第31話 ハティ
ノエラが四人の奴隷を連れてきてメイド見習いが増えて数日後。
今日は休日だったリリーが私服姿でやって来た。
「どうしたのリリー。私服姿なんて珍しいね」
「ジュン様、この子を助けてあげてください」
そう言って抱えてた布にくるまれた物を見せてくるリリー。
布の中身は…子犬?
「この子は…犬?足をケガしてるのか」
「たぶん狼だと思うです。森で魔獣用の罠に掛かってたんです」
狼か。
綺麗な白銀の狼だ。
ポメラニアンよりは大きいかな?
狼でも子供だと可愛いなぁ。
おっと、とにかく治癒だ。
「ハイヒーリング」
緑色の光が子狼を包み癒していく。
途中で子狼が目を覚ました。
クリックリの眼だ。
知らない人に囲まれてるのに気づいたのか暴れだす。
「あっあっ暴れないで。今は足の怪我を治してるだけだよー」
リリーが足の怪我を治療中である事を伝えると自分の足とボクを交互に見た後、大人しくなる。
どうやらリリーの言葉を理解したようだ。
実に賢い子である。
「人の言葉を理解してるのかな。賢い子ね」
「そうだな。なんだか綺麗な白銀で品もあるしな」
「犬より狼のほうがずっと賢いって言うしね」
確か犬に比べて狼のほうが脳が大きいんだったか。
具体的にどのくらい大きいのか知らないけど。
治療が終わって改めてリリーに話を聞く。
「この子、森で罠に掛かってたって言ったけど、リリーはどうして森に?」
「リリーは休みの日には偶に弓で狩をするんです。家計にも優しい趣味なんですよ?」
意外だなぁ。
リリーは弓を使って狩をするのか。
それで今日の私服はなんだか山ガールみたいな恰好なんだな。
「どこの森で見つけたの?」
「王都の北にある大きな森です」
「あそこは魔獣も出るって聞いたわよ?そこで狩なんて危ないんじゃない?」
「強い魔獣が出るのは中心近くの深いとこですし。浅いとこならそんなに危険じゃないです。この子もちょっと入った浅いとこにいましたし」
ふむ…。
慣れてるようだしあまり深いとこまでいかないならいいのか?
「まあ浅いとこでも魔獣はでるし気を付けてね。それでその場にいたのはこの子だけだったの?狼って群れで行動するんだよね?」
「はいです。その時、あの場所にいたのはこの子だけです。狼の群れがいたらリリーは気づきますし逃げます」
そりゃそうだろうな。
弓使いが単独で狼の群れを相手にするには無理があるもんな。
「二、三匹ならなんとかなるんですけどぉ」
なんとかなるんですか。
それはそこそこ凄いのではないだろうか。
「リリー、もしかして紋章持ってる?」
「あ、はいです。リリーは弓使いの紋章を持ってます」
やはり持ってるのか。
今日はリリーの意外な一面をよく見るな。
「しかしこの子どうしようか」
「群れからはぐれた子狼を森に返したって生きていけるとは思えないよ?」
「よろしいですか?ジュン様。一つ気になることが」
「なに?ノエラ」
黙って治療をみていたノエラがいつになく神妙な顔で話に入って来る。
「はい。リリー、この子は魔獣用の罠に掛かっていたといいましたね?」
「はいです。確かに魔獣用の罠でした」
「そうですか。ならばジュン様、この子は魔獣、あるいは幻獣かと思われます」
「どういうこと?」
「魔獣用の罠は普通の動物には反応しないのです。魔獣が持つ魔力に反応するように出来ています。それにその子はまだ幼いのでそれ程ではありませんが魔力を持っています。間違いなく普通の狼ではありません」
言われて子狼の魔力を探ってみる。
なるほど確かに魔力を持っている。
「じゃあやっぱり森に帰すしかないのかなあ」
狼とはいえ綺麗な毛をしてるしまだ子供で可愛い。
このまま飼うのもアリかと思ったのだが。
「いえ、ジュン様。その子は普通の狼ではありませんが、人を襲う素振りは見せてませんし賢い子のようです。契約してペットにするのはいかがでしょう?」
契約というと、召喚契約か。
確かに契約すれば暴れたとしても制限を掛けられる。
安全に飼うことが出来るかもしれない。
いいかも。
「いいね、それ」
「ウチも賛成。この子可愛いし」
「私もー。狼を飼うなんてなんだか夢みたい」
満場一致でこの案は可決される。
早速交渉しよう。
「君、ボクと契約してボクのペットにならない?」
「わふ?」
なんだか某魔法少女アニメに出てくるセリフっぽくなってしまったが
それは置いておこう。
「ペットと言っても家族になるようなものだよ。そうだなー。とりあえず勝手に城の中の物を壊したり傷つけたり、食べ物を盗み食いしたり人を襲ったりしない事。建物の中でそこかしこにマーキングしたりしない事。マーキングは城の庭でしてね。あと細かい注意事項は追々説明するとして。それらを守ってくれれば美味しい御飯を一日三食提供する事を約束しようっ」
「わふん」
美味しい御飯に反応したのかしっぽを激しく振っている。
どうやら契約成立のようだ。
「よっし!じゃあ契約だ!」
「わっふ!」
召喚魔法の契約手順に従い契約する。
自分の血を少し契約対象に飲ませ契約の魔法陣を対象の額に当て対象が受け入れる事で契約が完了する。
実は召喚契約は初めてだったのだが上手くいったようだ。
「よおし、これでお前はウチの子だぞ」
「わふ!」
「じゃあ名前を決めないとな。どんなのがいいかなー」
「お兄ちゃん、この子にも魂の名前があるかもよ?見てみたら?」
「お、なるほど。その案を採用しようじゃないかユウ君」
さっそく魔法で魂の名前を視てみる。
何気にこの魔法も習得が難しかった。
だって魂の名前を視るってイメージが難しいよね。
「この子の名前は~ ハティ だな」
全部はっきりと視えた。
ハティって確か現代地球の神話に出てきた狼の名前にあった気がする。
偶然にしちゃ出来すぎだと思うけど、偶然だろう。
偶然だよね?
「お?おお?」
「紋章だ」
正しく魂の名前を名付けた事で才能が引き出されたようだ。
人じゃなくても紋章って持てるんだね。
「なんの紋章だろう?」
「さぁ?ウチにはわかんない」
「私も。賢者の紋章で調べてみる」
便利だなー賢者の紋章。
ボクも欲しい。
「これは”狼王の紋章”っていうみたい」
「お、なんか凄そう」
効果は所有者の個性にある程度左右される為、詳細は分からないが。
強力な物であるのは間違いなさそうだ。
「ハティ。もしかしたらお前はとんでもない大物なのかもしれないな」
「わっふ!」
抱き上げて褒めると自慢気にするハティ。
本当に人語を理解してるみたいだなあ。実に賢い子だ。
そして抱き上げたついでに一つ確認をとる。
「ハティは雌だな」
「あらほんと」
「ほんとだ」
「そのようですね」
「ほんとですね~」
「がうっ」
みんなの視線がどこにいってるか気づいたのか。
不機嫌そうな声をあげてジタバタするハティ。
恥ずかしいのかな。狼なのに。
「怪我したせいでちょっと血で汚れちゃってるし、一度御風呂に入れてくるよ」
「ジュン様、御風呂でしたら私達が」
「いやボクと契約した子だからね。ボクが面倒みるよ。その間にハティの御飯をなにか用意してあげて」
「畏まりました」
御風呂は初めてだったのだろう。
ちょっとおっかなびっくりといった感じのハティだったが、すぐに慣れていまは御満喫中だ。
泳ぎも達者のようだ。
御風呂から上がり魔法で風を送って乾かす。
最初の内は最弱にして使わないと御風呂場が壊れてしまうので、結構神経を使ったのだが今はだいぶ慣れた。
御風呂から上がってみんなのとこに戻る。
「ただいま」
「おかえり」
「おかえりお兄ちゃん。わあ、元々綺麗な毛だったけど洗ったら一段と綺麗になったね」
御風呂に入って汚れを落としたことで白銀の毛の輝きが増した気がする。
みんなが褒めるのでハティも嬉しそうだ。
「ハティの御飯は?」
「用意してあります」
肉と御飯を混ぜ込んだような御飯が置かれた。
魔獣の肉を使ったらしい。
随分と山盛りだけど食べきれるのか?
「ハティ、待て」
「わふ?」
置かれた御飯をすぐ食べようとするハティを止める。
そんな恨めしそうな目で見るなよ。
「いいかいハティ、御飯を食べる前には『いただきます』って言うんだ」
「わふん?」
「いや、流石にそれは無理でしょ」
「普通に 『待て』 とか『お手』と教えればいいんじゃないの?」
「いやあハティは賢いから、それだとバカにされてると感じるかなあって思って」
人語を正しく理解してるハティにお手とかお座りとか簡単すぎるだろうし。
「ハティ。ボク達が食事をする時、食べる前に『いただきます』って言うんだ。食べ物への感謝を込めて。さ、やってごらん」
そう言うと少し考える素振りを見せたハティは
「あお~ん」
「うん。ハティは偉いね。さぁ、食べていいよ」
そう言うと嬉しそうに食べるハティ。
多すぎるんじゃないかと心配したけどペロリと全部平らげてしまった。
「ハティは恐らくは魔獣ではなく幻獣でしょう。ほぼ完璧に意思疎通が出来ていますので。狼の幻獣は沢山食べると聞きましたので子供でもそれくらいは大丈夫かと」
とのことだった。
今でこんなに食べるなら大きくなったらどんだけ食うようになるんだ。
食費がすごいことになりそうだなぁ。
ハティが来て数日が過ぎた。
僅か数日でハティは城の住人のアイドル状態だ。
賢く可愛い。愛らしく人懐っこい。
やっていい事と悪い事をしっかり理解している。
散歩に出かけても首輪もリードも必要がない。
呼べばすぐ戻って来るし人に襲いかかったりもしない。
街で犬とすれ違っても吠えたりしない。
逆に吠えられることもなかった。
それどころかハティに平伏するかのように頭を下げるのだ。
幻獣の狼だからか、狼王の紋章の力なのか。
どちらかはわからないがまだ子供で体も小さいのに自分よりずっと大きい犬を平伏させるとは。
ハティは実は本当にとんでもなく大物なんじゃ?
そう考えていたある日。
その疑問を確信に変える事件が起こる。
「「「!!!」」」
家族で集まって朝食を摂っていると
突然、王都の北のほうにかなり強い魔力と気配を放つ存在を感知する。
こちらが気づくようにわざと放たれたような気配。
呼んでいるのか?
「お父さん、お母さん!」
「ああ、なんかやべーのが来たようだな。セバスン、出陣の用意だ。騎士団長に伝えろ。わしも行く」
「御意」
「気を付けて、あなた」
「お父さん、ボクも行きます」
「駄目だ。城で待機してろ」
「でもボクがいけばいざという時は転移で逃げれます。自分の身は自分で守れます。お願いします」
何故かわからないがこの気配の主はボクを呼んでいるような気がする。
とゆうよりボクが行かないと解決しないような気がするのだ。
「しかしだな。相手がどんな奴かわからんのだ。まずはわしが行く。お前は待機だ」
「ガウガウ!」
「ハティ?」
ハティがズボンの裾を噛んで引っ張っている。
どこかに連れていこうとしてるのか?
「お前も呼ばれたのか?」
「ガウ!」
「そうか…。。お父さん」
「…チッ、しゃあねえ。勝手な事はすんじゃねえぞ」
「はい!」
父アスラッドの説得に成功し騎士団と共にボクとハティも行くことにする。
移動は軍用馬車だ。
「なんでお前達も付いて来てるんだよ。危ないぞ、帰れ」
「嫌。ウチも行く」
「お兄ちゃんが行くなら私も行くに決まってるじゃない」
「ジュン様が行くのに私が行かない等あり得ません」
「リリーも行きますぅ!なんだかリリーも呼ばれた気がするのですぅ!」
リリーも呼ばれた?
ボクとリリーとハティが呼ばれた。
王都の北にある森の方にいる何者かに。
やばい気配の持ち主。
もしかしてハティの親とか?
そう考えてるうちに目的地の北の森が見えて着た。
元々、リリーが日帰りで狩にいけるような森だ。
そう離れてはいない。
すると並走してる騎士達がざわめき始める。
「お、おい、あれはまさか」
「マジかよ。あんなの初めてみるぞ。なんだあのヤベーの」
ボクも馬車の窓から顔を出して森にいるなにかを見る。
「やっぱり、あれはハティの…」
北の森の前にいたのは象くらいにでかく、美しい白銀の輝きを持った一匹の狼だった。
間違いなくハティの親だろう。
父アスラッドが先頭を歩き、狼に近づいていく。
ボク達もハティを連れて近づいていく。
『貴様らが我が娘を連れ去ったのか?』
「娘?ハティの事か」
『先ほど娘と深く関わった者にわかるよう気配を飛ばした。貴様らといるのだろう?大人しく娘を返せば我はなにもせん。貴様らに危害は加えないと約束してやろう。しかし娘が無事で無かった時は覚悟せよ』
「その前にお前は何者だ?その気配と風格、ただもんじゃねえだろ。わしはこの国の魔王アスラッド・エルムバーンだ!」
『ほう、魔王か。我に怯まぬ者等久しぶり故、只者ではないと思っていたがな。我は神獣フェンリル。全ての狼の頂点に立つ者だ』
神獣?
まさか幻獣どころかその中でも強い力を持つ神獣の子だったのか。
通りで狼王の紋章なんて持つはずだ。
てゆうか喋れるのか神獣。
「フェンリルか。やっぱりな。その風格と圧倒的な存在感。間違いねえな。お前さんの娘ってのはわしの息子が助けたハティで間違いないだろう。おいジュン!」
「はい。神獣フェンリルよ。貴方の娘はここにいます」
「わふわふ!」
『お、おお!我が娘よ無事であったか!』
神獣とは言え、親が子を心配するのは人と変わらないんだな。
残念だけどハティとはこれでお別れかな。
「よかったね。ハティ。お父さんが迎えに来てくれて」
『む?失礼な奴だな貴様。我はハティの母親だ。断じてオスではない』
え?そうなの?喋り方と迫力でそう断じてしまった。
「し、失礼しました」
『ふん、見ればわかるだろうに。まあいい。娘が世話になったようだな。それからそちらの兎人の娘も、我が娘を罠から助けてくれたらしいな。礼を言う』
「は、はい!当然の事をしたまでですぅ!」
改めて考えるとすごいなリリー。
まさか神獣の子を連れてくるなんて。
話が通じる相手だからよかったけどそうじゃなかったら
とんでもない事になってたかも。
まあ召喚契約して飼う事にしたボクが一番重罪な気がするけども。
『いずれ返礼に来よう。では娘よ。帰るぞ』
「わふわふ!」
『む?旦那なら巣だ。お前が居なくなったのに気づかず寝ておったのでな。折檻しておいた。まだ気絶してるであろうよ』
やだ、怖い。
完全なかかあ天下なのか。
ハティのお父さん大変そうだな。
同じ男として同情を禁じ得ない。
「わふわう!」
『なに?帰らないだと?どういう事だ!』
ん?
なんだか雲行きが変わってきたような
「わふわふわふふ」
『ぬ、あの城の居心地がいいだと?風呂も気持ちよくて好き?風呂なら巣の近くに温泉があるではないか。飯も美味いだと?我が獲って来た飯も美味いだろ?なに、比べ物にならんだと!?ぐううぬうう』
あ、なんだかちょっと泣きそうになってる。
ちょっと気の毒になって来た。
「わふわうふ!」
『け、契約を結んだだと!誰とだ!そいつとか!い、いや結んだのは召喚契約であろう?ならば常に一緒にいる必要はないではないか!』
「わふわふ~ん」
『な、なんだとおおおおお!!!貴様ぁぁぁぁぁぁぁ!』
なにを言ったんだハティ。
ものすごっく怖い目で睨まれてるんですけど!
『貴様、我が娘と風呂に入り同じ布団で眠り娘の体をさんざん撫でまわしたというのは本当か!』
「え」
いや、確かにその通りな事はしましたけども。
犯罪者っぽく聞こえるのは何故だ。
『あまつさえ!集団で娘の大事な所をガン見し!さらには唇を奪ったとゆうのか!』
それも事実ではあるんですけども。
それはボクだけじゃないよ?
アイやユウもやったし…。
騎士団の中にも目を逸らしてるヤツがいる。
ヤツらも同罪だ!
『こんな小さな娘に!この変態め!』
いや、うん。確かに字面だけ見てるとそう見えるかもしれませんけども。
でも狼の子にそれをやったら果たして変態呼ばわりは致し方ないのだろうか?
仲良くスキンシップを図っただけじゃないの?
いや、人の心に近いも心をもった神獣の子にやるとアウトなのか?
わからん。
誰かボクに教えてよ!
『よし、殺そう。我怒った。サクっとこの国を滅ぼしてしまおう』
「いやいやいやいやいやいや!落ち着いてください!」
こんなアホな理由で滅ぼされてたまるもんか。
浮かばれないにもほどがある。
「わふー!」
「ハティ?」
ハティが持つ狼王の紋章が輝き出した。
紋章の力を使う気か?
『むう!娘よ、その紋章は!』
「わっふう~!」
光が収まると。
神獣フェンリルは腹を見せて服従のポーズをとっていた。
『く、くう。まさか狼王の紋章を手に入れていたとは。この数日で一体何があったのだ』
どうやら狼王の紋章の力で服従させられているらしい。
それが狼王の紋章の力なのか?
「わふわふ」
『な、なに?先ほどから出てくるハティとはお前の名だったのか!?魂の名前を付けられたことで紋章を引き出せたのか。貴様、我が娘に名前を勝手に付けるなど!』
「わふ!」
『ぐぬううう』
名前を付けていた事にまた腹を立てて睨みつけてくるがハティによって抑えつけられてしまう。
象と子犬くらい大きさに差があるのに服従させるとは。
そんなにすごいのかな狼王の紋章。
「あの…。狼王の紋章の力について教えてもらえますか?」
『くっ…狼王の紋章は全ての狼とその眷属を絶対服従させる力を持つ。さらに狼が持つ力を強化する。まさか全ての狼の頂点である我までも従えるとは』
まさかの絶対服従能力。
全ての狼と眷属を従えるとはすごい強力なんじゃ?
てゆうか王都の犬達がハティに平伏してたのはそれでか。
「わふわふわふわうふ!」
『くっ仕方ない。娘が無事であった事で納得してやろう。だが偶に様子は見に来る。それは構わんな、娘よ』
「わふ!」
『うむ。そこのお前、ジュンと言ったか?娘を大事にせよ。さもないとどうなるか、わかるな?』
「はい、それはお約束します」
『良かろう。ではな娘・・・ハティよ』
「わふ!」
そう言い残して神獣フェンリルは去っていった。
また来るのはいいんだけど今度は騒ぎにならないように来てほしい。
だけどまあとりあえず
「これからも一緒だな、ハティ」
「わふ!」
ハティの親からも認められてハティはうちにいる事になったのだった。
「ところでハティ」
「わふ?」
「お前もお前のお母さんくらいデカくなるのか?」
「わっふん」
もちろんとばかりに頷くハティ。
そうかデカくなるのか。
いつまで城に住めるかなあ…




