を縛り付けている財務官を上から見下ろす。
「さっ、カヴァル男爵との関係について続きを話そうか。」
怯えた目で俺を見る財務官ににっこりと笑顔で伝えた。
「い………命だけは助けてくれぇぇぇぇ。」
命乞いをしている財務官にキョトンとした顔をして見る。
「何言ってるんだ?そう簡単に殺すわけないだろ。これからゆっくり自分のやってきたことの過ちに向き合っていかないとな。ただ、俺は拷問専門じゃないから手加減がわからないんだ。早くすべて話すに限るぞ。」
財務官を見ながらにやりと笑い今までと同じように質問をする。
財務官はリファエルの目が笑っていないことに背筋が凍る。
リファエルはこんなやつだったか?………それすらも考えることができない状態になっていた。
財務官はポツリポツリと身体の激痛をこらえながら話しだした。
カヴァル男爵は財務官とかなり親密だったみたいだな。
もともと財務官は真面目な人柄だったんだが………ここまでカヴァル男爵に染まっているとは………。
これはもっと王宮の官僚を徹底的に調査してみないとな。
「……………で、それで全部か?」
「…………はい………。」
「後で何か見つかったらこんな生易しいものじゃなくなるからな。」
「……………む………息子がカヴァル男爵の令嬢と関わったからおかしいんだ。お願いだ。罪を…………どんな罰でも受けるからどうか息子を助けてほしい……………。」
「……………………令息は何処にいるんだ?」
「家の部屋に閉じ込めているが………いつどうなるかわからない………………。」
「……………………わかった。」
親だけでなく子も巻き込まれていたのか…………。
面倒なことになりそうだ。