第353話 女の戦い 3
~~レヴィ~~
何だかおかしな事に…早い話がこれってジュン様争奪戦だよね。
「よーし!あたいはやるぜ!」
「わたしもやるのー!」
「お姉ちゃんがやるなら私もね」
「仕方ないなぁ」
「とか言って二人ともやる気満々じゃんか」
「二人とも素直じゃ無いのー!」
ティナさん達は参加するんだ。
予想通りだけど。私はどうしよ。
「じゃあ早速作戦会議だな!」
「うん。ほら、レヴィも行こう?」
「え?私もですか?」
「勿論!」
「レヴィはわたし達の仲間なのー」
参加するかどうかで迷ってたんだけど…ま、いっか。普通に楽しそうだし。
『騎士と泥棒』なら怪我人が出る事も無いだろうし。
「なぁ、ティナ。他の人もチームでやるみたいだぜ」
「そうみたいなの。わたし達だけじゃ、ちょっと不利かもなの」
「味方を増やすべきだね」
「誰か私達の味方になってくれそうな人…」
「私には心当たりは…あ、ハティちゃんとかどうです?あそこでお姉さんと話してますよ」
ショートカットの背の高いお姉さんが長女のレートーさん。ポニーテールで、スラッと長い脚を惜しげも無く晒してるのが次女のアセナさん。
二人とも気が強そうな見た目に反して、オットリした、優しい性格。私の訓練の時、お世話になった。
「ん~…いいかもなの!」
「だな!なんてったってフェンリルだもんな!」
「決まりね。じゃあレヴィ、お願い」
「上手く仲間に引き込んでね」
「え?私が誘うんですか?」
「「「「当然!」」」」
当然なんだ…ティナさん達って、偶に妙に先輩風吹かせたがるんだよね。
いいんだけどさ。
「ハティちゃん!」
「むむ?レヴィ?」
「ハティちゃんも参加するんでしょ?私もティナさん達と一緒に参加するんだけど、ハティちゃんも一緒にどう?お姉さん達も、是非」
「ん、ん~…」
「いいんじゃな~い?」
「私もいいと思うよ?」
「う~…わかった」
「わ~ありがとう!頼りにしてるね!」
よかった。これ以上無いくらい頼もしい味方が出来た。
これで他のチームに勝てるかも。
あ、でも…もし勝ったらジュン様と…ニヘヘ…
「あ、でも~私達が勝ったら一番は私ね?」
「じゃあ私二番。ハティは三番ね」
「え?」
「何の順番ですか?」
「もちろん…」
「ジュンちゃんを食べる順番よ」
「えええ!た、食べるって…」
「やぁねぇ、本当に食べちゃうわけじゃないわよ?」
「大人の意味で食べちゃうのよ?」
「「「「ですよね~」」」」
「?」
あ、そういう…ハティちゃんは判ってないみたいだけど、ティナさん達は判ってたみたい。…常識なのかな?
「私達が参加する以上、もう勝ちは決まったようなものだし~」
「私達に付いて来なさ~い!」
「「「「頼もしー」」」」
ティナさん達のよいしょっぷりが何故か不安にさせる…何か、こう…そこはかとなく。少しずつ、落とし穴に向かって自分から進んでるような…不安。
~~シャンタル~~
「あたし達はどうしよっか?お姉ちゃん」
「どうするって…貴女はやっぱり参加するの?」
「もっちろん!面白そうだもん!」
そうよね、貴女はそうよね。
でも私は…止めておこう…
「お姉ちゃんは参加しないの?」
「だって…自信ないもの。きっと貴女の脚を引っ張るだけよ」
「そ~んな事ないない!だってお姉ちゃんの『魔王の紋章』を使えば勝機はあるよ!」
「私の紋章?」
…ああ、そうでした。
私の紋章を使えば確かに勝機はあるかもしれない。
「でも、それでも貴女一人で頑張る事には変わりないじゃ無い?私は強化しても大して動けないし。元々の運動能力が低いもの」
「そんな事無いと思うけど…ん~一時間の間強化するとしたら何人までいける?」
「えっと…貴女と私を含めて五人かしら」
私の『魔王の紋章』の能力は、対象となる人物に魔力を直接流し込み、強化するという物。
流し込んだ魔力の量で持続時間が変わり、補助魔法を大きく上回る強化率を誇る。
「ならあと三人、チームメイトを見つけないとね。誰かいないかなぁ~」
「もう殆どの人が決まってるみたい」
「わたくし達は如何でしょう?」
「あ、姉上?」
「貴女達は…」
確か、クアドラ魔王国の魔王女、マリーダさんとメリッサさん。メリッサさんはジュンさんの弟子だとか?
「姉上、私一人で充分だと言ったではないですか」
「何処から来るの、その自信」
「私には転移魔法があるんですよ?見つけさえすれば一瞬です!」
「あの…メリッサさん?転移魔法は禁止ですよ?」
「え?」
「エリザ様がそう言ってたよ?」
「そうじゃないとジュン様が捕まるわけないでしょう?ジュン様も転移魔法が使えるの、忘れたの?」
「うっく…な、なら仕方ないですね!チームを組むとしましょう!」
「はぁ…」
大丈夫かしら?何故か不安になります…
「ええと…そういえばまだまともに挨拶もしていませんでしたね。初めまして、セイレン魔王国の第一魔王女シャンタル・セイレンです」
「あたしは第二魔王女のエミリエンヌ・セイレンだよ!よろしくね!」
「はい。わたくしはクアドラ魔王国の第一魔王女マリーダ・クアドラです。以後お見知り置きを」
「私はクアドラ魔王国第二魔王女メリッサ・クアドラ!よろしく頼みます!」
「それでお二人の会話が少し聞こえていたのですけど…あともう一人必要という事でよろしいですか?」
「はい。誰か心当たりがありますか?」
「いえ、残念ながら…わたくし達は新参者ですから」
「そうですか…仕方ないですね」
「ねぇ、あんた達!仲間を探してるのか?」
「え?あ、はい」
「ならMeが入ってやるぞ!感謝するといい!」
この方は確か…リヴァさん。
エルムバーンのお城で小さな教会を開いた…何故かジュンさんに一目置かれてると噂の。
「よろしいんですか?リヴァさん」
「よろしいのです!だけど勘違いするなよ!誰も誘ってくれなかったから寂しかったとか、そんな事は全然ないんだからな!」
「は、はい…」
「「「……」」」
よく見ればうっすらと涙の跡が…寂しがり屋さんなのかしら?
「リヴァさんはシャンタルさんのチームに?」
「あ、ジュンさん」
「あ、主!そうだぞ!Meが力を貸すからには勝利は決まったようなモノだ!」
「私もいますよ、師匠!」
「わたくしも全力を尽くします、ジュン様」
「はは…お手柔らかに。というか、リヴァさんは本気で手加減して下さいね?遊びで死人とか出さないで下さいよ?」
「え?」
「何を言うんだ、あんたは?そんなの当たり前だろ?」
「本当にお願いしますよ?島も破壊しないで下さいよ?ここ、エルムバーン魔王家にとって大事な島なんですから」
何でしょう…ジュンさんが本気で心配しているように見えます。
そんなに強いんでしょうか?リヴァさんは。
「あの…師匠?その人はそんなに凄いんですか?島を破壊しちゃうくらい?」
「うん。こんな小さな島なら一瞬で破壊出来るだろうね。出来ますよね?」
「ん?そんなの簡単だぞ!だけどしないから安心しろ!」
「えええ…本当ですか?」
「ちょっと大袈裟なんじゃない?ジュンさんなら出来そうだけどさ」
「大袈裟じゃないですよ。リヴァさんはボクより強い…もしかしたら世界最強かも」
「「「「え?」」」」
世界最強?リヴァさんが?
「ニヘヘ…それは誉めすぎだよぉ」
「い、いやいや、師匠?この人が世界最強?師匠より強いと?」
「神獣よりも強いと仰るんですか?」
「ええ、まあ。そうですね、何か証明になる物…リヴァさん、あの雲に向かって拳を振り抜いてみて下さい」
「ん?いいぞ」
…リヴァさんが拳を振り抜いた先にあった雲は…綺麗に吹き飛んでしまいました。
ただの拳で?
「え?…え?」
「な、何、今の…」
「し、師匠!何ですか、今の!」
「な、何かの魔法ですか?それとも紋章の力?」
「ん?違うぞ?ただ拳を振り抜いただけだぞ?」
「というわけです。分かって頂けましたか?」
…もし、今振り抜いた拳の先に人が居たら…
「リヴァさんの拳を人に向けたら…トマトを潰すようなものでしょうね。島も簡単です」
「「「「……」」」」
「というわけで…皆さん、リヴァさんとチームを組むならほんとーに上手く誘導して下さいね。嫌ですよ、ボク。遊びで死ぬなんて」
「大丈夫だってばぁ。Meは手加減も上手だぞ?」
どうしましょう…何だか途轍もなく危険な人物を味方にしてしまったようです…あのエミリでさえ、怯えてるような…
「さー、やるからには勝利を目指すぞー!」
「「「「は、はい!」」」」
本当にどうしましょう…取り敢えず、私の紋章でリヴァさんを強化するのは止めておきましょう…
~~ユウ~~
「さてさて…ウチらは誰と組もうか」
「…私と組んでくれるの?アイ」
「勿論。ジュンにユウとの婚約を認めさせるチャンスじゃん」
「そうですねー流石に既成事実を作っちゃえばジュン様も折れるんじゃないですか?」
「私はジュン様の従者ですがユウ様の従者でもあります。協力は惜しみません」
「リリーは兄妹で結婚はどうかと思うですけど…ユウ様が本気なのは知ってますから!協力するですぅ!」
「私も協力します」
「ユウ様だけ婚約出来ないって私達も辛いですし」
「…ありがとう、皆」
そうだ、後はもう既成事実を作るしか…!
「ちょっとお待ちなさい、ルチーナ。今なんて仰ったの?」
「い、今ジュン様と婚約してないのはユウ様だけと仰ったのですか?」
「「「あ」」」
ユリアにリディア…二人に聞かれちゃったか…こうなったら二人も味方に引き込む!
「ユリア、リディア。詳しい話は後で。此処じゃ出来ないのは判るでしょ?」
「し、しかし…それは…」
「そ、そうですわ!とても聞き捨てなりませんもの!」
「だから落ち着いて。いい?この勝負に勝てば貴女達もお兄ちゃんの婚約者になれるかもしれないのよ?」
「そ、それは!」
「き、既成事実ですの?でも結婚前にそんな…」
「リディア、今時は結婚前に経験するのが普通です」
「そ!そうですの?」
「そうそう。というか、この勝負に勝ったチームはそれがご褒美みたいなもんじゃない」
「う、うぅ…」
「ね?リディア、事情は後で話すから。私達のチームに入って協力して、ね?」
「わ、判りましたわ…」
「ですが勝てるのですか?他のチームも強敵揃いでは?」
「大丈夫!お兄ちゃんの事なら私が全て把握してる!私が完璧な作戦を考えてみせる!」
「「「おぉー」」」
待ってて、お兄ちゃん!待ってろ私の幸せ!
必ずこのチャンスをモノにしてみせる!




