#8.5 口の災い転じて破滅と化す
長くなりました┏●
用語解説を1つ2つ入れてあります。
お楽しみ下さい┏●
「いらっしゃいませ。ようこそNIGHT・Curtainへ。こちらへお掛け下さい。」
若い女か。
見た感じ、怨みがあるように見えないし、魂も腐ってない。
酔った勢いで見つけたのか?
「あの!ここって、お酒無いんですか!?」
「大変申し訳ございません。当店は、飲食店ではございませんので・・・ですがお客様。当店に来たと言う事は、怨みがおありでしょう。」
「怨み?怨みなんて小さな言葉じゃ軽いわよ!」
なるほど。
当たりの人間か。
魂の匂いが、どんどん強くなって来ている。
珍しいタイプだな。
「宜しければ、お客様の怨みをお伺い致します。」
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SNSか・・・ニュースでも、この手の事件は耳にするが、そんなに人間が腐る場所なのか。
イエローに聞けば分かりそうだな。
「よぉクロ。この女、もう妖にしたのか?」
「まだだ。誰を担当にしようか迷っていてな。この女・・・・・・・・・」
「なるほどなぁ。女だからって訳じゃねぇし、ガキでもねぇし、大人数でもねぇ・・・って事はクロの担当だろ?」
「そうなるか・・・オーナーが居ないと、無理だしな・・・」
アカと2人で頭を抱えていると、店のドアが開いた。
「いらっしゃいませ。ようこそNIGHT・Curtainへ。こちらにお掛けになって、少々お待ち下さい。」
「その必要は無いの。」
その場に居る者の意識を強制的に引っ張る声。
異様な気配と裏腹な優しげな気配。
表情が読みずらい全身が影の様に真っ黒な姿。
NIGHT・Curtainのオーナーだ。
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「なるほどの・・・確かに担当が居らんようじゃ。それで、儂にどうして欲しんじゃ?」
「この女を、運呪者にしてくれ。」
「瘴気が出ておらんから少し長くなるが、ええか?」
「任せる。」
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運呪者・・・読んで字のごとく、呪いを運ぶ者。
クロ、アカ、ブルー、イエローの様な、魂は死に体は生き、人間の悪感情により腐った魂を喰らい仮初の命を繋いでいる存在。
運呪者になるには、数日間に人間の悪感情を身に受け瘴気が出なければならない。
運呪者は、怨みを抱いた人間を妖に変化させ、その人間と妖が殺した人間の魂を喰らう。
運呪者は人間を妖に変化させた時、妖との間に札を用いて契約を交わす。
この瞬間から、運呪者は1時的に呪者と呼び名が変わる。
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「儂は帰るからの。この子の名前は、モモじゃ。それと、この子にコレをやれ。儂にとってはハズレじゃ。」
そう言うとオーナーは煙のように姿を消した・・・
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「あれ・・・確か怨みとか何とか・・・」
「目が覚めたかモモ。」
「モモ?私の名前は・・・」
「今日から永遠にモモだ。お前の怨みを晴らすため、この店の従業員になってもらった。異論は認めん。」
「そんなっ!困ります!」
「諦めて、モモお姉ちゃん♪」
「こ、子供?」
上から、ブルーとイエローが降りてきてモモに店の事等を教えている。
俺とアカは、オーナーから渡された札を見ながら、
「なぁクロ・・・この札の妖ってよぉ・・・」
「間違い無いな・・・魂燃千だ。」
魂燃千(玉藻前)・・・魂を千回焼き、人間を輪廻の輪から外す能力を持ち、その美貌は1目見た者の魂が燃え尽きる程と言われる。(作者オリジナル解釈)
「あの〜。私、彼を殺しても良いんですか?」
「あぁ。それがお前の初仕事だ。行ってこいモモ。」
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「さすがにSNSで言うのは不味かったですよ・・・」
「まさか見つかるとは・・・でも、僕だって我慢してたんだ。」
僕だって、理想的なイラストが描きたいのに、出来ないから頼んだのに!
危うく、前科持ちになる所だったよ・・・
「お久しぶりですね?先生?」
「へ?えっ・・・何でここに・・・」
「決まってるじゃないですか。先生を殺しに来たんですよ?」
「そ、そんな事・・・あれ?ぼ、僕の担当編集が・・・」
「すいません。つまみ食いしちゃいました。」
怯えてるなぁ。
何で私はこんな男のせいで・・・
私の受けた苦しみの半分でも分からせないと・・・
「先ずは、1の尾で歯を砕いて、2の尾で骨をすり潰し、3の尾で内臓を抜き、4の尾で皮を剥ぎ、5の尾で命を絶つ。6の尾で魂を燃やし、7の尾で再生させ、8の尾で輪廻の輪を壊し、9の尾で永遠に闇に落とす・・・」
「ひ、ひぃ!お願いします、やめてください!」
「怨み恨んで蜜の味、自らの行いを知り我が糧となれ。」
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「ありがとうございます、クロさん。クロさんが、私が寝るまで話を聞いてくれたおかげで、モモとして生まれ変われました。」
「たまたま運呪者になれた。それだけだ。」
オーナーが魂燃千の札を持っていたとはな・・・
モモの話によると、札から出したのでは無く、札の妖と混ざりあった。
オーナーは、俺達の知らない札の使い方を知っているのかもな・・・




