表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
341/604

第341話 戦乱 58

「ようこそ!我が城へ、ジュン・エルムバーン御一行様」


「ようやく来たか。待ちくたびれたわい」


「ふん…」


「……」


 玉座の間に居たのは予想通りの三人…ではなく、四人だった。

玉座に座るエスカロン以外は…初めて見る顔だ。


「ジュン…あのエスカロンの左隣にいる奴…勇者の杖を持ってる」


『間違いない。あれはリュバーンであの爺が持ってた杖と同じやで』


「じゃあ、あの男が…あのマッド爺?」


「随分と若返ってるけど…」


「腕も生えてる。ガリア魔王国にも中位以上の治癒魔法使いが居るのか?」


 マッド爺の外見は、以前のような年寄りではなく、若々しい二十代の青年に見える。

髪も白髪では無く金髪。皺なんてまるで無いし、声も若い。

あれが奴の夢、研究の成果。

だとしたら本当に不老不死になったのか?

フェニックスのように、殺せば死ぬんだろうか?


 そしてエスカロンの右隣の男。

あいつが恐らくはブラド。

タキシードに黒マント。

ドラキュラのイメージそのものといった感じのスタイル。

あいつの後ろに控えてる女性は従者か何かか?

でも服装はドレスだし…従者というより妻のような。


「サリア…生きていたのか…」


「サリア?サリアってブラドに殺されたディノスさんの恋人の?」


「そうだ。だけど、あそこにいる…サリア!俺だ、ディノスだ!」


「……」


 サリアさんはディノスさんの声に反応を示さない。

というより微動だにしない。まるで人形のような…


「無駄だ。サリアは私の下僕。私のモノだ。もうお前のじゃない」


「ブラド…貴様!」


 下僕…吸血鬼の能力か。

血を吸い眷属に変え、下僕に変えたか。

ゲスの仲間はやはりゲスか…


「エスカロン殿…いや、エスカロン。ゲス共の仲間のあんたもやはりゲスなのか?」


「いやいや。この二人がゲスなのは私も認める所ですが。仲間というよりは協力者ですよ。お互いの利益の為に、互いを利用しただけの」


「フン…」


「ゲスだと…エスカロン、貴様…」


 確かに。薄い絆みたいだ。

簡単に亀裂が入ってる。だけど、なんだ?その余裕。


「(お兄ちゃん、アレ)」


「(…魔法陣?)」


「(ヴェルリアの城で書いた空間魔法を補助する大魔法陣によく似てる。多分、同じ類の物だよ)」


 転移魔法を補助する魔法陣…アレで逃げるつもりか。

未だに戦ってる自分の国民を見捨てて。

…やはり、こいつもゲスだな。

逃げられないがね。


「…エスカロン、あんたの目的は何だ?魔族が支配する世界を作りたかったのか?」


「私の目的までお気づきですか!いや、素晴らしい!ですが…少し違います。私が作りたかった世界。それは…貴方が支配する世界ですよ、ジュン殿」


「…は?ボクが支配する世界?」


「はぁい!貴方こそが!私が理想とする世界を治めるに相応しい!私はその為に戦争を起こしたのです!」


「…何を言ってるんだ、あんた。ボクは世界の支配者なんてなりたいと思った事は無いぞ」


「そうでしょうそうでしょう!ですが、私の使命は間違いなくそれです!何せ、神に言われたのですから!そうせよ、と!」


「…何?神?」


「そう!神です!ある日、神が!私の前に現れてこう言いました!『汝の望む世界を作り、その世界に相応しい支配者を見つけよ』と!私が望む世界!それは人族という腐った血が詰まった肉袋をこの世界から消し去り!魔族の世界を作る!そしてその新世界には民に愛される慈悲深き王!すなわち貴方です!」


「その為に戦争を起こした?エルムバーン魔王国と同盟国のヴェルリア王国を相手に?矛盾してるぞ、あんた。ボクの敵に周ってるじゃないか。下手な嘘を言ってないで本当の事を言ったらどうだ?」


「いえいえ、本当の事ですとも。ヴェルリア王国を滅ぼせば、エルムバーンとは和平交渉をするつもりでしたし。神が私の前に現れた証拠もありますよ。コレです」


「それは…」


「神が稀に自ら作った物を人に与える事がある。それがこの宝玉です」


 何だ、あれ…妙な気配を感じる。

ボクの【フレイヤ】や【アトロポス】とはまた違う感じの…


『…アレは確かに、神様が作ったもんみたいやで…』


「メーティスがそう言うって事は…ほんとなんだ…」


『そうや、マスター。どんな能力かまではわからんけどな』


 神様の祝福を受けた物を感知する能力…それがあるメーティスが言うからには事実なんだろう。だけど…


「メーティスなら、もっと早く気が付いてたんじゃないの?レヴィアタンの封印にはもっと早く気が付いてたじゃない」


『断言は出来んけど…エスカロンが盗まれたりせんようになんらかの対策をしたんやろ。その結果、わいも感知出来んかったんとちゃうかな』


 そういうモノなのか?

でも、どんな能力か知らないが何故もっと早く使わなかった?

こんな窮地に陥る前に使うべきだったはず…


「…その宝玉はどんな力を持ってる?何故今まで使わなかった」


「これは使い捨て、一度きりの切り札ですので。そうだ、他にも証拠がありますよ。あの巨大ゴーレム。アレが我が国の何処に眠ってるか教えてくれたのも神です。…まさか自爆装置にあんな悪ふざけが仕掛けてあるとは、思いもしませんでしたが」


 本当に神がエスカロンの前に現れたのだとすると…心当たりがある。

多分、例のバカ神だろう。目的は解らないが…


「…それで?今こそ使うのか?ボクとしては痛い目に合う前に降伏する事を御薦めするが」


「いいえ。私は捕まるわけにはいきません。ですがガリア魔王国が…小国同盟が敗北した事は認めます。私は別の地で一からやり直すとします。またいつかお会いしましょう、ジュン殿。ホセ」


「儂としては腕を斬られた借りを返したいとこなんじゃがな。ま、お主らとはこれで最後じゃ。行くぞ」


「…チッ。とんだ期待外れだ。…さらばだ、ディノス。もう会う事もあるまい。サリアの事は忘れるんだな」


「待て!サリアを返せ!サリアー!」


「…大丈夫ですよ、ディノスさん。奴らは逃げられない」


「え?」


「ホセ?どうしたのです?」


「な、何故じゃ…何故転移出来ん!」


 もうとっくに『キャンセラー』は起動してる。

予定通りの性能を発揮してくれているようだ。

魔法陣の補助があっても『キャンセラー』の方が上位らしい。


「今まで散々転移魔法で逃がして来たんだ。対策くらい打つ。お前はもう転移で逃げる事は出来ないぞ」


「なっ…」


 あの爺の転移魔法だけが最後の頼みの綱だったか。

王城なら秘密の脱出用隠し通路とかあるかもとか思ったが…いや、あったとしてもこの状況じゃ使えないがな。


「ど、どういう事だ!何とかしろ、ホセ!この役立たずが!」


「黙れ!貴様には言われとうないわ!無能の癖に何が吸血鬼の王じゃ!身の程をしれい!」


 やはり脆い絆、仲間意識なんて欠片も無いか。

所詮はゲスの集まりだな。


「……二人共、今は仲違いしてる時ではないようです。今は協力してなんとか脱出するとしましょう」


「…くっ、くそ!サリア!」


「はい、マスター」


「…まぁええ。生まれ変わった儂の力を試す絶好の機会じゃ。借りも返せるしのう」


 やっぱり、抵抗…戦うつもりか。

言ってはみたけど、降伏するなんて思ってなかったし、初めから此方も戦うつもりだ。


「魔王子さんよ。約束通りブラドは俺がやる。他のは任せたぞ」


「はい。…サリアさんはどうするんです?あの様子だとサリアさんも襲って来ますよ」


「…何とかするさ」


「いや無理でしょ、恋人と戦うなんて。しょうがない。ウチが手伝ってあげる」


「いや、ブラドは俺が…」


「わかってるわかってる。だからウチはサリアさんを抑えててあげる。ディノスさんがブラドを倒すまで抑えててあげるから、安心していいよ」


「……すまない。頼む」


「気にしないで。…嫌いなのよね~愛する者同士を引き裂こうなんて奴」


 ブラドとサリアさんの相手はディノスさんとアイか。

サリアさんの強さは解らないが…アイなら大丈夫だろう。


「じゃ、僕達はエスカロンを」


「ん。あいつは私達が倒す」


「ジュン殿達はあの男を頼みます」


 エスカロンの相手は予定通り、アイシス達勇者パーティーが。

そして…あのマッド爺の相手はボク達が。

事前に話した通りだ。


「皆、ボク達の相手は予定通り、あのマッド爺だ」


「おう。いい加減奴との因縁は終わりにしたいからな」


「お任せ下さい、ジュン様」


「あたしも頑張る!」


「ルーとクーの両親の敵討ちですぅ!」


「あの人の研究の犠牲になった全ての人の為にも!」


「転移で逃げられなきゃ、お兄ちゃんの敵じゃないしね。此処で終わらせよ」


 そうだ、終わらせよう。

奴の全てを、今日ここで。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ