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第42話 ドラゴンが住む山へ

「ドラゴンがいたのかよ・・・」


「はい。手負い、でしたが。ギルド、には情報は?」


「ねえな。神獣のドラゴンなんて大物に手を出して取り逃がしたなんてすぐさま各国のギルドに情報が回らないとおかしい。どこかの軍や冒険者が正式に討伐を行ったのならな。それがないってこたあ非公式の討伐。それも神獣の討伐を非公式にやるなんてそこそこデカい力を持った組織だな。それこそ国とかな」


国が非公式にやった可能性が、高いってことか。

迷惑な話だ。


「それよか顔色悪いぞ。大丈夫かよ?」


「ええ、ちょっと、頭痛が、するだけです」


多分これは、龍王の紋章を継承したせいだ。

王都に戻ってからだんだん酷くなってきた。


「じゃあ、報告は終ったので、戻り、ます」


「おう。今回は御苦労だったな。ドラゴンの素材の報酬は計算しとくから後日受取にきてくれや。ゆっくり休んでくれ」


ギルドマスターとの会話を終え、城に戻る。

ボクの部屋にみんな集まってもらって相談する。

ボクはベッドで横にならせてもらう。

部屋に着く頃には痛みが酷く着の身着のままだ。


「お兄ちゃん大丈夫?」


「だんだん酷くなってる感じ?」


「ああ、痛み止め、の魔法薬を飲んだから、そのうち楽に、なるよ。大丈夫」


「それは龍王の紋章のせいなのか?ジュン」


「多分、そう。とゆうか、それしか、心当たりは、ない、です」


「治す方法はありませんか?フェンリル様」


「龍王の紋章を誰かに継承するしかないな」


「それなら、わしが継承しよう。ジュン、わしに渡せ」


「やめておけ。ジュンに継承されたのも恐らくは奇跡だ。お主が継承したらどうなるかわからん。最悪死ぬぞ」


「どういう事だ?」


フェンリルが言うには、龍王の紋章はドラゴンが持ってこその紋章。それを魔族のボクが持つには相当な無理があり拒絶反応が出ているのだという。継承出来た事事態が奇跡だという。


「では、どうする?ジュンをこのままにしとくわけにはいかんぞ」


「ドラゴンに渡すのが一番だ。我に神獣のドラゴンに幸い知り合いがいる。そいつのとこへ連れて行ってやろう」


「わかった。高速馬車を用意しよう」


「いや、馬車で行くのは時間が掛かりすぎる。ここからはかなり遠い。というか別国だ。普通の手段では駄目だな」


「なんだと。どこの国だ」


「ヴェルリア王国だったか?そことこの国の境にある高い山の洞窟だ。馬車では時間が掛かりすぎるだろう?」


「しかし、それしか・・・。ジュンは一度行った場所にしか転移できんし、そもそもその状態では魔法はまともに使えまい」


「我が連れて行ってやると言ったろう。我の背中に乗せて連れて行ってやる。馬車なら数カ月かかるだろうが我なら二日で着く。今回は特別だ」


「そうか。すまない、息子を頼む」


「何、気にするな。この国には我の家族も世話になってる。娘の契約主でもあるジュンを見捨てるつもりもない」


「あり、がとうござ、います」


「気にするなと言ったろう。では魔王よ、ジュンは動けまい、二日とは言え準備がいるだろう。代わりにやってやれ。痛み止めの魔法薬は忘れるなよ」


「わかった。急ぎ用意させよう。セバスン」


「畏まりました。急ぎ用意します」


「行くのはフェンリルとジュンだけになるか?」


「ああ、いえ魔王さん、私達フェンリル一家で行きますよ。私達ならついて行けますし何かに襲われても大抵なんとかできますから」


「そうか、よろしく頼む」


「ええ、お任せください」


こうして話がまとまり神獣のドラゴンが住む山へフェンリル一家と共に向かう事になった。

準備が整い次第向かう事になる。


「私も付いて行きたいけど・・・」


「我慢するしかないね。ウチも行きたいけど一緒にいっても移動時間が増えるだけだもの。ジュンの負担にしかならない。フェンリル達に任せましょう」


「ジュン様が行くとこ、私が行く所なのですが・・・すみませんジュン様」


「リリーも行きたいですけど、我慢するです。ごめんなさいジュン様」


「ありがとう、大丈夫だよ。帰りは転移ですぐだしね」


痛み止めが効いてきたのでだいぶマシになった。

凄いな魔法薬。一本金貨3枚なだけある。

しかし、これを使い続けていればいずれは効き目が無くなって来るだろう。

馬車での移動だととても時間がかかるのでそれまでは持たなかったろう。

症状が現状のままとも限らないしできるだけ急ぐ必要がある。

フェンリル達には感謝しないと。


『準備は出来たか?』


「はい。出来ました」


『では乗れ。つらいなら寝てても構わんぞ。娘達を一緒に乗せるから支えさせる。いいな?お前達」


「わふ!」


「は~い」


「おまかせ~」


長女さんがグイっとボクの頭を抱えて無理やり寝かせ膝枕をしてくれる。

お腹の上にハティが乗って

次女さんがボクの足を持ちながら座っている。


「あの、そんな不安定な座り方で大丈夫ですか?走るなら揺れるんじゃ」


「大丈夫大丈夫。お姉さんに任せなさい~」


「わふ!」


「平気、へ~き」


本当に大丈夫なのかな。

このお姉さん達もフェンリルだし大丈夫なのかな。


「ではフェンリルよ。頼んだぞ。帰ってきたら美味い物を好きなだけ御馳走しよう」


『ふ、我らはたらふく食うぞ?山ほど用意しておけよ。ではいくぞ』


『魔王さん、息子さんの心配はいらないですよ。行ってきます』


そしてフェリンル達が走り出す。

すっごい早い。

新幹線よりも早いんじゃないだろうか。

なのに背中にいるボクが風を感じない。

お姉さん達が風を操ってボクに風が当たらないようにしてるようだ。


「この速度で風に当たり続けたら体が冷えて体力奪われちゃうよ~」


「風圧も凄いことになるしね~。弱った体にはつらいかも~」


「わふ!」


との事だ。

名前がなく紋章もないとはいえ流石は神獣フェンリル。

高速で移動する狼の背中に乗りながらボクを支え風を操作する力を使う。

そして本人達もほとんど揺れていない。

高い身体能力を窺える。


「ところで向かってる先にいる神獣のドラゴンてどんなドラゴンですか?」


「そうね~。強いのは間違いないよ~」


「確か神獣ホーリードラゴンだよ。白い鱗の綺麗なドラゴンさんだよ」


『ああ、そういえば言ってなかったな。今から会いに行くドラゴンはな、まあ基本的には良いヤツだ。だが真面目過ぎて融通が利かないとこがある。故に嘘をついたり騙したりはするな。頼み事を聞いてもらえなくなるぞ』


良かった。良いヤツなのか。

嘘をつくつもりも騙すつもりもないので大丈夫だ。


『それからヤツは綺麗な物や可愛い物が異常に好きだ。万一、機嫌を損ねたら何か贈り物でもしろ』


そんな事、今言われても。

魔法袋の中に何かあったかな・・・


『大丈夫だよジュン君。私が持ってる宝石がある。機嫌を損ねたり対価が必要な時はそれを使えばいいさ』


「ありがとうございます」


ハティのお父さん、気が利くなあ。

以前、ハティが居なくなった事に気づかず寝てたとは思えない気づかい。

物腰も丁寧だし。

その事を伝えると


『いやあ、私は寝る事が大好きでねえ。特にあの日は絶好の昼寝日和で。つい熟睡しちゃって。アハハ』


『笑い事ではないわ、全く。どうしてこううちの男共は揃いも揃って寝る事が好きなのか。最近ではお主らに用意してもらったベットをいたく気に入って暇さえあれば寝ておるし』


そういえばフェンリル一家の女性陣は城の中でよく見かけるが男性陣はあまり見ない。

女性陣は街にも出掛けたりもしていてボクも偶に付き合わされた事がある。


『さて、少し速度を上げるぞ。娘達よ、そやつをしっかり支えておけよ』


「「は~い」」


さらに速度を上げれるのか凄いな。

実に頼もしい。

フェンリル達がいてくれて本当によかった。

無事に城に戻れたらきちんと御礼しよう。

そう誓った。

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