43. 太陽系包囲
■ 12.43.1
前方には直径2万kmほどの巨大な円筒状に布陣した小型戦闘機械の群れが広がっているだけだった。
その中心に居たはずの数十隻からなる敵艦隊が存在しない。
戦闘機群の中に身を隠して罠を張っているのかと思い目をこらすが、辺りを見回す限り敵艦のマーカは見当たらなかった。
「シヴァンシカ、敵艦隊はどこに行った? 罠か?」
AIならば、先ほどまでそこに居たはずの敵艦隊の動向を記録しているはずだ。
達也は油断なく辺りに視線を走らせながらAIに訊いた。
「敵艦隊の現在位置は237, 166, 120kを242, 160, 2000Gにて加速中。当機周囲10万km以内に敵艦影無し。」
「どういうことだ? 意味が分からん。5000m級もか?」
「5000m級敵戦艦BBB01も含め、火星宙域に存在した全ての敵艦が同行動を取っています。」
敵艦隊は地球側の第一機動艦隊とはまるで逆の方向に移動しており、第一機動艦隊を追撃するために移動したという訳でも無さそうだった。
それはまるで自分達突撃救難隊の接近に応じて、敵艦隊が戦場から逃げ出したかのようなタイミングと動きだった。
勿論、そんな筈は無かった。
「ふ。どうやら私たちに恐れを成して逃げ出したようね。」
ナーシャが勝ち誇ったような声を上げる。
「声が震えてるぞ。」
「うっさい。」
ウォルターから突っ込みが入り、いつものバカな会話が戻ってくる。
「気を抜くな。まだ敵軍のど真ん中だ。戦闘機群に包囲されている。」
生き残った皆が冗談を言い合えるのは、火星から迎撃に上がってきた百万を超える戦闘機群を抜け、正面に居る筈の絶対的脅威だった敵艦隊が居なくなっている事もあるが、それよりも後方或いは前方の戦闘機群が彼等を攻撃しようと動いていないことが大きい。
気付けば、敵戦闘機からの攻撃を受けて間断無くストロボライトのように機体のあちこちから光を発していた着弾光も全くなりを潜めていた。
「ニケ05、こちらフェニックス01。聞こえるか?」
何もかもがおかしい。
不審に思った達也は、第一機動艦隊に付随しており、自分達突撃救難隊を管轄していたSPACSを呼び出しに掛かる。
火星周回軌道に陣取っていたファラゾア艦隊と交戦した第一機動艦隊は、もうすでに火星から百万km以上も離れてしまっている。
それは逆に達也達と第一機動艦隊との間に通信を行うための直線が確保できると言うことであり、距離によるタイムラグさえ気にしなければ問題無く会話が出来る筈だった。
果たして十秒ほど経った後に、どこか懐かしくさえ感じるSPACSのオペレータの声がレシーバに飛び込んできた。
「こちらニケ05。フェニックス、どこに居る? 生きてるか? 作戦は成功したのか?」
その間にも達也達突撃救難隊は火星を離れ続けており、ファラゾア艦隊を包むように直径2万kmもの円柱状に布陣していた戦闘機群のど真ん中、ドーナツ状に敵機が存在しない空間、つい先ほどまでファラゾア艦隊が占位していた空間を突き進んでいる。
「パーティハットは一機ロスト。残る一機は俺達と一緒に元気に飛んでいる。スターバックとブーマーは全滅した。フェニックスも残機四だ。
「ところで何がどうなってる? なぜファラゾア艦隊は居ない? 俺達にビビって逃げ出したのか?」
ファラゾア艦隊だけではなかった。
今達也達を包むように外径約2万km、内径約1万km、長さ2万kmの円筒状に陣形を組んでいる数十万のファラゾア戦闘機も、まるで何かから逃げ出すかの様に、本拠地である火星に向かって凄まじい加速で移動している。
つまり、達也達の進行方向とは逆方向に向かって
火星に戻ること以外には何も眼に入らない様に見え、戻りの駄賃とばかり達也達に向かって攻撃を行う機体も居ないようだった。
「酷い損害だったな。居なくなった奴等の冥福を祈る。パーティハットが一機生き残ってるのか。絶対に墜とさせるな。絶対に連れて帰ってこい。
「敵の動きに関しては、こちらも原因を把握していない。数分前、突然火星艦隊があらぬ方向に向かって一斉に加速した。戦闘機も全て泡食って火星に戻ってる。お前達が何かしたんじゃないのか?」
SPACSとの会話の中で生まれる長い待ち時間の間に達也達はすでに火星から十万km以上も離れ、逆行する円筒状の敵機群の中を抜けた。
その間、敵からの攻撃は一切無かった。
敵の行動は全く意味が分からなかったが、生き延びることが出来るなら、文句はなかった。
「いや。俺達は死に物狂いで脱出しただけだ。敵が一目散に逃げ帰るようなことは何もしていない、筈だ。」
「ホント全然撃ってこないねえ。もしかしてこっちから撃ち放題?」
どうやら本当にこちらを攻撃する気が全く無いらしい敵の動きを見て、余裕が出てきたのかジェインが言う。
「やめろ。絶対こっちから手を出すな。」
「見敵必戦、ファラゾア絶対コロスなアンタにしちゃ、珍しいこと言うじゃん?」
「この状態でこれ以上戦えるか。もう一度囲まれたら、確実に全滅するぞ。」
達也の機体は一切の誇張抜きでまさに満身創痍、レーザー砲も3/4が潰され、まだまともに飛んでいるのが奇跡のような状態だった。
それは達也の機体だけではなく、他の機体にしても似た様な状態だった。
ジェインの言うとおり、ファラゾアを墜とすことに何よりも執着している達也にしてみれば、目の前に数十万の餌をぶら下げられたような状態ではあった。
しかしそれも生きていればこそ、だ。
命あっての物だねとは、正にこのことだった。
「ニケ05、こちらフェニックス01。撃たれまくって機体がボロボロだ。とても地球まで保たん。ジブラルタルに着艦したいが、いけるか?」
何といっても達也の機体は、コクピットを護るキャノピが吹き飛んでいた。
往路と似た様な航路で地球に帰還するのであれば、この状態のまま太陽の近くを飛びたいとはとても思えなかった。
他にも機体中穴だらけで、電磁シールドなどとうに破れている。
太陽からの強烈な電磁波でどんな誤動作をするか分かったものではなかった。
ファラゾアの電子戦機からのハッキングを受けなかったのは、ただ単に運が良かったとしか言い様がない。
「フェニックス、着艦可能だ。ただ、タカシマのシエンはデカすぎて艦載機ポートが使えん。アレスターを使わず貨物搬入口からの引き込みになる。問題無いか?」
「ああ。着艦できるなら何でも構わん。ただ、機体はできるだけ持ち帰るように言われている。」
達也達の乗る紫焔にはAIが搭載されており、トップエースである達也達666th TFWのパイロット共に空前絶後の激戦をくぐり抜けてきたAIの学習データは、他で得ることが出来ない貴重な物だった。
日本に居る間も、そしてドテルンハウゼンに戻った後も、高島重工の技術者や666th TFWの整備兵達からも、とにかく機体を放棄せずに基地に持ち帰るように、耳にタコができるほど繰り返し言われていた。
機載AIの便利さとありがたさは、共に戦えば戦うほど身に染みて理解できた。
今後開発されるであろう多くの機体にAIが搭載されて行くであろう事を考えると、その礎となるであろう紫焔のAIとその学習データが極めて貴重なものであることは理解できた。
「それはジブラルタルも諒解している。艦隊司令部から指示が出ているそうだ。食料コンテナを幾つか放り出してでも格納すると言っている。」
「ありがたい。艦長によろしく言っておいてくれ。」
「諒解した。第一機動艦隊とのランデブー航路が出た。データ送る。最後の最後でズッコケるなよ。」
「フェニックス01、諒解。」
タイムラグはあるもののクリアな直線が確保できているため、SPACSから送信されたデータは問題無く航法システムに読み込まれ、HUDとHMDに航路情報が表示された。
ヴィルゾーヴニルを含めた他の機体にも同様にデータが届いたはずだ。
「救難隊全機、あとひと頑張りだ。第一機動艦隊とランデブーする。送信された航路情報に沿って加速する。全機データ格納は終わったか?」
生き残っている機体のパイロット達が口々に肯定の返答をするのが聞こえた。
「脚をやられて追従できない奴は? 居ないな。OK、カウント5で加速開始。5、4、3、2、1、GO。」
達也はとりあえず手動で加速を開始した。
「シヴァンシカ、現在アクティヴになっている航路情報を追従。後は任せた。ユーハヴ。少し寝る。何かあったら起こせ。」
「諒解。アイハヴ。現在アクティヴな航路を実行。第一機動艦隊とのランデブーは約80分後。タツヤ、お疲れ様。」
AIの応答を聞きつつ、達也は大きく息を吐き出しながら全身の力を抜いて身体をシートにあずけた。
何時間も緊張を続けて操縦桿とスロットルを握っていた肩が痛い。
流石にもう、十代の頃の様な疲れを知らない身体ではない。
長く酷い戦いだった。
間違いなく、自分史上最高の撃墜数を叩き出しただろう。
今度こそ生きて帰れないだろうと覚悟もした。
また何人も死んだ。
だが、自分は生き残った。
それで充分だった。
疲れを自覚するとにわかに軽い頭痛を感じる上に痺れて重くなったような頭で、AIとの最後の会話に僅かな違和感を感じながらも、それがなんなのかを突き止める気力も無く、達也は意識を手放した。
■ 12.43.2
前線で戦っていた艦隊とそこに搭乗する将兵は、戦いを終えてあとは周囲を警戒しながら帰路につけばそれで良かった。
しかしその艦隊の行動を指揮し戦略を考えている司令部は、艦隊勤務の将官と同じ様に休むわけにはいかなかった。
とりわけ完全に優勢であったはずの敵艦隊が、艦隊戦の後に離脱する第一機動艦隊や相当に目立つ行動をした筈の突撃救難隊を追撃もせずに、それどころかあらぬ方向に向かってほぼ全速で移動し続けているとなれば、気が休まろう筈も無かった。
当然のことながらこの第二次火星侵攻作戦「ジョロキア」実行中は、地球連邦軍参謀本部の主立ったメンバー全てが地下に造られた中央司令室へと詰めて、固唾を飲んで戦いの行方を見つめていた。
その地球連邦軍の重鎮が皆揃っている目の前で、ファラゾア艦隊が意味不明な行動を取ったのだ。
火星周回軌道上に展開して地球連邦軍の第一機動艦隊と戦ったファラゾアの主力艦隊のみならず、燃料補給中であったと思われる木星駐留艦隊もまた時を同じくして突然移動を始め、火星駐留艦隊と合流した上で宇宙のどこかを目指して0.2光速で太陽系内を移動し続けている。
地球艦隊との戦いに恐れを成して逃げ出した、などということは有り得なかった。
そもそもが敵艦隊の方が戦力的に優勢であり、ごく短時間だけ行われた艦隊戦の結果も地球側は負けなかったというだけで、明らかに劣勢であったし、だいいち逃げ出すにしてはタイミングがおかしかった。
とするとあとは、何らかの突発的重大な問題があってファラゾア艦隊は火星軌道を離脱しなければならなかったということになるが、それが何か全く不明だった。
月軌道にまで衛星を展開して精度が大幅に上がったGDDDSが、全球全周を眼を皿のようにして異常は無いかと探査しているが、ファラゾアがこれほどにも過敏な反応を示すような何かは、まるで見つけることが出来なかった。
敵艦隊が取った意味不明な行動の理由が全く分からず皆がモヤモヤとした感情を抱いたまま、火星侵攻作戦を終えて帰還する第一機動艦隊の針路と、泡を食ってどこかに向かっているファラゾア艦隊の針路がまるで重ならない方角であるので、とりあえず緊急の事態がすぐに発生することはないと、中央司令室に詰めていた連邦軍高官は一旦皆解散して自分の職場へと戻っていった。
その事態が急転したのは、ファラゾア艦隊が意味不明な行動を開始した約半日後のことであった。
第二次火星侵攻作戦はこのまま終わりを迎えることがほぼ見えては居たものの、現時点での最大の脅威であるファラゾア艦隊が猛ダッシュで移動する理由が分からず、地球連邦軍参謀本部は今だ警戒態勢を保ち、作戦実施中の配備であることを示すコンディション・レッドを保っていた。
中央司令室のオペレータは三交替のシフトを敷いて、全てのコンソール前に常に誰かが座り、状況を監視しつついつでもすぐに必要な指示を出せる状態にあった。
彼等オペレータに指示を出す将官達も参謀本部に泊まり込み、自室か或いは仮眠室で休憩を取っては再び中央司令室に詰めるという行動を繰り返しており、皆徐々に疲労が蓄積しつつもまだあらゆる事態に備えての即応体制を保っている状態であった。
「報告! 太陽系外縁部に大規模重力反応! GDDDSによる探知! 太陽系標準座標系(Sol Standard Cordinate:SSC)にて、000, 091, 14B。太陽北方直上、距離140億km。約十三時間前の情報です。」
突然オペレータの叫び声のような報告が司令室内部に響き渡り、疲労の蓄積したどことなく気怠い空気が流れ始めていたそれまでの室内の雰囲気が一変した。
「規模は分かるか? ファラゾアの増援か? 外縁の例の艦隊に動きは?」
過去幾度となくファラゾアの増援と思しき宇宙船の大艦隊が太陽系に侵入を試みていたことは、この中央司令室に詰める者達にとって常識の知識であった。
そしてそれら侵入を試みた艦隊が全て太陽系外縁部で謎の太陽系防衛艦隊によって尽く撃破されたことも。
さらにはただ一度だけ、ファラゾアと敵対している第三の勢力の艦隊が太陽系内に侵入して、海王星軌道の外側でファラゾア艦隊と激しく戦い、全滅したという事実も。
ファラゾアの増援であれば、太陽系外縁に静かに陣取っている通称太陽系防衛艦隊がまた動いて迎撃してくれるものと思われるが、もしかしたら今回は何らかの事情で動かないかも知れなかった。
やっとここまで削ったファラゾア艦隊が、大幅に増援されるならば地球人類に滅亡以外の未来は無い
或いは以前艦隊を全滅させられた第三勢力が、その報復攻撃とばかりに数を揃えて太陽系に侵攻してきたのかも知れなかった。
もしそうであれば、太陽系は三つ巴、四巴の混沌とした戦場と化する恐れがあった。
しかもその四つの勢力の中で、あろうことか原住種族である地球人類は最弱の一派なのだ。
「太陽系外縁艦隊に今のところ動きはありません。出現した艦隊の規模は不明。データ積算中。」
現在の役職に着任してまだ一年足らず、いまだ新任と言って良い地球連邦軍参謀総長のブライアン・イシャーウッドは外面の平静を保ちながらも内心では頭を抱えていた。
今報告されている上方は140億km、13光時の彼方。
即ち13時間も前に発生した事態であり、その情報が地球に到達するまでの間にすでに大きく動いている可能性が大きい。
そもそもこの事態に対応しようとて、地球人類が保有しているのは、戦いを終えたばかりの疲弊した機動艦隊がただひとつ。
機動艦隊とは名ばかりの、ファラゾアの3000m級戦艦ただ一隻とさえ戦って打ち負ける程度の戦力でしかなかった。
そしてオペレータが報告する詳細情報は中央司令室全体を震撼させるにたるものだった。
「不明艦隊概要出ました。3000m級以上と思われる大型艦艇二百以上、その他艦艇合わせて約一千隻規模と推定。精度向上のためデータ引き続き積算中。」
その報告に司令室全体を悲鳴のようなざわめきが埋める。
多分ファラゾアの艦隊は、この艦隊の到着を知ったからあの意味不明な行動を取ったのだろうと、ブライアンは理解した。
ファラゾアが重力波か或いは光学以外の、何か光速を越えて遠距離の敵を探知する手段を持っているであろうことは、以前の第三勢力の艦隊が太陽系内に侵入した時の彼等の反応から推測されている。
偵察用のドローンを太陽系外縁部に設置しておき、探知情報を超光速通信で送信すれば良いだけだ。
ファラゾア艦隊があのような行動を取ったということは、この艦隊は多分連中の敵だろう。
千隻もの艦隊が、残り百隻を切っているファラゾアの艦隊を蹴散らしてくれるのは構わない。
だが、敵の敵は味方だという保証なんてどこにも無いのだ。
ただ単に第三勢力がファラゾアに置き換わり、より酷いことにならないと、誰が言える?
ブライアンは、壁面の大型モニタに映し出されたGDDDS探知情報を苦々しく睨み付けた。
「別の大規模重力反応・・・え?」
「どうした?」
オペレータの声がおかしな具合に途切れ、ブライアンは思わず声を上げていた。
千隻もの艦隊が太陽系外縁にワープアウトしてきただけでも一大事である上に、さらに何か不測の事態が発生している嫌な予感がした。
「さらに大規模重力反応! SSC 000, 181, 14Bと、SSC 032, 000, 14B。太陽南方直上と、黄道面上にもほぼ同規模の重力反応です! 艦隊詳細はデータ積算中。
「北方の艦隊をUF01(Unknown Fleet)と命名。南方をUF02、太陽黄道面上のものをUF03とします。
「UF01詳細出ました。約五百隻が太陽系中心部に向かって約2000Gで加速中。五百隻が外縁部に留まっているものと推定。太陽系外縁艦隊に動き無し。」
「多分、あと三つ来ますね。」
何の衒いも無い、冷静で物静かな女の声が脇から聞こえた。
ブライアンは思わずその声の方を振り返る。
エレオノーラ・カレンバーグ。
ブライアンが参謀総長に就任したとほぼ同時期に、参謀本部長に指名されたのが彼女だ。
冷静にして厳格。冷徹、そして堅実。
そのような言葉を幾つも並べると彼女の性格を表すことになる。
そんな女だった。
つまり、極めて優秀な軍人ということだ。
「なぜ分かる?」
「ファラゾアの戦力がもう弱り切って残り少ないのを知ってなお、一方向につき千隻もの艦隊を送り込んで来たからです。どうやら彼等はファラゾア艦隊を確実に殲滅したいらしい。ならば六方向からそれぞれ充分な数を送り込んで、逃げ場を無くして磨り潰す必要がある。という訳であと三方向、それぞれ同じ規模の艦隊がワープアウトしてくるはずですよ。」
得意げになるわけでもなく、問いを発したブライアンに冷静な視線を向けて彼女は淡々と言った。
頷くでも無く、かと言ってさらに問いを発するでも無く、ブライアンはエレオノーラから視線を外して再び壁面大モニタに視線を戻した。
「さらに大規模重力波を探知! SSC 122, 000, 14B。同様の艦隊と推察。UF04と命名。」
数分後、オペレータの声と共に、UF03からちょうど90度の方向の太陽黄道面上に新たな艦隊が現れ、モニタ上に不明艦隊を示す黄色のマーカが表示された。
ブライアンは再びエレオノーラの方を振り向いたが、得意げになるわけでもなく、ごく冷静に頷く彼女と眼が合っただけだった。
そしてしばらく経ってさらに新たな大規模重力反応が探知された。
その日、第一機動艦隊による火星侵攻作戦と併せて実施された救出作戦が大成功に終わり、火星に取り残されていた兵士達が無事保護されたという地球連邦政府の発表に世界中が湧いた半日後、太陽系は千五百隻もの3000m級戦艦を含む、六千隻からなる未知の艦隊に完全に包囲されたのだった。
いつも拙作お読み戴きありがとうございます。
やっと「ジャンル:宇宙」らしくなってきました。