表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
A CRISIS (接触戦争)  作者: 松由実行
第一章 始まりの十日間
3/405

2. 偶発的衝突


■ 1.2.1

 

 06 June 2035, Seymour Johnson Air Force Base, North Carolina, United States

 A.D.2035年06月06日,米国ノースカロライナ州、シーモアジョンソン空軍基地

 

 

「こちらSJコントロール。004TFW、アーチャー、応答せよ。」

 

「こちらアーチャー1。感度良好。」

 

「SJコントロールよりアーチャー。緊急、緊急、緊急。大西洋上に未確認の高速飛翔体。数三。防空識別圏に侵入。東海岸に接近中。コードU。繰り返す。コードユニフォーム。

「アーチャー、追跡せよ。方位08、針路24、速度M8。距離480、高度650。160秒後にコンタクト。データ送る。目視にて確認後、外観を報告せよ。」

 

「SJコントロール。こちらアーチャー1。速度M8と言ったか? 弾道弾か何かか?」

 

「アーチャー1。こちらSJコントロール。違う。大気圏内を水平飛行している。新型ミサイルの可能性あり。」

 

「SJコントロール。こちらアーチャー1。コードユニフォーム。方位08、針路24、速度M8。距離480、高度650・・・なんだって? 65000ft? 冗談だろう?」

 

「アーチャー1。残念ながら冗談ではない。高度650だ。」

 

「SJコントロール。現在の高度は32000ftだ。今から二分そこそこで65000まで上がるのは無理だ。他の部隊に言ってくれ。」

 

「アーチャー1。貴隊がコードUに最寄りの部隊だ。周囲1000マイル以内に他に高度600まで上がれる機体が無い。厳しいだろうが、最善を尽くせ。」

 

「正気か? SJコントロール。高度600まで180秒だ。追いつけない。」

 

「アーチャー1。悪いが正気だ。同高度まで上がる必要は無い。最低限外観が確認出来れば良い。」

 

「クソッタレが。こっちゃ朝から訓練した帰りで疲れてるってのによ。アーチャー1より各機。本隊はこれよりコードUに対してインターセプトを掛ける。旋回。針路08。パワーミリタリー。ヘッドオン。全機遅れるな。」

 

「アーチャー2、コピー。」

 

「アーチャー3、コピー。」

 

「アーチャー4、コピー。」

 

「アーチャー5、コピー。」

 

「アーチャー。発砲許可が出た。相手が敵対的行動をとった場合には撃墜せよ。」

 

「アーチャー1、コピー。」

 

「おっほ。発砲許可だとよ。マジか。」

 

「AIDZ(防空識別圏)にはもう入り込んでんだ。このまま行けばじきに領空侵犯になる。当然だ。」

 

「浮かれるな。撃てば撃ち返される。落ちるのは自分の方かも知れない。忘れるな。」

 

「撃ち返されるのか? ミサイルじゃねえのか? (Air )空機(Craft)はあの高度飛ぶの無理だろ。」

 

「スクラムジェットエンジン積んでいれば行ける。油断するな。」

 

「ロシアの新型偵察機じゃねえ?」

 

「海の方から来てんだろ? マッハ8とか、有り得ねえだろ。X43かよ。俺っちF41じゃマッハ3しか出ねえんだぜ。すれ違った後、どうやって追い付くんだよ。」

 

「てめえ等、ガタガタ騒いでんじゃねえ。もうすぐだ。各機確認。レーダーブースト。火器装填確認。残弾確認。火器管制レッド。コードU、方位09、ヘッドオン。30秒ですれ違うぞ。」

 

「レーダーブーストでも敵が見えない。リンクデータだけだ。なかなかのステルスだ。」

 

「アーチャー3。まだ敵と決まったわけじゃ無い。」

 

「アーチャー。こちらSJコントロール。目標と接触まで20秒。」

 

「アーチャー1、コピー。アーチャー1より全機。目標は右上方を飛び抜ける。よく見ていろ。」

 

「あれか? 随分小さくないか?」

 

「SJコントロール。こちらアーチャー1。目標はデルタ編隊で本隊右上空を通過中。白くて、小さいな。ミサイルの形ではない。戦闘機にしては小さすぎる。なんだあれは。新型の無人機か?」

 

「飛行機雲引いてないな。あの大きさでマッハ8だと? 燃料どうなってんだ?」

 

「全機、追うぞ。ついて来い。SJコントロール、こちらアーチャー1。目標とすれ違った。現在追跡中。」

 

「ん? 向きを変えた?」

 

「目標が進路変更した。こっちに来るぞ。なんだありゃあ!?」

 

「SJコントロール。こちらアーチャー1。目標が進路変更。相変わらずレンジに目標は映らない。リンクデータ大丈夫か? そっちでガッチリ捕まえているか?」

 

「アーチャー。反応は小さいが、こちらのレーダーでは何とか捕らえている。針路12。速度M3。反転を確認した。注意せよ。」

 

「SJコントロール。目標は進路変更したが、旋回しなかった。」

 

「アーチャー1。何を言っている? 分かる様に話せ。」

 

「目標は一瞬で針路24から12に変わった。一瞬だ。分かるか? 旋回しなかったんだ。」

 

「アーチャー1。こちらSJコントロール。了解した。言いたい事は分かった。注意せよ。」

 

「ホントに分かってんのかよ?」

 

「ムーディ! おい、ムーディ!!」

 

「アーチャー5。操縦不能。クソ! どうなってる? 右翼が無い。やられた! 脱出する。イジェクト、イジェクト、イジェクト!」

 

「ムーディがやられた! 畜生!」

 

「アーチャー、全機ブレイク! ブレイク! エンゲージ!」

 

「クソ! やりやがったな!」

 

「どうした。アーチャー。状況を報告せよ。」

 

「いきなりムーディがやられたぞ! ミサイルか!?」

 

「違う。アーチャー5はいきなり火を噴いた。レーザーだ。」

 

「アーチャー3。回り込まれている。降下しろ。」

 

「どこだ? 見えない」

 

「SJコントロール。こちらアーチャー1。目標と交戦状態に陥った。アーチャー5が落ちた。」

 

「アーチャー。撃たれたのか? アーチャー5はどうなった?」

 

「アーチャー2。後ろだ! ブレイク!」

 

「撃って良いんだよな!? 全滅しちまうぞ!」

 

「後ろに付かれた! なんだこいつら!」

 

「撃て。発砲許可は出ている。」

 

「アーチャー。状況を報告せよ。撃たれたのか?」

 

「うるせー。撃たれたつってんだろクソが。アーチャー3、FOX2、FOX2。」

 

「アーチャー1。気をつけろ。右に居るぞ。」

 

「アーチャー1。FOX2、FOX2。」

 

「アーチャー1、ブレイク! ブレイク!」

 

「アーチャー4、下だ! 気をつけろ!」

 

「クソ! 外した。横滑りさせやがった!」

 

「アーチャー。状況を報告せよ。撃ったのか?」

 

「ダメだ。直前で回避された。」

 

「アーチャー2、FOX2、FOX2。」

 

「アーチャー3、そのままだ。」

 

「後ろかクソ!」

 

「アーチャー3、カバーする。」

 

「そいつは俺がやる! FOX3。クソ、外した!」

 

「ミサイルが反応しないぞ! どうなってる?」

 

「アーチャー2、左だ。回り込め。」

 

「アーチャー3、FOX2、FOX2。」

 

「アーチャー4、FOX3。なんでだ!? 当たってる筈だ!」

 

「アーチャー3、ブレイクしろ。後ろに居る。」

 

「アーチャー4、FOX3。クソッタレ、なんで落ちない!?」

 

「アーチャー1、FOX3。ビンゴ! 一機撃墜だ。」

 

「コイツを何とかしてくれ! 後ろだ!」

 

「てめえ等、落ち着け。よく見ろ。曲がるのが早いだけで、こいつら案外トロいぞ。ミサイルはまともに当たらない。ガンで狙え。」

 

「コイツは上から押さえる。アーチャー4、やれ!」

 

「アーチャー4、FOX3。ダメだ。落ちない。」

 

「俺がもらう! アーチャー2、FOX3。クソ、外した。」

 

「散々つきまといやがって、このクソ野郎! FOX3! ビンゴ!」

 

「あと一つだ。アーチャー2、上から押さえろ。」

 

「アーチャー3、回り込む。おっ?!」

 

「の野郎!」

 

「アーチャー4、深追いするな。敵はもう逃げている。」

 

「速ぇえなおい。もうあんなところにいやがるぜ。」

 

「誰かアーチャー5がどうなったか知っているか?」

 

「ベイルアウトは成功してたみたいだが。パラシュートまでは確認していないな。」

 

「捜索する。全機3000ftまで降下する。」

 

「アーチャー2、コピー。」

 

「アーチャー4、コピー。」

 

「アーチャー3、コピー。」

 

「アーチャー。こちらSJコントロール。状況を報告せよ。交戦したのか?」

 

「はぁ!? ふざけんな、そんなの聞いてりゃ分かる・・・」

 

「やめろ、ボウルマン。SJコントロール、こちらアーチャー1。相手側からの先制攻撃を受けてアーチャー5が被弾、墜落した。そのため、防御行動をとった。敵性未確認飛翔体(Hostile Unidentified Flying Object)3機と交戦。2機を撃墜した。当方の損害はアーチャー5一機が撃墜。パイロットの生死不明。今から確認する。」

 

「アーチャー1。状況は理解した。HUFOの外観は確認出来たか?」

 

「確認した。ガンカメラとアイカメラにも映像が記録されているはずだ。全長5~6m程度の本体の両脇に突起物が付いた様な形だった。もっとも特徴的だったのは、ジェットノズルが無かったことだ。もちろん、プロペラなんてものも付いてはいなかった。」

 

「・・・了解した。以降の通信はスクランブルを掛ける。詳細な報告は基地に戻ってからだ。アーチャー5捜索を続行せよ。」

 

「アーチャー1、コピー。」

 

 

■ 1.2.2

 

 

 アーチャー5のコールサインで呼ばれ、未確認飛行物体からの攻撃にて墜落したアレキサンドル・スティーブンセン中尉はこの後、ノースカロライナ沖の大西洋で無事救出された。

 

 アーチャーことモーガン・ピアース大尉は、数ヶ月にわたって本件に関する取り調べを受けた後、トルコ共和国にあるインジルリク空軍基地に転属となり、その後それ程間を置かず現地で除隊したと記録されている。

 

 ノースカロライナ沖で行われた本戦闘は、2028年に1号機がデビューしたばかりの米空軍F-41エストック戦闘機が関与した事実上初の空中戦となったのだが、この戦いは公式の記録に一度も記載される事は無かった。


 拙作お読み戴きありがとうございます。


 米軍のコールサインですが、本来なら固有のコールサインかと思います。名前が二種類入り乱れるのもあれかなと思ったので、隊長機=部隊名とし、部隊名+数字でコールサインとしています。

 ・・・M3.0も出る機体なら、ズーム上昇すれば100秒位で25000mまで上がれそうな気もしますが・・・計算してないのでなんとも言えません。済みません。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ