35. 大中华帝国的衰落
■ 6.35.1
28 July 2045, United Nations Forces Headquarters, Strasbourg, France
A.D.2045年07月28日、フランス、ストラスブール、国連軍本部ビル
乗ってきた車を職員用駐車場に駐め、ヘンドリック・ケッセルリングは勝手知ったる様子で建物の裏手にある通用口へと向かった。
入り口脇の警備室にIDカードを見せて、通用口をくぐる。
彼がここストラスブールに職場共々引っ越してきた当初は、国連どころかEUの組織にしてもこの街には僅かしかなく、これほど頻繁に自分の職場以外の場所を訪れるようになるとは思いもしなかったものだが、今や多いときは週に数回、この国連軍本部ビルを訪れるようになっていた。
通用口脇の警備室で一日中通行人のIDカードを見せられている警備員達も、しかめ面で入り口の両脇を固める国連軍兵士も、すでに顔見知りとなっていた。
警備室の警備員など完全にお互い顔見知りとなってしまい、彼の顔を見るなり「今日もご出勤ですか、お疲れ様です」などと声をかけてくるほどで、そういう意味ではもし万が一誰かが彼のIDカードを偽造してゲートを通過しようとしたとしても、よほど上手く変装しない限りは確実にバレるであろうというある意味非常に高いセキュリティ状態を保てるほどになっていた。
通用口を通り抜けたヘンドリックは、これまた勝手知ったる様子で、少し小さめではあるが通用口から最も近い職員用のエレベータに乗り込み、もう何度来たか分からない八階のフロアに降り立った。
エレベータを降りて右手に進むと国連軍参謀本部のオフィスがあり、オフィスの中の通路をそのまま抜けていくと両脇に高官のオフィスが並ぶ通路へと変わる。
突き当たりの会議室の手前、左側のドアが国連軍参謀総長であるフェリシアン・デルヴァンクールのオフィスとなる。
ヘンドリックは一点豪華主義とも言える分厚い木製のドアの前に立って、ドアの脇にあるインターフォンのボタンを押した。
誰何され名前を告げると軽い機械音がしてドアのロックが外れる。
ドアを開けるとすぐ内側は秘書官が座る小部屋となっており、これまた完全に顔見知りとなってしまった秘書官に挨拶をしながら通り抜ける。
秘書官のデスクの前を通ってその奥にある扉を開ければ、そこが国連軍参謀総長のオフィスである。
ヘンドリックがその部屋の中に入ったときには、すでに他の参加者三名は到着してソファに座っており、部屋の主に簡単に挨拶をしながらヘンドリックもその仲間に加わる。
いつものメンバー、と言って良いだろう。
国連軍参謀本部に決定権のある戦術級の案件について、その概要と方向性を決定する国連軍のトップ四名。
国連軍参謀総長であり実質上国連軍のトップ、この部屋の主でもあるフェリシアン・デルヴァンクール。
ここストラスブールに置かれた国連軍参謀本部のトップである、国連軍参謀本部長のロードリック・ムーアヘッド。
国連軍参謀本部直下にあり、戦術レベルの作戦立案を行う組織、国連軍参謀本部作戦部の長を務めるエドゥアルト・クルピチュカ。
そして国連軍の眼であり耳である国連軍情報部の長、フォルクマー・デーゼナー。
この四人が揃えば、この地球上の国連軍の現場レベルでの作戦、即ち戦術級の作戦全てを決定することが可能であった。
そしてこの半年ほどで、国連軍直属の組織では無いものの、ファラゾア関連のあらゆる情報が集まる組織として、国連安全保障理事会情報分析センター対ファラゾア情報局の長であるヘンドリック・ケッセルリングも、詳細なファラゾア関連情報の供給源として、さらには組み上げられた作戦に対してファラゾアがどの様な反応を示すかの推測を行う為、この会合に頻繁に呼びつけられるようになり、ほぼレギュラーメンバーと化していた。
各組織の長の関係が親密であることは、組織間の風通しが良いという意味で良いことだった。
逆に、まさに今行われているように、下部組織間で結託して、陰に隠れて上部組織のコントロールの手を離れ、組織末端の暴走を生む温床である事も確かだった。
本来国連軍のあらゆる行動は、その管理監督組織である安全保障理事会による議決を以て決定されなければならない。
ファラゾアが地球上の通信と移動を分断し、安全保障理事会参加メンバーがそれぞれの出身国との緊密な連絡を取れなくなり、実質上全ての行動を議論することが不可能となったため、スピードを要求される戦術級作戦立案と決定については国連軍参謀本部に決定権が委譲され、決定後速やかに報告する義務を負うだけとなった。
そのルールを悪用して半ば暴走状態にあると言えるのが現在の国連軍参謀本部、そしてその首謀者がこの部屋に集まる四人である。
国連安全保障理事会直下の組織である情報分析センターに所属し、国連軍の動きを監視管理する側の人間であるヘンドリックは、本来であればこの様な会合に参加するどころか、この様な密談の存在を知れば速やかに理事会に報告せねばならない立場にある。
しかし彼はそれをしなかった。
国連に出向する前から、安全保障理事会のどうしようも無い機能不全には強い不満を持っていたという事もある。
ファラゾア関連情報を収集する際に、国際連合本体であると云う事も出来る事務局の思惑を知ってしまった、という事もある。
そして今ヘンドリックの前に座る四人が―――少なくとも今のところは―――最終的に人類が生き残るために有利となるであろう選択をし続けている為、静観している状態であるとも言えた。
一億人を生かすために百万人を殺す決断をしなければならない時があるという事は理解している。
残る人類全体を生かすために、一部の地域やそこに住む人間を切り捨てなければならない時がある事も理解している。
誰かが悪人に、或いは罪人にならなければならない。
大げさな言い方をすれば、地球人類を皆ペテンにかけてでも、少なくない数の犠牲者の山を積み上げた上で、最短のルートで最良の結果を掴み取る必要がある。
自分も含めて今この場に居る五人に、多分地球史上に永遠に残るであろう大罪人になる覚悟があるのか。
或いはただ単に、個人または出身組織の利益を求めているだけのただのチンピラとなるのか。
それを見極めている期間であるとも言えた。
ヘンドリックが着席してすぐにフェリシアンは自分のデスクを離れ、来客達同様ソファに腰を下ろした。
「済まないが、今日はこの後別の予定があってね。手短に行こう。本格的な報告は、全ての報告書が出そろってからで良い。まずは大きく動きのあった極東地域からだ。ロードリック?」
フェリシアンは右隣に座る国連軍参謀本部長であるロードリック・ムーアヘッドを見た。
「オーケイ。すでにもう耳に入っていることと思うが、極東地域で行っていた我々の作戦はほぼ申し分ない結果を得ている。アムール川ラインを守っていた国連軍、ロシア軍、日本軍などからなる連合軍は、先日ノーラ降下点で発生したロストホライズンを見事抑え切って見せた。少なくない犠牲はあったがね。それにしても素晴らしい戦果だ。防衛ラインを突破できなかったロストホライズンは、戦線に投入したヒドラやファイアラーと云った高レベル機を多数撃墜された後、南方に転進し中国領内に雪崩れ込んだ。現在のところ中国国内戦線は斉斉哈爾ー佳木斯ラインまで南下している。斉斉哈爾市、佳木斯市はもとより、前線のすぐ南にある哈爾浜市からも住民の大脱出が発生している。斉斉哈爾市ではすでにファラゾアによる大規模な住民の捕獲が行われたという情報もある。
「人民空軍はファラゾアの侵攻を全く抑え切れていない。一つには人民空軍機の性能に問題があったこと、別の理由としては頼りにしていた大慶油田からの航空燃料の供給が途絶えた事に依る。」
ロードリックは一旦言葉を切って四人の顔を見回した。
この程度の情報はとっくに耳に入っているだろう、まだ先を続けるべきか? と自分以外の四人に問いかけるような視線だった。
結局四人のうち誰も口を開くことは無く、ロードリックは話の先を続けた。
「旧来から、ロシア製或いはアメリカ製の戦闘機のコピー技術で設計されていた人民空軍機だが、ここに来て開発力の弱さを露呈した上に、プロジェクト「EFFUSIO」参加国あるいはMONEC社との技術提携を行ってこなかったツケを払わされることとなった、と云ったところだ。J16、J20、J31、J38いずれの機体も、国連軍で採用している同世代の機体に比べると性能面で数歩劣る。特に現在主力配備されているJ38の性能面と部品加工精度の低さは致命的で、今回南に向けて方向転換したロストホライズンを押し止めるどころか、一気に押し潰されてファラゾアの南下を許してしまった主要な原因の一つであると見ている。
「加えて、基地配備用の大型GDD、AWACS搭載用の高精度航空GDDの精度も稼働率も低く、戦闘機に至っては未だに全ての機体にGDDが行き渡っていない状態だった。さらに知っての通りJ38は未だにケロシン(化石ジェット燃料)のみを動力として用いているため、滞空時間、作戦距離共に短い。
「7月2日にロストホライズンが発生してすぐに人民空軍はJ38を中心とした航空戦力約千機を北方に投入した。首都防衛に当たっていた部隊を中心に追加でさらに千機を投入したが、その時にはすでに第一陣の千機による戦線が崩壊した後だった。結局その千機も半分以上が撃墜された後に逃げ帰り、現在では長春市、通遼市を中心として残存航空戦力をかき集めた部隊が対応に当たっているが、時間の問題だ。この部隊が抜かれれば、首都北京はほぼ丸裸になる。追加の戦力を投入したければ、ハミ降下点に向けて配備している戦力から部隊を割いて回すしか無い状態だ。中国独力での防衛は完全に詰んだ状態にある。」
「フォルクマー。中国東北部と首都周辺の状況は?」
ロードリックが言葉を切ったタイミングで、フェリシアンは情報部長に話を振った。
「斉斉哈爾ー佳木斯ラインより北には未だ百万人を超える民間人が残留しているものと推察されます。全ての交通機関が止まり、化石燃料の供給が途絶えたためです。残された百万人の殆どは、今後速やかにファラゾアに捕獲されるものと推察します。
「中国共産党は東北部での大敗を情報統制し国内に一切報じていませんが、東北部から逃げ出してきた人々が首都周辺の都市部に大量に流入した為、それら脱出民からの情報として人民空軍の大敗は殆どの民間人の知るところとなっています。長春、通遼、藩陽など戦線から離れた東北部各都市では多くの住民の脱出が始まっており、軍や警察が実力を行使してそれを押し止めている状態ですが、全く抑え切れていません。一部ではかなり大きな規模の暴動が発生しています。
「首都および東北部に居住していた共産党幹部も他の住民同様に南方に向けて脱出しています。現在北京に存在する政府と関連機関に勤務する共産党員については、共産党幹部および政府高官を中心として約半数がすでに行方をくらましており、多くの政府機関は機能不全に陥っています。一部では脱出する共産党幹部を狙った襲撃も発生しており、これを阻止しようとする軍、警察との間で頻繁に衝突が発生しております。襲撃者側には一部独立運動や民族運動の活動家が混ざっていると見られ、これら武装度の高い一部の襲撃者との間での武力衝突が泥沼化している状態です。総じて、東北部から首都にかけて、治安が急激に悪化しつつあります。」
報告するフォルクマーの視線を受け止め、僅かな沈黙の後フェリシアンが口を開いた。
「・・・犠牲となる百万の民間人には申し訳ないが。ほぼ予定通りだ。」
フォルクマーの報告した、機能不全に陥った政府機関の中にはもちろん軍や警察も含まれる。
一つの国が急速に崩壊に向けて突き進んでいく課程を彼らは眼にしていた。
「続けます。上海を中心とした反政府活動組織『新中国国民党(New Chinese Nationalist Party: NCNP)』およびこれに同調する組織である『中華民族解放戦線(Zonhua National Liberation Front: ZLF)』が、上海市を中心として、江蘇省、安徽省、浙江省のそれぞれ大部分を影響下に置いて、海沿いに南下する共産党幹部の捕縛を行っています。上海市を中心に展開していた人民軍の約1/4が彼らに従うか、或いは中立を表明しています。このため上海市近郊では、共産党支持の人民軍と、NCNPあるいはZLF支持の人民軍との間で武力衝突が発生しています。NCNP支持の人民軍のみならず、NCNP構成員の武装度そのものが高くまた市街戦に徹しているため、数での劣勢を撥ね返して善戦している模様です。」
言葉を切って四人を見回したフォルクマーはさらに続ける。
「香港を中心に、広東省、福建省での民主化運動を行っている『広州民主党(Guanzhou Democratic Party: GDP)』が、香港の独立を宣言しました。深圳に展開していた人民陸軍と激しい交戦状態となっています。人民海軍が海南島基地に係留されていた二十三隻の巡洋艦と駆逐艦からなる艦隊を出動させ、艦隊は運良くファラゾアに攻撃されること無くヴィクトリア・ハーバーに到着、一部市街地に艦砲射撃による被害が発生しています。
「チベット自治区も分離独立を宣言しました。ガンデンポタン(dga' ldan pho brang:チベット国政府)を名乗る民族開放組織が、チベット亡命政府との連携を表明しています。自治区内に展開していた人民陸軍と激しい交戦状態にあります。ダライ・ラマ十五世の求心力強く、中国内外にて非常に強い組織力を持っています。ガンデンボタンはインド及びネパール国境からの潤沢な武器供与を得ており、ハミ降下点のファラゾアに怯えながら同時にインド国境、ミャンマー国境を警戒せねばならない人民軍に対して優勢を保っております。現在の共産党政府が機能を失っている状態が続くならば、ガンデンボタンが人民陸軍をチベット自治区から駆逐する日もそう遠くないものと思われます。
「新疆維吾爾自治区も分離独立を宣言しました。チベット自治区にも言えることですが、これら二つの自治区については、ハミ降下点から広がるファラゾア勢力圏下にあり、例え独立を宣言したとしても国家として成立することは難しい事です。むしろ中国という大きな国力・軍事力を持つ国家の庇護下にある方が、住民の安全保障を含めあらゆる点で有利であろうと考えられます。既にご理解戴いていると思いますが、これまでに中国或いは共産党政府から受けてきた差別や弾圧の歴史から、例えその様な不利があろうともこれ以上共産党政府に付き合いたくはない、という意識の表れです。」
フォルクマーは再び言葉を切り、他の四人の表情を見回し窺った。
全員が彼の話を理解していることが見て取れた。
「政治的状況について最後にもう二つ。台湾が明確に独立を宣言しました。この独立宣言の意味は、共産党政府の支配から逃れるという意味では無く、自国内にまだ残る中華民国の国民党勢力に対し、大陸との決別をはっきりと意思表示するという意味合いが強いものです。これにより中華民国は台湾国へと名称が変更となりました。現在の大陸中国、共産党政府の状況から台湾国は近いうちに多くの国家からの承認を得るものと推察されています。
「香港を活動の中心とする『広州民主党』と上海を活動の中心とする『新中国国民党』から、現在中国国内で活動する共産党を除く全ての団体に対して、中華連邦(China Union)の設立と参加が呼びかけられています。趣旨は、相互協力による利益と生存。連邦制国家の設立。参加条件は、全ての華人が居住する国と地域、及び中国共産党を除く華人が関わる全ての政治的団体。中国共産党政府の崩壊が時間の問題である今、少々時間がかかると思われますが、中華連邦は成立するものと予想されています。
「この連邦制国家の理念の面白いところは、華人即ち華僑が一人でも居住している国と地域であれば参加資格があるとした事です。今やこの地球上に華僑が居住していない場所などありません。つまり、この連邦国家には地球上のあらゆる国家と地域、政治団体が参加する資格があります。また、参加することが利益にならないと判断された場合の脱退は自由。似たような甘言を弄して結果的にあのような事になった中国共産党の過去実例がありますのでかなり懐疑的な態度を崩しては居ませんが、チベットのガンデンボタン、ウイグル独立政府ともに本構想には耳を傾けています。台湾は距離を取る模様です。
「共産党政府は主だった閣僚の逃亡先である鄭州市において、『ロシアで発生したファラゾアの大攻勢を中国国内に向けて誘導したのは国連、ロシア、日本による共謀であり、非人道的かつ国家の主権と人民の安全を侵害する言語道断な陰謀である』、『国連は中国国内における反政府テロリストを支援しており、中国の主権と人民の安全を甚だしく損なう国際ルールを無視した国連の行為に断固抗議する』などと的外れな非難声明を立て続けに複数発表していますが、そもそも中国国内に国連軍を含む他国軍の駐留を認めなかったのは共産党政府であり、耳を貸すものは誰も居ないでしょう。」
再びフォルクマーは話に間を入れた。
「先の中華連邦構想が実現化した場合、中華連邦の領土は現在の中華人民共和国領土とほぼ同じとなり、中央政府が現在の中国共産党から中華連邦政府に置き換わる事になります。現在の予想では、中華連邦政府は連邦参加の各国各自治区からの代表による議会制民主主義、資本主義経済国家、現在のEUによく似た形態になるものと予想されています。今後の旧共産党政府の抵抗の度合いにもよりますが、旧中華人民共和国(Peoples Republic of China: PROC)が保有していた資産を全て引き継ぐことになるものと予想しています。即ち、旧中国(PROC)のハードウエアはそのままに、ソフトウェア(政府)だけをそっくり入れ替えた状態です。」
フォルクマーは再び話に間を入れたが、今度は四人の理解を待つ為では無く、言いたい事は話しきったという雰囲気であった。
「僅か一年にも満たない工作でしたが、ほぼ構想通りの結果を得ました。」
今度こそフォルクマーは口を噤んだ。
静かになった室内に衣擦れの音が響いた。
ソファに腰を下ろしていたフェリシアンが立ち上がって、斜め向かいに座るフォルクマーに右手を差し出していた。
フォルクマーも立ち上がり、その右手を握った。フェリシアンがさらに左手を重ねる。
「フォルクマー。君のお陰だ。我々が構想した止めの一発から起こる連鎖的な事態について、あらかじめ道筋を引き、そして発生後は思い通りに誘導して見せた。見事な手腕だ。全て君の成果だ。私から最大限の感謝の言葉を贈る。ありがとう。」
「私は決定に基づき任務を遂行しただけです。」
「他の誰にも成せない任務だ。君だから出来た。」
ヘンドリックは立ち上がり右手を固く握り合う二人を見上げながら、自分が管理する組織の上部組織である安全保障理事会への密告はまだ先の事になりそうだと、誰にも悟られないほどの小さな溜息をついた。
A.D.2045年08月08日、広州民主党と新中国国民党は共同声明を発表し、中華連邦(China Union)の設立と建国を発表した。隣国日本、ロシア、統一朝鮮、台湾、ベトナムなどのアジア各国、ドイツ、フランス、イギリス、アメリカなどの欧米各国、および当日時点で政府が機能しているほぼ全ての国家が中華連邦の建国を即日承認した。
同時に中華連邦は、台湾を独立国であるとして承認した。
A.D.2045年08月09日、中華連邦は国連への加盟を正式に発表した。同時に非公式に国連から打診された地球連邦構想に対しても、同じく非公式に賛意を表した。
同日、中華連邦政府は国連に対して連邦領土内への国連軍の早期駐留を正式に要請、国連安全保障理事会はこれを即日受理した。
なお、国連安全保障理事会において中華人民共和国が担っていた常任理事国の地位は、中華民国(Republic of China: ROC)の地位を中華人民共和国(PROC)が継承したと同様に、中華連邦によって継承された。
A.D.2045年09月02日、旧中華人民共和国共産党総書記である徐思斉が、潜伏先であった狭西省西安市碑林区に建つマンションの一室で、共に潜伏していた夫人と共に逮捕された。
この時点で旧共産党幹部の多くは既に捕縛され投獄されていたが、一部逃亡中に潜伏先の付近住民に発見され、私刑による集団暴行の末に身元確認が不可能であるほど損傷した死体で発見された例もあった。
最後の帝国国家と呼ばれた中華人民共和国が崩壊し、その生い立ちから国連寄りの路線を色濃く打ち出した中華連邦の誕生により、未だ非公式に検討されるのみの存在である地球連邦化構想は、実現に向けて大きく動き始めた。
いつも拙作お読み戴きありがとうございます。
更新遅くなり申し訳ありませんでした。このボリュームでこのヘビーな内容なので、流石に時間かかりました。長文になってしまい済みません。
この手の内容だと、SFを読みたいと思って拙作を開いて戴いている方には、今ひとつ面白みの無い内容であるかも知れません。
ただ、ファラゾアの来襲から始まる地球史を書く上で必要なルートですので、ご容赦下さい。
そう言えば、章の始めで「戦略に翻弄される兵士の姿が云々」み耐な事を書きましたが、どうもイマイチ上手く行きませんでした。力不足を恥じるばかりです。
無茶な作戦で死にかけて、達也が「どこの阿呆だ、こんなクソな作戦立てやがったのは!?」とか叫ぶような話があれば良かったのかとも思います。
・・・無理か。
一万機の敵に囲まれても、「エモノだ、ヤホーイ♡」とか言いそうな奴でした。コイツは。