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第39話 常識でした

いつも読んでくださり有難うございます。

ESN大賞に応募しました。

応援のほどよろしくお願いします。

できれば評価もしてやってください。

 冒険者ギルドで登録と依頼の受注も終わり。

今は馬車で北の森に向かっている。

冒険者ギルドではお約束の


『おいおい、ここはガキの遊び場じゃないぜ。とっととお家に帰ってママのおっぱいでもしゃぶってな!』

 

とか


『おいガキのくせにいい女連れてるじゃねえか。俺らにも分けてくれよ』


とかって絡みはなかった。


「そりゃ自分が暮らしてる国の魔王子に絡もうなんてバカはそうそういないよね。たたでさえ治癒魔法使いとして有名になってるんだし、ジュンは」


とはアイの談。

まあそりゃそうか…。

でもその代わりというかこんな絡みはあった。


「魔王子さんよ、安全な依頼かもしれねえがもうちょい装備は整えたほうがいいぞ。武器はそれでいいが皮鎧くらいは着ときな」


「あの、ジュン様、私達も新人なんです。よかったらパーティを組みませんか?」


 と、忠告と勧誘があった。

忠告してくれた冒険者には礼を言い、勧誘は丁重に断りを入れた。


 ちなみにボクの現在の装備だが

武器は騎士団でも使われてる一般的なロングソードとショートソードだ。

予備に二本の短剣もある。


 防具のほうは現代地球ではサーコートと呼ばれた類のものでボクとユウでデザインしたものをシルヴィさんに作ってもらった。

魔法布で作られ黒で統一されたそのサーコートにステファニアさんに魔法付与を施してもらってある。施した魔法付与は軽量化と毒耐性や防刃・衝撃耐性等で防御力を上げた。

まだ成長して体が大きくなるはずなので大き目に作ってある。

魔法布で作られたものはサイズ調整がある程度自動でされるがそれでも限界があるのだ。

それからサーコートの下には軽量化の魔法付与をしたチェインメイルを着ている。

見た目ではそう見えないが実はそこらへんの全身甲冑よりよほど防御力がありそして軽く動きやすいのだ。動きやすさを重視し防御面を考慮した結果この装備になった。


 これだけで今まで貯めた御金の半分以上が吹っ飛んだ。

将来的には肩・胸・腕・足等の軽装防具もオーダーメイドで作ってもらう予定だ。

それと武器もオーダーメイドで作ってもらうのでまだまだ御金が足りない。

ステファニアさんの作る武具は一流だけあって高額なのだ。


「ねえリリー。北の森にはどんな魔獣がいるの?強いのとか厄介なのとか気を付けなきゃいけない存在とか教えて」


 馬車で移動中、アイがリリーに北の森にいる魔獣について質問する。

ボクも聞きたかったことなので丁度いい。

ちなみにセバストが御者をしている。


「はいです。えっと単体で一番強いのは難度Cロックアルマジロです。外皮が岩で覆われててとても硬いです。丸まって転がって体当たりしてきます。まともに受けると全身甲冑を着た戦士でも大怪我をする威力です」


「大きさはどれくらい?」


「えっと、ドワーフさんくらいですぅ」


それ結構デカいなあ。

それが転がって体当たりしてくるならかなり痛そうだ。


「他には?」


「えっとあとは難度Dで毒をもってるフライングスネーク、木から木へ飛んで上から襲ってくるです。次に群れで襲ってくるロックモンキーです。単体での討伐難度はEですけど必ず五匹以上の群れで襲ってくるので難度Cになるですぅ」


結構危険そうなのいるんだなあ。

よくそんなのがでる場所で狩ができるなリリーは。

それも一人で。


「リリーはそんなとこで一人で狩してるんでしょ?襲われたことないの?」


「前にも言ったですけど強いのは森の奥にいかないとでないです。浅いとこには、はぐれたゴブリンとか魔獣じゃない熊とか猪です。フライングスネークはたまに浅いとこに来ますけど」


 いるんじゃないか。

てゆうか熊もいるのか。

熊とゴブリンなら熊が勝ちそうだ。


「熊とか危ないでしょ。魔獣じゃなくても」


「そうですね~、熊は結構強いですけどせいぜい難度Dくらいですからリリーは勝てますよ?不意打ちを受けなければロックアルマジロも大丈夫です。何度か狩ったことあるです。群れで襲ってくる狼とかロックモンキーのほうが怖いです」


 おおう。

そうなのか。結構強いんだなリリー。

そういえば弓使いの紋章も持ってたな。


「気を付けないといけないのはそれくらいかしら?」


「はいです。あ、いえ、あとですね。ロックアルマジロの変異種でジュエルアルマジロっているです。極まれに発見される希少な魔獣で背中に宝石が付いてるです。生きたまま捕獲すると高額の報償がもらえるんですよ」


「倒したら駄目なの?」


「ジュエルアルマジロは宝石だけ採って森に帰すとまたいずれ背中に宝石が出来るです。なので殺さずに捕獲することになってるです」


「それなら飼育して安定して宝石を採ればいいのに」


「昔試して失敗したそうです。どうしても宝石が新たにできることはなかったって話です」


考えることはみな同じというわけね。

それにしても魔獣か。

前から疑問に思ってた事をみんなに聞いてみる。


「あのさ、どうして魔獣がいるのに動物は絶滅してないんだろうな」


「「「え?」」」


「ほら魔獣のほうが基本、ただの動物より強いじゃない?肉食の魔獣からしたら恰好の獲物でしかないだろうに。危険な魔獣がいる自然の中で弱い動物がなんで生き残ってるのか不思議で」


 前世でも魔獣とかモンスターとか呼ばれる存在がいるのに普通の動物がいる世界観のゲームや漫画はどこか無理があるんじゃないかって疑問に思ったことがあった。

まあ、そこはゲームだしいいかってその時は思ったのだが、こうして現実になると不思議でならない。


「あのジュン様?」


「なに?ノエラ」


「魔獣が普通の動物を襲わないのは常識なのです」


「え?」


 常識?誰でも知ってるということ?


「魔獣は魔力を持った存在を捕食する事で魔力を高め強くなろうとします。我々魔族や人族等は誰もが少なからず魔力を保有しています。だから魔獣に襲われます。しかし普通の動物は魔力を保有しませんので襲われません。よほど飢えた魔獣か狂った存在が稀に襲うことはあるようですが基本は襲いません」


 そ、そうだったのか。

ちゃんと解明されていたとは…


「従って魔獣が襲うのは同じ魔獣か他の魔力を持った種族です。故に魔獣によって絶滅した動物はいません」


「てゆうか常識よ、お兄ちゃん。私も知ってるし」


「ウチも知ってる。結構誰でも知ってるんじゃない?」


「リリーも知ってるです」


なん…だと…

リリーはともかく同じ転生組のユウとアイも知ってるのか。


「ユウとアイも知ってたのか?」


「うん。お父さんとお母さんから教えてもらった」


「ウチも。ジュンは教えてもらってないの?」


「教えてもらってない…」


「あの、ジュン様は小さい頃から御自分で色んな事を調べて学んでおられましたので教えるまでもなく知ってるものと思われたのだと…」


 確かに自分で本を読んで色々調べてた。

常識的な事は大体調べたつもりだったけど…


「まあ、お兄ちゃんて偶にヌケてるよね~クスクス~」


「そうね~、ウチもそう思う~クスクス~」


 ワザとらしい笑いをニヤニヤした顔で…。

兄を愚弄するとはお仕置きが必要だな!


「この逃げ場のない馬車で兄を愚弄するとは!お仕置きが必要だなっ」


「あ、ちょっやめっ、あっ」


「わははは、ユウの弱点くらい兄は知っているのだー。くすぐり地獄の刑に処してやる」


「やめ、アハハハ、やめてっごめ、ごめんなさいぃぃ~!」


「仲いいねえ、あんた達」


 他人事のように言っているアイにターゲットを変える。

次はお前の番だ!


「アイにもお仕置きするに決まってるだろう!ほれほれ~い!」


「え?キャッ、ちょっとそこは、アッ」


「わははは。アイの弱点ももちろん知ってるぞ!ユウと同じくくすぐり地獄の刑だ!」


「やめ、やめて!ウチそこは弱いのキャハハハハ、やめてぇぇぇ!」


「うお~い。移動中の馬車で暴れると舌噛むぞ~。ほんでもってもう着くぞ~」


 どうやら目的地に着いたようなので

お仕置きはこれぐらいにしておく。


「ふぅ~。今日はこれぐらいにしておいてやるぜ」


「うう、お兄ちゃんヒドい」


「うう、覚えてなさいよお」


 何か言ってる二人はスルーして馬車から降りる。

さっそく薬草を探すとしよう。


「リリー、この薬草はどのあたりに生えてるかな」


「森の周辺と森に入ってすぐの日当たりのいい場所にあると思うです」


「何株必要なの?」


「二十だな」


「あ、根っこを傷つけないように採らないとダメですよ?」


「そっか、ありがとうリリー」


「ねえ、ジュン、見本見せて」


 ボクとアイ・ユウ・リリーの四人で薬草を採取していく。

セバストとノエラは周辺の警戒だ。

ちなみにこの世界の植物の生態系は現代地球と似通ってはいるが違う部分も多数ある。

この薬草だって現代地球であったのかどうか。


「どう?必要数は集まった?」


「ん~ともうちょいだな」


「あっちのほうにもあると思うです。あ、あの鳥美味しいんですよ、えいっと」


 ビシュッと弓を構えてから狙いを定めて放つまで極短い時間で行い、放たれた矢はあっさりと鳥を仕留めた。リリーの弓の腕前はかなりのもののようだ。


「凄いねリリー。そんなあっさり仕留めるなんて」


「えへへ。弓は結構自信あるんですよぉ」


 言いながら仕留めた鳥の血抜きを行い木につるしている。

休みの日には狩をしていると言うだけあって手際がいい。


「セバストさん、今夜はこの鳥を使って御飯作ってくださいね~」


「お~う!任せとけ」


 ちょっと楽しみが増えた。

唐揚げとか食べたいな。


「さてと、これで集まったかな?」


「どれどれ鑑定して確認していくね」


ユウが以前買った鑑定眼のメガネで確認していく。


「以前にも思ったけどさユウ」


「なあに?お兄ちゃん」


「賢者の紋章があればそれいらないんじゃないのか?同じ事できるだろ?」


「そうでもないよ。例えば別の物に偽装してあったら私が見抜いてない限り賢者の紋章で調べられるのは偽装してあるほうの情報になるもの。本物かどうかを調べるなら鑑定眼の方が手っ取り早いわ。それに賢者の紋章を使えばそういう紋章を持ってるんだなって他人にバレちゃうし。普段からこうやって使い分けとかないとクセで人前でつかっちゃいそうだしね」


 なるほど。

ユウの賢者の紋章は便利だと思ってたけど偽物を見破る力はないということか。

意外な穴だな。


「まあ、それでも便利だけどね賢者の紋章。よしっ全部探してた薬草で間違いないよ。依頼達成だね」


「そうか。みんな手伝ってくれてありがとうね。王都に戻ったら何か甘い物でも食べよ。奢るよ」


「「わ~い」」


「有難うございます、ジュン様」


「おう、サンキュー」


「やったー!有難うございますぅジュン様!」


 こうしてボクの初めての冒険者として受けた依頼は無事達成されたのだった。

余計なアクシデントもなく終わって本当によかった。

ドラゴンとかどっかから出てきたりして、とかちょっと思ってたのだ。

まあ、そうそうそんな異常事態は起こらないよね。

読んでくださりありがとうございます。

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