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第336話 戦乱 53

 どれくらいの時間が経ったんだろう。

敵も……動いてない。流石のエスカロンも動けずにいるのか。


「あの…ジュン様?」


「私達もツラいんですけど…どうしましょう?」


「誰も声を出す事も動く事も出来ないみたいですぅ……」


 そりゃあね。ボクだって…色々経験してきたけど初めての経験だよ。

こんな空気の中でこんな圧力を感じたの。


「お兄ちゃん……」


「ジュン……」


「ジュン様……」


 そんな縋るような声で呼ばれても……どうしよう。

こんな事なら普通に爆発してくれてた方が……爆発…そうだ、爆発だ!


「みんな!衝撃に備えろ!!」


「「「はい?」」」


「フン!」



           チュドンッ!!!!!!!



「え?ちょっとぉぉぉ!」


「ジュン様!?」


「ひえええええええ!」


「ワースッゴイバクハツダナー」


 鳴かぬなら 鳴かせてみせよう ホトトギス の精神で。

爆発せぬなら 爆発させよう 巨大ゴーレム。


「いや、ちょっと、ジュン…」


「誤魔化すにしてもやりすぎなんじゃ……」


 そりゃあもう。

やり場のないこの気持ちをどうにかしようと、『魔神王の紋章』まで使用して全力を出しましたとも。

ゴーレム以外に被害が出ないようにも調整はしたが……


「ゴーレムがあった場所…大穴あいてるね……」


「まぁ…雑草しかない場所だったけどさ」


「あ、敵が撤退しますね」


 エスカロンも今の爆発で、ようやく気を持ち直したか。

さて、こちらも…


「いやー、凄い爆発でしたね!避難しててよかったなぁ!!」


「「「………」」」


「(お兄ちゃん…流石に無理があるよ)」


「(いくらこっそり使ったって、アレはバレるって)」


「(黙らっしゃい!一度誤魔化すと決めたら最後まで誤魔化すの!)」


「「(え、ええ~………)」」


「(え~じゃ、ありません!ほら、行くよ!)とりあえず、皆さん各指揮官に従って陣形を立て直しててくださいー!」


 まだ何とも言えない空気が広がってるが…何とか皆動き出した。

ボク達も取り合えず親衛隊と合流。

これまた何とも言えない空気と生暖かい眼で迎えられてしまった。

やっぱり見てた?


 しばらく、親衛隊と待機してると進軍を再開すると連絡が来た。

この先…もうしばらく進んだ場所、ガリア魔王国の王都に近い場所で陣地を構築して拠点とするらしい。


「ふっ…何とかなったな」


「そう?そうかなぁ…」


「ま、まぁ…元々あんな空気になったのはジュン様のせいではありませんし」


「そうですねー…あの爆発も、エリザ様にお伝えしなきゃ」


「御願いだからやめて」


 ママ上に伝えたら、後世まで語り継がれる事間違いない。

本という資料で確実に後世に伝わってしまう。


「私が言わなくても他の誰かが言いますよー。親衛隊だけじゃなく、ロレンタ団長と二万人の兵がいるんですよ?」


「そうだった…」


「アンナさんも絶対言うだろうし。口止め…には対価が必要そうだしねー」


「諦めましょう。悪い噂は立ちませんから、大丈夫ですよ、ジュン様」


 いや、いいけどね。今更悪い噂が立つくらい。

……でも、神様には文句言おう。


「あ~…何にせよ、巨大ゴーレムは倒したし、ガリア魔王国の王都までもう少し。もうすぐ戦争も終わるね」


「ギリギリ夏が終わる前に片が付きそうね~。終わったら、また海に行こうよ、お兄ちゃん」


「私の故郷ですね。年に一度はあの海で泳ぎたいですよね。シードラちゃんにも会いたいし」


「そうだね。ヴェルリア王家の面々戦後の処理で忙しいだろうけど…誘うだけ誘ってみるか。マークスさんとシルヴァン君も来れるなら婚約者のヘルティさん達も誘ってみよう」


「いいの?シャンゼ様やパパ達も例年通り呼ぶんでしょ?」


「去年みたいに分けて呼ばないと、部屋が足りなくなりそうですねー」


「それでもいいし、ボク達はマジックハウスを出してもいいしね」


 そんな話をしながら進んだ翌日。

目的地に着いてすぐに陣地を構築。会議をするので、直ぐに呼ばれた。


「失礼します」


「あ、ジュンちゃん。来たわね……フフフ」


「…何です?」


「いや~ジュンちゃんて面白いなぁと思って」


「…何か面白い事しました?ボク」


「とぼけなくてもいいわよぉ。まさかあの空気を払拭するために自分の魔法で爆発を起こすなんて。普通は思いつかないし、思いついても実行しないわよ?」


「全くだ。余も落ち着いたら笑いがこみあげて来てなぁ。いや面白い」


「ハハハ…」


「それにあの魔法。なるほど、魔獣七千匹を一度の魔法で殲滅したって話は確かね。やっぱり、ジュンちゃん一人を敵に回す方が、サンドーラを敵に回すより怖いわねぇ。これからも仲良くしてね?」


「仲良くしたいと思ってるのはボクもですよ。さ、揃ってるなら会議を始めましょう」


「ええ、始めましょう」


 会議の内容はガリア魔王国の王都へ攻め込む為の手順と配置だ。

ロレンタ率いるエルムバーン軍は陣地に残ってヴェルリア軍の背後を護る役目。

ボクと親衛隊はヴェルリア軍と一緒に突入して欲しいとの事だった。

そして、城に突入するのはアイシス達、ヴェルリアの騎士団に譲って欲しいと。

しかし、だ。


「親衛隊には任せたい役目があるんですが」


「何かしら?」


「此方で用意した転移魔法を封じる装置の配置と装置の守備です。あのマッド爺はまだ生きています。恐らくは城にいるでしょうから。そして、あのマッド爺はボク達に任せて欲しいんです。因縁のある者がうちには居ますから」


 ルーとクー。それにレヴィさん。

三人には悪いが…子供達を戦争に参加させたくは無いし、人殺しもさせたくはない。

ルーとクーが来るとなるとティナとニィナも来るだろうし。

だからせめて、あのマッド爺との因縁はボク達でケリをつけよう。


「そうか…わかった。ならばエスカロン・ガリアはヴェルリアの者に討たせてくれ。後は好きにしていい」


「そういう事なら仕方ないわね。でも、転移魔法を封じるって事はジュンちゃんも転移魔法が使えなくなるんじゃないの?大丈夫?」


「ボクも転移魔法を使えなくなりますが…あのマッド爺は逃がす訳には行きませんので。必ずケリをつけます」


「…気を付けてね。それと…ディノスだったかしら?ジュンちゃんとお友達が潜入してるのよね?」


「友達と呼んでいいのかわかりませんけどね。今何処にいるのかはわかりませんが…」


「ジュン様、ちょうどそのディノスが来たみたいだ。陣地の外でジュン様を呼んでるらしい」


 ヴェルリアの兵士がセバストに何か伝えていたけど…ディノスさんが来たのか。

噂をすればなんとやら。丁度いい、此処に来て貰おう。


「ユーグ陛下、ディノスさんを此処に呼んでも?」


「うむ。構わない」


 久しぶりにあったディノスさんは、以前会った時と殆ど変わらない姿だ。

相変わらず、傷跡はまるで無いように見える。


「久しぶりだな、魔王子さん」


「お久しぶりです、ディノスさん」


「貴方がディノスさん?情報をくれた事、感謝するわ」


「余からも礼を言おう。感謝する」


「ああ、気にしないでくれ。あ、気にしないで下さい」


「通信でも言ったけど、言葉遣いは気にしなくていいわよ。それで、ジュンちゃんに何の用なの?」


「ああ。あんた達、いよいよ王都に攻め込むんだろ?そして城に突入してエスカロン・ガリアを討つ」


「ええ、そうよ。それが?」


「ブラドはエスカロンと一緒に城に居る。奴は俺が殺す。だから俺も同行させて欲しい。ブラドを俺に殺させてくれるなら、報酬はいらない。どうか頼む」


 吸血鬼ブラド、か。

そういえばそいつも居たな。

ニジェール王国とアルジェント公国の一件以来、吸血鬼の影が無いから忘れてた。


「ふむ…」


「いいんじゃない?でもディノスさん。エスカロン・ガリアはヴェルリアの者が討たないといけないの。それを解かってくれるなら、同行を認めるわ」


「問題無い。エスカロンの首に興味は無い。同行を認めくれて、感謝する」


「ディノスさん、今まで貴方は何処に?」


「ガリアの王都に居た。だが、住民の避難が始まったんでな。王都に留まって居られなくなったんだ。流石に避難命令が出たのに冒険者がいつまでも残ってたら怪しまれるだけだからな」


「傭兵として軍に参加するよう要請されなかったの?冒険者として王都に居たなら、頼りにされたでしょうに」


「勿論されたが…ブラドは俺の顔を知ってる。軍に入って見つかったら…その場で処刑だろうからな。それじゃ、俺が知る限りの情報を伝える。とっくにそっちも知ってる内容かもしれないがな」


 ディノスさんがくれた情報は…王都の地図。

そしてなんと、城の簡単な見取り図だ。


「王都の地図はヴェルリアの手の者が手に入れてたが…城の見取り図とはな。どうやって手に入れた?」


「城に詰めてる奴を捕まえてな。情報を聞くついでに描かせた」


「大胆な事するわねぇ。バレなかったの?」


「…催眠術のようなモノで記憶を消したからな。バレちゃいないさ」


 催眠術のようなモノ?

精神魔法か何かか?いや、それなら精神魔法って言うか…


「ただ…その城の見取り図。完璧じゃあないんだ。城には地下室があって、一部の者しか地下に下りる事が出来ないらしい。どれくらいの広さがあって何部屋あるのか。解らないそうだ。何かの研究施設らしいが」


「研究室…」


 それは多分…いや、間違いなく。

あのマッド爺の研究室だろう。

となると、ボク達は先ずはその地下室を目指すべき、か。


 必要な情報は揃ったな。

もうすぐ…戦争の終結。

そしてあのマッド爺との因縁を終わらせる時だ。

今度は絶対に逃がさない。

必ず決着を着けてやる…

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