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朝影をみる  作者: 儘衣 万
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序章

 ずっと怖かったはずの教室が、いざ足を運んでみると自分でも驚くほど何でもない空間だった。響く騒ぎ声も、チョークの粉の匂いも、チャイムが告げる時間の流れも、他人事のようにあっさりと受け入れられた。長年の悩み事は、案外何かのきっかけですんなりと解決してしまったりする。

それに本当は心のどこかで気が付いていた。たぶん怖かったのは学校じゃなくて、僕を独り置き去りにしていく時間だ、――――――――君みたいにね。

横目に見た彼女の席には、花瓶に花が数本挿してあった。

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