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第302話 戦乱 19

~~アイシス~~




「こんばんは、お爺さん。久しぶりだね」


「ん?久しぶり?…おお、お嬢ちゃんは確かあの村で会うたの。うむ、久しぶりじゃの」


「それで、お爺さんは此処に何をしに来たのかな」


「勿論、悪い事じゃ。ちぃとこの街を破壊して此処にいる連中を皆殺しにするよう頼まれてのう。やれやれ、出資者の言う事には逆らえんわ。研究者の辛いとこじゃな。そういう事じゃから、大人しく死んでくれるとありがたいんじゃがのう」


「うん。無理。…ていうか、この街を破壊する?ふざけるんじゃないよ!!!」


「ほっほっ、簡単に熱くなるのぅ。若い若い」


 この街はテオ叔父さんが護った街なんだ。

僕が絶対に護り切る!それに…


「レヴィとヒーノの事もある!あんたは絶対に許さない!メーティス!」


『おう!わいもこの爺は大嫌いや!やったんでぇ!』


「ほっほっ!悪いがお嬢ちゃん。魔法の射程内に街が入った時点でわしの目的は達成出来たも同然じゃ。何せ此処から魔法を撃てばいいだけ。お嬢ちゃんが避けれても、街は避けれまいて」


「させないよ!」


 そんな強力な魔法を撃たせる暇なんて与えない!


「ほっほっ!遅い遅い!ただ街を破壊するだけの魔法ならそれほど強力な魔法は…何?」


「僕達を舐めないで欲しいな!あんたが敵に居るって知ってるんだから、それなりに備えるよ!」


 セリアが広域防御結界の魔法道具を起動してくれた。

ユウも防御結界を重ね掛けしてくれたみたいだし、防御は万全。

後は転移魔法で結界魔法の内側に入られなきゃ大丈夫。


「ふん…めんどくさいのぅ。時間を無駄にするのは性分じゃないんじゃがのぉ」


「時間を無駄にしたくないのは同意するよ。だからさっさと、消えてくれないかな。この世界から」


「全く…可愛げのないお嬢ちゃん達ばかりじゃのう。…ところで、あの魔王子はどうした?出てこんのか」


「…あの魔王子?誰の事かな?」


「今更とぼける事もないじゃろう。怪我でもしたか?いや、治癒魔法が使えるんじゃったな、なら…あの蛇に呑まれたか?フホホホ」


「そんなわけあるか!ジュンは今頃…」


『マスター、挑発や。乗ったらあかん。それに余計な事言うてもあかんで』


 あっと、そうだった…いけない。

いい加減このうっかりは治さないと…


「ん~?なんじゃ、本当に別行動しとるのか?」


『…教えたろか?ジュンはんは今頃、あんさんらの大事なもん壊しとる頃やで。残念やったな』


「…大事なモノ?…まさか…いや、ハッタリじゃな。しかし、さっきから気になっとったが、この声は誰の声じゃ?」


「さぁてね!教えてあげないよ!」


「おっとっと。勇者を正面から相手にする気は無いわい。さっさと街を破壊して帰るとしようかの」


 転移する気だ!させないよ!


「メーティス!」


『はいな!』


「ではな、おじょ…ぬうぉう!」


「行かせないよ!」


 ジュンの言った通りだ!

転移魔法は別の魔法を使用中に発動しようとすると少しばかり発動に時間が掛かる!

ジュンなら二つまでなら紋章無しでも問題無く使えるみたいだけど、このお爺さんは違う!

勇者の杖があっても紋章無しじゃ飛行魔法や防御結界を使用しながらじゃ即座に転移は出来ない!

ましてや、接近戦を仕掛けられてれば尚更!

つまり、僕の剣戟とメーティスの魔法!

絶え間ない連続攻撃!

これなら転移出来ない!


「あんたはここで倒す!」


『覚悟せいや!』


「な、舐めるなよ!小娘が!」


 アレが『大魔道士の紋章』か。

で、聞いてた通り魔獣を召喚。

この魔獣は…ツインヘッドワイバーンかな。

ワイバーンの上位種で討伐難度B。

今更この程度の魔獣…


「お嬢ちゃんにはこいつの相手をしてもらうかの。儂はその間に街を破壊してトンズラじゃ」


「させないよ!」


 こんな雑魚、一瞬で片付ける!


「ふん!ああ、そいつじゃ相手にならんじゃろうなぁ!じゃが一瞬でも時間が有れば…ぬぐぁ!」


「おや、またしても殺気を出してしまったでしょうか?ギリギリで致命傷は回避出来たようですね」


「ノエラさん!」


『よっしゃ!偉い!』


 いつの間にかお爺さんの背後にノエラさんが!

多分、姿を消す魔法でずっと隙を窺ってたんだろうな。


「ぬ…くっ…あの時のお嬢ちゃんか…相変わらず年寄りに容赦の無い…」


「貴方には必要ありませんから。因みにこの短剣には猛毒が塗ってあります。並の毒ではありませんから、毒耐性の装備をしていようがタダではすみませんよ。一刻も早い治療をお薦めします。出来るなら、ですが」


「…可愛げも無いのぅ…相変わらず。…仕方ない、ここは逃げるしかないのう」


「あっ!待て!」


 下に降りた?

いつの間にか地上は魔獣と…レヴィの村で見た変な魔獣…ジュン達はキメラって呼んでたっけ。キメラでいっぱいだ。

あの魔獣と合流して逃げる気だ!


「逃がすもんか!」


「ほっほっ…見逃して欲しいもんじゃのう。もう街は諦めるんでな」


「貴方の言葉を信じる筈が無いでしょう。そしてもう一度言いましょう。貴方は私が殺します」


「ふん…怖いのぅ!」


 こんな魔法!当たりは…違う!目眩まし?


「しまっ…」


「じゃあのぅ、お嬢ちゃん達。次に会う時はもう少し、年寄りに優しく…ぐぁ!」


「私も年寄りだ。貴様に優しくする必要は無いな?」


「お祖父ちゃん!」


『さっすがマスターのじいちゃん!』


 お祖父ちゃんがお爺さんの腕を斬り落とした!

残念ながら勇者の杖を持った右腕じゃなく、左腕だけど。


「き、貴様は…よくも儂の腕を…」


「何時ぞやの借りは返したぞ。そして…貴様にはここで死んで貰う。後々面倒が無いようにな」


「ふぅ~…ふぅ~…仕方ない、仕方ないのぅ。まさかここで切り札の使う事になるとはのぅ!」


 また何か召喚する気!?

でもいくら魔獣を召喚したって…これは?


「お、大きい…」


「一つ目の巨人…まさかサイクロプス!?」


「そんな…討伐難度Sの魔獣の中でも強力な存在ですが人と召喚契約をした例など…」


「儂の紋章の能力を忘れたか?一定以上の知能を持つ存在は支配出来んが、こいつに知能などという上等な物は無い。儂の意のままじゃ。…やれぃ、サイクロプス!こやつらを皆殺しにして、街を破壊せい!」


『バアオオォォォォ!!』


 拙い!まずいまずいまずいまずいまずーい!

あの巨人、外壁より大きい!

オマケにどうやって用意したのか知らないけど、巨大ハンマーまで持ってる!

あんなのが暴れたら街なんてあっという間に…


「では、さよならじゃ。もし、また会う事が有れば…その時は新しい儂になってるじゃろうて」


「何…待っ…ちっ…逃がしたか」


『しゃあないわ。例の装置を設置する訳にいかんかったからなぁ。ジュンはんが転移出来んようなるし。それよりも、今はこいつや』


「うん!ジュンが居ないけど、僕達だけで何とかするよ!」


 ジュンの親衛隊にも死者を出す訳にはいかない。

ううん、もう死者は出させない!もう誰も死なせない!

勇者の名にかけて!




~~ホセ~~




「ふぅ~…ふぅ~…」


 全く…こっぴどくやられてしもうたのぅ。

左腕は斬り落とされ…毒まで。

研究が完成してなかったら、死ぬしか無かったかものぅ。


 まぁ、丁度良かったかもしれんな。

エスカロンの夢とやらまともに付き合う気は無いし、もう充分義理は果たしたじゃろ。

あやつは最後には儂も殺すつもりのようじゃし、ここらで儂は儂の夢を叶えさせてもらうとしよう。

そうせねば、助かりそうにないしのぅ。


「これはホセ様。いつ戻られたので?…酷い怪我ではないですか!すぐに手当てを!」


「お主は…」


 エスカロンの執事か…丁度いい。

こやつに手伝わせるか。


「手当てなんぞいい。それより、ちょいと手伝って貰いたい」


「な、何を…私には貴方のお手伝いが出来るような知識はありませんが…」


「なあに。儂が合図したら魔法装置を起動するだけじゃ。簡単じゃろ?」


「は、はぁ…」


 本当は誰かで実験してからにしたかったが…タダで不老不死にしてやる事もあるまい。

それに、直ぐには終わらんしな…完全な融合には数ヶ月はかかるじゃろう。今の体ではとても保たん。致し方あるまい。


「ふふ…目覚めた時が楽しみじゃ…」


「は、はぁ…」


 本当に。楽しみじゃのう…

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