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第33話 ルーとクーの事情

いつも読んでくださっている皆様ありがとうございます。

ESN大賞に応募することに決めました。

応援のほどよろしくお願いします。

できれば評価もしてやってください。

 あたいはクー。

ルーは双子の姉だ。

父ちゃんと母ちゃんは冒険者だった。

でもある日あっさり死んじまったらしい。

見たことも聞いたこともない魔獣にやられたと親父達の仲間だったおっさんの死に際の言葉でそう聞いた。


 大して強くないくせに冒険者なんかやるからだ。

簡単に死んじまいやがって。

あたい達に美味いもん食わせてやるっつって

無理してるのは知ってた。

あたいは母ちゃんの料理でよかったのに。


 あたいもルーもずっと泣いてたけど、先に立ち直ったのはルーだった。

普段怖がりであたいの後ろによく隠れるのに姉ちゃんだから頑張るんだってつって。

あたいももう泣くのはやめた。


 それから二人で生きてきたけど、まだ子供のあたい達だけ生きていくのは無理だった。

とうとう奴隷になるしかなくなっちまった。

ルーはずっと謝ってたけどルーが悪いんじゃない。

それくらいはあたいにも解るんだ。


 奴隷商のおばさんにはルーと一緒に買ってくれる人に売ってくれとだけ頼んでおいた。

ルーはあたいが守らなきゃいけないから離ればなれにはなれないんだ。


 あたいらを買うって客が来たらしい。

なんでも魔王子様の代理だっつって。

この国の魔王子様の噂はあたいも聞いたことがある。

なんでも女の子みたいな見た目だけどとても強くて優しくて賢くて治癒魔法を使って怪我人や病人を無償で治療する。

とても素晴らしい人だって噂だった。


奴隷商のおばさんは


「運が良かったね、あんた達。これ以上ない上客だよ。元気でやんな」


 とか言ってたけど、そんなにうまい話あるはずがない。

だいたい噂通りのやつなら奴隷なんて買うはずがねえ。

あたいは騙されねえぞ。


「貴方達にはジュン様の癒しになって頂きます。それが御仕事です」


 あたい達を買った魔王子の代理人のノエラとかいう姉ちゃんがそんな事を言う。

癒しってなにすりゃいいんだ?

あたいにもルーにも治癒魔法は使えねえぞ?

やっぱりなんか騙すつもりなのか?


 馬車に乗せられてついた先はマジで城だった。

魔王子があたい達を買ったのは本当なのか?

いやまだ安心できねぇ。

ルーはあたいが守らねえと。


 城に入って案内された部屋には

美人しかいなかった。

この女の子みたいに綺麗な顔したのが魔王子?

こんな綺麗な男の子なんているのか。

こんな男の子今まで見た事ない。


 なんかドキドキしてきた…。

アッ いやいやだめだ。まだ油断しちゃいけねぇ。

ペットとかなんとか言ってるのは聞こえてたけど話の大部分を聞き逃しちまったらしい。


 風呂に入って着替えてこいって言われた。

風呂ってこんなに気持ちよかったのか。

今までお湯で体を洗うくらしいしかしてこなかったから知らなかった。

ルーも気持ちよさそうにしてる。

良かった。


 風呂から上がるとメイド服を渡された。

こんな綺麗な服あたいが着ていいのか?

ルーが嬉しそうにしてるし、いいのか。

さっきの部屋に戻ると兎人のメイドの姉ちゃんとあたいらと同い歳くらいの人族の双子を紹介された。


「この兎人のメイドはリリー。ノエラと同じで君達の先輩メイドになる。こっちの人族の双子は左がティナ、右がニィナ。双子でそっくりだから見分けがつかないし髪型とリボンの色を変えてもらうとかお願いしようかなって今話してたんだ。君達も名前教えてくれるかい?あと歳はいくつ?」


この綺麗な兄ちゃんがやっぱり魔王子様らしい。

こんな兄ちゃんが主なら奴隷になってもいいかも。

いやいやいや、よくないだろ。

危ねえ、騙されねぇぞ。


「あたいは妹のクー。八歳だ--です」


「姉のルーです。八歳です」


「クーにルーか。ボクはジュン、よろしくね。クーとルーにはティナとニィナと一緒にメイド見習いとして働いてもらおうと思うんだ。見習いの間は給料は出ないけど食事は三食でるし寝るとこも君達四人同じ部屋だけど用意する。どうだろう?」


「…。見習いじゃなくなれば給料でるのか?--でるのですか?奴隷なのに?」


「うん。本当は見習いの間でも多少は出していいと思ってるんだけどね。他のメイド達も住み込みの場合は見習いの間は給料はないのが普通だったから特別扱いは良くないって止められててね。見習いの間は我慢してほしい。御飯はお腹一杯食べていいからね」


 寝るとこがあって御飯もお腹一杯に食べていいなんて。

今までの生活を想えばなんの不満も無い。

しかし、丁寧な言葉って難しいな。

ルーは大丈夫そうだけど。


「あたいはそれでいいぜ--いいです」


「ルーもそれでいいです」


「「わたし達も」」


 あたいに続いてルーもティナ達も言う。

みんな不満はなさそうだ。


「そっか。じゃあこれからよろしくね。それからクー。言葉遣いはボクにはあまり気にしないでいいよ。まあお客さんがいる時とか他の人に対しても乱暴な口調だと怒る人もいるから少しずつ慣れていこうね」


 言葉遣いが荒いことあっさり見抜かれちまった。

まあ自分でも無理があるとは思ってたしな…。


「それにしてもクーじゃなくてルーがお姉ちゃんなんだね。クーがルーを庇うように前に出てたからクーはお姉ちゃんかと思ったよ」


「双子だし。あんま関係ねぇ--関係ないです。ルーはあたいが守るって決めてるんだ」


「そっか。偉いねクー。でもこれからはボクがクーとルーを守ってあげるね。ティナとニィナも」


 そう言ってあたいとルーの頭を撫でてくるジュン様。

あたい達より少し年上なだけなはずなのに、なんだかおっきくて暖かい…。

父ちゃんに撫でられた時みたいに…。


「あ、あれどうしたの?クー。ルーも」


「あ、あれ」


 気が付くとあたいは泣いてた。

ルーも同じように泣いてた。


「「う、ふえええええええ」」


 釣られたのかティナ達も泣き出しちまった。

困った顔をしたジュン様があたい達を抱きしめてくる。

父ちゃん達がいなくなってからもう泣かないって思ってたのに。


 それから城にいる他の人達も紹介された後

セバストって兄ちゃんが作った御飯をお腹一杯食べた。

 

「ほれほれガキども。遠慮なんかすんじゃねえぞ」


 言葉遣いはあたいと同じで乱暴だけどかっこいいセバスト兄ちゃん。

ノエラとリリーって姉ちゃんも優しそうだったし

ユウ様とアイ様もなんだか仲良くできそうな気がした。

ここは良い人ばっかりのようで安心した。

まだ用心はしないとダメだけど。


 そして夜、貰った四人部屋で寝る前にティナ達とお互いの事を話した。

ティナ達も父ちゃんと母ちゃんが居なくなって、それから二人で生きてきて奴隷になるしかなくなって。ノエラ姉ちゃんにここに連れて来られたらしい。

あたい達と同じだ。

お互いの事を話合うとすぐに仲良くなれた。

ティナとニィナもルーと同じで気が弱そうだし、あたいが守ってやらねえとな。

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