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第26話 学校を作ろう 3

 ボクは今、アイを連れてダルムダットに来ている。

魔法道具を使った通信でアイを連れてくるように連絡があったそうだ。

父アスラッド曰く学校に関することだそうだ。

 

「おー来たか。アイ、ジュン」

 

「久しぶりだな。二人とも」

 

 ダルムダットに着いてすぐガウル様とアリーゼお姉ちゃんの二人に出迎えられる。

いや、もう一人アリーゼお姉ちゃんの後ろに男の子がいる。

 

「ただいま、パパ、ママ」

 

「お久しぶりです。その子が以前おっしゃっていたジーク君ですか?」

 

「そうだ。ほらジーク、お姉ちゃんにお義兄ちゃんだぞ。挨拶だ」

 

「コンニチハ」

 

 ジーク君は小さい声で挨拶するとサッとアリーゼお姉ちゃんの後ろに隠れてしまう。

怖いのか照れ屋なのか。

まあ二歳で挨拶できただけでも大したものだと思う。

 

「照れ屋さんなんですね」

 

「全く…男の子なんだからもっと元気よく、もっとヤンチャでもいいと思うのだがな」

 

「まあまだ二歳だ。そのうち教育次第で変わるさ」

 

 御二人のような戦闘狂にはなってほしくないものです。

とは声に出して言えないので心の中で思うだけに留める。

 

「それで今日はどのような御用件で?」

 

「おう。お前、上位治癒魔法を使えるようになったそうじゃねーか」

 

「はい、まぁ」

 

「それでな、うちの兵士や使用人、その家族達の重篤な患者を大広間に集めてある。まずはそいつらを癒してほしい」

 

「あ、はい。わかりました」

 

 ボクは大広間に移動し、怪我人と病人に分かれてもらい治癒魔法を掛ける。

自国でかなりの患者を癒してきたおかげ

もはや治癒魔法の発動も慣れたものだ。

あっさりと大広間の人達を癒す。

 

「お~、すっげえな。アスラッドから聞いちゃいたが」

 

「うむ。大した者だ。礼を言うぞジュン」

 

「いえ、もう慣れましたし」

 

 治療を終え、応接室に戻る。

話はまだ続きがあるようだ。

 

「悪かったな、働いてもらってよ。うちにゃあ治せない重篤な患者ばかりだったんでな」

 

「いえ、構いませんよ。それで御話しの続きがあるとか?」

 

「ああ。お前、学校ての作ってるんだって?治癒魔法使いの育成も同時に進めて」

 

「はい。初めての試みなので手探り状態ですが」

 

「そうか。順調なのか?」

 

「今のところは。最初は治癒魔法の適正があるだけで低位の魔法も使えなかった人が今は低位なら使えるようにはなってます」

 

「ほう、治癒魔法をか。何人くらいがだ?」

 

「五十人全員が低位の治癒魔法は使えます。一人だけ中位の治癒魔法の発動に成功しました」

 

「なんだと、それはすごい!」

 

 まだ育成を始めて二ヵ月だが中位の治癒魔法発動に成功した者がいる。

成功したのは最年少のハーフエルフのニコル君だ。

エルフの血を引いてるからなのか魔法に関してはかなりの才能を持っているようだ。

 

「目標は上位魔法の習得なのでまだまだですけどね」

 

「いや、まだ訓練を始めて二ヵ月ほどだと聞いたぞ?それで中位まで習得した者がいるなど、大したものだ。お前は物を教える事も天才的なのだな」

 

 天才はやめてください。

前世で教師だった経験が生きてるだけなのです。

 

「それでな、忙しいお前に仕事を増やすようで心苦しいのだがな」

 

「なんでしょう?」

 

「お前達が作っている学校、それに治癒魔法使いの育成、それらを我が国でもやりたくてな。治癒魔法に適正が有る者と、学校設立のためのノウハウを学ぶための文官を預けたい。こいつらを連れて帰り鍛えてやってほしい。必要な経費はもちろんこちらが出す。お前の命令には従うようにも言ってある。びしばし鍛えてやってほしい」

 

「なるほど、わかりました。できる限りのことをさせてもらいます」

 

「そうか、やってくれるか。なら挨拶させよう。おい連れてこい」

 

「ハッ、畏まりました」

 

 傍に控えていた執事さんに訓練生や研修を受ける文官さん達を呼びに行かせると

すぐに連れて戻って来た。

隣室で待機していたのだろう。

全員で十人だ。

その中で代表らしき人が挨拶をしてくる。


「初めましてジュン様。今日からジュン様の元で治癒魔法使いの訓練生となるクオンと申します。このダルムダットの者達十名の代表を務めることになりました。この者達のことでなにかありましたら私に申し付け下さい」 

 

 クオンさんはハーフダークエルフみたいだ。

長く白い髪。紫の瞳。褐色の肌。そして抜群のスタイル。

かなりの美人さんだ。

 

「よろしくお願いします。クオンさん」

 

「さん付けは不要です、ジュン様。よろしくお願いします」

 

「クオンはうちの魔法騎士団の副団長だ。剣もある程度は使える。護衛として使ってもいいぞ」

 

「え?いいんですか、そんな地位にある人を訓練生にしちゃって」

 

「構わん。本人の希望でもある。適正もあるしな」

 

 ガウル様曰く、クオンさんはダルムダットにおける人間とのハーフでる者達の迫害を無くしたいのだと言う。周りの人を見返すため魔法の腕を磨き魔法騎士団の副団長にまでなった。そしてハーフである自分が治癒魔法使いになり人々を癒すことができればきっとハーフに対する迫害は無くなるはずだと考えているのだ。

 

「私はそのためならどんな厳しい訓練も耐えて見せます。よろしくお願いします、ジュン様」

 

「わかりました。そのような崇高な志を持つクオンさんの期待に応えられるようにできる限りのことをさせてもらいます」

 

 そうしてダルムダットでの用事を終えてエルムバーンへ転移で帰還する。

行きは二人だったが帰りは十二人に増えたため二回に分けて転移する。

まだ十人以上の長距離転移はできないのだ。

 

 しかし両親が広めてるとはいえダルムダットでも治癒魔法の育成や学校に注目してるということは

次はフレムリーラに行くことになりそうな予感がする。

おかしなことにならないといいんだけど。

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