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第57話 親衛隊

「美味いな、これ」


「でしょう?ダイランの街の新名物ですよ」


ボクは今、父アスラッドとたこ焼きを食べながら話をしている。

話の内容は最近の冒険であった事だ。


「それで、何か分りましたか?」


「魔獣の研究をしてた奴の行方や正体は何にもわからん。お前の言う通り魔獣の研究をしてたって確認が出来ただけだ。どんな魔獣を作ろうとしたのかも不明。証拠や足取りが掴めそうな物は処分したんだろう。ただ一つ、残っていた痕跡から研究者は一人だ。複数犯じゃない」


「ダイランの東側、王都から見て西側で活動してるという盗賊の方は?」


「そっちも大した事は分ってない。ただそいつらは西側だけじゃなく王都の東側でも、いや北でも南でも広範囲に活動している。神出鬼没だ。ただ、殺しはしてないようだ。盗むにしろ強奪するにしろ極力無傷で奪うようにしてるらしい。義賊のつもりかね」


「例の暗殺者達の方は?」


「そっちもな~んも。エルミネア教信者だろうってだけじゃな。あの国が一番疑わしいがそれだけで問い詰めるわけにもいかん。ただでさえあの国とは微妙な関係だ。何かあれば戦争まで一直線だ。慎重に事を進めないとな」


父アスラッドの言うあの国とは聖エルミネア教国だ。

宗教って厄介だなあ。


「つまり、ほとんど何にも分かってないじゃないですか」


「そう言うな。相手だって証拠を残さないようにする。バレないように隠れもする。簡単にはいかんさ」


それはそうかもしれませんけどね。

こういう憂いは早く断ちたいんだけどな。


「さて、本題だがな」


「はい」


「お前の親衛隊を作ることになった」


「ボクの、ですか?」


「ああ。わしの親衛隊は既にあるしな。お前の親衛隊ではあるがユウとアイも守ってもらう事になる。お前が不在の時や有事の際はわしが命令を出す事もあるかもしれんが基本はお前が指揮権を持つお前の部隊だ」


「今から必要ですか?そんなの」


「お前もいずれはこの国の魔王になるんだ。今から部隊を動かす事、指揮する事に慣れておけ。セバストやノエラがいるがあいつらとはまた別だ。それに親衛隊と言ってもお前の警護だけさせなくてもいい。間違った使い方をしてるようなら口出しはさせてもらうがお前なら心配いらんだろう」


「近衛騎士団とはまた違うのですか?」


「ああ。近衛は国の重要人物を守る事を主にしている。親衛隊と確かに任務が被るがな。近衛の仕事はもう少し多岐に渡る。とはいえ殆どかわらん。あまりこだわらずに使え」


「はい。分かりました」


前世では考えられないな、親衛隊がいる身分なんて。

常時誰かが傍にいる事になるのは勘弁してほしいけど。


「ところで人員はどこから募集するのですか?」


「近衛や騎士団、兵団の中から志願者を募って優秀な者、信頼できる者を選抜する。あと来年の春に十年に一度の武闘会の予選が開始されるのは知っているな?」


「はい」


武闘会。

十年に一度エルムバーン魔王国で開催される。武の祭典。

武術を競う部門と魔法を競う部門の二つに分けて行われる。

国内各地で予選が行われ本戦は王都の闘技場で行われる。


「その武闘会で見込みがある者をスカウトする。お前も選んでかまわない。お前の親衛隊だからな。ただし他国出身の者は選ぶな。あと選んでもすぐに声を掛けるな。こちらで素性を調査してからだ」


「暗殺者やスパイを警戒してるんですね?」


「そうだ。当然だろ」


「わかりました」


「最初は百人規模の部隊に抑える。いきなり数千人の指揮をしろってのも無理だろう。将来は隊長に指揮を委任してもいいが出来るだけ自分でやれ。あとお前も武闘会にでるか?」


「いえ、止めておきます」


「そうか?お前ならいい線いけると思うんだがな。まあ仕事が減って助かるか。なら予選から見ておけよ。お前好みの美人がいるかもしれんぞ」


「ははは、美人だからって選べるわけでもないでしょう」


「選んでもかまわんがな。ああ、武闘会で親衛隊隊員を選ぶのは秘密にしておけよ。これで話は終わりだ」


「はい、では失礼します」


父アスラッドの部屋を出て自室に向かう。

親衛隊かあ。

アイドルみたいだな。


自室で待っていたユウとアイ、ノエラ達に親衛隊の話をする。


「親衛隊かあ。なんだかアイドルみたいだね、お兄ちゃん」


「ああ、ボクもそう思った」


「アイドル?とは何ですか?」


「あ、あ~人々から崇拝される存在、かな?」


「ならばまさしくジュン様はアイドルですね」


「は、ははは、そうかなあ?」


迂闊だった。

アイドルってこの世界には無い言葉だったか。

話を逸らそう。


「り、リリーは武闘会に出る?」


「リリーがですか?出ませんよお。弓は不利ですもん」


「それもそうか」


あの障害物も何もない限定された空間での戦闘は弓使いには不利だ。


「ウチはでようかなあ。腕が鳴るわぁ」


「残念ながら出場資格は十二歳以上からだ」


「ええ~!なにそれつまんない!」


「とゆうかアイが出たら相手が可哀そうだろ。やりづらいだろうし」


見た目は十歳の美少女。

しかもダルムダットの魔王女様。

怪我でもさせたらって考えたら相手も実力を発揮できないだろう。


「じゃあじゃあ仮面を着けて出場するってのは?謎の美少女仮面武闘家現るってね」


「仮面付けてたら美少女かどうかわかんないでしょ。あきらめなさい」


「ちぇー」


前世でも格闘家だったアイは血が騒ぐようだがあきらめてもらうしかない。


「お兄ちゃんは出ないの?」


「出ないよ。ボクが出てもアイと同じでやりづらいだろう?」


「ふ~ん。お兄ちゃんなら優勝できると思うんだけど」


それは買い被りだと思うな。


「美人がいたらスカウトする?」


「美人にこだわる必要はないだろ?」


「どうせなら美人がいいでしょ?」


「美人はもう周りに沢山いるだろ?」


「そ、そう?えへへ、じゃあいいかな~」


「そうね、美人はもう沢山いるかもね~、えへへ」


ユウとアイだけじゃなくノエラとリリーも嬉しそうにしている。

まあ君達は確かに美人だよね。


「へへへ」


でも、セバスト君、君はちょっと違うんじゃない?

イケメンだとは思うけども。


「わっふふ~」


ハティもちょっと違うような・・・。

いや他の家族と同じように人型に成れれば美人になるんだろうか。

成るんだろうな。他の家族を見る限り。


まあいい。

年が明けるまでは少しのんびりしよう。

そうもうすぐ新年、年明けである。

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