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第388話 弟子、依頼を受ける 4

 ロックアルマジロをカミーユさん達が仕留める事に。上手く行けば自信に繋がる筈だが…


「カミーユ様…どうされますか。指示を」


「指示……わ、私とメーテルでアイツの足を止めるわ!ラナは一番強力な魔法を準備!オルカは弓で牽制!周辺の警戒も忘れないで!」


「「「はい!」」」


 うん。悪くない。付け加えるならここでメーテルさんのロックゴーレムを出して壁役にすれば楽に抑え込めたと思うが。


「い、行くわよ、メーテル!」


「は、はい!」


 ゴーレムの事は頭から抜けてるな。

初の魔獣戦だし、緊張するのは仕方ないけど。


「ロックアルマジロの攻撃で一番怖いのは丸まってからの体当たりってリリー先生が言ってたっス!体当たりして来たら避けるっスよ!」


「え、ええ!」


 後ろに居る分、前に居る二人より落ち着いているのか、オルカさんがフォローの声を出す。

これもパーティーに必要な連携だ。


「やぁ!」


「このっ!」


 正面からメーテルさん、左からカミーユさんが攻撃。少し距離を取り過ぎているので、あまりダメージは与えられていない。

腰も引けてる感じだ。


「このっ!当たれっスよ!」


 オルカさんはいい感じに牽制出来ているのじゃないだろうか。

腹部と脚に一本ずつ、矢を刺している。

ロックアルマジロは丸まった際、外側になる部分は岩で覆われているが、内側になる部分には無い。

爪で攻撃してくる際、二本足で立ち上がるのだが、その時を上手く狙って当てている。


「ああっ…危なっかしいな~見てらんない」


「手を出しちゃダメだよ、アイ。メリッサも」


「う…でも師匠…」


 気持ちはわかるけど。

ボクもハラハラドキドキしてるけど。

まだ手を出す場面じゃない。


「カミーユ様!魔法はいつでもいけます!」


「よ、よし!じゃあ合図したら離れるから…あ!体当たりして来るわよ!避けなさい!」


 ラナさんが魔法を放つ前に。

ロックアルマジロが丸まってからの体当たりを仕掛けて来た。

警戒していた攻撃なので、全員問題無く躱せた。


「ひええ…木をなぎ倒しながら転がってるっスよ」


「まともに受けたら私達じゃ死にますね…」


「ああやって転がってる間は攻撃出来ませんね。どうされますか、カミーユ様」


「そ、そうね…アイツの動きを止める手段…ロックアルマジロを…あ!そうだわ!メーテルのロックゴーレムがあるじゃない!」


 ようやく思い付いたらしい。

ロックゴーレムならあの攻撃を受け止める事が出来る筈。耐えきれずに壊れたとしても、動きは止められる筈だ。


「メーテル!ゴーレムを出して!ゴーレムにアイツの動きを止めさせて!」


「はい!」


「ラナはゴーレムがアイツの動きを止めたらすかさず魔法を!」


「皆!また来るっスよ!」


「メーテル!」


「はい!行きなさい!」


 ゴーレムが転がってくるロックアルマジロを受け止める。

岩と岩がぶつかる、激しい音が響く。

ロックゴーレムにヒビが入るが、受け止める事に成功。

ロックアルマジロの動きは止まった。


「ラナ!」


「はい!サンダーアロー!」


 雷属性の中位攻撃魔法サンダーアロー。

今のラナさんでは同時発射は三本が限界のようだが威力は充分だろう。

三本の雷の矢は三本とも命中した。


「ど、どう?」


「や、やったっスか?」


「…メーテル、ゴーレムに手を離させて」


「はい」


 ゴーレムが手を離した瞬間。

ロックアルマジロは横に倒れた。

ピクリとも動かない。


「あの…ジュン様。もしかして…」


「ええ。倒せましたね。おめでとうございます」


「ああ!有難う御座います!」


「やった…やりましたね、カミーユ様!」


「やったぁ!」


「よっしゃっあっス!」


 初めて魔獣を倒し、訓練の成果を実感出来たのだろう。本当に嬉しそうだ。

だが、しかし。

女の子にはここからが辛いかもしれない。


「さ、後片付けをしましょう。メリッサはゴブリンの死体を処理。カミーユさん達はロックアルマジロを解体して下さい」


「はい、師匠!」


「「「「え」」」」


「え、じゃなくて。倒した魔獣の死体の処理は冒険者には必須の能力ですよ。…まあボクも解体は出来ませんがセバストが居ますし」


「つまり…パーティーの誰かが出来なくてはならない…」


「はい。死体を持ち帰れば冒険者ギルドで解体の代行もしてくれますが。代金をとられますよ」


「う…オルカ、お願い」


「アタシっスか!?」


「貴女、狩人になるつもりだったんでしょう?大丈夫、貴女なら出来るわ」


「お願いします、オルカ」


「私、これからもお肉が食べたいの」


「酷いっスよ!アタシだって出来ないっスよ!」


 まあいきなりぶっつけ本番も無いだろう。

ここはセバストの出番かな。


「セバスト、教えてあげて」


「了解だ」


「ところでロックアルマジロって食べれるの?」


「ああ。王都の肉屋に並んでるぜ。皮は硬いから防具に出来るし。ロックアルマジロ丸々一体で…金貨二枚か三枚になる筈だ」


「「「「金貨三枚!」」」」


「綺麗に解体出来たらな。ほら始めるぞ」


「頑張ってオルカ!」


「貴女なら出来る!」


「期待しています」


「皆酷いっスよ!皆で習いましょうよ!」


「い、いや…私は…」


「パーティーメンバーは苦楽を共にするんスよね!?」


「う!し、仕方ないわね…」


 以前、自分で言って三人を巻き込んでいる為、カミーユさんが早々に折れた。

解体中は騒がしく、目を背けたりしていたから、解体の手順を覚えるのは時間が掛かるだろう。


 とにかく、解体は終わったので帰るとしよう。


「それじゃ帰ろうか」


「「「は~い」」」


「あの…ジュン様?」


「解体したこれはどうすれば?」


 見た感じ、カミーユさん達は解体した獲物を持ち帰る為の袋やロープなんかは持ってない。

完全に頭から抜けてる感じだ。


「…今日はボクが持ち帰りますけど、次からは自分達で持ち帰る手段を用意しなきゃダメですよ?」


「はい…すみません。って、ええ!?」


「あんな小さな袋に入っちゃったっス!?」


「魔法の袋です。さ、行きますよ」


「はあ~…流石エルムバーンの魔王子様…」


「便利な魔法道具を持ってますね…」


「あげませんよ」


 魔法の袋に掛けられた制限は未だ有効だ。

戦時中はヴェルリアにいくつか貸し出ししたが、全て返してもらったし。


「そんな事言わずに!対価にカミーユ様の処女でどうっスか!」


「オ、オルカ!何言ってるの!?」


「それ、対価になってないじゃない。貴女達のメリットにしかなってないわよ」


「じゃあ四人全員ならどうっスか!?」


「オルカ!?」


「同じですねー」


 対価だろうとなんだろうと。

十二歳の子供を抱くわけないでしょうが。

魔法の袋は売るわけにはいかないし。


「ほら、行きますよ。帰りは王都の北門まで走りですよ」


「うげっ…そうだったっス…」


「私、日が暮れるまでに帰れるかな…」


「私も自信ありません…」


「私も無いけど…流石に一ヶ月前に比べたら走れるはずよ!頑張りましょう!」


「「「は~い…」」」


「元気無いですよ、皆さん!ビリの人は腕立て伏せ五十回ですよ!」


「それじゃやる気は出ないと思うわよ」


「何を他人事のように!姉上も走るんですよ!」


「え?わたくしも?…ジュン様?」


「ああ、勿論。走らないのは最後尾の後ろに着いてもらう馬車に乗るセバストとハティだけです」


「……ハンデを要求します!」


「姉上…」


「いいですけどね…」


 協議の結果。

カミーユさん達とマリーダさんは荷物と武具類は馬車に乗せて最初にスタート。

ボク達は武具を着けたまま、カミーユさん達がスタートしてから五分後にスタート。

更に紋章と魔法の使用禁止。

という条件だったのだが。


「ほら~もう少しよ~頑張れ~」


「姉上ー!もう少しですよー!」


「カミーユ様~…もう少しっスよ~…」


「「ゼェゼェ~…」」


 ビリ争いはマリーダさんとカミーユさん。

精気を吸い、身体能力が本来の能力になっても、カミーユさんの体力の無さは折り紙付きらしい。


「カミーユさんはどうしてあんなに体力が無いの?別に病弱だったわけじゃないんでしょ?」


「はぁ~はぁ~…カミーユ様は自他共に認める運動音痴でしたから…勉強熱心ではあったのですが」


「マリーダさんは?」


「姉上は眼が治るまで外で遊ぶ事も出来ませんでしたし。それに有翼人族は地上を走ると翼が風を受けて不利ですから。追い風なら有利ですが」


 なるほど、確かに。翼をたたんでも、風は受けてしまうし。

そして今は向かい風。マリーダさんには厳しい状況か。


「カミーユ様、マリーダ様。このテープを先に切った方の勝者です」


「もう少しですよ」


 テープを持つのはクリステアとルチーナ。

二人の言葉はカミーユさんとマリーダさんには聞こえてなさそうだが。


「あと…少し…」


「負けません…負けませんよ!最後の力を…振り絞って…!」


「「「「「おー!」」」」」


 マリーダさんが一歩前に出てると思ったのだが。

ゴール寸前でカミーユさんがジャンプ。大して跳べてなかったが差は埋まり。胸の差でカミーユさんの勝利となった。

そして地面に倒れ伏す二人。


「やりましたね、カミーユ様!」


「カミーユ様の勝利ですよ!」


「初めてその無駄に育った胸が役に立ったじゃないスか!」


「…ゼヒュー…ゼヒュー…オルカ…後で覚えて…ゴホッゴホッ」


「残念でしたね、姉上!さぁ腕立て伏せ五十回ですよ!」


「ゼェ~…ゼェ~…今は…今は勘弁して頂戴…」


 このデッドヒートの末。

二人はちょっぴり仲良くなった。

実に低レベルのデッドヒートではあったが…

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