第32話 ティナとニィナの事情
わたしはティナ。
双子の妹ニィナとこの国の魔王子の奴隷としてこのお城に連れて来られたの。
わたし達はこことは違う国にいたんだけど住んでた村が盗賊団に襲われてお父さんもお母さんも死んじゃったの。
生き残った他の村の人達にもわたし達を食べさせる余裕なんて無かったの。
だから妹と二人で何とか生きていこうと街に行って働いたけど、まだ小さいわたし達にできる仕事は殆どなくて仕事を転々とするうちに気が付けば故郷の国を出て別の国にいたの。
食べる物が無くなって御金も無くなって。
仕方なく御金を借りたけど返せなくなって奴隷として売られてこの国に来たの。
奴隷商のおじさんはいい人だったの。
わたし達の事情を聴いたおじさんはわたし達が同じとこにいけるように交渉するしできるだけいい人が主になるよう客を選んでくれると言ってくれたの。
売れるまでは奴隷商のおじさんの御店で小間使いをしていたの。
お給料はもらえないけど御飯は食べさせてもらえたの。
奴隷になってからの生活のほうが楽なんて皮肉なの。
ついにわたし達が売られる事になったの。
どんな人に買われるかとっても不安で妹とずっと抱き合ってたの
わたし達の主はこの国の魔王子様らしいの。
おじさんが
「この国の魔王子様はとっても優秀で優しくて可愛いって国民に人気のあるお方だから、これ以上ない主だよ!よかったね」
て、言ってたけどいい人は奴隷なんて買わないと思うの。
わたし達を買いにきたのは魔王子様じゃなくて
メイドさんだったの。
とっても綺麗な女の人でノエラさんって言うの。
ノエラさんに連れられて行った先はお城だったの。
本当に魔王子様に買われたみたいなの。
こんな立派なお城でこれから暮らすなんて夢にも思わなかったの。
でもどんな事させられるかわかんないから不安だったの。
ノエラさんは
「貴方達にはジュン様の癒しになって頂きます。それが御仕事です」
て言ってたの。
ジュン様って名前の人が魔王子様みたいなの。
でも癒しになるってなにすればいいのかわからないの。
治癒魔法は知ってるけどわたし達は使えないの。
お城に入って大きなお部屋に連れてこられて
中にいたのは男の子?と女の子二人にメイドさんの四人がいたの。
みんな美人さんなの。
魔王子様っぽい人とノエラさんがなにか御話ししてるけど
よくわかんなかったの。
ペットがどうとか犬とか猫とか言ってたの。
わたし達はメイド見習いとして働くことになったみたいなの。
癒しってメイドのことなの?
魔王子様はメイドが好きなの?
リリーってメイドさんがわたし達を御風呂に入れてくれたの。
御風呂なんて初めて入ったの。
今までは暖かいお湯を使って体を布で拭いてただけなの。
とっても気持ちいいの。
メイド服を貰ったの。
こんなに綺麗で可愛い服は初めて着るの。
とってもうれしいの。
リリーさんから御仕事の話を聞いてたらノエラさんが二人の女の子を連れてきたの。
わたし達と同じくらいの猫人族の女の子と犬人族の女の子。
猫人族の女の子はクーちゃん。
犬人族の女の子はルーちゃん。
二人もわたし達と同じ双子みたいなの。
クーちゃんはちょっと眼が鋭くて怖い感じがするの。
ルーちゃんはちょっと怖がりさんみたいなの。
わたし達も不安だったけどルーちゃんほど怖がってなかったの。
まだほんの少ししかここにいないけど、おじさんが言ってたように魔王子様はいい人っぽいの。
それくらいはわかるの。
ルーちゃんとクーちゃんもわたし達と同じメイド見習いになったの。
四人もメイドを増やすなんてよっぽどメイドが好きなの?ってジュン様に聞いてみたの。
そしたら
「うん、まあ嫌いじゃないよ?嫌いじゃないんだけどね。大人には色々有るっていうか、子供には言えないって言うか。まあ色々あるんだよ。うん」
とか言ってたの。
あの顔はなにか隠し事をしてる顔なの。
いつか聞いてみるの。
でも大人って。
ジュン様もまだ子供だと思うの。
わたし達がお城で働き始めて三日たったの。
そしてジュン様に話があるからって呼び出されたの。
「君達を奴隷の身分から解放しようと思うんだ。その後はここでこのまま働いてもいい。帰りたい場所があるのならそこに送ってあげる。今日まで働いた分の給料も渡す。好きに決めてくれていいよ」
て言われたの。
買ったばかりの奴隷をもう解放するなんて
わたし達いらない子なの?
そう聞いてみたの。
「いらないんじゃないよ。ただ…まあこれはボクの我儘だよ。傍にいてもらうなら奴隷としてより普通のメイドとしていて欲しいだけだよ。どうする?」
ニィナと目を合わせて確認したの。
ニィナもわたしと同じ気持ちみたいなの。
「ここで働かせてほしいの。帰るとこもうないの」
そう言うとジュン様は少し悲しそうな顔をしてから頭を撫でてくれたの。
その手は暖かくてなんだかお父さんの手みたいだったの。
ジュン様はわたし達よりちょっと年上なだけなのに不思議なの。
クーちゃんとルーちゃんも、わたし達と同じでこのままここに残ることなったの。
せっかくお友達になれたからクーちゃんとルーちゃんもいてほしいって思ってたから嬉しかったの。
それから
「そうだ。今、ボク達は学校ってとこを作ってるんだけどね。そこができたら君達も通うといい。同じ年頃の友達もできると思うし魔法や体術、文字や計算とか色んな事が学べるとこなんだよ」
て言われたの。
勉強は好きじゃないけど魔法は使ってみたいの。
お友達が出来るのも嬉しいの。
ニィナにクーちゃんルーちゃんも行くならわたしも行きたいの。
とっても楽しみなの!




