第70話 武術部門決勝トーナメント 3
「さぁ注目の試合です。ステファニアvs仮面少女。アイさんの予想ではやはり仮面少女の勝利ですか?」
「そうですね~。ステファニアさんも強いですがやはり仮面美少女剣士の勝利だと思います~」
「まだ続けるのね、それ」
「はい、ユウさんはどうですか~」
「無視!?ちょっとジュン君?」
「う~ん、ステファニアさんの技、『服破り』が決まってしまったら仮面美少女剣士の敗北もあると思います~」
「ビッグインパクトの事ですね~あれは確かに危険ですね~」
色んな意味で。
さて、どうなるか。
「う~ん、また女の子かあ、萌えないわぁ。というか次もどっちが来ても女の子なのよねえ。萌えないわあ~」
この試合に勝っても次はクリステアかルチーナになるからステファニアさんには燃えない展開だろうね。
「ま、早いとこ済ませちゃいましょ。その可愛いお胸を見せてもらってから、ね」
ババッと自分の胸を庇うようにする仮面少女。
「あれも作戦の内なのかね」
「そうね、あれでイヤでもビッグインパクトを意識して警戒するだろうし注意がそこに向きすぎるって事にならなければいいんだけど」
『さぁ二回戦、第一試合 女の敵vs謎の仮面美少女剣士 開始です!』
「ちょっと!ちゃんと名前で言いなさいよ!」
本当に言いたい放題だなウーシュさん。
後々大丈夫なんだろうか。
開始直後に距離を詰める仮面少女が速攻を仕掛ける。
それをわかっていたとばかりに迎撃するステファニアさん。
「凄いな。ハンマーで大剣と打ち合ってるよ」
「剣の速度について行けるステファニアさんが凄いのか。ステファニアさんのパワーに負けない仮面美少女剣士が凄いのか。両方かしら?」
多分、両方だな。
大剣とハンマーの打ち合いを制したのはステファニアさんだ。
何故か仮面少女の少し動きが鈍くなったとこで仮面少女の大剣を強くはじく。
「ビッグインパクト!」
「!」
至近距離からのビッグインパクトを避け切れず仮面少女のズボンが破れ太ももと御尻が少し見えてしまう。
「私、紋章の力で武器越しでも相手に増幅した衝撃を与える事が出来るの。打ち合ってるだけでもダメージは蓄積していくわよ」
厄介な能力だな。ビッグインパクトもその紋章の力なのだろうな。
「あら、綺麗な太もも。あ、もしかして御尻も少し見えちゃった?ごめんなさいねえ。わざとじゃないのよお?」
絶対嘘だ。
どこを狙ってたのかは不明だが服を破る気だったのは間違いない。
観客席では仮面少女の連れの一人が酷く怒ってるように見える。
『やはり女の敵!少女相手に容赦なし!』
「だーから女の敵言うな!私も乙女なのよ!?・・・ん?」
それも違うだろう。
そりゃ服を破って戦えなくすれば怪我させることなく勝利できるだろうけども。
果たしてそれが優しさと呼べるかは議論が必要だろう。
そして仮面少女が何かするようだ。
御尻を隠すのを諦め、大剣に手を当てている。
すると大剣が輝きだす。
身体も光っているようだ。
「あれは何だろう?魔法じゃないようだけど」
「紋章の力だと思うが、何の紋章かはわからんな」
「ユウ、賢者の紋章でわからない?」
「駄目、わからない。データ不足」
父アスラッドでも賢者の紋章でもわからないか。
何か紋章を持ってるだろうとは思ってたけど特殊な紋章なのかな。
「な~んかヤバそうね。ここは距離を取らせてもらうわ」
ステファニアさんが距離を取ると同時。
仮面少女の準備も終わったようだ。
「!」
「はやっ」
さっきまでとは速さが違う。
一瞬でステファニアさんとの距離を詰めた。
再びで大剣とハンマーで打ち合うが。
「嘘っ」
打ち合う度ハンマーが斬り飛ばされて行く。
やがて武器を失い首に剣を添えられたステファニアさんは敗北を認める。
「ふ~参った、私の負け」
「・・・」
ステファニアさんが敗北を認めると仮面少女も剣を引く。
仮面少女の勝利だ。
『謎の仮面美少女剣士の勝利です!というかこの呼び方長いんでもう美少女って呼びますね!いいですか!?』
コクコクと頷く仮面少女。
いいのか、それで。
御尻が少し出てるのを思い出したのかまた恥ずかしそうに隠している。
早々に立ち去って行った。
「何だろうね、あの能力。かなり強力な紋章みたいだけど」
「う~ん、もしかしたら正体を隠してるのはその辺りに理由があるのかもね」
ふむ。ありそうな話だな。
しかし考えても分かりそうにない問題か。
『さぁ続きましては!二回戦、クリステアvsルチーナ!情報によると御二人は姉妹だそうです!クリステアさんがお姉さんでルチーナさんが妹さん!クリステアさんが姉の貫禄を見せつけるのか。それともルチーナさんが妹の下克上が成功するのか!注目の試合です!』
そう、次はクリステアとルチーナの姉妹対決だ。
考えてみれば武闘会の決勝トーナメントに姉妹揃って出場って凄いな。
ルガー家って優秀なんだな。
「さて、注目の試合だけどアイとユウはどっちが勝つと思う?」
「ウチはクリステアかな。技術的にクリステアが上だと思う」
「私はルチーナ。紋章はルチーナの方が上だと思う」
「あ、普通になってる。もう何かのごっこ遊びはやめたの?」
「ええ、流石に飽きて来たので。シャンゼ様はどっちだと思います?」
「私は~・・・ルチーナさんかな。あの根性がいいわ」
一回戦で見せたあの根性か。
確かにいい根性を見せた。
「ジュン君はどっち?」
「ボクはクリステアですね。能力バランスが高いレベルでとれてますから」
「あら、綺麗に割れたわね」
クリステア2票。ルチーナ2票。
確かに綺麗に別れた。
だが実際二人の実力は近い。
どっちが勝ってもおかしくはない。
実に楽しみな試合だ。
『それでは!試合開始です!』
「じゃあ行くわよ、姉さん!」
「いいですよ、掛かって来なさい。胸の大きさ同様、私には勝てない事を教えてあげます」
「む、胸は関係ないでしょ!だいたい私はまだこれから成長するもん!それに腰の細さは私の勝ちだもん!」
「それは単に貴方が小柄なだけでしょう。それにこれから成長?フッ、夢を見過ぎでは?」
「ムッキー!ぶっ飛ばす!」
不毛な言い争いから始まった姉妹対決。
ルガー夫妻も貴賓席で見ているのだが、楽しそうに笑ってる。
きっとあのくらいなら日常茶飯事だったんだろうな。
序盤から激しい打ち合いだ。
長剣と戦斧の違いはあれど二人の力量はほぼ互角に見える。
「成長しましたね、ルチーナ。一緒に訓練してる時から思ってましたが、ここまで私とやり合えるなんて」
「ふ、ふん!まだまだこれからなんだから!」
「いいでしょう。私も全力で行きますよ」
クリステアが長剣に剣気を宿すとルチーナも対抗して戦斧に斧気を宿す。
剣豪の紋章と断斧の紋章の力だ。
二人の打ち合いが激しさを増す。
それでも二人の力量は互角。
このままでは二人より先に武具のほうが壊れる。かと思ってたらルチーナが奥の手を見せた。
「この時まで見せずに隠して来た秘密兵器!くらえええ!」
突然、クリステアから距離を取ったルチーナは盾を投げた。
盾にはチェーンが付いておりクリステアの剣をからめとってしまう。
シールドソーサーとでも言えばいいのかな。
あんな奥の手を隠していたのか。
「やった!悪いけどこの勝負、私の勝ちよ!姉さん!」
「まだです!秘密兵器があるのは貴方だけじゃありません!」
クリステアの盾が気を帯び始める。
あれはもしかして盾気?
「シールドインパクト!」
盾を前面に構えたまま突撃しルチーナにぶつけて吹き飛ばすクリステア。
今までのシールドバッシュとは威力が違うようだ。
ルチーナが吹き飛んで倒れている隙に剣を回収している。
「な、何よ、今の・・・」
「私の盾の紋章は変化して大盾の紋章になりました。盾気を使えるようになった今、これまでとは違いますよ」
いつの間に大盾の紋章なんて得ていたんだ。
この時まで秘密にしていたとは。
全然気が付かなかった。
「では、再開しますよ。これからは盾も全力で使います。覚悟しなさい」
「くっ、まだまだよ!」
クリステアの奥の手の大盾の紋章は知られてもデメリットは少ない。
対してルチーナのシールドソーサーは一度見せたらもう怖くない。
この差は大きく、覆す事ができないままルチーナは戦斧を弾き飛ばされ敗北する。
「負けた。私の負けよ、姉さん」
『クリステアさんの勝利です!姉妹対決は姉のクリステアさんが制しました!しかし妹のルチーナさんも惜しかった!二人の健闘に拍手を!』
ルチーナの敗北宣言を聞きウーシュさんがクリステアの勝利宣言をする。
本当にいい勝負だったと思う。
ボクも惜しみない拍手を送ろう。
「ルチーナも強くなりましたね。特に剣をとられた時は本当に焦りました。できれば大盾の紋章はジュン様と戦う時まで隠しておきたかったのですが使うしかありませんでした」
「まさか、剣豪の紋章だけでなく大盾の紋章まで得てたなんてね。前までのシールドバッシュなら耐え切る自信があったのだけど」
本当にびっくりだ。
もし二人の奥の手を知らずに戦う事になってたらボクもまともにもらってただろう。
ここで見る事が出来て本当によかった。
続く第三試合と第四試合は師匠とフィーリアさんがあっさり勝利した。
師匠にとって次のフィーリアさんが今までで最も強敵となるだろう。
フィーリアさんは恐らくこの武闘会で最速。
師匠はどう対処するのか実に興味深い試合になりそうだ。




