32.学園祭5
わかっていたつもりでしたがわかっていなかったです。
学園に着き馬車を降りるとグレイ様にエスコートされ、クリスお兄様を隣に連れてるって相当目立ちます。
降りた瞬間から集中的に視線をいたいほど感じてます。
学園祭の舞踏会はエスコート等不要でエスコートされてる人は婚約者か恋人同士か………と詮索され目立ちますね。
しかも、連れてる二人がクリスお兄様とグレイ様だから目立たないわけない。
怖い怖いです!女性の視線が痛々しく突き刺さる。
一瞬ゾクッとして背筋が凍るような視線を感じる。
えっ?なに今の。
どこからかわからず辺りを見回すがわからなかった。
グレイ様の手をぎゅっと握り顔をあげてグレイ様の瞳を見つめた。
「どうした?顔色が悪いが……。」
「………………背筋が凍るような視線を感じて怖いです。」
私の言葉を聞いてグレイ様とクリスお兄様が辺りを見回す。
「リィ大丈夫だ。今日は俺とクリスが側にいるから離れるなよ。クリス気を付けろ。」
こくりと頷いてグレイ様を見ると、グレイ様とクリスお兄様が見つめあっている…………いやたぶんアイコンタクトで会話してる。この光景を見ても今は自分が怖いからそれどころではない。
とにかくグレイ様とクリスお兄様から離れないようにしよう。
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「リーゼ様、今日は一段と美しいですわ。」
「ほっナージュほま。」
ぎゃぁーーーーー!ナージュ様から声かけられて、沢山頬張っていた私はつい口に含んだまま話してしまった。
………………………………ゴリラみたいになってしまって恥ずかしい。
舞踏会で踊ってもよし、立食を食べてもよしとなると食べるよねー。
自分がしたこととはいえ、グレイ様やクリスお兄様、ナージュ様にくすくすと笑われてしまった。。
なんたる屈辱。
女を磨かなければ………………ゴリラは避けなければ。
「すみません。つい美味しくて沢山食べてしまいました。」
真っ赤になっているであろう顔をナージュ様に向けたら、微笑んでくれていた。
「リーゼ様は一緒にいて楽しいですわね。ふふふ。」
一緒にいて楽しい!!!いただきました。
友達から言われると嬉しいですーーーーー。
「私もナージュ様と話すと気持ちが温かくなります。ふふ。ナージュさ…………………。」
ナージュ様と話してるときに周りが一層ざわざわと騒がしくなった。
周りを見ると皆さんの視線が一点に集中してる。
そこにいたのはピンクの髪の女性…………………………………………………………………ヒロインだ。
周りが驚いてるのは明らかにドレスだ。
濃いエメラルド色のドレスには金色が散りばめられている。
エメラルドの瞳は王族の象徴だ。今は第一王子であるグレイ様しかエメラルドの瞳は存在しない。
それは周知の事実だから、本人であるグレイ様が送られたドレス以外はエメラルド色を避けてドレスを選ぶ。
周りの人がグレイ様とヒロインを交互に見ている。
グレイ様が送ったドレスと思われてるのかな。。
私も知らないだけでグレイ様はヒロインと繋がっていたのだろうか。。
不安だけが膨れ上がっていく………………………が私は信じる!!
「私はグレイ様を信じてます。」
グレイ様の瞳を見てそれだけを伝えた。
「ありがとう。リィが信じてくれたらそれでいい。」
優しく微笑んで私の瞳を見つめてくれた。
はいはいはい。私もグレイ様のその瞳だけで幸せです。
「二人の世界はそこまで。あれを見てもわかるが狙いはグレイセドだな。熱烈にアピールされてるぞ。」
「冗談じゃない、迷惑だ。俺はリィだけでいいんだ。」
グレイ様とクリスお兄様が話しているのを聞いていた周りは、ヒロインがいたい女だと認識したみたいだが、全員がそうではないだろうな。。
「リーゼ様とグレイセド皇太子って信じあって素敵ですね。リーゼ様、あの女性の方に負けないでくださいませ。私もリーゼ様の味方ですわ。」
「ナージュ様。嬉しい……ありがとうございます。」
瞳がぼやけてうるっときたが、化粧が剥がれて化け物となりたくないため、必死に止める………がヤバイ。嬉しさが勝って溢れてきそうだ。
「リーゼ様、少しテラスに行きましょう。」
私の肩にそっと手を添えてテラスへ移動する。
ナージュ様の優しさがまた目頭を熱くした。
うわぁぁぁぁん。泣きそうな私を見られないようにしてくれて優しい人過ぎる。
「ありがとうございます…………。」
「ふふ。ここからの眺めは学園時代の思い出になりますね。」
「学園時代を思い出したときナージュ様との思い出があるって素敵ですね。ナージュ様何故こんなにも私に優しくしてくれるのですか?」
「リーゼ様の内面を知っていくと自然と仲良くなりたいと思えてしまいましたの。周りの皆さんもきっとそう思ってますわ。…………ただ、さっきの女性には気を付けた方がよろしいわ。リーゼ様がいらっしゃるのは周知の事実なのにあの格好で来られるのは宣戦布告ですわ。」
…………………………………ですよねー。
なんとなくそうなのかなぁと思ってましたが………周りから見てもそう思いますよね。
「はい…………。」
「リーゼ様はグレイセド皇太子に愛されているのですから、先程のように信じていればいいのですわ。」
「そうですね。信じる力は何よりも強いですわね。」
ナージュ様と話してると気持ちが落ち着いて勇気が湧いてきた。
「ありがとうございます。ナージュ様。」
にっこり笑顔を向けるとナージュ様の微笑んだ顔がとても綺麗だった。
いやー!私でさえドキドキしちゃう!
きっと男性はこの笑顔に虜にされるんだろうな。
「そろそろ戻りましょう。クリス様やグレイセド皇太子が心配されてしまいますわ。」
頷いて一緒に戻っていると、私の手を後ろから引っ張られ振り向くと男性数名が立っていた。
……えっ?私とナージュ様以外誰もいなかったよね??
「おっと、ウォレット令嬢はこのままここにいてもらおうか。」
誰??クラスの人でもないし上級生??
「誰ですか??離してください。」
「ウォレット令嬢に戻ってほしくない女性がいてね。悪いが大人しく俺達と来てもらう。」
怖い。握られている手が振りほどけない。
怖くて震えてきた………肝心なときに声がでない。
「それにしても初めて間近で見るが、噂以上に綺麗だな。皇太子やめて俺にしなよ。」
近づいて怖いこと言うのやめてください。
嫌だ!触られてる手も近づかれるのも気持ち悪い。