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第241話 再会

 転移魔法という脱出手段を封じられてしまった。そして周りを囲まれてしまう。


「さあ、大人しく捕まるがいい!」


「御祖母様!いい加減にして下さい!貴方達!ジュン殿達に危害を加える事はなりませんよ!」


「いい加減にするのはお前だ!グリムモアの女王ならば世界樹様を第一に考えろ!」


 状況は最悪だけど…女王陛下が味方なのが救いか。周りを囲んでる騎士達も本意ではないのだろう、困惑の表情を浮かべている。

だけど、騎士の輪の外側にいる連中は違うみたいだ。

命令があればいつでも殺せる、といった覚悟を決めた顔をしている。


「(どうする?ジュン様)」


「(強行突破しますか?)」


「(それはまだだ)」


 それしか無いとなればそうするけど…今やれば犠牲無しに逃げ切るのは難しい。


「(相手の力量はどの程度だと思いますか、バルトハルトさん)」


「(中々の使い手ですな。恐らくは近衛騎士。強行突破となればお互いに無傷とはいかんでしょう。それに厄介なのは騎士の外側にいる連中でしょうな)」


「(ですね…)」


「(魔法で眠らせれば?この人数ならいけるでしょ?)」


「(いや、無理だ。流石魔法先進国。その辺りの対策はバッチリみたいだ)」


 彼らは全員、睡眠や幻惑に対する魔法道具を身に付けているようだ。

睡眠魔法が通じない。


「…仕方ない。ジュン殿、私に剣を渡してくれないか?後で必ず返そう」


「セラフィーナ殿下?」


「御祖母様は必ず説得する。先ずこの場を治める事に協力してくれないか」


 騎士の輪を割いてセラフィーナ殿下が侍女さんと一緒に近付いて来る。


「信用出来ないね」


「世界樹様の巫女は女王陛下よりも強い権力を持つんでしょ?だから今、こんな事になってる」


「返す言葉も無いが…かといってこのままではお互いにとって不幸な事にしかなるまい?さぁ…」


 セラフィーナ殿下は無防備に近付いて来る。

そして言葉を発せず、口の動きだけで伝えて来た。


 『私達を人質にしろ』と。


 それを見たノエラにセバスト、シャクティがセラフィーナ殿下達を捕まえる。ボクも侍女さんを一人、捕まえて剣を首筋に当てる。


「動くな!」


「き、貴様ら!」


 つい、セラフィーナ殿下の提案に乗ってしまったけど、ここからどうしよう。というか、これじゃ悪役じゃん。


「あ、あーれー、捕まってしまったー。たーすーけーてー」


「き、きゃー、こーろーさーれるー」


「(大根役者にも程が有るでしょ…)」


「(し、仕方ないだろう。演技なんぞ習った事はないのだし…そんなことより、先ずはこの場を脱したまえ)」


「(何か考えが?)」


「(ある!だが何とかこの場から脱するのが先決だ!)」


 他に案も無いし…セラフィーナ殿下の案に乗るしかないか。


「道を開けろ!」


 周りを囲んでいた騎士達の輪が二つに割れる。

騎士達の外側にいる連中も、王族を人質にされては手が出せないらしい。今は大人しくしている。


「セラフィーナめ…わざと捕まったな…只の脅しだ!臆するな!捕らえよ!」


「いいえ、なりません!そのまま行かせなさい!」


「エヴァ!」


 トップ二人が言い争いをしてる間に、謁見の間を出る。

後は転移魔法を使える場所まで行ければ…


「そっちじゃない、こっちだ。付いて来たまえ」


「セラフィーナ殿下?そっちは奥に行く道では?」


「転移魔法を封じてる範囲は宮殿を含む王都エルド全域だ。私達という足手纏いを抱えてはとても逃げ切れん。ならば世界樹様に御祖母様を止めて貰うしか無い。世界樹様の神殿に行く」


「世界樹様の神殿?」


「うむ。宮殿の裏口から行ける、世界樹様の洞に作られた神殿だ。そこに行く」


「本来であれば、王族か一部の限られた者しか入れないのですが…緊急事態ですし、今回は特別です」


「王族…そういえば他の王族の方々は?他にも沢山いらっしゃるんですよね?」


「出てこれないでしょ、こんな騒ぎになっちゃ」


 謁見の間を出て神殿に向かって走るボク達の後ろには騎士達が

追いかけて来てる。


「待てー!」


「というかセラフィーナ様!?何で一緒になって逃げてるんです!?」


 謁見の間にはいなかった騎士達も合流して追いかけて来てるのだが、セラフィーナ殿下も一緒に走ってる状況が理解出来ないらしい。混乱しながらも、とりあえず追いかけて来てる感じだ。


「ハァハァ…こ、これはきついな…」


「ハァフゥ…普段、運動してませんからね、セラフィーナ様は…」


「う、うるさい…お、お前達も、同じ、だろう…」


「わ、私はほら…胸が重いので…セラフィーナ様はいいですね、

軽そうで」


「やかましいわ!」


「この状況で中々余裕がありますね…」


 とはいえ、明らかに辛そうだし、このままじゃ神殿まで保ちそうに無いな。仕方ない。


「ルチーナ、セラフィーナ殿下を抱えて。セバストとバルトハルトさんは侍女さんを。ボクも抱えますから」


「はい」「了解だ」「仕方ありませんな」


 素早く侍女さんの一人を抱える。嫌かもしれないがこんな状況だし、我慢してもらおう。


「おおう!すまない…だがどうせならジュン殿に抱えて欲しかったな…」


「贅沢ですよ、セラフィーナ様」


「私達だって…あ、セバストさんに不満があるわけじゃないんですよ?パルヴィが羨ましいだけで…」


「うふふ…代わらないわよ?」


「やはり胸か?さっきも人質にしたのはパルヴィだし…ジュン殿もやはり胸が好きなのか?」


「舌を噛んでも知りませんよ?」


 自分で走らなくなってから急に口数が多くなったな。

同じ侍女さんを選んだのは偶然です。

…偶然ですよ?

走ると揺れるその胸を間近で見たいなんて思ってませんからね?


「それにしても…転移魔法を封じる手段、持ってたんじゃない」


「どうして隠してたの?」


「隠してた訳じゃ無い、私も知らなかったんだ。つい最近、完成した技術らしい。あっ、そこは右だ!次を左に行った先に扉がある!その先か神殿に続く道だ!」


「扉の前には見張りがいます。上手く気絶させるか、眠らせるかして下さい」


 えらく簡単に言うけども…ボクは両手が塞がってるし、ここは…


「アイ、頼む」


「オッケー!」


 右、左と曲がり…扉の前には見張りが二人。


「何者だ!」「そこで止ま…れ?」


 ジェットブーツを使用し、一瞬で距離を詰めたアイによってあっさり見張りは気絶した。


「凄い腕だな」


「本当ですね…宮殿の中でも重要な扉を守る者ですから、手練を配置してる筈ですが…」


「ま、うちのアイは天才ですから」


「エヘヘ」


 扉を出た先は外で…世界樹の幹が見える。

そして神殿も。


「あれが世界樹様の神殿ですか」


「ああ、あそこに行けば世界樹様が居る」


「ん?居る?」


「ああ。そうだが?」


「それって…」


「ジュン様、お話は後で」


「追いつかれてしまいます」


 おっと、そうだった。

それじゃ、時間稼ぎをしますか。


「よっと…」


 両手が塞がってるので足を扉に向けて魔法を使う。


「あ、足で魔法を!?」


「器用だな、ジュン殿は…」


「これで少しは時間稼ぎになるでしょう。行きましょう」


 扉を氷漬けにして塞いだ。

今のうちに進むとしよう。


「神殿には騎士や兵士は居ないのですか?」


「居ない。あそこは神聖な場所だからな。他国の者が足を踏み入れるのは初めての事かもしれん」


「いいんですか?そんな場所に…」


「良いも悪いも無い。他に選択肢は無いからな。…ん?」


 しばらく走っていると、後ろから爆音が。

どうやら氷漬けにした扉を魔法で破壊したらしい。


「貴様ら!止まれ!神聖な神殿に他国の者が入る事など許されん罪だぞ!」


「今更何言ってんのよ」


「全く、自分のした事は棚上げにしすぎでしょ」


「すまんな…しかし、御祖母様も無茶をする」


 本当に。氷漬けにするんじゃなく、結界を張るべきだったか。


「だけど時間は稼げた。このまま神殿に…」


「ジュン様!」


「後ろ!」


 言われて後ろを振り返ると…魔法で攻撃してきた。

セラフィーナ殿下ごと殺す気か?


「御祖母様…本気でキレたみたいだな」


「捕まったら私達もどうなるかわかりませんね」


「うむ。何とか逃げ切ってくれ、ジュン殿」


「そりゃボク達だって死にたく無いですからね!」


 しかし、まだ神殿まで距離がある。どうするかな。


「ご主人様!あたしに乗って!」


「おお!?何だ何だ?」


「巨狼?」


 ハティが本来の姿に戻った。確かにハティに乗れば逃げ切れるだろうけど、全員は乗れない。


「ジュンは先に行って!」


「ハティなら一瞬で行けるから二往復してもらえばいいよ!」


「分かった!ハティ頼む!」


『うん!』


 ハティが頑張ってくれた御蔭で全員無傷で神殿に辿り着いた。

神獣フェンリルの最大の持ち味はスピードだな。


「さて、と。騎士も兵士も居ないということはここは今は無人ですか?」


「いや、世界樹様が居ると言ったろう?それと次期巫女が居る。いや、男だから巫女ではなく…何だったか?」


「巫覡です、セラフィーナ様」


「そうそう、巫覡だ。おっと、先ずは神殿に入ろう」


「ええ。その前に…」


 神殿の前に結界と張り、ゴーレムを十体配置。

これでさっきよりは時間を稼げるはずだ。


「それでその次期巫覡の男性はどういう人物なので?」


「余所者を連れて来た事を怒るんじゃないですか?」


「かもしれん。だが御祖母様よりは遥かに柔軟な思考の持ち主だ。変わり者だがな。そいつは次期巫覡でありながら次期国王でもある。姉エヴァの息子だよ」


「かつて巫女は全て女性でした。男性が選ばれたのは初めての事です」


「そして、国の代表は一人の方が自然だと、次期国王になられたのです」


「な?変わり者だろう?だがまぁ悪い奴ではない。きっと分かってくれるさ」


 だといいんですが。

神殿に入り、奥まで進む。

一番奥の部屋には複数の女神像があり、そこには二人の人物が。


「ん?セラフィーナ叔母様ではないですか。それと…君達は確か…」


「「「あ」」」


 神殿の奥に居た男性。

それはユニコーンが居る森で出会ったエルフ。

シャルルさんだった。

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