表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
400/604

第400話 風の谷の…

「これで…終わり!」


 アイシスが最後のティラノサウルスの止めを刺し。

これで『暴風の谷』からティラノサウルスは居なくなった。


「終わったね~」


「うん。あとは…目ぼしい魔獣を間引いておけば狼達で谷を通る人の護衛は何とか出来るでしょ」


 後はサービスでロックゴーレムを皆で出せるだけだして、通行に邪魔な岩を端によせて積み上げるか砕くなどさせて整地させておこうか。

こういう仕事もゴーレムは便利だなぁ。

疲れないし、魔獣がいるような危険な場所でも問題無く作業させられるし。


「セバストさん、セバストさん!僕、今度はステーキが食べてみたい!」


「私も」


「ああ。干し肉も作ってみよう」


 昨日の夜、セバストが試作したティラノサウルスの肉料理は…かなり美味だった。

初めは少し抵抗があったが、思い切って食べてみると旨かったのだ。

脂の乗った鶏肉とでも言えばいいのか。

前世で食べたワニ肉をもっと旨くした感じかもしれない。


「皆様…有難う御座います。これでヴォルフス魔王国は救われます」


「それどころか、きっと大きく発展するっスよ!」


 そうでなくては困る。

他の小国同盟の国からも助けを求められては堪らない。

ヴォルフス魔王国には小国同盟の中心になってもらい、他の国も支えて欲しいものだ。


「これで『暴風の谷』は普通の谷になったわけだけど…何か物足りないなぁ」


「何が?結構お腹一杯に色々あったと思うけど?まだ普通の谷と言えないように思うし」


「う~ん…上手く言えないんだけど、何かこう…」


 アイが良く分からない事を言ってるが…恐らくくだらない事だろう、多分。

それからティラノサウルス達の死体を片付けた後、ヴォルフデルクの城に戻った。

途中経過は報告していたので、今日にも『暴風の谷』を解放出来る事はシブリアン様も知っていた。

その為、宴の準備をして待っていた。


「というわけで『暴風の谷』の解放は成りました。あの谷の狼…ウインドサーベルウルフは味方ですので、襲わないよう厳命してください。それと冒険者や盗賊等が入らないように、入口は引き続き兵で守った方がいいでしょうね。盗掘の恐れもありますし、誰かが迂闊な真似をして神殿の魔法道具をまた起動したら厄介ですから」


「解りました。ジュン殿の仰る通りに致しましょう。本当に、本当に感謝申し上げます。一度は敵対した我らの為に…」


「これから忙しくなりますね、あなた」


「私もお手伝いします、父様」


 これまで感じていた将来の不安や悩み事から解放された気分なのだろう。

今までの苦労やこれから忙しくなる事など、何て事無いと言える顔をしていた。


「よかった…これで姉様がガノシーフ魔王国へ行かなくてすみます。父様、早速婚約解消の連絡をしましょう」


「え?ああ…まだ知らなかったのか、カミーユは」


「そう言えば…私は伝えていません」


「私もです。昨日まではまだ確実ではありませんでしたし」


「はい?何の御話しですか?」


「実はな…ガノシーフ魔王国の魔王ガノン殿がな。昨晩、亡くなられたのだ」


「え?」


「「「「え」」」」」


 それはビックリ。

全くの初耳、予想外だ。


「ど!どういう事ですか!?一体何故!」


「落ち着きなさい。ガノン殿は数日前…お前が帰って来る前日だったかな。病で倒れられたのだ。あの国には上位治癒魔法が使える者はいない。他国から上位治癒魔法が使える者を呼んではいたのだが…間に合わず

亡くなられた」


「危篤状態が続いているとは聞いていたのだけど…」


「…そんな…それじゃあ此処まで急ぐ必要は無かったと?ジュン様達に無理を言いましたのに…」


「ボク達の事なら気にしないでください。では、ヒルダさんの婚約は解消されたという事ですね?」


「そうなります。相手が亡くなってしまわれたのですから」


 ガノシーフ魔王国の魔王ガノン様がどんな人物だったのか知らないし、他人様の不幸を喜ぶつもりは無いが、ヒルダさんにとっては望まない結婚をせずに済んでよかったのだろう。

正直ほっとしたと、そんな顔をしてる。


「ごめんね、カミーユ。心配してくれたのに」


「もういいです。亡くなられたガノン様や御遺族の方には悪いと思いますが…これでよかったのでしょう。何の問題も起こす事無く婚約破棄出来たのですから」


「良かったですね、カミーユ様」


「それじゃ私達はどうします?」


「もう無理にエルムバーンに留まる必要は無いっスよね?冒険者も辞めるっスか?」


「いいえ。折角鍛えて頂いたのです。途中で投げ出すなんて許されません。私達はDランク冒険者…一人前の冒険者になるとジュン様と約束したのですから。エリザ様とも約束しましたし」


「母と?どんな約束をしたんです?」


「あ…その…い、一人前のサキュバスになると約束したのです。それにエリザ様から高価な鞭まで頂いたのですから」


 一人前のサキュバス…何故だろう。その言葉、凄く不安になる。

何を持って一人前のサキュバスと認められるんだろう。


「だから貴女達。明日からまた訓練の日々よ。大体貴女達だって装備を譲って頂いたじゃない。なのに途中で投げ出すつもり?」


「それはそうなのですが…」


「というか、まだカミーユ様は気付いてない…教えてもらってないんですね」


「サキュバスとして高い能力を持ってても、そっち方面は疎いままっス」


「そっち方面?…何の話かしら?」


「知らないなら知らないままでいいんですよ、カミーユさん。ですよね?皆さん」


「はぁ…そうなんですか?」


 メーテルさん達だけでなく、シブリアン様達も苦笑いだ。

カミーユさんの将来を考えると、教えた方がいいのかもしれないが…何も今じゃなくていいだろう。

主にボクの平和の為に。


 それから翌日。

強めの魔獣を間引き、追加でゴーレムを出して整地をさせ。

狼達に谷の警備とヴォルフス魔王国の人を守るように頼み、少しばかり天然魔石を貰ってからエルムバーンに戻った。


 後に状況を聞いた限りでは順調に行ってるそうだ。

ただ、魔力を含んだ風が止まった事で魔獣同士の争いが活発化してるようだというので、時折神殿型魔法道具を起動して風を起こす事にしたらしい。

狼達にとってもその方がいいかもしれない。


 天然魔石の量は想像以上で。

ヴォルフス魔王国の兵士が一日で集めた分を売却した金額だけで、ヴォルフス魔王国の国家予算一年分に相当したらしい。

計画的に売却しないと値崩れを起こしてしまうので慎重に売る必要があるが、天然魔石の売却益だけでヴォルフス魔王国は危機を脱したと言えるだろう。


 鉱脈の方はまだ調査段階だそうだが文献にあった通り、金と銀の鉱脈を発見。

銅の鉱脈もあったらしいが、それよりもオリハルコンの鉱脈が発見出来たらしい。

まだ天然魔石の収集段階なので全てを調べる事は出来ていないが、それでも確かに豊かな資源の眠る鉱脈なのは間違いないようだ。

これから先ヴォルフス魔王国は暫くは安泰、ヒルダさんの婚約もすぐに決まる事だろう。


 最後にアイが…


「ジュン!分かった!何が足りないのか!」


「ほう。何が足りないのかね?」


「メー〇ェ作って!」


「はい?」


「あの谷って言うなれば風の谷でしょ?蟲はいらないとして…変な植物はあったからあとはやっぱりメー〇ェでしょ!風の谷と言えば!」


 メー〇ェって確か某有名アニメのヒロインが乗ってる鳥みたいな乗り物か。

ああいうのに憧れるのは解らなくはないけど…


「らん♪らんらららんらんらん♪らんらららん♪」


 今回のアイはアニメネタで始まりアニメネタで終わった。

ボクとユウ以外の皆には理解されなかったのは言うまでもない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ