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第364話 帝国の皇女 5

「というわけでやってまいりました、アカード帝国の帝都アルカンタラです。個人の武が尊重される国というだけあって、街にはいかにも戦士や騎士といったいかつい人が、男女問わず多く見られます。エルムバーンにも闘技場がありますが、ここは毎日のように闘技場で試合が行われています。故に街の治安は悪そうに思えますが、街の治安を維持する兵士や騎士も屈強で治安はすこぶるいいとか」


「あ、また出た」


「一体誰に向けて言っているんだ?」


「ジュン殿が変り者なのは知ってましたが…」


「イーノさんには…というかこの場にいる人には言われたくないですね」


「「「失礼な」」」


 いや、ほんと。

変り者しかいないでしょ、この集団。


「はは…それで、アンナ様。此処で待機してればよろしいのですか?」


「ええ。アレクサンドリス王国の時と同じで先導役が来るはずよ」


「あ、アレではないでしょうか?」


 クリステアが指差す方向から騎士が大勢迎えに来た。

…というか、来過ぎじゃなかろうか?

百?いや、三百?


「ア、アンナさん?大袈裟な歓迎はしなくてもいいと伝えたんですよね?」


「え、ええ、勿論…街の雰囲気はそうじゃないでしょ?」


「そうですけど…」


 騎士達が来る方向にいる人達は何事かと騒ぎ出してる。

アレクサンドリス王国の時のようにある程度目立つのは覚悟していたが…


「お待ちしておりましたぁぁぁ!ジュン・エルムバーン様御一行ですね!私は帝都防衛騎士団の団長、ドリアスであります!皆さんを城まで案内する大役を務めさせて頂きます!」


「は、はぁ…ボクがジュン・エルムバーンです。よろしくお願いします」


「マークス・オレール・ヴェルリアです。案内、よろしくおねが…」


「はっ!命がけで務めさせて頂きます!ではこちらです!!」


「………」


 マークスさんの挨拶を遮って…大丈夫かな。

不敬罪とかに問われなきゃいいけど。


 ドリアスさんの先導で皇城へ。

ドリアスさん以下、先導役の騎士は多分三百名くらい。

騎士達は馬、ボク達は馬車。

走ってるわけではいが実に目立つ。

アレクサンドリス王国の時よりも、ずっと。


「何だか妙ですね。マークス殿の口上を遮っただけで無く…私達をジュン殿の一行と一括りにしてましたよ、あのドリアスという人」


「そうね。まるでジュンが来た事だけが重要みたいな」


「かなり緊張もしてたみたいだから、断定は出来ないけど…そんな感じだったわね」


「皇帝に何か言われてるんじゃない?お兄ちゃんにだけは失礼の無いように、とか」


 そう…なんだろうか?

仮にそうだとしたらボクってそんなに重要視されてるの?

そりゃ武においてはマークスさんよりずっと強いけどさ。


「…ところで、アンナさん。アカード帝国との交渉、上手くいく自信はあるんですか?」


「…何とも言えないわ。向こうがジュンちゃんとの婚約を諦めるという選択肢を取らなければどうにもならないし。こちらは最大限譲歩する用意はあるけれど」


「そうですか…」


「ジュンちゃんが皇女と婚約してくれたら話は簡単なんだけどー」


「エルムバーンとヴェルリアの関係を悪化させたくないなら頑張ってくださいねー」


「う…はい…」


「マークスさんが皇女をホレさせる事が出来ればいいんじゃない?」


「え?」


「ああ、そうですね。皇女自身がマークスさんとの結婚を望めば皇帝も受け入れるかも」


「頑張って口説いてくださいね、マークスさん」


「は、はぁ…」


 そんな話をしながら城に着き、皇帝との謁見へ。

皇帝は玉座に座り、その隣には正妃…いや皇后か。

そしてその脇に一人の青年。彼は皇太子だろう。

…皇女らしき人が居ないな?


「よく来てくれた。私がアカード帝国皇帝、パオロ・オヴィディオ・アカードだ。歓迎しよう」


「歓迎感謝します、パオロ陛下。マークス・オレール・ヴェルリアです」


「ジュン・エルムバーンです。よろしくお願いします」


 パオロ陛下は銀髪の短髪。

如何にも武を重要視する国の頂点に立つ人物といった感じの風貌で、服装を替えたら山賊の頭でも通りそうな。はっきり言って強面だ。

そんな陛下はボクをジッと見ていて、マークスさんは見ていない。

少しも。


「私は皇太子のジリオ・ウーゴ・アカード。噂のエルムバーンの魔王子に会えて嬉しく思う」


 ジリオ殿は父親似なのだろう。

二十代の筈だが、その強面の為に老けて見える。

この人も鍛えているのがよく解る。

そしてパオロ陛下と同じく、ボクをジッと見ている。


「皇后のキアーラ・エーベ・アカードです。よろしくお願い致しますわ、皆さん」


 キアーラさんは細身の美人さんだ。

黒髪…いや、茶髪かな?

アイと同じ長い髪だ。

この人はボク達全員に眼をやっている。


 ボクとマークスさん以外の自己紹介も終わり。

本題に、と思ったのだが。


「さて…気になっているであろうが皇女のサンジェラは今、清めの儀式の最中だ。後ほど紹介するとして、今は休まれるがよい。長旅でお疲れであろうからな」


「清めの儀式…ですか?」


「うむ。アカード皇家の娘は夫となる者と会う時は身を清めてから会う事になっている。これが中々時間のかかる儀式でな。待ち遠しいであろうが今は我慢して欲しい、ジュン殿」


「は、はい…」


「「「………」」」


 あくまでボクですか…どんな人なのか気になってはいますが、待ち遠しくはないですよ?


 そして、それぞれが宛がわれた部屋に案内され。

今はボクの部屋に全員集まっている。

護衛の聖騎士団も含めて、だ。


「なんか、豪勢だね…お兄ちゃんの部屋は」


「ほんと。僕達の部屋は質素という訳じゃないけど…二人部屋だし」


「私達の二人部屋より広い。装飾品も豪華」


 そうなのだ。

こうして全員が集まれる程に広い。

ベッドもキングサイズ。

まるで皇家専用の部屋だ。


「なかなかにあからさまだな。私達ヴェルリア王家の者だけで無く、ユウやアイともジュンの扱いと格差をつけるとは」


「ジュンさん以外に興味は無いって言いたいのかしら…」


「パメラちゃんの言う通りなんでしょうね。こうなると交渉に乗って来るかも怪しいわね」


 しかし、それではこちらは困るので。

ボクの事は何とか諦めてもらうしか無いのだが…


「ボクが婚約する気は無いっていうのは伝えてるんですよね?」


「ええ。だけどパオロ陛下は娘に会えば気が変わるだろうから連れて来いってさ。余程自信があるんでしょうね」


「マークスさんと結婚しても、一応は親戚になれるんだし。それで納得すればいいのに」


「え?…ああ、そうですね、確かに」


「ぼ、僕とマークス兄さんの義兄になるんですもんね」


 うう~む…確かにその通りなんだけども。

夏のバカンスで結局は押し切られて大勢の女性と婚約してしまった。

その中にはイーノさんのように弟…兄や弟がいる人もいるわけで。

その人達の結婚先なんかも親戚になると考えると…一体どれだけ親戚が増えるのやら。

今から頭が痛い。


 そして二時間くらい経ったころ。

サンジェラさんの準備が整ったので交渉を始める事に。

呼び出された部屋は会議室でも応接室でも無く。

大食堂だった。

席は人数分あったのだが…上座はボクだった。

尚、ノエラ達使用人や、クリステアとルチーナ。

そして聖騎士団の人達は別室だ。

この場には王族と、貴族のアイシス達のみとなった。


「(サンジェラさんの姿が見えないね?)」


「(勿体付けてるんじゃない?皇后の隣の席が空いてるし、そこに座るんでしょ)」


「(そうなんだろうけど…)」


 何だ、あの椅子の大きさは。

力士でも座るのかと言わんばかりに大きいのだが。


「さて…皆、気になっているようだし、紹介しようか。入れ、サンジェラ」


 パオロ陛下の言葉でサンジェラさんは入って来た。

その姿に…皆絶句していた。


「フフ…我が自慢の娘の迫力に言葉も出ないようだな。これが私の娘、サンジェラだ」


「サンジェラ・トスカ・アカードです。よろしくお願い致します」


 銀色のドレスの端を軽く持ち上げ、優雅に挨拶して見せた女性がサンジェラさん。

サンジェラさんは…いつか受けた衝撃を思い出させてくれた。


「(名前が似てるな~とは思ってたけど…まさか、こんな…)」


「(そうね、アイ…私も思ってたけど…)」


 うん、ボクも思ってた。

サンジェラさんの名前を聞いた時、モンジェラさんに似てる名前だとは思った。

だけど、まさか容姿まで似ているなんて。

似ているのは結婚後のモンジェラさんでは無く…結婚前のモンジェラさん。


 そう、サンジェラさんは…ドレスを着たメスゴリラだった。

このメスゴリラと結婚?

無理無理!無理過ぎる!

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