第82話 予想外の出会い
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「やはり見張りもいなければ罠も何もない。魔法で見張ってるとも思えないし。山賊ってここまで無警戒なのか?」
「いや、ジュン様。これは多分、誰かが既に侵入して攻め込んだんだ」
「ジュン様、ここに僅かですが血痕があります」
「となると、例の夫婦か」
たった二人で山賊のアジトに攻め込むとはね。
山賊の人数を知らずに入ったのか?
よほど自信があるのかバカなのか。
とにかく進もう。
「リリーとハティ、タマモさんは親衛隊の二人とここに残って。山賊の一部が外から帰って来るかも知れない。対処出来そうなら任せる。出来そうにないなら皆で奥に進んで逃げて来て」
「はいですぅ」
「わふ!」
「わ、わたくしもここに残るんですか?」
「奥に進む方が怖いと思いますよ。予想通りなら」
誰かが攻め込んだならこの先には死体がある可能性が高い。
彼女は行かない方がいいだろう。
出来ればアイとユウにも見せたくは無いが…
「アイ、ユウ。二人も残る?」
「ウチは行くよ」
「私も行くよ」
「分かった。じゃあ行こう」
ボクとセバストとノエラの三人だと手が足りないかもしれないし、アイの先見の紋章とユウの賢者の紋章は頼りになる。
正直当てにしている。
先頭を罠の発見と解除が出来るノエラ。
次に紋章で危険をいち早く察知出来るアイ。
中央にボクとユウで最後尾がセバストの隊列で進む。
しばらく進むと予想通りの物があったようだ。
「ジュン様、死体です。山賊だと思われる死体が三体」
「死体から何か解る?」
「はい。三人とも背後から急所を一撃。声を出す間も無く倒したと思われます。それとまだ温かいです」
かなりの手練れ、そしてほんのちょっと前にやったという事か。
やったのが例の夫婦なら一体何者なのか。
それから更に先に進むと、奥に進むにつれ死体が多くなる。
そして洞窟の最も奥と思われる所に扉があり中からは悲鳴と戦闘音が聞こえる。
「一方的みたいだな」
「そのようですね」
聞こえてくる悲鳴や叫び声から察するに全て山賊の声だ。容赦なく殺しているらしい。
やがて悲鳴は聞こえなくなり戦闘音も止んだ。
ノエラに慎重に扉を開けてもらう。
中は血の海、死体の山。
そこに居るのは一人の女だけ。
二人じゃない?
「子供?ここに来たって事は山賊の子?それにしては身なりがいいけど、何者です」
「ボク達は―――」
「ジュン!後ろ!」
ボクの言葉を遮ってのアイの警告。
背後から男が襲って来た。
扉の裏に隠れてたのか?
ボクは回避出来たけど、セバストは吹き飛びユウは捕まってしまった。
「貴様!ユウを離せ!」
「一人避けたか、中々だ。山賊じゃないな」
「ええ、ハズラッド。只者じゃないとは思う。でも相手は子供よ。殺さないで」
アイとノエラは女を警戒してうごけないでいる。
ボクがユウを取り戻すしかない。
「分かってる、ミリア。おい、坊主。いや嬢ちゃんか?どっちだ?」
「まずユウを離せ。話をするならそれからだ」
「生意気な奴。ちょっと痛い目を見るか?悪いが主導権はこっちにある。質問に答えろ」
「うるさい。先にユウを離せ。三秒待つ。3、2、1」
「本当に生意気な奴。やっぱ痛い目を―――て、おい、お前、その紋章は―――」
「0」
何か言おうとしてるが関係ない。
まずはユウを返して貰う!
「消えた!?転位魔法!?」
「ハズラッド!右よ!」
男の頭に蹴りを入れ脇腹を殴りユウを引き離し転位魔法で再び距離を取る。
まずはユウを取り戻す事に成功した。
これで冷静に話が出来る。
「お~痛え。やってくれるじゃねぇか、このガキ」
「大丈夫か、ユウ。怪我はない?」
「うん。大丈夫だよ、お兄ちゃん」
「無視かよ。わしを無視するたぁ良い度胸…お前それ、治癒魔法か?転位魔法に治癒魔法が使えるとは何者だ?」
「ボク達は――」
「いや、いい。それよりも先に続きだ。やられっぱなしは性に合わん。借りは直ぐに返す主義だ」
困ったもんだ。
まあいい。ボクも少し頭に来ている。
痛い目を見たいと言うのなら―――
「お待ちください!貴方方はハズラッド様にミリア様ではありませんか!?」
目を覚ましたセバストが叫ぶ。
知っているのか?
「何だ?わしらを知ってるのか?ミリアは分かるか?」
「いいえ、私も分からないけど、そっちの子が着てる服、執事服よね?こっちの女の子はメイド服だし。山賊じゃないのは確かよね」
襲う前に気付いて欲しかった。
話を聞く雰囲気になってきたので話を進めよう。
「セバスト、知り合い?」
「ああ。ジュン様が分からないのは当然だ。一度も会ったことないからな。オレも最後に会ったのは随分前だし、その時はノエラも物心が付く前だ。お二人もオレ達が誰か分からないだろう」
「ん~?セバスト?聞いた事があるような~?」
「私も何となく。それに誰かに少し似てるような?」
どうやら本当に知り合いらしい。
それにセバストが敬語を使ってるし。
もしかして?
「ハズラッド様、ミリア様。オレはセバスト、そっちのメイドは妹のノエラ。お二人の執事だったピエールの孫です」
「あ、あ~!そうだそうだ!お前ピエールの若い時にそっくりだ!」
「こっちの女の子はピエールの奥さんのドロシーに似てるわ!」
ピエールの主だった人?それってやっぱり…
「セバスト、それじゃ、この二人は…」
「ああ、そうだ。ジュン様とユウ様。それにアイ様のお祖父様とお祖母様だ」
「「「えええ!」」」
まさかの出会い!
大量殺人の現場で祖父母と出会うなんて。
もっと穏やかな出会いをしたかった。
「何?お前らはピエールの孫で、こいつらはわしらの孫?マジでか?」
「はい。ジュン様とユウ様はアスラッド様の子です。アイ様はアリーゼ様の子です」
「んまぁ!まぁまぁまぁ!私の孫?んまぁ~かわいい!」
「本当に、わしらの孫?アスラッドとアリーゼが本当にこんな優秀そうな子を?全然似てないぞ?」
「何言ってるの!三人とも私によく似てるじゃない!んまぁ~かわいい!ごめんなさいねぇ、おじいちゃんが酷い事して」
「あ、いえ、ボクも蹴ったり殴ったり、すいません」
「おいおい。わしだけ悪者か」
「当たり前じゃない。実際に何かしたのは貴方だし」
「いや、作戦を考えたのはお前…」
「何か言った?」
「いや、いい…」
祖父母の関係も奥さんの方が強いのか。
いや、それは置いといて、だ。
「あの、お祖父ちゃん、お祖母ちゃん。ひとまずここを出ませんか?入口に仲間がいるので」
「ん?おう、そうか。分かった。だがちょっと待て。まだ奥に誘拐された女子供に奪われた品を回収してない。それからだ」
「誘拐までしてたんですか、こいつら」
「ああ。手を付けるのはボスからって決まりがあるらしい。幸いまだ何もされてないみたいだ。まぁ山賊の言う事だし、少なくとも家族は殺されてる。何もされてないわけじゃねぇな」
なるほど。
山賊に同情の余地はないらしい。
それから捕らわれていた数人の女性に子供達を保護。
物品も粗方回収してリリー達がいる入口へ向かう。
「便利な魔法道具持ってるな。どこで売ってるんだ?」
「王都です。ステファニアさんの店で」
「魔法を込めるのはお兄ちゃんだし、アイディアもお兄ちゃんだよ」
「んまぁ~本当に優秀なのねえ」
「ジュンの偉業はそれだけじゃないんですよ。御婆様」
アイとユウの二人でボク達がこれまでやって来た事を説明している。
確かに子供にしては頑張ってるがそれは前世での知識あっての事だしボク一人の力じゃない。
偉業扱いはやめれ。
しかし、それにしても…
「ん~?どうしたの?」
「なんか顔についてるか?」
若い。若すぎる。
二人とも祖父母というより伯父や伯母くらいにしか見えない。
長命種族は本当に見た目で年齢が読めなくて困る。
「いえ、あの御二人は本当にお祖父ちゃんにお祖母ちゃんなのかなと」
「ん~?まあ生まれて初めて会っていきなりお祖母ちゃんですって言われても困るかしらね」
「いえ、そうではなく。御二人ともとても若く見えるのでお父さんの両親というより兄弟に見えるというか」
「んまぁ~!なんっていい子なの!そう?私そんなに若く見える?ハズラッド聞いた?ねえ聞いた?私、アスラッドのお姉ちゃんみたいだって!」
「あんまりおだてるなよ、ジュン。上限なく昇っていくからな」
「お祖父ちゃんもとても若く見えます。あと、さっきはすみません」
「ああ、気にすんな。さっきはああ言ったが、わしらに非がある。お前達が近づいて来てるのは気が付いてたんでな。中々の手練れだと感じたし人数差もあった。山賊の一味だろうと思ったから不意をついて二人くらいは一気に始末しようって作戦だったんだ。すまんな」
まあ、普通に考えれば山賊の一味が帰って来たと思うだろう。
それも仕方ないと思うので責めるつもりはもうない。
「ところで、お前らはどうしてここに来たんだ?山賊退治の依頼でも受けたか?」
「いえ、御二人が山賊の話を聞いた村にボク達も昨日から滞在してまして。山賊退治に向かった夫婦が帰って来ないから心配だし捜索隊を出そうかと話合ってたのでボク達が来ました」
「あ~、わしらを探しに来たのか。そりゃすまんな」
「山賊のアジトの情報とか何も聞かずに出ちゃったものだから、すっかり道に迷っちゃって。どうせ山賊が襲ってくるだろうから、そいつらから聞き出そうってなったんだけど。結局襲われなくて偶然ここを見つけたのよねえ」
先代魔王夫婦にしては、なんというか行き当たりばったりなんだな。
ほどなくしてリリー達がいる入口に着く。
「ジュン様お帰りなさいですぅ!」
「随分と人が増えてるように見えますが」
入口で待機してたリリー達にお爺ちゃんとお婆ちゃん、捕らわれてた人達の説明をする。
「えええ!先代魔王様と、その奥様なんですか!?」
「ただの旅の夫婦じゃなかったんですか!?」
ただの旅の夫婦じゃありませんでしたなあ。
ボクにとっても予想外です。
「おお!この狼が神獣フェンリルか!流石に綺麗な毛並みだなあ、おい!」
「可愛いわ~!ハティちゃんて言うのよね?よろしくねえ~」
結構ハティも大きくなって狼らしくなってきたけど、その愛らしさは健在だね。
「とりあえず、転移魔法でさっさと村に帰ろうと、思ったんだけども。何か来たね」
多分、山賊の残りか。
そう言えばボスが不在だったんだっけか。
「お祖父ちゃん、洞窟にはどれくらいの山賊がいましたか?」
「そうだな、二十人ちょいだな」
「正確には二十四人よ」
洞窟に二十四人、今向かってきてるのがおよそ三十人。
「今向かってきてるのでここをアジトにしてる山賊は全てのようですね。せっかくですし潰しましょう」
「お、やるか?山賊程度何人いようが怖くねえしな。まとめてぶっ殺すか」
「いえ、素人のお子さんもいるし、あまり血生臭いのはやめにしましょう。
それに連中、一仕事終えて来たみたいですし…」
また新たに女子供を攫って来たようだ。
数人の女子供が見える。
「ここはボクに任せてください。魔法で片付けます」
「ほ~う?よし、やってみろ」
アジトの前まで無警戒にやって来た山賊達の前に姿を見せて告げる。
「止まれ!ボクはジュン・エルムバーン!お前達は今、騎士団によって包囲されている!攫って来た女性達を解放し投降しろ!さもなくば殲滅する!」
山賊のボスらしき男が前に出て叫ぶ。
「あ~ん?優秀でお優しいことで有名な魔王子様か?けっ!んな大層な人物がこんな山の中にいわるわけねえだろ!もっとマシな嘘つきやがれ!」
脅しを掛けながら、魔力を高め魔法の準備をする。
もし、この人数を相手にここで戦闘を行えば、それは山を荒らす行為としてとられ神獣白猿の怒りに触れる事になるかもしれない。
ここは相手を無力化する魔法で行く。
「信じる信じないはお前達の自由だ!だが洞窟内に残ってたお前達の仲間は全て始末した!その証拠に出てこないだろう!」
「う、うるせえ!大体、お前一人でアジトに残ってた奴らを殺れるわけねえだろが!」
「騎士団が包囲してると言っただろう!大人しく投稿しろ!」
「それは嘘だ!俺達を包囲できるほどの騎士団がこの山に入ったら白猿が黙ってるわけがねえ!騙されねえぞ!」
なるほど。
こいつらも白猿の事は知ってて、ここをアジトにしたのか。
神獣を利用するとはね、怖いもの知らずだな。
「図星だな!お前ら構わねえ!やっちまえ!」
「「「うおおおおお!」」」
ボスの掛け声に合わせて全員が襲ってくる。
一人に対してそんな大人数で一斉に襲っても大して意味ないだろうに。
こちらとしては一纏めになってくれて助かるけど。
「マススリーピングオール!」
精神魔法の一つ。
強制睡眠魔法を魔王の紋章も使用して全力で使用する。
これは精神力が高い人には効果がない場合が多いのだが山賊程度には防げず。
さらに魔王の紋章も使用して全力で放ったのだ。
全員、睡眠中に陥った。
「よし。みんな、悪いけど手分けして山賊を全員縛って。攫われた女性達の保護も忘れないで」
「「「はいっ」」」
みんなが手分けして山賊を捕縛する中、お爺ちゃんが話しかけてくる。
「見事な魔法だったぞ、ジュン」
「ありがとうございます」
「だけどよ、お前。お前なら女達を傷つけずに山賊を皆殺しにする事も出来ただろう?」
「確かに出来ましたけど、殺さずに済むなら、そのほうがいいじゃないですか」
「ん…まぁいい。だがなジュン。殺さなければならないと決めた時は迷うな。そうで無ければいつか大事な物を守れなくなるぞ」
「はい、わかりました。肝に銘じておきます」
何となく重みのある言葉だったので素直に頷いておく。
それから捕らえた山賊達を転移魔法で近くの街の冒険者ギルドに突き出し攫われた女性達と共にギンの村に戻ったのは夜になってからだった。
いつも読んでいただきありがとうございます。
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