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第29話 神様通信

 暗殺者の一件があってから約半年、学校設立に向けて動き始めて一年ちょっと。

ボクは十歳になりアイは七歳、ユウはもう少しで七歳になろうというある日。

三人で魔法の訓練をしていた時に、不意に疑問が浮かんできた。

 

「あのさ、二人とも」

 

「なに?」

 

「ん?」


「神様はさ、ボク達の魂はこの世界では高位になるから類まれなる才能を持って生まれるとか言ってたよね?」


「うん。ウチもそう聞いたよ」


「私も。それがどうかしたの?」


「うん、確かにボク達は同年代に比べて成長著しいとは思うけどこの世界の人達って前世の人達より強い人が多いじゃない?少なくとも魔法が存在するんだし」

 

「つまり本当に高位の魂なのかイマイチ実感が持てない、と」

 

「まあね。それにこの世界には竜やら堕天使やらもいるんだから尚更なぁ」

 

「言われてみれば、確かにね」


「だから、仮にこの世界の人が日本に転生してたとしても普通に才能有の人になってたんじゃないかな、と思って。だとしたら神様の言ってた事が間違ってるってことにな・・・」

 

『いやいや、間違っとらんぞ。お主らの魂はその世界では高位になる。逆にその世界の人間の魂がお主らがいた世界に転生しても高位の魂にはなれんしまともに生きることは出来んじゃろう。負荷が掛かるからな』


「うわ、いきなりなに?」


「この声は聞き覚えあるような」


「もしかして神様?」


『うむ。お主らを転生させた神様じゃ。久しぶりじゃの』


 ユウが神様への連絡方法を聞いてはいたが今まで試した限りでは反応は無かった。

それがこんな突然に話しかけてくるなんて、なにかあったのかな。


「突然話かけてくるってなにかあったんですか?」


『いや、お主が転生して十年が経ったしの。少し話を聞こうと思っただけじゃ。残念じゃがこちらでは特に進展がない』


「神様が十年も調査してなにも成果がないってどういうことなのよ」


『あのバカ神は相当念入りに準備をして事に及んだようでの。逃げ隠れする準備も抜かりなかったようじゃ。神が本気で隠れたら見つけ出すのは簡単ではないのじゃ』


「はぁ。そうですか…。じゃあさっきの話の続きですけど、負荷が掛かるとは?」


『うむ。お主らの魂は高位でそれはつまりお主らがいた次元は高位の次元だというのは以前にも言うたと思う』


「ええ、覚えてるわ」


『高位の次元というのは高位にある分、その次元は安定しているという事。その安定と引き換えに魂には僅かではあるが負荷が掛かる。故に低位に次元に転生すれば負荷から解放され魂がもつ才能が開花する。逆に低位の次元の魂が高位の次元に転生しても今まで無かった負荷が魂に掛かるのじゃ。逆に今まで出来たことが出来なくなるというわけじゃな』


「ではこの世界の人が肉体的に強いのは?」


『低位の次元は高位の次元に比べて不安定。過酷な環境に陥りやすいということじゃ。その分、肉体的には強くなる。人族以外の多種多様な種族がいるのもその過酷な環境に適応しようと進化した結果じゃ。その強い肉体に高位の魂が宿れば、才能溢れる存在になるというわけじゃな』


「あ、悪魔族とか獣人族とかやっぱりただの種族に過ぎないってことですね?」


『うむ、その通りじゃ。お主らがいた世界での悪魔とか魔王とかにもつ一般的なイメージの存在ではない』


「どういうこと?」


「ほら悪魔ってさ残虐な行為を好んだり破壊衝動の塊とかそんなイメージがあっただろ?日本にいたボク達からしたらさ。」


「うん。まあ大体そんなイメージよね」


「でもこの世界では違う。あくまでそういう名称の種族に過ぎないだけ。人と敵対してる歴史はあったけど今は平和だし友好関係を結べてる国もある。悪魔族は悪魔的存在ではなくそうゆう名称の種族に過ぎないってことさ」


「なるほど」


『そうゆう事じゃ』


 少なくともボク達の両親や周りにいる使用人達は善人だと思う。

日本で言う悪魔のような存在ではない。

ちょっと変態的なとこがあるのがアレだが…

 

「じゃあ神様、この世界には神族がいるようですけど、神族もこの世界の神様的存在ではなくただの種族に過ぎないってことでいいんですか?」


『あ~いや、神族がその世界で神のような存在というのはまるで間違いというわけではないのじゃ』


「え?でも神様は直接世界に干渉することはできないとかなんとか」


『そうじゃ。だがその世界は不安定な世界。そういった世界は生命が出来た頃に少し神々が助力して生命が消えてなくならないようにするのじゃ。使徒を遣わせたりし、使いの者・・・これは正しく天使じゃな。そやつらを使い世界の安定を図る。そして安定した後もしばらくは天使達を世界の見張りに置いておくのじゃ。稀に依り代に宿ったままその世界で暮らす変わり者の神もおる。その世界の神族とはそういった者達の末裔じゃな。神のような存在というのもまるで間違いではない』


「じゃあ堕天使って?」


『堕天使とは人族ではなく魔族と交わった天使の事をそう呼んでるだけじゃ。本質は天使と堕天使は同じじゃ。違いなどない』


「じゃあボクとアイが堕天使として生まれたのは?」


『それはわしが手を加えたのじゃ。堕天使はその世界で存在する種の中では上位存在じゃ。なにせ神の末裔じゃからな。お主らには神を相手にしてもらうのかもしれんのじゃし、神の末裔になってもらったのじゃ』


「じゃあなんで私はサキュバスなのよ」


『それはお主の願望を優先させた結果じゃ。文句言うな』


「「願望?」」

 

「なんでもないわ!気にしないで!」


 なんでもない様子じゃないけど

まぁいい。これは突っ込むと藪をつついて蛇を出すことになりそうだ。

 

「でも神の末裔って言うならその人達に協力は頼めないんですか?」


『無理じゃろうな。その者達はもはや正しく天使であった頃の力や神の依り代としてもっていた力も失っているものがほとんどじゃし記憶も受け継がれておらん。長い時が流れたゆえにな。それにそやつらにはもうわしらの声は届かぬようなのじゃ。そちらの世界で過ごした時が長すぎて神の声を聴く力を失っておるのじゃ。こうやって語り掛ける事ができるのは、聞く力を持った者達のみじゃ。故にわしからそやつらに協力を取り付ける事はできん』

 

ダメか…。

神族の協力を得られれば色々助かると思ったんだけど。


『他に何か聞きたいことはあるか?』


「そうですね…。世界の要となる存在を探せという事ですが、何かこう、要を探すにあたっての指針とかないですか?世界の異変を追っていくにしてもそれは後手に回ってるということになりますし。ほかの世界の要との共通点とかないんですか?」


『あるにはあるんじゃが参考にはならんと思うぞ?世界の要となる存在の共通点はな。その世界で唯一無二の存在である事。そして他の次元には存在しないものじゃ。それから世界が生まれてから安定すると要となる存在ができることからかなり古くから存在するモノじゃ』


なるほど、イマイチ参考にはならない。

どういった存在を探せばいいのかわかったのは進歩だが。


『その世界で唯一無二で他の次元には存在しないモノ等、お主らにはわからんじゃろう?じゃから参考にはならんじゃろうとな。ああそうじゃもう一つ共通点があった。人工物ではない。それは言っておくべきじゃったな。すまんの』


 いやいや他の情報も聞いておくべき情報だったと思いますよ。

神様ってだけあってやはり人とは感性というか考え方がどこか違うのだろうか。



『他になにか聞きたいことはあるか?なければそろそろ時間なのでな。終わりにするぞ』


「そうですね。今は他に特には。ユウにアイは?」


「ウチはないかな」


「私も特には。ただもうちょいこちらの呼びかけには応じてほしいわね。何度か呼んだけど一度も反応無かったわよ」


『こちらも忙しいのじゃ。あまりお主らにばかり見てもいられん。他の次元に転生した者達もいるのじゃからな。それにちょっと試しで呼んでみた程度ではわしに声は届かんぞ?本気で呼ばんとな。では、さらばじゃ』

 

 そこで神様からの声は途切れて会話は終った。

しかし神様の方でも何にも進展ないのか。

何も連絡もないから無事に解決できたのかなとか思ってたけど、その考えは甘かったようだ。

平穏に過ごしたいのになあ。

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