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1.プロローグ

 かつて、あまねく世界を統べる聖王により、天は慈愛に満ち大地は実りに溢れていた。全ての生き物は聖王を崇め、聖霊を愛し、手を取り合って暮らしていた。


 だが、突如現れた邪王により災厄がはびこり、聖王は天に還り楽園は邪に飲み込まれた。人々は楽園を追われ、聖霊の導きによりこの地にたどり着いた。


 祈りなさい、そして行いを正しなさい、此の世が邪に飲み込まれぬ様。


 祈りが天に満ちる時、聖王は復活なされ、此の世は再び楽園となるであろう。




…夕闇のバルコニー。

 ケラク賢王国=十二代=現王・ケラハ五世の気は重い。

 先ほどまで降っていた恵みの雨により大地は濡れ、雲間には星が輝き始めていた。

 きっと明日は晴天に恵まれるであろう。

 それでも、ケラハ五世の気は晴れない。


 気が晴れない原因は、最近王国内で活発になりつつある魔物の集団行動である。

 普段であれば群れをなさない魔物すら結束し、混成した集団行動を取っている。


 魔物がこのような集団行動を取る時、それは魔物の統率者たる、魔王がその地に現れた時である。

 現魔王達から防衛する国境より離れた地域で起きた魔物の集団行動。

 これは、よりにもよって国内で新たな魔王候補が生まれてしまった事を意味する。


 ならば、討つしかない。


 しかし魔王を討てる程の力を持つ者、いわゆる勇者はこの国には居なかった。

 現在の勇者達は他国に散らばり、この国に居た勇者は国境を越え魔王討伐に旅立っていた。

 魔物の集団行動の規模から考えて、国内に生まれた魔王候補はまだ力が弱いだろう。


 だが国王が知る限り、この国に居る勇者候補の力では分が悪い。


 如何なる国においても、王族は聖王の末裔であり勇者の末裔でもある。

 王族が勇者を迎え入れるか、国を興した勇者に王族をあてがう。

 各国の王族は、そうして魔王に対する力を維持しようとした。


 しかしながら、ケラハ五世は自身の力が勇者たり得ない事を理解している。

 では、彼以外のこの国の王族はどうか。


 成人済みである第一王子は彼の子で一番力が弱く、対抗するほどの成長は望めない。末娘である第一王女がこの国の王族で一番力が強いが、彼女でも新たな魔王候補には勝てないだろう。

 他は駄目だ。第一王子よりも力が弱い。


 既に他国へ勇者の派遣は要請済みである。

 しかし他国の勇者が駆けつけても、種蒔きにはとても間に合わないだろう。

 例え魔物より民が救われても、収穫が得られなければ民は飢える。


 とは言え、国教たる聖王教からの援助は期待出来ない。

 今の聖王教会は教皇が世襲を敢行したため、腐敗が見え隠れしている。

 教会からは、民を救う代わりにどんな要求が突きつけられるのか。


 ケラハ五世は悩み続ける。

 数多の流星が空を覆うほど降り注ぐのが、視界に入らない程に。

初投稿です。どうぞよろしくお願い致します。

ストック分は連続投稿してみますが、基本的に不定期投稿になりますこと、ご了承願います。


2019年10月22日、追記

改行位置を変更致しました。誤字訂正以外に本文の変更はございません。

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