第43話 新たな龍王
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『よし、着いたぞ。ここの洞窟がそうだ」
「寒いですね・・・」
標高の高い山の上のほうにある洞窟に来ているのでかなり寒い。
ここは現代地球で言えばロシアか中国の境か。
まだ日本で言えば季節は秋なのだがここはもう真冬のような寒さだ。
『うん?寒いのか?我らは何とも思わぬがな。とにかく行くぞ』
「暖めてあげる~」
「あたしも~」
「わっ」
突然左右からハティのお姉さん達に抱き着かれた。
確かに暖かい。
特に腕が幸せな感覚に・・・
「わうがう!」
「あら、ハティ。焼きもち?」
「たまにはいいじゃない。今はお姉ちゃんに譲りなさい~」
そんなやり取りをしながら洞窟の奥へ進んでいく。
かなり大きい洞窟だ。
森で見たあのドラゴンもこの洞窟になら入れるだろう。
『お~い。我だ。いるか』
洞窟の主に呼び掛けながら進む。
すると開けた場所へ出た。
そこには一匹のドラゴンが丸まって寝ていた。
白い鱗の綺麗なドラゴンだ。
『おい、起きんか。我だ。フェンリルだ』
『ん・・・誰かしらこんな時間に』
起きたドラゴンが身体を起こす。
やはりデカい。
あの黒いドラゴンと同じくらいだろうか。
『まだ夜になったばかりだ。さほどおかしな時間ではない。それよりも久しぶりだな』
『あら、フェンリルじゃない。久しぶり。なあに?家族総出で訪ねてきたの?でも貴方のとこ男の子は二人じゃなかったかしら?』
『その黒髪は我の子ではない。しかし用があるのはそやつだ。お主に頼み事があって来た』
「初めまして。美しきドラゴン。ボクはエルムバーン魔王国の魔王子ジュン・エルムバーンと申します。突然の来訪、申し訳ありません。ですがどうしてもお頼みしたい事があるのです。どうか聞いて頂けないでしょうか?」
『あらご丁寧に。私は神獣ホーリードラゴン。この辺りのドラゴンをまとめる者よ。それにしても貴方・・・』
「はい、なんでしょう?」
ジーっとボクを大きな瞳で見つめるドラゴン。
やがて カッ と光ったと思ったら
そこにいたのは純白のドレスをまとった金髪で紫の眼をした美女だった。
「貴方、可愛いわね!」
突然抱き着かれた。
首に手を回し抱き寄せ顔を胸に押し付けられた。
「わぷっ」
「か~わいいわねぇ。この子はどうしたの?まさか娘の誰かの御婿さん?まさか貴方のじゃないわよね」
『そんなわけあるか。そやつは一番下の娘の契約主だ。それから我ら一家はそやつの城に居候しておる。故に今回、我らが骨を折ってここに来たのだ。とりあえず話を聞け』
此処に来た経緯を順を追って説明する。
最初はにこやかに聞いていたドラゴンも途中から険しい顔になり最後には大きく溜息をついた。
「そう、そんな事が・・・。その黒いドラゴンはここから南西の方角にある山に住んでいたバハムートね。間違いないと思うわ」
『知り合いか?』
「ええ、黒い鱗で龍王の紋章を持ったドラゴンとなると他にはいないわ。ここ数十年会って無かったけど。そんな事になってたなんてね」
「あのドラゴンには家族はいるのですか?いるのであればその家族に紋章を返すべきだと思うのですが」
「いないわ。だって私に求婚してきたけどフったもの。好みじゃなかったから。それがショックだったみたいで『オレは生涯独身を貫く!』とか言ってたけど。まあそれでも女遊びはしてたみたいだからどこかに隠し子くらいはいるかもね。そういうとこも嫌だったからフったのだけど」
おおう。
まるで人の恋愛のような生々しさ。
ドラゴンにもそういうのあるんだな。
『ああ、昔そんな話をしてたな。あいつはその話の奴だったか』
「そうそう、その話の奴よ。他にも酒癖が悪かったり喧嘩好きだったり。まあ何故か眷属のドラゴンには慕われてたようだけど。私には合わなかったわね。まあ龍王の紋章を使って無理やり迫って来るような真似をしなかっただけまともな奴だったかもね」
そうか龍王の紋章を使えばドラゴンのメスも無理やり結婚させる事もできるのか。
確かにそれは外道だな。
「それで龍王の紋章だけど私が貰うのは構わないわよ。ただいくつか条件を付けさせてもらうわ」
「どのような条件でしょう?」
「そんなに難しい条件じゃないわ。まず、私が紋章を継承した事は極力秘密にしてもらうわ。バハムートを襲ったやつらの狙いが龍王の紋章にないとも限らない。私が紋章を継承したと知られたら私も襲われないとも限らない」
「龍王の紋章を狙うとはどういうことでしょう?」
「継承可能な紋章を一時的に何かに封印する手段があるのよ。これはせっかくの貴重な紋章を継承する前に所持者が死んでしまった場合の避難措置として作られた技術らしいけど。悪用すれば奪うこともできるというわけね」
『そんな技術が有ったのか』
「古い技術だし確か魔族の国には伝わってないわ。それにあくまで一時的。長期的な封印は出来ないの」
「なるほど、わかりました。貴方に紋章を継承した事は秘密にします。ただ此処に来ることは身内には相談の上で来てます。みんなにも口止めはしますが既に知っている人達に関しては御許しください」
「それは仕方ないわ。でも口止めはしといてね。あと、私は住処を変えるわ。念の為にね」
『うん?そこまでするのか?お主が紋章を継承した事はまだバレてはおらんだろう』
「念の為よ。少なくとも龍王の紋章を持った神獣バハムートを殺そうとした奴らがいるのは確かなのよ?用心はしなきゃいけないわ」
「住処を変えた事も秘密にしておけという事ですか?」
「そうね、それも秘密にしといて。次に私と召喚契約して頂戴」
「契約、ですか?ボクは構いませんが何故?」
「私が危険に陥ったら思念を飛ばすわ。そしたら召喚して頂戴。そうしたらとりあえず逃げる事ができるわ。でも貴方の都合で私を召喚するのはやめて頂戴。バレかねないし」
「分かりました」
『住処はどこか行く当てがあるのか?』
「特にないけど、兄夫婦のとこを訪ねるのもいいかもね。久しぶりに」
『行く当てがないなら我らと同じようにこやつの城で世話になったらどうだ?人型で暮らす必要はあるがなかなかの居心地だぞ』
いや、そんな勝手に。
そりゃ大丈夫っちゃあ大丈夫だろうけども。
「ん~そうねえ。可愛いこの子と一緒に暮らすってのも悪くはないけど、今はやめておくわ。しばらく世界中を見て周って知り合いに会いにいってみるわ。せっかくだしね。それから貴方の城に行かせてもらうわ」
「はい、その時は歓迎させて頂きます」
まあ一時滞在するくらいは大丈夫だろう。
恩がある相手なわけだし。
「それから最後の条件よ。バハムートを襲った犯人を捜して頂戴。これは絶対条件よ。相手が分からないといつまでも襲撃に怯えることになる。相手が分かればドラゴンブレスを私と私の眷属で放てば消滅させる事ができるもの。怯える必要は無くなるわ。それに相手が分かれば目的も解るかもしれない」
「相手の目的、ですか」
「ええ。相手が龍王の紋章を狙ったのだとして、何のために龍王の紋章が必要だったのか、という事よ。想像でしかないけどろくでもない目的に使うんだと思うわよ?」
龍王の紋章を奪った後の使い道。
ドラゴンを支配する能力の使い道。
確かにろくでもない使い道しか思い浮かばないなあ。
「分かりました。恐らくはそいつらも必死に隠そうとするでしょうから確実につかめるとは限りませんが魔王である父に言って捜してもらいます。国防にも関わりそうですし」
「それでいいわ。じゃあまず召喚契約しましょう」
以前、ハティにもやった召喚契約の手順をホーリードラゴンにも実行する。
しかし、ボクの都合で呼び出せないとはいえ神獣との契約二回目って実は凄いんじゃなかろうか。
「はい、契約成立よ。じゃあ紋章を受け取るわ」
「はい、じゃあ紋章を・・・」
紋章を継承させるって
どうやればいいんだろう?
『どうした?さっさとせんか」
「あの、紋章の継承ってどうやればいいんですか?」
今まで考えた事もないし調べた事もない。
一部紋章に継承可能な物があると知ってただけだ。
『なんだ知らんのか』
「仕方ないわね。私の言う通りにしてね。簡単だしすぐ済むわ」
「はい、お願いします」
「まず紋章を出して」
「はい」
ボクは龍王の紋章を額に浮かべる。
するとホーリードラゴンが額をくっつけて来た。
近い近い。
人型のホーリードラゴンはかなりの美人なので照れてしまう。
「あ、あの・・・」
「照れてないで、集中なさい。で、私に紋章を継承するって心から思い願うの。額は離しちゃ駄目よ」
この状態では中々厳しい。
こっそり魔神の紋章を使用し集中力を上げる。
そして紋章の継承を願う。
すると―――
「はい、成功よ。これで龍王の紋章は私の物になった」
『どうだ、ジュン。楽になったか?』
「えっと・・・はい。頭が軽くなった気分です」
魔法薬で頭痛は抑えていたが
龍王の紋章が無くなった実感と共に頭に響いていたものがが消えた。
良かった。なんとか助かったようだ。
「ところで今更だけど、貴方から何か条件はないの?」
「ボクからですか?」
「貴方には使えないとはいえ龍王の紋章は強力よ。紋章を継承する事は厄介事を背負いこむ事になるかもしれないけど私にとってメリットもある。それに私が悪用しないとは限らないでしょう?会ったばかりの私を信用する要素は何もないはず。条件を出して縛ったほうがいいんじゃないの?」
成程、言いたい事は解る。
解るけどこちらからお願いしてる身だし
それに・・・
「大丈夫です。フェンリルが貴方はいい奴だと言ってました。ボクはフェンリルを信用してますから、そのフェンリルが貴方に渡す事を提案したということはきっとそれが一番いいからです。なら貴方を信用しない理由は今のところありません」
「あら、そう・・・」
『フンッ』
意外そうな顔をしてフェンリルをみるホーリードラゴン。
視線を合わせないようにそっぽを向くフェンリル。
神獣とゆうかもうなんだか人間ぽい仕草だなあ。
「まあ、それはそれとして、何かないの?一つくらい聞き入れるわよ」
「そうですね。それじゃあ・・・。先ほどボクの都合で召喚するなという話でしたが一度だけ、本当に助けてほしい時に一度だけボクの都合で召喚させてもらえませんか?」
「契約の一部変更ね。まあいいわ。一度だけよ?」
「はい。それでお願いします」
「いいわ。改めて契約成立ね。じゃ問題も解決したしもう戻るのでしょう?私も旅に出る事にするわ」
「はい。有難うございました。ホーリードラゴン、新たな龍王」
「ふふ。龍王かぁ。まさか私が龍王になるなんてね。それじゃあね。いつかまた会いましょう」
「はい。いつかまたお会いしましょう」
『さらばだ。龍王よ』
こうしてボクは龍王の紋章をホーリードラゴンに継承し
新たな龍王が生まれたのだった。
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