第41話 龍王の紋章
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「やはり話をしよう。問答無用で殺すのは後味が悪そうだ」
「そうね。話が通じるならそうするべきだよね」
「なら、我が話そう。ジュンはともに来い。あとの者は離れておくがよい。ハティもだぞ」
人型から狼の姿に戻ったハティのお母さんとドラゴンに近づく。
するとこちらに気が付いたようだ。
『む、気が付いたか。おいお主――』
フェンリルが言葉を途中で止め息を呑む。
ドラゴンが攻撃の体勢をとったからだ。
そして大きな口をこちらに向ける。
あの動作は―――
『全員、散れ!ドラゴンブレスが来るぞ!射線上に入るな!』
カッ!
まばゆい閃光とともにドラゴンブレスが放たれた。
それは森の端まで届き爆発する。
爆音と光がここまで届く
途中にあった木はことごとく吹き飛び
まともにくらえば生きてはいられないだろう威力。
着弾地点がどうなってるか考えるに恐ろしい。
あれがドラゴンブレス。
ドラゴンがもつ最強の一撃。
『やはりとんでもない威力よな。全員生きてるか!』
「大丈夫、みんな生きてる。それよりアレを見て」
『―――なるほど。我々が思っていたよりも深手を負っていたようだな。いまのは最後の力を振り絞った一撃だったのだろう。もはやドラゴンブレスは放てまい」
あのドラゴンの傷はもはや致命傷といえるほどだったようだ。
ドラゴンブレスを使ったあと全身から血を吹き出し腕が一本千切れてしまった。
口からも大量の血を吐いている。
確かにもうドラゴンブレスは放てそうにない。
『言葉も通じなさそうだが・・・おいお主、話を聞け。お主が暴れない限りこちらに危害を加える気はない。傷の手当もしてやるぞ。聞こえておるか?』
『グギャオオオオオオオオオオオ!!!!』
フェンリルの問いかけに反応したように見えるが雄叫びをあげ
尻尾を振り回し木々をなぎ倒し岩を粉々にする。
『駄目か・・・もはや正気を保っておらん。このまま撤退してほっておいてもそのうち死ぬだろうな。どうする?』
「傷を治せば正気に戻ると思いますか?」
『どうであろうな。見込みは薄いであろうが可能性はゼロではないだろう。しかしそれを実行するのは不可能に近いぞ。我でも完全に抑え込むのは無理だ。かといって奴の傷を治しながら戦うというのは無理がある。奴が正気に戻るまでどれだけの被害がでるのかもわからん』
傷が治れば再びドラゴンブレスを使えるようになるということ。
今度使われたら誰かが死ぬかもしれない。
そうなるとドラゴンを救うのは諦めて撤退するのが得策なのか・・・
「ジュン!あれを見て!ドラゴンの額!」
慌てて叫んだアイの声に従ってドラゴンの額を見る。
そこにあったのは、紋章?
「あの紋章、なんの紋章かわかりますか?」
『ああ。最悪だな。アレは龍王の紋章だ』
龍王の紋章?
狼王の紋章と似たような効果だろうか。
「どんな力を持った紋章なのかご存知ですか?」
『ああ。アレはドラゴンとその眷属を従える力を持つ。そこまでは狼王の紋章と同じだが龍王の紋章は使えば近くのドラゴンを呼び寄せ従える事ができるのだ』
確かに最悪だ。
正気を失ってる状態でそんなもの使われたらこのあたり一帯がどんな事になるかわかったもんじゃない。
ここは王都に近い。
ほっておけばドラゴンの軍団が王都に攻め込む事になるかもしれない。
そうなったらエルムバーンは終りだ。
『倒すしかあるまい。幸いこの周辺にはドラゴンもその眷属も居らぬはずだ。ここに来るまでまだ時間がある。だが放っておけばいずれ集まって来る。そうなればこの国は滅ぶぞ』
「はい、やるしかありませんね。みんな聞いたな!やるぞ!」
ボクの声に応えてみんなが森から出てくる。
みんな口々にやる気を出してる。
「お兄ちゃんがやるならもちろん私もやるよ」
「ジュンはウチが守ってあげる」
「おうよ。任せなジュン様」
「お任せくださいジュン様」
「リ、リリーだってやるのです!」
「わふ!」
みんな武器を構え戦闘準備に入る。
ボクとユウでみんなに強化魔法と防御魔法を掛けていく。
『我が正面を受け持つ。他の者はつかず離れずで攻撃を繰り返せ』
「はい。ボクとアイで右から。左はセバストとノエラ。ユウとリリーは遠距離から攻撃だ。ハティはユウとリリーを守って」
ハティもやる気満々だったが流石に前に出すことはできない。
『覚悟はよいか?では行くぞ!』
フェンリルの雄叫びが戦闘開始の合図となりみんなが動き出す。
まずユウとリリーが攻撃する。
ユウとリリーにドラゴンの注意が向きかけた所へフェンリルの爪がドラゴンを襲う。
ドラゴンが左に避けたとこへボクとアイが攻撃する。
「はあああああ!」
ガントレットを付けたアイの拳がドラゴンの腹部に刺さる。
そしてドラゴンの攻撃は紙一重で避けていく。
先見の紋章の力で戦闘中は一秒先の未来を見る事が出来るのだ。
アイが使えば鬼に金棒だ。
ボクも見てるだけじゃない。
剣を魔法で強化し二刀流で攻撃を繰り返す。
強化しないと普通の剣では攻撃が通らないどころか逆に剣が折れてしまう。
それほどドラゴンの鱗・外皮は堅いのだ。
反対側ではセバストとノエラの息があった連携で攻撃が繰り返されてる。
セバストは三本の刃が付いた鉤爪を両手に装備した格闘主体の攻撃。
ノエラは両手に短剣を装備したヒット&アウェイだ。
しかし執事服とメイド服でよくあんな動きできるな。
ユウは遠距離から氷系の魔法で攻撃を繰り返し着実に当ててる。
賢者の紋章をもつユウの魔法もなかなかのモノだ。
リリーも弓で攻撃を繰り返している。
しかしただ当てるだけでは矢は刺さらないので
傷口を狙ったり目や口内を狙ったりしている。
激しく動いてるのであまり命中してないがそれでも何本か傷口に刺さってる。
大した腕だと思う。
ドラゴンの動きが止まった。
しかしまだ死んだわけではない。
なにか仕掛けてくる?
『―――魔法だ!防御魔法を張れ!魔法が使えない者は我の影に入れ!』
「! アイ、ボクの傍に!ノエラとセバストはフェンリルの影に!ユウはリリーとハティを!」
指示終わってすぐドラゴンの魔法が発動する。
ドラゴンの全周囲に雷が降り注ぐ。
あれは雷系最上位魔法「サンダーストーム」だ
魔法が終わった後コーン状に焼け焦げた後がある。
かなり広範囲だ。
「みんな無事か!」
「こっちは大丈夫だ!ジュン様!フェンリルのおかげだ!」
「こっちも大丈夫だよ、お兄ちゃん!」
みんな無事なようだ。
しかしさすが神獣のドラゴン。
魔法の威力も半端ない。
『流石、龍王の紋章を持つドラゴンよの。死に掛けとは思えぬ強さだ。しかしそろそろ限界のようだな』
今の一撃が最後の悪あがきだったのだろう。
もはやまともに動けそうにない。
『我が動きを止めてやる。首を落として楽にしてやれ』
「はい!」
全員で同時に攻撃を仕掛ける。
右からボクとアイ。左からセバストとノエラ。遠距離からユウとリリーの攻撃が連続で続く。
痛みでドラゴンが叫びを上げ顔を上げる。
そこへフェンリルが喉に喰らいつく。
『今だ!やれ!』
「行きます!」
魔神の紋章も使用し飛び上がり。
ドラゴンの首を根元から切り落とす。
『やったか!』
ズズン。
と、ドラゴンの体が崩れ落ちる。
遅れてフェンリルの牙から離れた首も落ちる。
そしてピクリとも動かない。
終ったはずだ。
「終わった、と思います」
『そのようだ、な。よし。ハティは無事か?』
「わふ!」
ハティの無事を確認しにフェンリルが駆け寄る。
他のみんなも怪我はないようだ。
「アイは大丈夫だよね?」
「うん。ウチは大丈夫。ジュンも大丈夫だよね?」
お互いの無事を確認してるとみんな集まって来た。
「ジュン様、お怪我はありませんか?」
「うん。ノエラ達は?」
「私達は大丈夫です。ユウ様とアイ様も大丈夫ですか?」
「私は大丈夫。みんな無事でなによりね」
「リリーも大丈夫です!」
手負いだったとはいえ神獣のドラゴンを相手に無傷で済んだ。
フェンリルがいなければやばかっただろうけど運がよかった。
「しかし、このドラゴンは一体誰にやられて、どこからここに来たんだろう」
物言わぬ首となったドラゴンに触れてみる。
まだ暖かい。
するとドラゴンの額の紋章が再び輝きだした。
「!まだ生きてるのか!」
「ジュン!」
「お兄ちゃん、離れて!」
『いや、違う。これは―――』
フェンリルが答えを言う前に紋章が消え光も消える。
「今のは一体・・・何か知ってるんですか?」
『今のは恐らく紋章の継承だ。一部の紋章は他人に継承できるというのは知っているだろう?龍王の紋章はその一つだ』
「え。それはつまり・・・」
『一番近くにいたお主に継承されたのではないか?どうだ?』
言われて意識を集中してみる。
するとボクの額に紋章が現れる。
『やはりな。間違いなくそれは龍王の紋章だ。魔族にも継承可能とは知らなかったが』
「これは・・・なんかマズい気がする・・・」
『まあ厄介ごとになるであろうな。だが今は一先ずドラゴンの死体を処理してから街に戻ろうではないか。このままここに置いていくとアンデット化するぞ。それにドラゴンの素材は高価だ。ここで何があったかの証明にもなろう』
言われてドラゴンの死体を魔法袋にしまう。
魔法袋の口より大きくてもしまうときは吸い込まれるように入っていく。
こういう時に非常に便利だ。
「じゃあ転移で王都に戻ろう。いくよ」
こうして森の異常は一応、解決したのだった。
新たな問題を抱えることになったけど・・・
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