50.王宮1
侍女達に王宮へ行くから「支度はドレスで。」と話したら、にやぁ~と頬を赤く染めながら「わかりました。」と言って「とうとうこの日がきた!リーゼお嬢様を綺麗に念入りに仕上げるぞぉぉぉぉぉぉ!!!!!」「やるぞ!!私たちのうでの見せ所だ!!!!!リーゼお嬢様を輝く宝石にするぞぉぉぉぉぉぉ!!!!!」と叫びながら燃えてた。
そう、これから戦に行くみたいに叫びながら燃えてる…………どこから突っ込めばいいのか……………いつもなら侍女達の声を聞きながら引いたりしてるけど、今日はあの夢のせいか気分的に引くこともなくただボーとされるがままになっていた。
「リィを想ってくれる人達を大切にしなさい。きっと助けてくれるわ。もちろん、私達家族はリィの味方よ。リィを傷つける人は抹殺するわ。」
私の様子を心配したお母様はにっこり笑いながら私を抱きしめた。
お母様怖いです。途中までは穏やかだったのになぜ最後は殺伐としてたんですか。
それだけ想ってくれてるってことは正直嬉しい。
目頭が熱くなる。私は1人じゃない。
「お母様ありがとう。」
ぎゅっと抱きしめ返してお母様の温もりを感じて気分が少し上がった。
「……………………………………………。」
耳元でお母様が私にボソッと呟かれて聞いた私は、顔が真っ赤になっているだろう………お母様今言うことですかぁぁ!
唐突ですーーーーー!!!
ジーと私の目を見て真面目な顔をしているお母様。
いや…………いやわかってますよ。そんな真剣な顔をしないでください。わかってますから…………お母様の気持ちは受け取りましたとこくりと頷いた。
―――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――
ほんと、うちの侍女達は恐れを知らないというか………とにかく馬車に私の荷物を渡すとき私とグレイ様を見てにやにやと………ダメだからね!普通皇太子を見てにやにやと何を想像してるんだか…そういう目的のために学園休んでまで王宮へ行くんじゃないから。
ほんとにもう………仕方のない侍女達だから……でもありがとう。
少しだけ…ほんの少しだけ気持ちが楽になったわ。
「ありがとう。行ってきます。」
感謝を込めながら微笑むと「きゃぁぁぁぁぁ。」と叫びながら涙を流し崩れ落ちる侍女もいた。
いやいやいや、そんな大袈裟な…………。
「リーゼお嬢様お幸せに~。」
…………………なんか結婚して家を出ます!みたいな雰囲気だけど、勘違いしてない!?またすぐに帰ってくるよ?
―――――――――――――――――――――――
―――――――――――――
「リィは侍女達に愛されてるな。」
「ウォレット家に仕えてる者達はリィが大好きだからな。」
私と侍女達のやり取りを見ていたグレイ様とクリスお兄様がクスクス笑いながら私を見る。
嬉しいですよ。もちろん、侍女達に好かれるのは嬉しいです。
けど、時々異常な気がするのは私だけなのかな?
グレイ様が突然私の手を握ってきて真剣な顔になった。
「リィが支度をしている時にクリスから夢の話は聞いた。怖い思いをさせたな。そのことでクリスにも王宮に来てもらうことにした。」
「グレイ様にクリスお兄様がいれば心強いです。」
私の頬をすりっと手で触り、首元のネックレスをグレイ様が触る。
「寝ているときは外しているのか?」
「はい。大事にジュエリーボックスに入れて保管しています。」
「そうか、大事にしてくれてありがとう。だが、今日からは寝るときも身に付けていてほしい。」
真剣な顔で話しているグレイ様にこくりと頷いた。
グレイ様がネックレスのエメラルドの宝石のところを両手で覆うと、柔らかい光に包まれた。
えーーーー!なにこれ!?魔法ですか!?グレイ様魔法使えたのですか!?
光が消えたあと、グレイ様を見るとにっこり微笑んで私を見ている。
「ふっ。リィ口が開いてるぞ。そんなに驚いたか?」
驚きましたよ!!あんなに何年も毎日側にいて今まで使ってなかったじゃないですか。
「グッグレイ様は魔法が使えるんですか?」
「そんな大したことは出来ないが、身を守る魔法とかはな。」
「リィ、ごく一部しか知らないが王家は魔法が使えるんだよ。」
「知りませんでした。今グレイ様の手が光ったのも何かの魔法なんですね。」
「ああ。リィのネックレスに身を守る魔法をかけといたから、肌身離さず付けておくといいよ。」
「凄いですねー!私を守ってくれるネックレス素敵です。ありがとうございます。」
さすがに驚いた。魔術師がいるくらいだからこの世界にも魔法は存在すると思っていたが、こんな身近に…まさかグレイ様が使えるなんて。
「……少し寝るのが怖かったんです。これで今日の夜はゆっくり寝れると思います。」
ネックレスを触りながら笑顔でグレイ様を見ると、なんとも言えない顔をしていた。
えっ!?なにか変なこと言いましたか私!?
クリスお兄様はグレイ様と私を交互に見てプルプルと体が震え笑いが堪えきれずブハッと笑っていた。