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第377話 レベッカ 2

 レベッカはお祖父ちゃんの隠し子だった。

お祖父ちゃん自身知らなかった事なので隠し子と言うのは違うかもしれないが。


「ふう…で、お母さん。レベッカはどういう扱いになると思います?」


 当初の予定ではボクのメイドにするか、身寄りがあるならそちらに預けるか、孤児院に入ってもらうか。

レベッカの希望通りにするつもりだったが、今となってはそうもいかず。

奴隷から解放するのは確定だが。


「そうね…認知してエルムバーン魔王家に迎え入れるしかないんじゃないかしら」


「迎え入れる…となるとボクの叔母として?」


「そこは工夫が必要かもしれんな」


「パパ、工夫って?」


「エルムバーン魔王家に迎え入れるという事はレベッカにも王位継承権を与えるという事。だからアスラッドの妹として迎え入れると序列がなぁ。エルムバーンに居るかは知らんが…変に騒ぎ立てる家臣が出るかもしれん」


 王位継承争いか…ヴェルリア王家の争いを見ていたから、決して無いとは言えないなぁ。


「そうねぇ。アスラッドは次期魔王はジュンだって既に宣言してるし、ジュンは家臣にも国民にも人気だから揺るがないでしょうけど…『魔王の紋章』を持っているから、ユウよりは魔王に相応しいって考える人は出てくるかしらね」


 エルムバーンに限らず。

『魔王の紋章』を持つ者が魔王を継ぐべきだという考えが、世界中の魔王国の共通の考えだ。

従って『魔王の紋章』を持たないユウよりレベッカの方が魔王に相応しいと。

そういう事らしい。


「私は気にしないよ?お兄ちゃんと結婚するんだし」


「そだよ。ジュンが居るんだからレベッカの序列とか考えなくてよくない?」


「そうもいかんでしょうな。王位継承とは色んな事態…最悪の可能性も考慮しませんと」


「最悪?」


「気を悪くしないで欲しいのですが…ジュン殿が魔王を継ぐ前に死んでしまった場合等です」


「お祖父ちゃん…そんな事は…」


「可能性…例えばの話だ」


「そうね。他には…ジュンの子供に『魔王の紋章』を持った子が生まれなかった場合とか」


「その時、ジュンの子供に魔王を継がせたいならって話だ」


 確かに。そういった事も有り得るか。

レベッカは…いきなり自分に王位継承権があるとか目の前で話されて困惑顔だ。


「ご主人様…私、どうなるの?」


「そう、だね…レベッカはエルムバーンの魔王女になる。それは確実かな」


「え…えー!ま、魔王女?私が?」


「レベッカのお父さん…ハズラッドはこの国の前魔王だったんだ。だからレベッカは魔王女という事になる」


「で、でも私…奴隷…だよ?」


「犯罪奴隷じゃないから、直ぐに解放出来る。それは問題じゃないよ」


「魔王女…私が…」


 ついこの前まで母親と二人で慎ましい生活を送ってたんだ。それがいきなり王位継承権とか魔王女とか言われたら普通困惑するよね…


「じゃ、じゃあ…私ここで…お城で暮らすの?」


「そうなるね」


「…ご飯もお腹いっぱい食べられる?」


「もちろん」


「わぁぁ!やったー!わーい!」


 不憫…!

お腹いっぱい食べられるというだけでこの喜びよう…今までの苦労が偲ばれる。…そういえば初めて会った時のティナ達のように痩せてるし。

…お祖父ちゃんの罪は重いな。


「レベッカは食べ物は何が好き?」


「え?えっとぉ…シチュー!お野菜が一杯入ったの!一番のご馳走だったよ!」


「そっかあー…他にはない?今日の晩御飯はレベッカが好きなやつを沢山作ってもらうからさ。何でも言って」


「ほんとー!?やったー!えっとぉ…じゃあ…」


 そこで、ぐぅぅぅ、と。

お腹を鳴らしたのはレベッカではなく、アイシス。

これだけの人数がいるのにこういう時アイシスだとすぐに解かるのはいつもの事だから。

お約束ってやつだね。


「……えへへ」


「…セバスト、頼んだよ」


「了解だ」


「全く…アイシス、少しは我慢しないか」


「それは無理、カタリナ様。アイシスは『待て』が出来ない」


「それ犬以下って事!?セリア、酷い!」


「ハティは出来る」


「あたしは狼だもん」


「うう…」


 少しして用意された食事に、レベッカは眼を輝かせ大きく口を開けている。

我慢できずに食べ出すと思ったのだが…どういうわけかレベッカは泣き出してしまった。


「ど、どうかした?ほら、好きなだけ食べていいんだよ?」


「うん…でも…お母さんと一緒に食べたかったな…」


「「「はうっ!」」」


 泣ける…!

そうだよね…まだ八歳の女の子が母親と死に別れたばかりで。

母親を失った悲しみから完全に立ち直ってるわけがないよね。


「…と、とにかく好きなだけ食べなさい。マナーとか気にしなくていいから」


「う、うん…ズズッ……どうしてご主人様が泣いてるの?」


「き、気にしないで。それからボクの事はご主人様じゃなくて、そうだな…お兄ちゃんとか、ジュンって名前で呼んでいいから」


「うん…えっと…じゃあジュン様」


 様付けか。

まぁ最初の内は仕方ないか。


「ほら、御飯を食べよう。冷めないうちに」


「うん!いただきまーす!」


 食事中のレベッカは本当に幸せそうで。

最初に見た時は人生の何もかもを諦めたような眼をしていたが、この短時間で見違えるように明るくなった。

きっと、元々が明るくて素直な性格の子だったんだろう。


「美味しい!美味しいよ、ジュン様!」


「そう。よかったね」


「うん!」


「…それで、結局どうするの?その子の事」


「兎に角、レベッカとお祖父ちゃんが話し合う必要があると思う。エルムバーン魔王家の者になってもらうのは変わりないだろうけど、当人同士で一度は話合わないと。その上でレベッカに一番いいと思う形で治めたい」


「…そうね。子供とはいえ、本人の意思は尊重しないとね」


「…そうなると、明日だな。今日はもうハズラッドさんは出て来れないだろうからな。明日の朝、話合うしかないな」


「そうね。御義母様もアスラッドも、相当頭にキてたみたいだし」


「アリーゼもな。ああなったら誰にも止められん。…前回のミリアさんのお仕置きだけでも長かったし、明日の朝どころか昼…いや二日間くらいかかるかもな」


「………前回?」


「ああ。前回も浮気がバレた事があるんだ。というか何回もだ。セイレン魔王国に行きたいから、こっそり連れて行けとか頼まれた事もあったしな。それでも今まで子供を作った事だけは無かったが…遂にやっちまったな、ハズラッドさん」


「今まで出来て無かったのが不思議なくらいではあるけどね~」


 そこまでか。

そこまでの筋金入りか。セイレン魔王国に行きたいとか思う程にか。

……他にもいないだろうな、レベッカみたいな子。

旅の行く先々にいたりしないだろうな。


「ジュンはハズラッドさんみたいになるなよ。……手遅れかもしれんが」


「はっはっはっ…何をおっしゃいますやら。ガウル様、ボクほど身持ちの堅い男はそうはいませんよ」


「……お前、今婚約者何人だっけ?説得力皆無だぞ」


「それを言われると…」


 確かに返す言葉が無い。

いや、しかし!浮気をした事は無い!


「アイが納得してるみたいだからいいが…アイを泣かせるなよ」


「はい。それは勿論」


「だーいじょうぶだってば、パパ。ジュンは浮気だけはしないよ」


「私達がいれば浮気する必要も無いもんね」


「僕達がずっと一緒だから浮気なんて不可能だしね」


「浮気したら妻全員でお仕置き」


 妻全員でお仕置き…多分、死ぬなそれ。

浮気なんて本当にする気はないけど。


「それとお前。クオンはどうするつもりなんだ?」


「はい?クオンさんですか?」


「ああ。お前が婚約者を増やしたって聞いて酷く落ち込んでいるが?」


「何でですのん」


「とぼけるなよ。クオンだって…」


「師匠ー!帰って来てたんですか!」


「お帰りなさいませ、皆様。…あら?ガウル様?いらしてたのですか?」


「知らない子もいるね?」


「ダルムダット魔王家縁の方でしょうか?」


「…まぁいい。その内会ってやれよ」


「はぁ…」


 メリッサやマリーダさん。

シャンタルさんやエミリエンヌさん達まで来たのでこの話は一旦打ち切り。


 そして翌日にはレベッカの事はママ上に任せ、アカード帝国へ。

レベッカの事を見届けてから戻りたいとこだが、そうもいかず。

そろそろサンジェラさんとの婚約話もケリをつけないと。

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