4.婚約者
「その感じからすると、、やっぱり私の可愛い可愛いリィはグレイセド王子の婚約者になっちゃったんだね。なると思ってたんだよぉぉぉ。こんなにこんなに可愛い私のリィィィィィ。」
私の前で膝をつき、抱き締めながら大粒の涙を流してる……そう、これがお父様である。
金髪の優しい面持ちで何もしなくてもイケメンな親父の仲間入りなのに、私のことになると残念な親父の仲間入りだ。
ここウォレット公爵家は、私にそれはそれは溺愛でデレデレとなる。
「父上、まだ先のことです。それに状況は変わるかもしれませんよ(王子の不手際で)。もし、リィを傷つけるようなことがあれば容赦しないですが…ね。」
…………お兄様なんだか殺伐としたものも感じるけど無視しよう。
セディオお兄様は、長男で10歳離れてて今は学園に家から通ってるとはいえなかなか会えず寂しい。お母様に似ているセディオお兄様は、私と同じ銀色の髪にお父様譲りの琥珀色の目をしている。
学園でも指折りのイケメンじゃないかな~と推察している。
学園では『氷の貴公子』と呼ばれてるってお母様が言ってたから。
いつか学園でのお兄様も見てみたい。
もう一人私にはお兄様がいるが………………今は触れないでおこう。
ぎゅっぎゅっ。と二人に抱きついた。
「お父様、セディオお兄様、ありがとう。大好きです。」
ふと疑問に思うことは、頼もしい家族。愛されてるリーゼ。客観的に見ると断罪ってあり得ないよね。
よっぽど性格が悪かったのかしら小説の私。。
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「おはよう、昨日はぐっすり眠れたかな?」
えぇ、確かにおっしゃいました。
会いに行くと確かにおっしゃっていましたが、今目の前にグレイ様がいるのは何故でしょう?
いやいやいや、早くないですか?
だって昨日の今日ですよ?
次の日に家に王子様が来るなんて思わなーい。
「おはようございます。 こんな朝早くからどうされたのですか?」
動揺しつつカーテシーをし挨拶をした。
「もちろん、リィに会いたいから会いに来たよ。」
にっこりと私に向けられ、ドキリとする。
言葉と笑顔に興奮……いや恥ずかしさで顔に熱を帯びてしまう。
あぁぁぁぁ、もう朝から刺激が強すぎます。
弱いんだって。グレイ様のお顔弱いんです私。
「あっありがとうございます。申し訳ございません。何も用意していなくて…グレイ様がよろしければお茶でもいかがですか?」
そう、何も用意していないのだ。
だって、今日はお庭で大好きな本を読みながらまったりしようと動きやすいように軽装のワンピースだ。
「話をしたいしお茶頂こうかな。ドレス姿のリィも素敵だけど、軽装も可愛いね。何かする予定だった?」
「いいえ、会いに来ていただいて嬉しいです。」
「う、、、困った。。反則だよ。」
ん?グレイ様の顔が赤い気がする。
今日は暑いのかな?
正装ではないけどラフではないもんね~王子様も大変だ。
グレイ様をジーと見てるとなんか近づいてきて頬に触れた感触でハッとする。
「グッグレイ様!?」
きゃぁぁぁ。さっ触られてる!!
グレイ様の手が私の左頬に触れてることにプチパニック。
家族以外ではこんなスキンシップあり得ないもんね。
「……さっきのふにゃ顔は他の人に見せちゃ駄目だよ。」
「ふっふにゃ顔??」
えっ!?私変な顔してたのかな。。
「………僕と家族以外で笑うの禁止。」
「えっ?笑ったらいけないのですか??」
えぇぇぇぇ!?
そんなに私の笑顔ってやばいの?
美人まではいかなくてもそれなりにはいい方だと鏡見ても思ってた。
いや、確かに笑いながら鏡は見たことない!
くっ、私って笑顔がひどかったのか。
家族からは可愛がられてたけど、、家族フィルターがかかってたのか。
「わっ、、わかりました。なるべく人前では笑わないように気を付けます。」
「うん、お願いだよ。」
グレイ様の手が頬から離れたと思ったら、顔が近づいてきて頬にチュッとキスをされた。
「うきゃぁぁぁぁ………………」
ビックリしてキスされた頬に手を当てて後ずさった。
なのにグレイ様が間をつめてきて、私の手を握る。
「婚約者になったんだからほっぺにキスは普通だよ。会ったら必ずするものなんだよ。」
「そっ、、そうなのですか?知らなかったです。」
無知って怖いな。。
「だから、慣れようね。」
にっこりと微笑んで私の手を撫でているグレイ様は、優しい目で私を見ている。
もうグレイ様やめてください。ドキリとします、その目は。。
その目で見つめられると私のことを好きでいてくれるのかと心が熱くなる。
こくりと頷いて、
「早く慣れるように頑張ります。」
よくわからないが、頑張ることになった。
グレイ様が頑張る宣言をした私を見て満足そうに見つめている。
婚約者になったとしてもいつもキスするのが普通ではないと、私は知るよしもなかった。