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A CRISIS (接触戦争)  作者: 松由実行
第九章 TACTICAL PROJECT 'BOLERO' (ボレロ)
234/405

15. 真打ち


 

■ 9.15.1

 

 

「私個人で言うなら、ここも案外悪くないものだよ。もっとも、参謀本部のスタッフは早くどうにかして欲しい、と思っているだろうがね。」

 

 そう言ってフェリシアンは仮住まいの部屋を訪れたヘンドリックとトゥオマスにソファを指して座るように勧めながら笑った。

 フェリシアンが指した先には、部屋は違えども同じ配置に置かれたソファとテーブルのセットと、同じ位置に座るいつものメンバーが笑いながら二人を見上げていた。

 

 地球連邦軍参謀本部襲撃事件から一週間、突入した兵員輸送トラックに詰まれていた火薬の爆発により、一階がほぼ使用不能な状態となり、また爆発によって建物のあちこちに歪みが出てしまったビルディングは、軍と警察による現場検証を終えた後に取り壊されて新たに建て替えられることが決定した。

 米国東部地域の放射能汚染と送電不良によりNYCの国連ビルが事実上使用できなくなり、国連本部がここストラスブールに移転されることが決まった時に、同時に国連軍の主要機能もストラスブールに集約されることが決まった。

 その決定に合わせて必要充分な大きさを持った専用新築ビルを用意するのは工期的に不可能であったため、多くの国連軍組織は欧州連合(EU)の様々な組織が利用していた建物を譲り受けて利用することとなり、例に漏れず国連軍参謀本部に対してもEU通商部が使用していた建物があてがわれたのだった。

 その建物は参謀本部の機能を全て格納するには少々狭すぎたのであるが、地球外から来襲した未知の侵略者ファラゾアに国連軍が中心となって対抗する流れが出来上がりつつあった当時、国連軍参謀本部で処理せねばならない案件が日を追うごとに膨れ上がり、どこでも良いのでとにかく参謀本部をまるごと収納できる場所に速やかにオフィスを開いて、スタッフに一刻も早く仕事を始めさせなければならなかった、というかなり切迫した理由により、建物の容量や構造に存在する少々の問題には目をつぶることとなり、先日まで参謀本部が使用していたかの建物に入居が決まったという経緯があった。

 

 しかしその建物も今回のテロリズム騒動でほぼ廃ビルとなってしまった。

 折良く、国連軍から地球連邦軍に「出世」した彼等の組織を、四軍ひとまとめにして格納して機能と見栄えの向上を図るための巨大な地球連邦軍本部ビルがストラスブール空港近くに建築中であった。

 あと半年ほどで完成するそのビルの完成を待って、宿無しとなった参謀本部は一番乗りで移転することが決まったのだが、それまでの間は地球連邦政府と連邦陸軍の二箇所に別れて間借りし、大きめの会議室を幾つか占拠した上で全てのオフィススタッフをぎゅうぎゅうに詰め込んで耐え忍ぶ事となったのだった。

 

 しかし参謀総長であるフェリシアンは、超過密状態の大部屋で高ストレス状態に置かれている一般職員を尻目に、その役職上、連邦政府ビルの中に小振りな会議室をひとつまるごと個人で使用するオフィスとして与えられていた。

 以前のオフィスに比べれば一回りほど小さくなってしまった部屋ではあるが、隣の席と肘を突き合わせながらまるで昼食時の下町の食堂のような超過密状態で業務を行っている他の一般職員に比べれば、文字通り天国と地獄ほどの差がある環境であった。

 

 役職上当然と言えば当然なのだが、しかしそんな優遇された環境で「案外悪くない」と言われてもな、とヘンドリックはあやふやな苦笑を返した。

 

「何より、議長のオフィスが近くなったのは便利だ。新しいビルに移るのが億劫になってしまいそうだよ。」

 

 そう言ってフェリシアンはさらに笑った。

 議長とは、地球連邦最高会議の議長のことだ。

 地球連邦はいわゆる議会制民主主義の形態を取っており、各国の代表が参加する最高会議の長が連邦政府のトップである。

 軍事、内政を含めたあらゆる事柄に関して、連邦最高会議の決定事項は、連邦最高会議長名で施行される流れとなっている。

 

「さて、冗談はさておき、調査結果を聞こうか。」

 

 ソファに身体を沈め、真面目な顔に戻ったフェリシアンがヘンドリックに鋭い視線を向けた。

 ヘンドリックは持って来た書類鞄から分厚い報告書の束を二つ取り出して、テーブルの上に置きながら勧められたソファに腰を下ろす。

 

「詳細な内容は報告書にあります。結論から言うと、今回の襲撃者は全員がチャーリー、即ちファラゾアに生体プロセサを埋め込まれた地球人であったと思われます。」

 

 同様に鋭い視線を返しながら、ヘンドリックはフェリシアンに言った。

 

「『思われます』?」

 

「襲撃者は全て合わせて四十六名。内、トラックの爆発で吹き飛んだと思われる一名と、戦闘で頭部を破壊された者の内二名については調査不能でした。残り四十三名の脳内に生体プロセサ(Bio Processor Unit:BPU)が確認されました。よって四十六名全員チャーリーであったと推察されます。」

 

「確定だな。」

 

「そうですね。間違いなく全員チャーリーでしょう。」

 

「まあ、それは粗方予想が付いていたことだ。問題は、なぜ奴等はこんなバカな襲撃をしたのか、だ。」

 

「愚かしくないテロリズムというのもなかなか存在しないと思いますが?」

 

 フェリシアンの発言に対して、ヘンドリックが少々皮肉の効いた質問を投げた。

 秘密会議も回数を重ね、メンバー間にはかなり親密な関係が築かれている。

 職業柄か、ヘンドリックや情報部長であるフォルクマーは辛辣な物言いをすることが多い。

 

「違う、違う。計画がずさん過ぎる、と言っているんだ。まず第一に、参謀本部なんぞ襲撃されたところで我々は痛くも痒くもない。私を含め全員が死亡したとしても、確かに一時的な混乱は発生するだろうが、それだけだ。代わりは幾らでも居る。そもそも、我が軍の戦力には傷一つ付いていない。参謀本部を襲撃するくらいならば、グダニスクかキールの造船所でも襲撃された方が余程手痛い損害となる。少し考えれば分かることだ。

「参謀本部を狙うというのは要するに、『偉い奴を殺せ』程度の短絡的思考でしかない。」

 

 古くから造船の街として栄えたグダニスクは、現在その機能をフル稼働して潜水機動艦隊を構成するための潜水艦を製造し続けている。

 同じく造船の街キールでは、ギガントマキアに対応した別の新規プロジェクトが進行中である。

 重要な軍事拠点であるので当然それなりの厳重な警戒を敷かれてはいるが、万が一これらの造船所や工業地帯が大きな被害を被る事となれば、現在進行中の戦略あるいは戦術レベルでのプロジェクト進行に大きな影を落とすこととなる。

 

 成る程突き詰めれば確かにその通りだ、とヘンドリックは納得した。

 参謀総長の替えなど幾らでもいるが、造船所はそう簡単に替えが効くわけでは無い。

 

「襲撃者達のバックグラウンドは? 調べたのだろう?」

 

 情報部長のフォルクマーがヘンドリックに尋ねた。

 

「ええ、当然。軍人、民間人関係なしですね。人種も、イラン人から中国人、果てはメスティソからアフリカ系の黒人まで、連中の勢力圏のあらゆる場所から掻き集めた、という感じですね。」

 

「ふむ。メスティソにアフリカンか。予想の上を行ったな。別の大陸からわざわざ持ち込んだのは何故か。或いは、全て集約されていて、適当に選んだらそうなったか。」

 

「そこは解りませんね。一応予想は立てていますが。」

 

「ほう?」

 

「トゥオマス。」

 

 フォルクマーが片眉を上げて先を促すと、ヘンドリックは横に座るトゥオマスを指名した。

 発案者から直接説明した方が良いだろうという判断だった。他の者が説明したのでは、微妙なニュアンスが異なってしまうかも知れない。

 トゥオマスは軽く頷くと、部屋の中に居る四人を一度見回してから口を開いた。

 

「あくまで、周辺の状況を踏まえた上での私の想像である、という事を先にお断りしておく。この四十六人は、現時点での『精鋭部隊』であろうと思われる。」

 

「精鋭部隊? 民間人も混ざっているのではなかったか?」

 

「そういう意味ではない。正確に言うならば、『現時点で、一番ファラゾアの言うことを良く聞く四十六人』という意味だよ。」

 

 大学教授であり人気作家であるトゥオマスは、ファラゾア情報局の技術顧問という立場ではあっても、軍の高官に対してもその態度を改めるつもりは無い様だった。

 ある意味清々しくさえある、誰に対しても変わりの無いその態度によって、一部では「プロフェサー(教授)」と言うあだ名が付けられており、徐々に広まりつつある。

 

「ふむ。なかなか意味深な表現だが?」

 

「その反応は既に大枠を理解しておられる様だ。私は二つの大きな理由を想定している。

「一つ目は、彼等が用意したBPUが我々地球人になかなか定着しない、馴染まないのではないか、という事。」

 

 誰も声を発する者は居ない。無言でトゥオマスに先を促している。

 

「彼等の目的は、我々地球人の脳ミソだ。脳ミソを抜き取って、CLPU(Central Living Processing Unit)として彼等の機械に組み込んで使う。ならば、彼等が製造する機械と、我々の脳ミソ、即ちCLPUとを繋ぐインターフェイス(I/F)が必要となる。このBPUがそのI/Fの役割を果たすものであると考えられる。

「これまでの知見から、CLPUには我々地球人類に非常に似通った十二種のヒューマノイド種族の脳が使われている。CLPUにもBPU同様の構造が存在する事が分かっている。完全に動作するCLPUが手に入らないため断言は出来ないが、チャーリーが持っているBPUとCLPU内のBPUは同じ物だと推察する。」

 

 トゥオマスは一旦言葉を切って自分の周りに座る四人の顔を見回した。

 全員が話について来ていることを確認して、再び口を開いた。

 

「ここからBPUの機能を色々と類推することが出来るが、それは今は脇に置いておく。今議論したいのは、I/FとしてのBPUだ。

「話が突然変わる様だが、今年でファラゾアが来襲して十六年経つ。始まりの十日間で何億という地球人類が彼等に捕獲された。その潤沢な検体数を利用して彼等はBPUを地球人類に植え付ける実験を行ったはずだ。種族間の交配が可能であるほどに近しい十二のヒューマノイド同様に、地球人類の脳内にI/Fを作ろうとしたはずだ。

「しかし、チャーリーの存在が確認されたのは、来襲から十五年も経ってからだ。さらに言うなら、地球人の生体脳を搭載したファラゾア機は、未だに確認されていない。ファラゾアには卓越した科学技術があり、そして生体脳の供給元がここ地球であり、何十億という検体数が有り、戦闘機の製造工場がすぐ隣の惑星、火星にあるにも関わらず、だ。」

 

 四人はトゥオマスを見て軽く頷いている。

 

「ファラゾアの戦闘機械の反応速度が我々地球人類のそれよりも遅いことは良く知られている。十二種のヒューマノイド種族の他、幾つもの非ヒューマノイドの生体脳も確認されているが、地球人類よりも早い、或いは同等の反応速度を持った敵戦闘機械が報告された例はない。

「ファラゾアが予め用意して持って来たBPUは、地球人類の脳に合わなかったのではないか? 通信速度の速いI/Fと遅いI/Fを無理矢理接続しても上手く信号が流れない様に、彼等のBPUを地球人の脳の中に埋め込んでも、正常に動作しなかったのではないか?

「最近その問題にやっと解決の目途が付き、やっとまともに動作する様にBPUを調整できた。そういう事なのではないだろうか。」

 

 頷きながらトゥオマスの話を聞いていた四人の表情が険しくなる。

 この話はあくまでトゥオマスの推測でしかないが、もしそれが正鵠を射ていた場合、次に起こることが容易に想像ついたからだった。

 

「もしそうならば、偶然とは言え、ギガントマキアを動かし始めていて正解だったな。間に合えば良いのだが。」

 

 参謀本部長であるロードリックがぼそりと呟いた。

 

「その通りだね。以前手に入れたチャーリーの検体は、ファラゾアからの信号を上手く受信できていなかった。今回の襲撃者は、以前よりもより強くファラゾアからの命令を受信できる様になり、強く思考制御を受けていた。そう考えることが出来る。

「I/Fが上手く機能し始めたなら当然、遠くないうちに実際に地球人の生体脳を戦闘機械に乗せる事を試みるだろう。技術的に遥かに進んだ連中の戦闘機械が、反応速度の速い地球人の生体脳を手に入れたときどの様な強敵になるのか、シミュレーションを行ってみるべきだと我々は考えている。

「そして状況は、今のロードリックの意見に全く同意する。ファラゾアが技術的困難を乗り越え、地球人CLPUを搭載した戦闘機械を大量生産し始める前に火星工場を叩くべきだろうね。」

 

 トゥオマスは少々尊大な口調はそのままに、しかしごく真面目な表情で言い切った。

 

「だが今の話で腑に落ちんのは、時間がかかり過ぎていることだ。それこそ、仮にも遙かに進んだ技術を持つファラゾアが、I/Fの調整に十五年もの時間を必要とするだろうか?」

 

 反対意見を述べたのは、情報部長のフォルクマーだった。

 

「その指摘は尤もだよ。決めつけて掛かるのは危ないと、私も思っている。ちなみにだが、その点に関しての根拠は、奴等の『トロさ』にあると考えている。

「ファラゾア機の反応速度の遅さは今更指摘するまでもないだろう。推定ではあるが、搭載されているCLPUの種族に関係なく、突発的に発生した事柄に対するファラゾア機の反応時間は、我々地球人類の約1.2から1.7倍の長さである事は良く知られている。

「突発的な事柄に対する反応速度だけではない。我々が何か新しい技術や戦術を導入した時。例えば、ロストホライズン部隊に反応弾ミサイルを使用し始めたときや、オーカミサイルで軌道上の艦隊の迎撃が可能となったときなど。

「大損害を出しつつも、彼等は何度も繰り返し同じ手を食らう。余りに同じ手を食らうので、何かの罠なのではないかとこちらが心配になってくるほどに。そして、我々地球人の軍隊であれば、軍のトップや高官がまとめて何回も更迭されたであろうほどに、何回も繰り返し大損害を出してから、やっと対抗策を打ち出してくる。」

 

 自分達のオフィスに居る間にこの考察について議論を行い、すでに内容を良く知っているヘンドリック以外の三人が、言葉を切ったトゥオマスの顔を見ながらそれぞれに頷く。

 

「一つには、彼等の用兵の問題もあるだろう。ファラゾアはどこか遙か彼方の宇宙で、極めて大規模な戦いを行っているという推察は、以前報告されている通りだ。搭乗員を生体脳に置き換えるほどに高度に機械化された軍隊であれば、その戦い方も高度にパターン化された相当にシステマチックなものである事が推察される。

「逆の見方をすれば、パターンに無い想定外の事態に直面した際、例えば穴居人レベルだと侮っていた原住人類から、重力推進式の対艦ミサイルで軌道上の艦隊が攻撃された場合など、即応的に柔軟に対応する事が難しいのではないだろうか。

「BPUの件にしてもそうだ。既知の十二種族に問題無く適用出来た汎用I/FたるBPUを持って来て地球人類に適用しようとした。反応速度が彼等よりも1.5倍も速い地球人類には、汎用BPUは上手く適合しなかった。植民地の原住人類から生体脳を採取する通常のルーチンから外れた想定外の事態が発生したとき、その対応に随分時間がかかってしまう。

「或いはただ単に、太陽系に派遣された部隊が、I/Fを改良する機能を持っていなかっただけかも知れない。道路舗装工事の現場に派遣された工務店に、想定外の河川が存在したからといって、突然橋を架けろと指示してもそんな事には対応出来ないのと同じ様に、だ。」

 

 眼を閉じて腕を組み、ソファに深く身体を沈めてトゥオマスの発言を聞いていたフェリシアンが眼を開けて言った。

 

「ありがとう、トゥオマス。決めつけて掛かるのは危険だとしても、非常に興味深い考察だった。

「ここらで少し話題を変えよう。フォルクマー。今回のチャーリーによる襲撃事件のスポンサーは分かったか?」

 

 トゥオマスに向けていた視線を、テーブルを挟んで反対側に座るフォルクマーに移してフェリシアンが言った。

 

「スポンサー? 地球人類の中に裏切り者が?」

 

 思わず、といった風にヘンドリックが聞き返した。

 予想外の話に思わず「裏切り者(traitor)」という言葉を使ってしまったが、全地球人類一致団結して外敵であるファラゾアと戦うべき時に、味方に対して明確に損害を与える様な行為を行う者に対して、その言葉は適切であろうと思われた。

 

「居るな。間違いなく。襲撃者の一部は軍人だったが、それ以外のただの電気工事技師や、歯科衛生士の娘に対して、あの襲撃が可能となるだけの武器を提供して軍事訓練を施した者がいる。そうで無ければ、半数以上は従軍経験も無い民間人で構成された集団があれほど鮮やかに襲撃を決められる訳が無い。」

 

 確かにフェリシアンの言うとおりだった。

 

「最有力候補は、ロシアです。まず間違いないかと。」

 

 情報部長であるフォルクマーが淡々と答えた。

 

「国家ぐるみで、という事か。」

 

「多分。詳細な報告は、後ほど。」

 

「ロシアはこの戦いの初期から、国連に対して協調しているように見えましたが?」

 

 と、ロードリック。

 彼が局長を務めるファラゾア情報局は、ファラゾアに関する情報について包括的に取り扱ってはいるが、地球人類内部での抗争や政治ゲームについては対象外であった。

 

「いや、納得も出来る。ファラゾアという外敵に対して、地球人類はいずれ一つにまとまらねばならなかったのだ。各国でバラバラに対応する事など不可能という事は、三つの降下点を抱えているロシアならば良く分かっていただろう。全地球的な組織が成立し、果実が熟れるのを待って機を見て仕掛けてきた、と言うところか。

「今回はその様な話にはならなかったが、似た様な事件が続けば、私やロードリック、フォルクマーは責任を問われて、進退問題に発展するだろう。幾つもの重要なポストに入れ替わりが発生することになる。」

 

「しかし、襲撃者が使用していた装備は全てロシア陸軍のものでした。いくら何でもそんな簡単に足が付く様な事をしますか?」

 

「ファラゾア勢力圏下のどこかにある放棄された駐屯地からテロリストが奪ったものである、とかな。ロシア製装備で統一する事で、テロリストは責任をロシアに押し付けようとしている、とか。幾らでも言い逃れは出来るよ。」

 

「米国は発言力が低下し、中国はこちら側に付いた。とうとう真打ちの登場といったところだが、国力を戻し始めている米国の発言力が大きくなり過ぎないよう上手くコントロールする必要がありますな。」

 

「全人類一致団結して外敵と戦わねばならない時だというのに。馬鹿馬鹿しい。」

 

「全人類一致団結した地球連邦であっても、組織である以上は必ずパワー・ゲームが発生するだろうさ。集団を作り、その内外に対して上に立とうとする。それが人間というものだろう? フォルクマー、チャーリー共のアジトはEU領域のあちこちにあるはずだ。それの燻り出しと、スポンサーとの繋がりを示す証拠も確保してくれるか。」

 

「承知しました。そう言えば、人類の敵はやはり人類、という言葉もありましたな。」

 

 そう言って情報部長のフォルクマーは、薄ら寒い作り物のような笑いを浮かべた。

 彼の笑っていない眼を見て、ああやはり本職には適わないな、とヘンドリックは落ち着かない思いでその不気味な笑顔から視線を逸らした。

 

 


 いつも拙作お読み戴きありがとうございます。

 

 長くなってすみません。

 どうしても一話にまとめたかったもので。


 ちなみに、世の中がこんなだからロシアを出した訳ではなくて、元々の予定です。

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― 新着の感想 ―
[一言] BPU…これって「夜空」に出てきたアレですよね? 銀河共通の技術基盤が垣間見える、こういう所が面白いなぁ
[気になる点] 新参謀本部とか、ロシアとかで今更ながら思ったんですが、ファラゾアはどうやって降下点を決めたのか。 ヨーロッパに無くてロシア、アジア、アメリカにあるもの…。うーん、気になる。 [一言] …
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