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第263話 地下遺跡 4

 アイシスの勘に従い左の道へ。

ゴールが近いからか魔獣と遭遇する頻度が上がっている。

その殆どが爬虫類型の魔獣だ。


「もうやだ…ウチ、もう帰りたいぃ…」


 これまでは何とか我慢してたアイも、連続で爬虫類の相手をさせられた事で遂に弱音を吐いた。

まあ、気持ちは分かる。

ボクも出て来たのが人のゾンビとかだったなら。

とっくに逃げ出してると思うし。


「ほらほら、アイ。もうすぐゴールみたいだから、頑張れ」


「うぅ…」


「オレは結構ホクホクだな。珍味な食材が手に入ったし」


「そう思ってるのはセバストくらいだよ…」


 頼むからゲテモノ好きにはならないでね、セバスト。


「それにしても、他の冒険者パーティーが来ないね」


「そうですねー。私達、結構魔獣と戦ってますけど。全然追い着いて来ないですね」


「まぁ全部の魔獣を退治したわけじゃないだろうし」


「それに我々は正解の道を選んでるとして、他の道を選んでいたら、どれくらい遠回りになるのか分かりませんしな」


「迷子になってなきゃいいけどね」


 その場合は捜索隊とか出すんだろうか。

ボク達が進んだ道は迷う要素は無かったけど。


「ジュン様。どうやら着いたようです」


「恐らく、アレがこのダンジョンの主でしょう」


 少し大きな広場に出た。

奥には扉が見える。そしてその前に主と思しき存在が。


「五頭の蛇…」


「アレはヒュドラですね」


「アレが…私は話に聞いただけですが、討伐難度Sの魔獣ですな」


 一つの胴体に多数の頭を持つ蛇、ヒュドラ。

日本の漫画やゲームによく登場したモンスターだけど…実物を見ると、気持ち悪いなぁ。


「…襲って来ないね?」


「ハティにビビってる?」


「どうかな…警戒してるだけなんじゃない?」


 だとすると、それなりの知能はありそうだ。

五つも頭があれば賢くもなるか?


「こっちも相談出来るから良いけど。誰かヒュドラの攻撃方法とか、特性とか知ってる?」


「セバストさんなら知ってそう」


「大して知らねぇよ。毒があって喰えないって事くらいしか」


『なら、わいがもう少し付け足すわ。ヒュドラは毒の霧を吐いてくる。まともに吸い込んだら毒耐性の装備着けててもヤバいでぇ。あと再生力が半端ないって話や』


「メーティスも直接戦った経験は無いって事?」


『せや。知識として知ってるだけやな』


 毒霧と再生能力か。

中々厄介そうだ。デカいし。


「後は蛇らしく噛み付きと、絡みついて締め上げて来るかな?」


『当然あるやろなぁ』


 となると、やはり遠距離からの攻撃が有効か。


「というわけで。リリーさん、やっておしまいなさい」


「はいですぅ!」


 洞窟内では派手で高威力の魔法は使えない。崩れるかもしれないし。氷系の魔法で凍結させるのは大丈夫だと思うけど、寒くなるし。ここは弓聖の紋章を持ったリリーの出番だろう。


「今、必殺のぉ!アローレイン!ですぅ!」


 ヒュドラの頭上に矢が降り注ぐ。

が、


「え。うそん」


「躱されちゃったですぅ!」


 巨体に似合わぬスピードでヒュドラは矢を全て躱した。

そしてこちらを敵と認識したようだ。向かって来る。


「アイ!タイプKを!」


「う、うん!」


 ボクとアイでナイトゴーレム・ケンタウロスタイプを二体出す。

ゴーレムならヒュドラの毒を受けても問題無い。


「ゴーレムがヒュドラの相手をしてるうちに、距離を取って攻撃!」


「「「はい!」」」


 皆、魔法や弓、オーラフラッシュ等で攻撃を加える。

ヒュドラは傷だらけになるが、一瞬で再生してしまう。


「何あれ!治るの早すぎない!?」


「なら、首を落とす!お祖父ちゃん!」


「うむ!」


 アイシスとバルトハルトさんの連携でヒュドラの首を一つ落とす。

しかし…


「うそぉ!」


「首も一瞬で再生した!」


 それどころか、落とした首から胴体が生えて、デカい蛇が増えた。


「そっちも!?」


「これじゃ迂闊に攻撃出来ないじゃない!」


 とはいえ、反撃しないわけにもいかない。

先ずは、一本首の方を何とかする。


「細切れにすればっ!」


 襲いかかって来た一本首の噛み付き攻撃を躱し、細切れに。

もしかしたら細切れにした肉片の一つ一つが再生するかと思い、仕方なく火の魔法で焼くかと準備していたが…


「切り落とされた方には再生能力が無い?」


 細切れにした一本首の方は再生しない。

少し様子を見たが大丈夫そうだ。

どうやら首を落としたら、胴が生えるがそれは一度だけでそれ以後は再生能力は無いらしい。


「落ちた首には再生能力が無い。つまり再生能力の要は胴体の方にある、か」


「ジュン様、ゴーレムが」


 のんびり観察してる間に、タイプKが一体破壊されてしまったようだ。

ヒュドラは首をある程度、伸縮出来るらしい。

首を二本伸ばし、ゴーレムに巻き付き、締め上げ破壊した。


「ヒュドラの胴体の方に、再生能力の要がある。それを破壊出来れば再生出来なくなる。と、思う」


「そういう場合、心臓を破壊するのがセオリーなんじゃない?」


「どれが正解かわからないし、反対はしないけど…心臓、どこにあるか知ってる?」


「…」


 アイは知らないようだ。ボクも知ってる訳ががない。

普通の蛇ですら、心臓がどのあたりにあるのかなど知らないし。

というか、心臓を破壊したら再生能力がどうこうじゃなく、それが止めになりそうだけども。


「アースワームの時みたいに拳聖の紋章で内部から爆殺とか出来ないか?」


「やってもいいけど、失敗したら物凄い数の蛇が生まれる事になるんじゃない?」


 爆散した肉片の一つ一つが蛇に…うん、想像したくない。


「心臓を止めればいいの?お兄ちゃん」


「より正確に言えば胴体のどこかにある再生能力の要を破壊出来れば」


「…じゃ、私に任せて」


「何か考えがあるの?」


「うん。偶には私もカッコいいとこ見せないとね!」


 ユウに何か考えがあるらしい。

ここは任せるとしようか。


「アイ、ゴーレムを追加で出して、首を押さえつけさせて」


「了解」


「アイ、ボクもやるよ」


 早くしないと、もう一体のタイプKも破壊されてしまう。

装備が無事なら平気だけど、アダマンタイト製の武具まで破壊されたら大損害だ。


 ロックゴーレムをアイとボクで十体出す。

ゴーレムに巻き付いたヒュドラの首を、ゴーレムで捕まえ押さえ付けて行く。


「ユウ!」


「うん!」


 ユウは雷系の魔法を拳に纏わせ、ヒュドラの胴体に叩きこんだ。

一発に留まらず、何発も。まるでスタンガンのようだ。

なるほど、アレなら洞窟に影響を与える事なく強力な魔法を使う事が出来る。

やがてヒュドラの動きは止まり、口から煙を吐いて動かなくなった。


「…死んだか?」


「ううん。まだ生きてるよ、ご主人様」


 なら再生能力がどうなったか、確かめてみよう。


「再生…しないね」


「うん。じゃ…後は」


「斬り刻むだけだね」


 アイシスがザっと胴体の部分を斬り刻む。

やはり、再生はしない。ヒュドラの討伐完了だ。


「皆、お疲れ」


「お疲れ様。結構手古摺ったね」


「洞窟内じゃなければ、魔法で簡単に始末出来たと思うけどね。さて、と」


「あの扉の向こうに何があるのか、だよね」


 洞窟内部にある扉。誰が作った扉なのか知らないけど、一体何があるのやら。


「ノエラ」


「はい。…罠や魔法の類はかかっていません。ですが錆びついていて、開きそうにありません」


「なら…斬るか。バルトハルトさん」


「うむ。任せてください」


 そういえば、バルトハルトさんの剣。

ステファニアさんの作で、何か能力を持たせてるらしいけど、未だ教えてもらってないな。

一体どんな能力なのか。


「終わりましたぞ」


「流石ですね」


 金属製の古い扉とはいえ綺麗に斬ってしまった。

流石は剣聖。


「うわ、なんかキラキラしてるよ」


「これは氷?いや、水晶か?」


 扉の向こうの空間はかなり広く、中には水晶の壁が一面に広がっていた。


「水晶の中に何か……お、お兄ちゃん、あれ…」


「ジュ…ジュン、あれ…」


「どうし…」


 言葉の途中で息を呑む。

水晶の中にあるモノをよく見る。

それは大きすぎて、全体が見れない為に最初は気が付かなかったが…


「へ、蛇?超巨大な蛇なの?あれ」


 水晶の中には一体全長何mあるのか想像もつかない程巨大な蛇の顔があり。

こちらを向いていた。

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