59.恋心
クリスに連れられ、ソファーに座ってお茶を飲んでいる。
「そんなに重要な話なのか?」
「そうだな。学園で話せることではなかったんだ。大体わかってるだろ?」
「はぁ………あの女柄みか。。」
にっこり笑って俺を見るクリスだか、目は笑ってなくて怖いな。
こいつ怒らすと怖いんだよな…………昔喧嘩して骨折しまくって動けなかった時期がある。あの二の舞にはなりたくない。
それに…………リーゼ・ウォレットがもうすぐ帰ってくるんじゃないのか…………会いたいが会いたくない。。。
「で、カヴァル・シーファとお前は今は関わりあるのか?」
「俺から連絡はしないが向こうから連絡あったときだけだったと聞いている。だか、舞踏会の件で頭に来て切ったよ。リーゼ・ウォレットに手を出し俺の家の者が言いくるめられていたからな。俺から何か聞こうとしても無駄だぜ。」
「………………なるほど。お前あの件からカヴァル・シーファを調べただろ。何か出てきたか??」
不適な笑みを浮かべたクリスが俺を見る。
「はっ………さすがにクリスは勘がいいな。今はあの女よりもカヴァル男爵は妙な動きをしているな。薬物を入手してることは知ってるだろ?」
クリスはこくんと頷いた。
さすが、もう調べあげてるんだな。
「あの薬物を王宮で働いている官僚に近づいてはあの女を使って薬づけにしていた。もうわかるだろ?」
「……………現状どうなんだ?」
「若い官僚から手なづけているからまだそんな危険な情報も力はないが、人数が増えていくと話は別だ。そうなる前に潰すしかない。」
「王宮をのっとるつもりなのか……………。」
「さぁな。でも言えることは、このままでは知らないうちに王宮は乗っ取られるな。」
「早急に対策を打つ必要があるな。グレイセドに知らせよう。」
「ああ、あと今皇太子にひっついているだろ。あの女から何か貰ったり目の前で飲食はするなと伝えろ。あの女も薬を使う可能性が大だ。」
「…………お前が自分で直接話せ。」
「はっ?」
「リィに起きたことを話そう。お前にも協力してもらうからな。」
魔術師のことや、リーゼ・ウォレットの置かれた現状について話を聞いた。
あの女ここまでしてたのか。
目的のためなら人を傷つけていいのか…………いや、あの女ならやりかねないな。
あの女よりもリーゼ・ウォレットに危害が及ぶのは阻止したい。
「わかった。協力するよ。」
「ありがとう。詳細は今の話をグレイセドにしてからだな。」
「お前のことだから有無を言わすつもりはなかったんだろうがな。」
「わかってるな。だが、お前は協力してくれると思ってたよ。リィのことを抜きにしてもな…………お前はそういう奴だ。」
くすりと笑いながら俺を見るクリスは穏やかに言った。
なんだよ………クリスがそんなことを言うから落ち着かないじゃないか。
だから嫌なんだ。お前といるとこういうことが多々あって落ち着かないんだよ。
バタン。
ドアの開く音がして小走りでクリスに抱きついたのはリーゼ・ウォレットだった。
「お兄様ただいま戻りました~。」
「リィおかえり。サムウィルもいつもありがとうな。」
リーゼ・ウォレットの頭を撫でながらドア付近に立っている男に声をかけたクリス。…………ああ、さっきの話の騎士見習いのサムウィルってやつだな。
「とんでもないです。俺にとって光栄なことなので。」
クリスに向かって頬を染めて頭を下げる姿を見るとははーん。
こいつもリーゼ・ウォレットのことが好きなんだな。
……………俺も人のことは言えないが。
「あら?クリスお兄様のお友だちですか?」
ドキッとして声のする方を見ると、リーゼ・ウォレットと目があった。
ドキンと鼓動が高鳴ったのがわかった……………へっ平常心を保たないとな。
「リィ、俺の友達でカペロ・ハムロだ。」
「すみません、お友だちが来てると知らず………挨拶が遅れました、リーゼ・ウォレットです。」
にっこりと微笑んで俺を見ているリーゼ・ウォレットが綺麗だった。
「はっ………初めまして…………カッカペロ・ハムロです。」
緊張してどもってしまった。
顔が真っ赤になってるのがわかる。リーゼ・ウォレットを前にして平気でいられない。
こんな自分初めてだ。
今まで女の前でもこんなことなかったのに……………。
クリスも目を見開いて俺を見てる…………わかってるよ。
いつもの俺と違いすぎてるんだろ!
自覚してるよ………話したいのに言葉が出てこない。
「あっ、そうですわ。私昨日夜にクッキー焼きましたの。よかったら食べていってください。是非サムウィル様も食べていってくださいね。」
遠くから見るのと近くで見るのは違う…………。
表情がくるくる変わるリーゼ・ウォレットがかわいくてたまらない。
「あははっ。お前そんなキャラだったんだな。女慣れしてるお前が目も合わせられず…………くっくくっ。」
リーゼ・ウォレットが用意をするため部屋を出ていくとクリスが爆笑した。
顔を真っ赤にしてクリスを睨み付けながら………………自覚があるためなにも言えなかった。