第37話 フェンリル一家
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ボクは十一歳。
アイとユウは八歳になった。
学校と病院は順調なようで、ティナ達が毎日楽しそうに学校であった事を報告してくる。
友達ができたとか文字を習ったとか。
給食の内容は毎日必ず報告するのは御愛嬌だ。
教師は文字や計算を教えるのは国で文官をしてた人や元商人。
事務や経理等は商会で働いていた人等を中心に雇っている。
剣術や体術、魔法を教える、いわゆる体育教師的な人は元冒険者や街で道場をやっていた人、元騎士等が中心だ。
厳しそうな人がいたのでやりすぎないか心配してたが、今のとこは上手くいってるようだ。
病院のほうは最初は大忙しだったようだが、今はだいぶ落ち着いたようだ。
訪れる人は怪我人が多い。
病人は魔法で一度治ればそうそう再発しないので、流行り病でパンデミックみたいにならなければ大丈夫だろう。しかし怪我人は毎日来る。
魔獣がいる世界なので冒険者や兵士が怪我をするたび行くことになる。
騎士団や兵団に所属する治癒魔法使いは今はいない。
ボクが訓練した治癒魔法使い達は全て学校、病院、訓練所で働いている。
国民の治療と今後の育成を優先したのだ。
来年以降、育った治癒魔法使いを少しずつ軍に採用する予定だ。
ちなみに病院で働く人は低位の治癒魔法や薬草を売る等して働いていた人を中心に雇っている。
彼らの仕事を奪う形になったので別の仕事を斡旋したわけだ。
そしてボクは学校設立と治癒魔法使いの仕事が無くなったのでだいぶ時間に余裕ができた。
今はみんなでハティと庭で遊んでいる。
「ほ~ら、捕ってこ~い」
「わふ!」
ボクが自作したフリスピーを投げ、ハティが空中でキャッチする。
まだ子犬、ではなく子狼なのに大した運動能力だ。
2メートルは軽くジャンプしてる。
流石、神獣フェンリルの子。
末恐ろしい限りだ。
「ん?」
「わふ?」
ハティがなにか耳をピクピクさせ鼻をヒクヒクさせてる。
すると急にどこかへ走りだした。
慌てて追いかける。
「お~いハティどこへ行くんだ?」
「わふっふ!」
こっち!とばかりに返事をしてハティが向かったのは城門だ。
そしてなんだか城門前が騒がしい。
「わからん奴らだな。ハティに会いに来たのだと言ってるだろう」
「だから急に来られてもダメだ!ちゃんと事前に連絡してから会うことができる日時を伝えるからその日に来てくれ!事前の約束なしに会いたいからと会わせるわけにはいかんのだ!」
「娘に会うのに何故そんなものがいる。だいたい事前にちゃんと言ってあるぞ。様子を見に行く、とな」
「だから日時をちゃんと決めてからだ!大体娘って!ハティ様は神獣フェンリルだぞ!あんたどう見ても狼人族だろう!」
「ん?ああ、この姿か。これは貴様らに合わせたのだがな。この姿はな―――お」
「わふ!」
城門前で兵士とやり取りしてた狼人族の女性にハティが飛びついた。
城門前にはハティが飛びついた人だけでなく他にも五人の男女がいる。
みんな狼人族に見えるけど…
「元気だったかハティ。早速様子を見に来たぞ」
「わふわふ!」
「うむ。少しみなで話合ってな。みなでこっちに移り住むことにしたのだ。それなら家族離ればなれにならずに済むだろう?」
「わふふ!わふ!」
「そうかそうか嬉しいか」
なんだか気になる会話をしているが
とにかく話に入ろう。
「失礼、貴方は?」
「む?おお、貴様か。ハティが世話になっとるの」
「おい!貴様!ジュン様に向かって!」
「いいから、君は下がって。ここはボクに任せて」
まだ納得のいかなさそうな兵士を下がらせる。
しかしこの偉そうな物言いや態度って未だ慣れないなあ。
前世では一般市民のボクだ。
性分じゃないね。
「失礼しました。あの貴方はもしかして、ハティの母親の―――」
「うん?この間会っただろう。もう忘れたのか?ああ、この姿では初めてか。神獣フェンリルだ。貴様らの街に入るとなればあの姿では騒ぎになるだろう?それで会わせてやったのだ」
やはりこの前、ハティを迎えに来た神獣フェンリル、ハティの母親か。
じゃあ後ろにいるのは?
「ようこそいらっしゃいました。それで後ろの方々は?」
「ああ、我の家族だ。とりあえず中へ入れてくれないか?落ち着いた場所で話そうではないか」
「ええ、みなさんこちらへどうぞ」
ボクの部屋にハティの家族を案内する。
ノエラに全員分の紅茶を用意してもらう。
あれ、狼って紅茶とか飲めるのかな。
人型なら平気だろうか?
「我々の飲み物ですが大丈夫ですか?」
「うむ。問題ないぞ。我は時折この姿でお主らの街に出ておるしな」
「え、そうなんですか?何のために?」
「暇つぶしだ。それに人の作るものは我らには作れないものばかりだし便利な物もあるのでな」
そうなのか。
結構、人にかぶれてるのねフェンリル。
「ハティがはぐれたのはその影響だ。我が街に行った時の話を聞いて自分も行きたくなったのだろう。人化がまだできないのでな、連れて行った事が無かったのだ。それで我慢できなくなって飛び出した」
子供らしい理由だ。
そして凄い行動力。
さすが神獣の子。
「それで他の皆さんは?」
「ああ、こっちが我の夫だ。あとはハティの兄と姉だ」
「初めまして。ハティの父です」
「長男です。よろしくお願いします」
「次男です。よろしくお願いします」
「長女よ。よろしくね~」
「次女だよ。よろしく~」
ハティのお父さんから順に挨拶してもらう。
しかし、男性陣は丁寧な口調なのに女性陣はなんだか軽いな。
「ジュン・エルムバーンです。この国を治める魔王アスラッド・エルムバーンの長男です」
「ほう、そうだったのか。魔王子というやつだな」
「あれ?知りませんでしたか?」
「うむ。あ、いや魔王アスラッドが息子とか言っていたか。ならば魔王子であるな」
そうだったかな。
あの時は色々衝撃的だったのでちゃんとした自己紹介はしてないかな。
「ところでみなさんは名前はないのですか?」
「ないぞ。我らは名等無くても意思の疎通は可能だ。とゆうか普通、幻獣や神獣に名はない。ハティのように人と関わりを持った者が持つくらいだ」
そうなのか。
しかしこうして接すると名前がないと不便に思うのだが。
でも名前を付けると怒りそうな気もするし。
「ところで今日はハティに会いに来たという事でいいですか?」
城門前で話してた内容を聞いてみる事にした。
「うむ。それなのだがな。あの後みなで話合ったのだがな。やはり小さい娘を目の届かないとこに置くのは不安でな。いや別に貴様らを信用してないわけではない。ハティが懐いておるのだ。そこは心配してない」
「はい。親なら当然だと思います」
「そこでな。いっそ家族全員でここに住めばよいとなってな」
「はあ、なるほど―――は?」
「ハティともども世話になるぞ」
いやいやいや
なに言うてますのん。
「ちょっと待ってください、急にそんな事言われても!」
「なに心配するな。自分達の食い扶持くらいは自分達で用意する。それに何か困った事があれば力になるのも吝かではないぞ。神獣フェンリル一家の力を借りれるのだ。そうそう無いことだぞ。光栄に思うがいい」
それは―――確かに心強いけども
「まあ急に神獣フェンリル一家が城に住むって言われたら困惑するよね、普通」
とハティのお父さんが話に入って来る
「はい…それに今まで住んでた所はどうしたんですか?」
「今まで住んでたとこは山の上にある洞窟でね。入口は埋めて隠して来たし大事な物も特にない。ほとんど身一つで来たんだよ。あの場所に特にこだわりもなかったしね」
「うむ。それで娘達もハティだけ街で暮らすなんてずるい~と言うのでな。ハティも心配だしみなでここに引っ越そうとな。とゆうわけだよろしく頼むぞ」
「は、はぁ…」
「それにな、貴様らではハティを鍛えることは出来んだろう?ハティはまだ人化もできん。それらフェンリルの力を教える者が必要なはずだ。我らの力も借りる事も出来るとなれば悪い話ではないはずだぞ」
確かに、そうかもしれない。
「分かりました。ノエラ、お父さんに事情を話して許可を貰ってきてくれないか」
「畏まりました。ジュン様」
「よろしく頼むぞ。ああ、そうだこれは世話になる礼だ。金に換えるなり好きにするがよい」
そう言って胸の谷間から取り出したのは大きな宝石だ。
ダイアモンドやらサファイヤとか。
複数ある。
「「わあああ、素敵」」
それらに文字通り目を輝かせたのはアイとユウだ。
リリーもキラキラさせてる。
「我らには不要な物だが昔、気まぐれで街を一つ魔獣から救ってな。我に貢いできた物の中にあった物だ。まだまだある故、遠慮せずともよいぞ」
「「どうぞ御自由にお過ごしください」」
「うむ。世話になるぞ」
パパ上が許可を出す前にアイとユウが許可を出してしまった。
やはり女性は宝石が好きだね…。
しかし神獣フェンリル一家が暮らす城か。
もうちょっとやそっとじゃ落ちないなこの城。
まあ戦争はしてないんだし攻め込まれる事もないだろうけど。




