第93話 運動会?
『それでは運動会を始めまーす!』
先日、クー達に約束した通りに今日は運動会の応援に来ている。
校長のピエールの挨拶から始まり、司会のウーシュさんの宣言により運動会が始まる。
というか、何でウーシュさんが?
「武闘会の時の司会っぷりが評判良く。お願いしたら快く引き受けてくださいました」
と、ピエールの談。
そうか、評判良いのか。
その内取り返しのつかない失言しなきゃいいけま
ど。
『尚、今年はまだ生徒の人数がそれ程多くないので西の街ダイランの学校と東の街ルガーの学校との合同で開催されます!』
各校の生徒は今年でまだ二年生までしかいない。
一年生はまだ入学して日も浅いので二年生がメインになる。その為、ダイランとルガーの生徒は二年生のみ王都に来ている。王都に来るまでの旅も訓練に丁度いいわけだ。
因みにダイラン家とルガー家の皆さんも観戦に来ている。
リディアとクリステア、ルチーナは今回は家族と一緒に観戦席にいる。
生徒の家族も観戦に来ている。
態々ダイランとルガーから来ている家族もいるので凄い数だ。
「皆暇なのかな」
「娯楽に飢えてるんだろうね」
そういえば武闘会も連日満員だった。
学校の周りには屋台まで出てるし。
たかが学校の運動会がお祭り騒ぎになってる。
『優勝した学校の生徒には、ジュン様からちょっとしたご褒美が!教師には魔王様からご褒美が貰えるそうですよ!頑張って下さい!』
これは事前に確認されたので許可を出した。
ボクは子供相手だし、甘いお菓子の詰め合わせを用意した。
父アスラッドは一年間給与UPを褒美にするそうだ。
『それでは!まずは短距離走です!100mを如何に速く駆け抜けるか競う競技です!』
これは獣人の子が有利かな?
と、思ったがそうでもなかった。
何せ魔法の使用は認められているからだ。
一度に各校二名ずつ、合計六名で走る。
その六名が魔法を駆使して走るのだが。
「風魔法で自分を押す追い風のように当てて走ってる子が多いな」
「それはまだいいけど、飛行魔法で飛んで行くのはありなの?」
短距離走なのに走って無いじゃん。
と、思ったのだけど100m離れた場所に如何に速くたどり着くかを競う競技なので飛ぶのも有りだとか。
じゃあボクなら転移魔法で一瞬じゃん。
「体力不足の子が沢山出来なきゃいいけど」
「全くだ」
しかし、ピエールが言うには体力作りはキチンとやらせているので大丈夫だとか。
それに中には感心する子もいた。
「あの子は凄いね」
「ぶっちぎりだな」
ユウの言うようにあの子は凄い。
まずスケートシューズのような物を氷魔法で作り、自分の進路上の地面を凍らせスケートリンクのようにし、補助魔法で身体を強化。さらに風魔法で追い風を受け、スピードスケートのような走りでぶっちぎりの1位だった。あそこまで使いこなすと短距離走じゃないとか言う気にならない。
『次は玉入れでっす!決められた制限時間内に出来るだけ沢山の玉をあの籠に入れる競技です』
玉入れでも魔法を使うのか、と思ったら案の定。
飛行魔法はもちろん、補助魔法で身体強化して、籠の高さまでジャンプ。風魔法で玉を運ぶ等。
とにかく普通じゃない。
いや、この世界ではこれが普通になるんだろうけど。
『次は綱引きです!綱を互いに引き合って一定以上の距離を引き込んだ方の勝利です!勝利に掛かった時間も点数に影響します!』
「うん?時間?」
『さあ、各学校の対戦相手の登場です!』
一人の教師が魔法を使い一匹の魔獣を召喚する。
なるほど、魔獣と綱引きをさせようって事か。
しかし、あれは…
『御紹介しましょう!王都校の先生、カロリーナさんの召喚獣!マウンテンバッファローのキャロリーナちゃんです!』
キャロリーナちゃんが一歩歩く毎に地響きが。
なんせデカい。
マウンテンバッファローは元々巨大な牛だけど、その中でも特に巨大な個体なんだろう。
学校の校舎よりデカいんじゃない?あれ。
「焼き肉何人分になるのかな、あれ」
「さあね。検討もつかない。てゆうか焼き肉好きだな、アイ」
そういえば以前焼き肉目当てでマウンテンバッファローの討伐に行きたがってたか。
まあ、焼き肉はボクも好きだけどさ。
キャロリーナちゃんと生徒達の綱引きはキャロリーナちゃんの圧勝だった。
そりゃそうだよ。無茶にも程がある。
むしろ挑む心があっただけ大した物だと思う。
『次は前半戦の目玉競技!棒倒しです!自陣の棒を守りながら相手の棒を倒す事を目指す競技です!棒を魔王様、生徒達を騎士だと思って見てください!』
なるほど、例えとしては分かりやすいかも知れない。
「あ、ジュン。ティナ達が出て来たよ」
「お、ようやくか」
戦意が高揚してるのか声援を送っても四人共反応がない。
怖いくらい集中してるようだ。
『それでは!王都校vsダイラン校!始め!』
開始と同時に動き出す両校。
そして直ぐに魔法の打ち合いが始まる。
「って!魔法有りかい!」
「まあ、今までの競技を見れば当然よね」
「そりゃそうかもだけどさ。これボク達が提案した競技と余りにかけ離れてない?怪我人出てるし」
「死人が出なきゃいいって考えなんでしょ。ウチらの提案した内容じゃヌルくてつまらないって感じてアレンジした結果なのよ、これが」
元々が戦闘技術や冒険者の知識や魔法を習う学校だ。
荒っぽくなるのはしょうがないのかもしれない。
この世界にはモンスターペアレントなんて言葉無いだろうしね。
「で、ティナ達は?」
「大活躍だね」
四人の周りは死屍累々。
近付いて来るダイラン校の生徒を投げ飛ばしたり蹴り飛ばしたり。容赦なく意識を刈りとって気絶させている。
四人の鉄壁の守りにダイラン校は手も足もでず王都校の勝利。
続くルガー校戦でも四人の活躍により王都校の勝利で終わる。
「強くなったなあ、あの四人」
「学校じゃ群を抜いてるね。実戦を経験してるのも大きいんじゃない?」
それは確かに大きいだろう。
それに最近ではお祖父ちゃんとお祖母ちゃんの訓練も受けている。強くなって当然かもしれない。
『ここで生徒さん達は休憩時間です!その間は観客の皆さんが参加出来る競技!腕相撲大会を開催します!』
「へぇ。そんなのやんの?」
「知らなかったね」
ボクも知らなかった。
まあ、見学でいいだろう。
力自慢でもないしね、ボク。
『男性組と女性組に別れて貰います!男性は既婚者は参加不可!参加費は銅貨一枚!』
参加費取るのかよ!
参加費が必要と聞いて出ようとしてた人が帰って行く。
そりゃそうだよね。
参加費とるなら景品用意しないと。
てか、何で既婚者はダメなのよ。
『尚!男性組の優勝者には!私の胸の谷間に指を入れる権利が与えられます!』
スッと一斉に立ち上がる男性陣。
もちろんボクも立ち上がった。
「あ、やっぱり出るんだ」
「お兄ちゃん…いつでもOKな胸があるのに…」
妹よ、それとこれとはまるで別物なのだよ。
大体、その胸ってアレでしょ?
「ジュン様はやはり巨乳が好きですか…」
「ジュン様!私の胸の谷間ならいつでも!」
あの胸に手を出したら最後。
ノンストップな気がする。
しかし、今回はあくまで勝利の報酬。
何も問題ないはず。
「「「男には!やらねばならぬ時がある!」」」
「あっ、そう…」
今、周りの男性陣と心が一つになった気がする。
素晴らしき事かな。
『女性組の優勝者には!何と!ジュン様から熱いキッス!が贈られます!』
「うおおい!聞いてないぞ!」
『ただし!既婚者はダメですよ!』
「それは重要だけども!」
『いいじゃないですか!舌が火傷する程の熱いキッスをしちゃってください!』
しかもDキスかい!
『さぁ!参加者は前に!』
スッと立ち上がる女性陣。
あ、やっぱり出るんだ。
「「「女には!戦わなければならぬ時がある!」」」
「あ、そう…」
ダメだ。
この雰囲気の中で景品の取り下げを要求する度胸はない。
だが、彼女だけは止めねばなるまい。
「リディア、君は参加不可」
「な!何故ですか!」
「君が参加したら対戦相手は皆、よくて骨折。悪ければ切断だろう…治癒魔法があるとはいえ可哀想過ぎる」
運動会の余興で、そんなスプラッタな光景見たくない。
「そんな…ようやく私の活躍の場が来たと思いましたのに…」
そこまで悲しそうな顔されると、悪くないのに罪悪感が沸いてくるからやめて。
「ふふふ、最大のライバルが消えましたか。流石はジュン様。素晴らしい援護です」
「いや、別にクリステアに勝って欲しいからやったわけじゃないからね?」
そして始まった腕相撲大会。
結果から言うとボクが優勝した。
何故なら運動会の観戦に来ている男性は殆どが子供の応援に来ている既婚者。
ボクに勝てそうな筋骨隆々な人も既婚者。
後に残ったのは荒事に慣れてないような人ばかり。
まるで相手にならなかった。
問題は女性組だ。
「オーホッホッホッ!ジュン様のキッスはあたしの物よ!」
何でオカマさんが女性組で出てるんだよ!
ていうか何でいるんだよ!
「女の勘に従って見物に来て良かったわぁ!こんな美味しいイベントにありつけるなんて!」
それ絶対女の勘じゃない!野生の勘だろ!
不味い。
あのオカマさんに勝てそうなのはいないかも知れない。
リディアの参加を止めるべきではなかったかも…
しかし、その心配は杞憂だった。
拳闘士の紋章の力の闘気を身に纏ったアイによってオカマさんの優勝は阻まれた。
そしてクリステアはルチーナに敗れた。
「ルチーナに敗北する事になるなんて…」
「フフン、力比べなら力の紋章を持ってる私に勝てるわけないじゃない」
妹が姉を超えた瞬間だった。
流石に単純な力比べならルチーナの有利は覆らなかったようだ。
そして決勝戦はアイとルチーナの戦いだ。
因みにユウは初戦でアッサリと敗北。
ノエラとリリーもルチーナに敗れている。
「さぁて、どっちが勝つかな」
「あのジュン様?そろそろいいんじゃないですか?指を出しても…」
ウーシュさんが何か言ってるが努めて無視する。
ああ、指だけが幸せに包まれている気がする。
「ふんぬぬぬぬぬ!」「んんんぐぐぐっ!」
アイとルチーナの戦いは互角だった。
これはアイが大健闘してると言える。
実は予想ではルチーナがアッサリ勝つと思ったのだけど。
そして勝負は意外な形で終わる。
二人は空いてる方の手で腕相撲をしてるテーブルの端を握ってたのだが決着が着くより先にテーブルが限界を超え割れてしまった。
その時、バランスを崩し倒れる二人。
決勝戦は引き分けだ。
「引き分け…引き分けだと景品は?」
「どうなるんですか?」
「そりゃ優勝者無しだから、無いよ」
そもそも勝手に決められた景品だし。
「「そ、そんな…」」
ガックリと項垂れる二人。
そこまで落ち込む事ないだろうに。
仕方ないなぁ。
「アイ、ルチーナ」
「ん?」「はい?」
二人の頬に軽くキスをする。
これくらいなら…
あれ?我ながらかなり柄でも無い事してる気がする。
ウーシュさんのおっぱいに触れてテンションがおかしくなってるな。
いかん、冷静になったら恥ずかしくて堪らない。
「うふふふふ」「にへっ。にへへへへへ」
ご機嫌そうな二人を連れて観客席に戻る。
なんか視線が痛い…
「ノエラさんだけで無く、ルチーナにまで先を越されるなんて…何とかしなければ…」
何もせんでよか。
「お兄ちゃんのバーカ」
うん、我ながらバカな事しました。
『さぁ!それでは!後半戦を始めましょう!』
後半戦の最初は借り物競走だ。
流石にこれは普通の内容になると思ったのだが指定される物がひどかった。
『出走者はまず机の所まで走り、机の上の封筒を一枚選びます。封筒の中には紙が入っていてその紙に書かれた物をどこからか持ってきていち早くゴールするという勝負です。観客の皆さんは生徒にお願いされたら協力して上げて下さいね!』
最初はまだ普通だった。
「すみませーん。剣を貸して下さい~」
「すみませーん。銅貨貸して下さい~」
「すみませーん。ハンカチ貸して下さい~」
ここまではいい。
だが、だんだん内容がおかしくなってきた。
「すみませーん。巨乳の美少女メイドさん、いますか~?」
「…リリー、御指命だよ」
「は、はいですぅ」
「ジュン様?メイドは私もいるのに、リリーを御指命と即決したのはどういう事でしょう?」
「特に理由はないよ、ノエラ。ははは」
「ジュン様?何故こちらを見ないのです?」
次のお題は
「すみませーん。謎の仮面美少女さん、いますか~?」
「…アイ、出番みたいだよ」
「…うん、行ってきまーす…」
「仮面持ってるんだ…」
「魔法の袋に常備してるみたいだよ…」
何故、常備してるのかは問わないでおいた。
次のお題は
「すみませーん。魔王子様の調教済み女騎士の方はいますかー」
「いないよー!いないいないいない!」
「ジュン様、私ならここに…」
「はい、クリステア!さも自分は調教済みの女騎士ですと言わんばかりに立ち上がらない!」
「あ、じゃあお願いしまーす」
「君もハート強いね!」
さっきからのお題書いてるのダレだ!
ていうか一人しかいない!
「お母さん!このお題書いたのお母さんでしょ!」
「あ、バレた?でも私だけじゃないわよ?お義母様もよ」
「だって、普通じゃつまらないじゃない?」
「普通でいいんです、普通で…」
それから普通の借り物競争に戻し。
次の競技は障害物競走だ。
『続きましては障害物競争!途中に張り巡らされた罠をいかにかいくぐりいかに早くゴールにたどり着けるかを競う競技です!ルートは玄関から始まり一階、二階、三階を駆け抜けて体育館を抜けてグラウンドの中央がゴールです!』
「えらく長いね」
「うん。ていうか今、さらっと罠って言わなかったか?」
『各ポイントは魔法道具により映像中継でご覧ください!』
そんな魔法道具出来たのか。
ボクも召喚獣を使って同じような事できるけど。
「あ、ティナ達だよ」
「本当だ。相変わらず普段とは違う真剣そのものな表情だね」
勝負の前に集中するのはいい事なんだけど。
普段とは違い過ぎてる気がする。
何かあったかな?
『それでは~!スタートです!』
一斉にスタートする生徒達。
まず玄関には…落とし穴だった。
「おいおい。結構深いんじゃないか?」
「結構落ちたねー」
しかし、諦めずに落とし穴から出て再び走りだす生徒達。
不屈だなー。
それから教室の窓からは槍が飛び出したり矢が飛んできたり。
刃を丸めてあるようだが中々に危険な…
「というか、破壊された校舎は誰が直すんだ?」
「確かに…誰が直すんだろう…」
それからも怪談から巨大な鉄球が転がってきたり、天井から粘液状の何かが降ってきたり。
明らかにやりすぎだと思うのだが…
「ティナ達は軽々クリアしてるね」
「凄いな。優秀だとは聞いていたけども」
もしかしてうちの子達は天才なのだろうか。
「もしかして紋章も何か獲得してるのかな。セバストは知ってる?」
「いや、何も聞いてないな。ノエラは?」
「私も存じません。まだ何も獲得してないと思うのですが…」
紋章無しであの運動能力か。
補助魔法は使ってるようだけど、それでも凄いな。
結局障害物競争は四人のぶっちぎりの勝利。
その後、800mリレー、二人三脚と続き。
最終種目の騎馬戦となった。
「ここまでは王都校のリードか」
「ティナ達が出た競技は勝ってるんだけど、他はいい勝負してるからあまり差はないね」
現在、一位 王都校 二位 ルガー校 三位 ダイラン校 となっている。
点差はそれほどない。
つまり最終種目の騎馬戦で逆転の可能性は十分にあるという事だ。
『それでは!最終競技の騎馬戦です!選手は入場してください!』
ラッパ?のような楽器が鳴り。
選手たちが入場してくる。
ドドドという地響きと共に。
「ていうか!本物の馬に乗ってくるのかよ!」
「当然だろう?騎馬戦なんだから」
「馬以外の何に乗るんです?」
ああ、そうね。
この世界の住人からすれば人で組んだ馬に乗って騎馬戦なんて考えないよね…。
「あ、ティナ達だ」
「え?ティナ達って馬に乗れるんだ?」
「意外ね。乗馬訓練なんていつやってたのかしら」
「学校でも習ってたし、城でも空いた時間に練習してたぞ」
「そうなのか…」
頑張ってるんだな。
というかボクは馬に乗れないんだが…。
練習しようかな。
「アイは馬に乗れる?」
「ううん。やったことない。ユウは?」
「私も同じく」
だよね。ボクが知る限り、みんな乗馬訓練なんてしてないはず。
「そうなのか?意外だな」
「ジュン様達ならすぐに乗れるようになりますよ」
そうだな。
暇を見て練習しよう。
乗る機会あんまりなさそうだけど。
『騎馬戦のルールは大将役の生徒を最後まで守り抜いた学校の勝利です!大将を馬から落とすか大将から旗を奪えば勝利です!馬から落ちた生徒は脱落です!』
結構本格的なのね。
そして騎馬戦でもティナ達の活躍が光る。
「馬を足場に飛んで、地面に落ちる事なく自分の馬に戻ってる」
「アクロバティックだなあ」
騎馬戦の武器はやはり槍が花形なのだが、四人はいつもの得物で登場したから、どう戦うのかと思えば。
「凄いなあ。あれもセバスト達が教えた戦い方なの?」
「いや、オレ達はあそこまでは…」
「自分達で考えた戦い方だと思います」
独学か。
本当に天才なのかもしれないな。
騎馬戦もティナ達の活躍で王都校の勝利。
優勝は王都校に決まる。
「ジュン様!優勝しました!」「ジュン様!見ててくれたか!?」
「ジュン様!私達頑張ったの~!」「ジュン様!褒めてください!」
ティナ達が勝利の報告にやってくる。
確かに頑張ってたしここは褒めてやらねば。
「ああ、見てたよ。四人とも頑張ってたね。大活躍だったじゃないか」
「「「「えへへ~」」」」
子供らしく照れ笑いする四人。
実に可愛らしい。
「じゃあ、約束の御褒美頂戴!」
御褒美?ああ、優勝した学校にあげるやつね。
「あとで他の生徒みんなと一緒にあげるからね」
「ん~ん、それじゃないの~」
「それじゃない?」
「ノエラさんが運動会で活躍すればジュン様がきっとご褒美をくれますよって言ってたの~」
チラっとノエラを見ると、ポンッと手を叩くノエラ。
さては、忘れてたな…
まぁいい。実際四人は活躍してた。
ボクのメイドでもある四人に特別に褒美をあげるくらい構わないだろう。
「そっか。わかった、いいよ。じゃあ、何が欲しい?」
「「「「舌が火傷するほどの熱いキッス!」」」」
………誰の入れ知恵だ?
いや、腕相撲大会の時のウーシュさんのセリフか。
子供の教育によろしくなさすぎる。
ボクも景品に釣られて参加したけども。
なんとか四人の要求を躱し、ケーキ食べ放題で勘弁してもらった。
まさか三店舗のケーキを食べつくすとは思わなんだが。




