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第72話 魔法部門決勝トーナメント 1

 武闘会六日目。

今日は魔法部門決勝トーナメントだ。

第一試合から注目の対戦だ。


『いよいよ始まります、魔法部門決勝トーナメント!注目の一回戦第一試合は、謎の美少女魔法使いvsベリンダ! 謎の美少女って名乗るのは流行っているんでしょうか!長いので貴方も美少女で呼ばせて貰いますね!』


 コクコクと頷く無口っ子。

仮面少女と同じような名前で登録してたのか。


「流行ってるんですか?アイさん。解説をどうぞ」


「さぁ~どうなんでしょうね~」


 素知らぬ顔で言ってのけるアイ。

同じ事やろうとしてたくせに。


『対するベリンダさんは王都の病院で働く治癒魔法使い!真面目そうな見た目で時折見せる笑顔で病院に訪れる男性の心を鷲掴みにしてるとかなんとか!この試合でも観客の心を鷲掴みにできるでしょうか!』


 やーめーてーと叫ぶベリンダ。

こういうのは苦手そうだな。可哀そうに。


『それでは試合開始です!』


 ベリンダは試合開始後直ぐに走り出した。

そして出鱈目な軌道で走りつつも細目に魔法を打っている。

どうやら相手に的を絞らせず自分は的確に魔法を当てていこうという作戦らしい。

対する無口っ子は冷静にベリンダの攻撃を防ぎウインドボールを放っている。

どちらも直撃はない。

ベリンダはかすって多少の怪我をする事があったがその程度なら治癒魔法で直ぐに治せる。

対して無口っ子は被弾こそしてないが魔力の消耗はベリンダより激しいはず。

体力の消耗はベリンダのほうが上だろうけどそれほどでもないようだ。

このままいけば先に魔力が尽きるのは無口っ子だろう。

よほど魔力量に差がなければ、だが。


 無口っ子もそれが解っているのだろう。

攻撃方法を切り替えて来た。

下位の攻撃魔法ではなく中位の攻撃魔法で範囲が広い魔法に切り替えて来た。


「あの魔法は?」


「中位の火属性魔法でファイアサークルだな」


 ファイアサークルは一見するとファイアーボールと同じに見えるが着弾すると火の波が円形状に広がる範囲攻撃魔法だ。そしてその火は少しの時間消えずに残るのでベリンダの周りは火だらけ。

恐らくは相当に暑いだろう。あの場にいるだけでも辛いはずだ。

そこへ容赦なくファイアーボールを打ち込む無口っ子。

周りが火だらけのため思うように動けないベリンダは魔法で防御を余儀なくされる。

そこでベリンダも大技を使って状況を変えようとする。


「ジュン、あれは?」


「水属性の中位魔法、ビッグウェーブだな」


 ビッグウェーブは小規模の津波を発生させる魔法だ。

攻撃と同時に自分の周りの火も消した。


「やるじゃん、ベリンダ。治癒魔法だけじゃなく攻撃魔法もあんなに使えるなんて」


「本当にな。治癒魔法使いになる前から魔法の才能は認められていたんだからある程度はできると思ってたけど」


 今のところ状況はベリンダが有利か。

無口っ子はビッグウェーブを回避しきれずに受けてしまっている。

ベリンダもファイアサークルとファイアーボールのコンボでダメージを受けたが

治癒魔法で回復している。

ベリンダは自分の基本に立ち返り再び、走り回りながら攻撃魔法を繰り返し放つ。

消耗戦になればベリンダが優勢のまま終わるだろう。


「あの無口っ子、どうするかな」


「何か手を打たないとこのままじゃ負けちゃうしね」


「アイは無口っ子を応援してるのか?」


「そうじゃないよ。でもあの子、あの仮面美少女剣士の御仲間なんでしょう?じゃああの子にも何かあるんじゃないかなと思ってるだけ」


 なるほど。

確かにあの子の仲間なら何か切り札を持ってそうだ。


「お、やっぱり何かするみたいね」


 無口っ子の周りに小さな玉が浮かぶ。

赤と青と黄の三色の玉が浮かんでいる。


「あれは、精霊魔法だな」


 精霊魔法は精霊を呼び出す代償に魔力を消費する。

その点は他の魔法と同じだが魔力の質が高いと消費する魔力は少なくて済む。

三体同時に精霊を呼び出して使役しそれほど魔力を消費したように見えない事から無口っ子の魔力はそこそこ質が高いようだ。


「赤が火の精霊、青が水の精霊、黄が雷の精霊だろう」


 三体の精霊が攻撃を開始する。

無口っ子自身もウインドボールで攻撃に参加。

四つの属性の魔法攻撃が絶え間なく襲ってきてベリンダは直ぐに防戦一方。

よく粘ったが遂に耐えきれなくなり場外に吹き飛ばされて敗北する。


『決まったー!第一試合は美少女の勝利です!しかし、あの戦いでもフードが外れないとはどうなってるんでしょうか!私も含め顔を見たいと思った人は残念でした!』


 言われてみれば確かに。

よくフードが脱げなかったな。

特にビッグウェーブを受けた時とか。


『続く第二試合!トアールvsリンダ!』


 第二試合は特に知り合いでも無く見どころもそれほどない試合だったので割愛する。

リンダが勝ったが彼女では無口っ子には勝てないだろう。

一回戦で既に殆どの魔力を使ってしまったようだし。

武術部門と違って魔法部門の選手は魔力の消費も考慮に入れて戦わないといけないのだ。

傷は治癒魔法で治せるけど魔力はそうは行かない。

魔力回復の魔法薬もあるけど運営元である国からは支給されないし個人で用意するにも高価な品なので早々使えないだろう。


『さぁ次は第三試合!グレンvsモンド!グレンさんは予選で敗退してしまった兄弟の為にも優勝すると仰っていました!でも優勝したらジュン様と結婚すると公言する変態です!変態多いなあ!この武闘会!』


 言っちゃった!言っちゃったよ司会が!

でもいい!完全に同意する!

良く言ってくれた!


「失礼な!誰が変態なのか!私達は純粋に美しい存在が好きなだけ!ですのでジュン様!私が優勝したら結婚してくださいね!」


「不可能だ。諦めて」


 本当にこのバカ三兄弟は・・・。

君達のお父さんの苦労を少しは考えなさい。


「バカだね」「バカでしかないね」「バカねえ」


 はい、三度目の満場一致を頂きました。

グレンはバカ三兄弟の次男でここまで唯一勝ち残っている。

なら実力が一番高いのかと言えばそうじゃないだろう。

対戦運が良かっただけだろう、どうせ。


 と、思いきや。


「うらうらうらうらうらうらうらああ!」


 左手でウインドボール、右手でファイアーボールをマシンガンのように連射。

しかも時折ウインドボールとファイアボールを合成してファイアブラストにして放っている。

普通の魔法使いは二人で合成して放つのだが彼は一人でやっている。

左手と右手で属性の違う魔法を連射して放つだけでも結構な高等技術なのに一人で合成魔法まで放つというのはかなり驚きだ。

ボクにも出来るけど。

相手のモンドは結局何もできずに敗北し、グレンの勝利が決まる。


「いや、驚いた。次男はかなりの実力じゃないか」


「やっぱりあれ、凄いの?」


「ああ、かなりね。多分、三兄弟の同調魔法ってグレンが要になってるんだろうな」


 しかし、彼がこのまま勝ち進むのはイヤだな。

彼が優勝しても負けるつもりはないが優勝されるとめんどくさい事になりそうだ。


『さぁさぁ第四試合です!ニノvsロレンタ!ニノさんはジュン様が育てた治癒魔法使いの一人で今はラガットの街の病院で働いています!愛らしい見た目もあってラガットの病院の看板娘となってるそうです!』


 病院の看板娘って聞いた事無いや。

そういえば彼女は領主ラガットの四女だったか?


『対するロレンタさんは我らがエルムバーン魔王国の魔法兵団団長!その実力は本物!でもそんな立場の人が武闘会に出て大丈夫なんでしょうか!』


「うるさいよ小娘!いいんだよ別に!」


 実際、どうなんだろう。

魔法兵団団長が一回戦であっさり負けた、となればやはり問題なのだろうか。


「どうなんです?お父さん」


「ん?問題ない。ロレンタは実力も高いがそれだけで団長をしてるわけじゃない。魔法の知識も魔法兵団を指揮する能力もある。卑怯な事をしなきゃ大丈夫だ。そりゃ一回戦で負けたら何かいう奴はいるだろうが一時的なもんさ」


 魔王である父アスラッドがそう言うなら大丈夫か。

実際ロレンタはボクが見る限りじゃ優勝候補の一人だし。


『それでは一回戦、第二試合開始です!』


「ほれほれ、後が支えてるんだ。さっさと終わらせるよ!」


 ニノはベリンダと同じ戦法で戦おうとしたようだがロレンタの中位風魔法のトルネードの乱れ撃ちであっさり場外に飛ばされてしまう。しかも、その際地面に激突して怪我をしないよう風魔法で優しく下す余裕まであった。

いやはや、レベルが違うな。


『ロレンタさんの勝利です!魔法兵団団長の肩書は伊達じゃなかった!』


「確かに強いね。しかも言葉使いは荒いけど怪我させないようにしてたし優しい人みたいだね」


「ああ見えて部下からの信頼も厚い。良い奴なんだが未だ独身だ。男運がないらしい」


「ギルドマスターでも紹介してあげたらどうです?」


「ラルクをか?ダメだな。以前聞いてみたが好みじゃないらしい。ロレンタの」


 そうか駄目か。

案外お似合いな気がするけど。

モンジェラさんに頑張ってもらうしかないか。


『さぁ第五試合です!フレデリカvsキアリカ!フレデリカさんはベリンダさんニノさんと同じくジュン様に教えを受けた治癒魔法使い!ベリンダさんと同じ王都の病院で働いています!フレデリカさんのその凛とした佇まいは女性に人気だとか!』


 そうなのか。

ところでどこから集めてるんだその情報。

またママ上じゃないだろうな。


「しかし、魔法部門は女性が多いね。16人中10人が女性じゃない」


「それはな、女性は武術を習うより魔法を習う人の方が多いんだよ。やはり元々の肉体能力が男性のほうが強い分、女性は魔法で補おうとする。魔法使いは女性のほうが多くなるんだ」


 そういうものか。

しかし、ボクの周りには肉体派な女性が多い気がするが。


『それでは第五試合開始です!』


 フレデリカはベリンダのように自身のダメージは最小に相手へのダメージは着実に与えていくという戦法を予選の時から崩さない。

安定した勝ちっぷりである。


 続く第六試合と第七試合は特に注目すべき点はない。

フレデリカならどちらと当たっても勝てるだろう。

そして一回戦最後の試合。


『さぁ一回戦第八試合!シルヴィエッタvsトライア!シルヴィエッタさんは王都で人気の服飾店の店長さん!私もよく利用してます!それとジュン様やユウ様がデザインした服も売ってます!特に女性用下着なんか御薦めですよ!』


 下着はユウとアイが中心になって作成した物だ。

この世界の下着は可愛い物がないと言って作った。

所謂、ブラやショーツといった類の物だ。

これが女性達の間で大ヒット。

特にブラはオーダーメイドとなる人が多く、それを作る為の人手を新たに雇い店も大きくなった。

今じゃシルヴィさんの御店は大繁盛店になったのだ。


『それでは試合開始です!』


 シルヴィさんの動きはやはり他の魔法使い達とは動きが違う。

使う魔法は最小限に、体捌きやスピードで圧倒している。

危なげなくシルヴィさんの勝利が決まる。


 これで、ベスト8が決まった。

フレデリカとシルヴィさんは準決勝であたる。

それが二人にとってこの決勝トーナメント最初の壁になりそうだ。

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