20.大失態
なになに?後ろからの衝撃にビックリして振り返ろうとするが足元の痛みによろけてしまってグレイ様が支えてくれた。
「リィ、大丈夫か?」
いたーーーーーーい!
足首がグキッてなってしまった!
何で後ろから…………避けれなかった。。
「すみません。私が避けられず………あれ?見当たらないですが人とぶつかりましたよね?」
後ろ振り返っても誰もいなくて護衛の騎士が数人いただけだった。
ん?あの衝撃は何だったの?
「ぶつかってきた人は騎士達が対応してるから大丈夫だ。それよりもリィ足に力が入ってないようだが挫いたのか?」
「………………はい。不甲斐ないです。。」
周りの学生達が何事かとざわざわしている。
ヤバイ!入学初日から騒ぎになんてなりたくない。
「大丈夫です。グレイ様の腕をお借りして寄り添って行けば歩けます。」
痛く手が震えてくるのを必死に隠し笑顔を向ける。グレイ様に心配かけたくない。
えっ?
急に私の体が浮いたと思ったらグレイ様にお姫様抱っこされてる。
周りからきゃーーーーっと黄色い声が上がる。
だよね、だよね。急にグレイ様の顔が近づいたから別の意味で私も叫ばないけどきゃーーーーーです。
「グッグレイ様??」
お姫様抱っこに顔が熱を帯びていくのがわかる。
私の言葉を聞いてもグレイ様は抱きしめる力を緩めないどろこか更に強く抱きしめられた。
「リィ、震えるくらい痛いのに我慢は駄目だよ。ねっ。」
優しげな口調で顔は笑ってるけど氷のような冷たさを感じます。
おっ怒ってますか??
「………はい。グレイ様、迷惑をかけてすみません。怒ってますか?」
「リィに怒ってないよ。医務室に行って手当てをしよう。恥ずかしければ顔を埋めてるといいよ。」
こくりと頷いてグレイ様の胸元に顔を埋める。
だって視線が凄いんだもん。
抱っこされる前も手を繋いでたせいか視線が突き刺さってたのに……グレイ様に抱っこされてるだけでご令嬢達の目線が鋭いです。
そうだよね。グレイ様かっこいいもん。
ぱっと出てきた新入生でしかも陰気な私に構ってるから嫌だよね。
グレイ様のファンクラブとかありそうだ。
自分に自信があれば『私のグレイ様に近寄らないで。』と言えるのに…………無理だ。こんな陰気な私は無理だ。
認めてもらえないだろうな………私頑張らないと。
医務室で手当てをしてもらうと先生から「挫いたところが腫れてますので二~三日は歩くのは無理してはいけませんよ。」と学生にとって大変難題を突きつけられた。
学生にとって移動は必ず歩くではないですか!
入学早々欠席ですかーーーーー?!
「俺が移動するときは手伝うから大丈夫だよ。」
えっ??
いやいやいや、グレイ様を使うみたいで…私やばくないですか?
「でも、教室が違うので大変ですから、私ゆっくりでも歩いて行きます。」
「駄目だ!もし痛みが酷くなると動けなくなったとき大変だろ。リィが心配なんだ。」
「グレイ様………ありがとうございます。甘えさせてもらいます。」
にっこり笑ってくれて、私のおでこにちゅっとキスをしてくれた。
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今めっちゃ注目を浴びております!!
朝の登校の比ではありません!
先生方、在学生、新入生から一斉に見られてます。
後ろから入りたかったのに………そうですよね!そうですね!
グレイ様は在学生なので普通に前から入りますよね。
しかも、入学式の会場に皇太子のグレイ様のお姫様抱っこで入場になってます。
学園の歴史振り返ってもこんな新入生いないでしょーーーー!
新入生は後ろの席だけど、何故か私はグレイ様の隣に席が用意されてた。
グレイ様が後ろまでお姫様抱っこして行くのかと思ってたから………余計目立ってます。
怪我をしてるための対応とわかりますが、もう一度言います。
こんな新入生いないよねーーーーーー!!
周りの上級生の視線……特にご令嬢方々の視線が半端なく怖いです。
どんだけグレイ様モテてるんですかー!
わかりますよ、グレイ様は優しいですもんね。
ヒロインもだけど、ご令嬢方々もライバルなんですかー。
私の周りは敵だらけでしょうか!?
皇太子であるグレイ様は一言挨拶するため壇上に上がる。
一人残された私はご令嬢の方々より更に突き刺さる視線を感じ誰が発したかわからないけど「いい気なものね。」とボソッと言われた一言は聞こえた。
こわいこわーい!怖いですーーーーーー!
私これでも公爵令嬢なんですが…………上級生のご令嬢達は怖いです。
隣に座ってた方が「気にしなくていいよ。女の嫉妬は怖いな。」と私にだけ聞こえるくらいの小さな声で呟いたので横を見ると笑顔でこちらを見ていた。
えっ?誰?知らないんですが??
グレイ様の友達の方かなぁ。。と考えてるとグレイ様が帰ってきた。
入学式が終わり教室へ向かうため…………さすがに「歩いて行きます。」と伝えたら即却下され、お姫様抱っこで教室へ移動になった。
さすがに初対面がお姫様抱っこだとこれからの生活に支障がある気がするため、教室前で下ろしてもらった。
グレイ様は席まで行こうとしてたようでしぶしぶって顔にかいてある。
「グレイ様は私に過保護ですね。ふふふ。ここまでありがとうございます。あとはゆっくり歩いて席に行きます。早く教室に行かないと私のせいでグレイ様が遅れちゃうことが心配です。」
「はぁ。そこまで言われるとしかたない。わかった。終わったら迎えに来るからくれぐれも歩き回らないようにな。」
「わかりました。お待ちしております。」
グレイ様の姿を見送り教室のドアを開けると、みんな席についていたのでまた注目を浴びる。
なんてこった!一番目立つ最後ではないか。
恥ずかしがっていてもしかたない。とりあえず席はどこかなぁ~とキョロキョロと探してると一人のご令嬢が近づいてきた。
「ウォレット令嬢の席は私の隣ですわ。」
「ありがとうございます。………サラモンご令嬢ですよね?」
「はい、お久し振りですね。」
「うわぁ。サラモンご令嬢ずっとお会いしたかったのでお会いできて嬉しいです。あの時は……お茶会に誘っていただいたのに行けずすみませんでした。サラモンご令嬢からのお手紙いつも嬉しかったです。クラスもご一緒なんて幸せです。」
「ふふ。ウォレット令嬢は変わらないですね。私も会えて嬉しいですわ。積もる話はまた後でしましょう。足大丈夫かしら?」
あっ!バカだ私。。
嬉しさで一瞬忘れてたけど、ここは教室でみんな席についてる状況だった。
「あっ、ゆっくり歩けばなんとかなります。」
手を差し出してくれて歩く補佐をしてくれる。なんて優しいのぉぉぉ!
サラモンご令嬢いい人健在だよ。心に染みて温かくなるよ。
「ありがとうございます。」
席までゆっくり歩いていると、一瞬挫いてる足に力をいれてしまって「いっ……………。」と小声で言いつつよろめいてしまったが、両腕をガシッと後ろから支えられた。