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第339話 戦乱 56

「で。こっからどうするの?正面突破?」


「ジュンの魔法でまた眠らせたり出来ないの?」


「城自体に魔法に対する抵抗を高める処置が施されてるから、城にの中にいる限り、睡眠とか麻痺とか幻覚とか、そういった類の魔法は効果薄いかな。探査魔法もダメだね」


「それって…」


「うん。あのマッド爺の研究所にも施されてたヤツと同じ…いや、より上等なヤツかな」


 親衛隊と別れ、此処からはアイシス達と合流。城の中を目指す。

現在はヴェルリア王国軍とガリア魔王国軍が戦闘中。

門はまだ破れていない。


 敵兵の数は此方に比べると圧倒的に少数。

防衛は守る方が有利だとか、三倍の数が必要だとかよく聞くけど、兵力差はもはや三倍どころじゃない。

このままゴリ押しでもいつかは突破出来るだろうけど…


「このままじゃ被害が増すね。何とかしないと」


「いや…そうか?」


「とても少ないように見えますが…」


 範囲治癒魔法をさっきから連発してる。

これにより、ヴェルリアの死者は極少数…そう、極少数出ているのだ。


「セバスト、ノエラ。多い少ないの問題じゃない。被害は…犠牲は出てるんだ。僅かでも命が失われているのを、忘れちゃいけない」


「お、おう。…申し訳ありません、ジュン様」


「失言でした。お許しください」


 それに、ボク達が今居る、正面以外でも戦闘は行われてる。

そこでも死者は出てる筈…早く突破しないと、いたずらに犠牲は増えるだけ。


「バルトハルトさん。アンナさん…いえ、ユーグ陛下から何か指示は?」


「城門を破壊し、城内へ侵攻せよ、とだけ。方法は現場の指揮官に委ねられてますな」


「現場の指揮官…というと?」


「第一近衛騎士団団長のランスロットや第二近衛騎士団団長のトリスタンが居ますな。手古摺っているようですが」


「そういえば現聖騎士団団長は?ヴェルリア王国最強の騎士団は聖騎士団なんでしょ?」


「そうですが…聖騎士団はいわばヴェルリア王国の切り札。迂闊には切れません。聖騎士団は今、聖騎士団団長のアベルと共に陛下の傍に控えている筈です」


 ヴェルリア王国最強の騎士団、聖騎士団。

僅か二十名のみの騎士団で、ヴェルリア王国選りすぐりの腕を持つ騎士達の集まり。

出自は問われず、腕と人格を重視して選ばれる。

認められれば平民でも王の側近として認められ、高い地位を得る事になるので、ヴェルリア王国の民の憧れの的だとか。

エルリックの反乱の際は、王都から遠く離れた地へ、魔獣討伐に赴いて居た。

エルリックもわざとその時を狙ったのだろう。

って、そんな事よりもだ。


「此処はアイシスの出番でしょ。ささ、ドカンと一発」


「簡単に言わないでよ。…やってみるけど」


「頑張れ、アイシス」


「アイシス、上手くやったらジュン殿との婚姻をアロイスに認めさせてやろう」


「なー!」


「ちょっと?バルトハルトさん?」


「なあに。アロイスだけの話ですよ。ジュン殿が認めるかはまた別の話なのは理解してますとも」


「フフフ…よーし!燃えて来たぁ!」


「頑張れ、アイシス。私達の幸せの為に」


 話を通すのがアロイスさんだけというなら、バルトハルトさんはいいとして。

セリアたん?私達ってどういう事?もしかしてセリアたんもボクと結婚する気?


「じゃあ、行くよ!門前のヴェルリア兵!左右に避けて!」


 アイシスの声に気付いて、ヴェルリア兵達が左右に分かれ、アイシスの前に道が出来た。

そこでアイシスの必殺技の構えをとった。

アレは…


「いっくぞぉー!オーラブースト!」


 グンターク王国で、ボクと戦った時に見せた技か。

剣を前方に突き出し、オーラを纏って突撃する技。

オーラブーストって名前だったのね。


「よっし!突破成功!」


『それはええけどマスター!敵地のど真ん中で孤立しとるがな!一旦戻りぃ!』


 門を破壊したのはいいけど、アイシスは勢い余って門の向こう側…つまりは城の内部にまで一人で入ってしまった。

アイシスじゃなかったら死んでるぞ。


「う…ううん!後続は直ぐに来る!少しの間、この場所を確保するよ、メーティス!」


『無茶言いよんなぁ!ったく!しゃあないな!」


 どうやらそのまま踏ん張って味方の突入路を確保するつもりらしい。

無茶をするなぁ。無理ではないようだけど。


「道が出来たぞ!」


「アイシス殿に続け!」


 ヴェルリアの騎士達が突入を開始した。

戦場は城外から城内へ。

敵は魔獣兵ばかりだが…まだ普通の魔族もいる。

非戦闘員は見えない。何処か一カ所で固まって避難してくれてるといいんだけど…


「ウチらも行く?」


「うん。あのマッド爺の相手はボク達がしないとね」


「なら目指すは地下室だね」


「いや、念の為、誰か一人捕まえて聞き出そう。出来るだけ位の高そうな奴。もしくは執事とか」


「位の高そうな奴…」


「ウチには判んない…」


 城内の門付近は既に乱戦状態。

バッタバッタと敵兵は倒れていってるし…確かに判らん。


「仕方ない。この際、誰でもいいや」


「では私が捕まえて…」


「あ、もう捕まえましたよ、ノエラさん」


「きゃん!」


「…」


 シャクティがいつの間にか糸で敵兵を一人捕まえて目の前に置いた。この乱戦状態で、どうやって糸で捕まえたのか。

相変わらず謎だ…いいんだけどさ。


 捕まえた敵兵は犬人族の女性で騎士のようだ。

ルーの耳と違ってこの人の耳は垂れ耳だ。

ダックスフンドの耳みたい。

尻尾もそうだし…こんな時じゃなかったら、ちょっと触ってみたい。


 だが今はそんな場合じゃなく…


「は、離せ!」


「聞きたい事がある。答えてくれれば命の保障はする」


「ガルルル…」


 …犬人族って普通の犬みたいに唸るんだ。

ルーが唸ってるとこは見たことないから知らなかった。

でも全然怖くないな。


「まあまあ、落ち着いて。状況をよく見て、考えて欲しい。もはやガリア魔王国の敗北は確定的だ。貴女がこのまま戦っても死ぬだけ。だが質問に答えてくれれば貴女の命は助かる。どう?」


「ふん!見くびるな!私は騎士だぞ!何を聞きたいのか知らないが、国を裏切るような真似が出来るか!」


 犬だけに忠誠心が高いのかなぁ…拷問とかしたくないし。

どうするかな…


「どうされますかな、ジュン殿」


「拷問する?」


「ご…拷問…ふ、ふん!そんな脅しに屈するものか!サッサと殺せ!」


 震えてるし。結構ビビってるように見える。アレか、強がって吠えてるだけか。


「…ジュン様。この女、処女です」


「な!」


「何故、今それを言う?」


「処女ですから、いつものように楽しめるかと」


「ちょっと?ノエラさんや?」


「わ、私を辱めるつもりか!」


 人聞きの悪い事を…いや、この人を脅すのが目的か?


「…そうね、なかなか可愛いし、私も楽しめそう」


「そだねー前回のは簡単に壊れちゃったけど、貴女は頑張ってね?」


「ヒッ!」


 ユウが悪い顔して脅し、アイが殺気を込めて微笑んだ。

それだけで心が折れたらしい。

ガクガクと震えて、お漏らししてしまったようだ。


「あ~…エスカロンとホセと名乗る爺と吸血鬼ブラド。この三人は何処に居る?」


「エ、エスカロン様と一緒に玉座の間に居る筈です…」


「そう、有難う。ゴメンね、怖がらせて。バルトハルトさん」


「ええ。おい、この女性を連れて行け、捕虜だ。丁重にな」


「はっ!」


 近くに居たヴェルリアの兵士に女性騎士を連れて行ってもらった。これで目指すべき場所は決まった。

三人纏まっているなら、此方としてはやりやすい。


「よう、魔王子さん。中々悪辣だな。か弱い女性を脅して情報を聞き出すなんて」


「あ、ディノスさん。見てたんですか?でも悪辣は酷いですよ」


「分かってる分かってる。冗談だよ。俺も聞きたいことだったし助かったよ」


「いいえ。それじゃ玉座の間まで一緒に行きます?」


「ああ。だがブラドは俺に任せてくれよ?」


「もちろん。それじゃ行きましょうか。粗方片付いたみたいですし」


 城門を抜けてすぐの戦闘は終わった。

大体アイシスが片付けたみたいで、返り血で血塗れだ。

だけど御蔭で先に進める。


 玉座の間は確か、三階の奥。

そこが決戦の場だ。

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