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第2話 名前

 角の生えた強面のオッサンが目の前にいる恐怖。

よくよくみれば尻尾もある。

赤ん坊でなくても裸足で逃げ出しそうだ。

しかしオッサンは泣きそうな顔でオロオロしだす。


「なんだ?なぜわしの顔をみて泣き出す?」


「怖いんじゃないの?そりゃあ生まれて初めてみたのがあなたの顔じゃねえ。泣き出すのも無理ないわよ。ね~?」


 よしよしとボクの頭をなでる母エリザ。

落ち込みうなだれる父。


 その様子を見てるとだんだん落ち着いてきて悪いことしたかなと思えてきた。

しかし化け物がいる世界とは聞いてはいたが生まれてすぐ目にするのが人外の父親とは。

叫ぶなというほうが無理があるのではないだろうか?


 ようやく落ち着いてきたので周りを見てみる。

洋風の大きな部屋。ベッドの上で母エリザに抱かれているようだ。

父と母以外には…メイドさん?メイドさんが3人ほどいる。

しかしメイドさんもよくよくみれば普通の人間じゃない。

獣耳のメイドさんもいれば悪魔っぽいしっぽのあるメイドさんもいる。

どこかのメイド喫茶にいそうではあるが…。 


 メイドさんが口々に祝辞を両親に述べている。

旦那様・奥様と両親を呼んでいるあたりメイドさんを雇えるような裕福な家のようだ。

メイドがいる=裕福 とゆう発想は前世の記憶からのものだからこの世界でもそうとは限らないが。


「落ち着いてきたみたいよ?ほら、いつまでも落ち込んでないで名前、『視る』んでしょ?」


「あ、ああ。そうだったな」


 名前を視る?

どういうことだろう? 名前を付ける じゃないんだろうか?


「それじゃ始めるぞ」


「ええ」 


 そういうと父は手の平をボクの顔にかざす。

すると父の手が、ボゥと光りだす。


 もしかして魔法?

ここは魔法のある世界なのか?


 やがてボクの顔の前に魔法陣がでてくる。

その魔法陣を通して父はなにかを視てるようだ。 


「どう?」


「もう少しだ。この子の名前は・・・」


 さっきも言ってたようにやはりこの魔法は名前を視るための魔法のようだ。

この世界では魔法で視ることで赤ん坊の名前がわかるのだろうか。

親が決めるのではなくすでに決まった名前を持って生まれてくるということだろうか。


「視えたぞ。この子の名前はジュンだ」


「ジュン・・・少し変わってるわね。でもいい響き」


「ああ。いい名前だと思うぞ」


「じゃあ決まりね。この子の名前はジュンだわ」


 お?前世と同じ名前じゃないか。いまの魔法は前世でも視れるのだろうか。

まあジュンという名前は嫌いじゃなかったし前世の記憶を引き継いでいる以上

別の名前でよばれるのも違和感があるだろう。素直にうれしい。


 あれ、なんか両手の甲が光って紋章のようなものが…。


「見て、この子、紋章持ちよ。あなたと同じ魔王の紋章。しかも二つよ」


「いや待て。それだけじゃない。この子の目…両目にも…」


「これは…もしかして…」


「ああ、間違いない。これは魔神の紋章だ。それも2つ。合計で4つの紋章持ち。これはとんでもないことだぞ!初代魔王様以来なかったことだぞ!」


「それにこの子…堕天使よ。初代様と同じ堕天使で紋章も同じ。初代様の再来かもしれないわ」


 魔王の紋章?魔神の紋章?つうかうっすら予想してたけど魔王がいるんですね。怖いです。

とゆうか話からしてパパ上は魔王なんですね?怖いです。

歓喜の涙を流して喜んでるとこ悪いんですけど怖いです、パパ上。

抱き上げるのはいいけどあんまり高く上げないでください。

体の自由が利かないので怖いです、パパ上。


 そしてボクの誕生を祝って宴会が始まるようだ。

大きな食堂にたくさんの人が集まっている。

いや普通の人間には見えない人ばっかりだけども。

とゆうか出産後すぐに宴会に参加って大丈夫なの?ママ上。


 ボクは母の横にある揺り籠に寝かせられる。

そのボクを見に来る多種多様なお顔の人々。 

正直、ここに来るまでの展開でお腹いっぱいですママ上。


 ようやく見に来る人が途切れたので落ち着いて現状と今後について考えられる。


 まず無事に転生はできたらしい。

神様が言ってたように化け物がいる世界に。

自分の父親がそうだとは想像だにできなかったが・・・。

いや、それどころか自分自身もどうやら人間ではないらしい。

なんですか堕天使って。おかしいじゃない堕天使って。

だって両親は、特に父はどうみても悪魔だし。魔王らしいし。どうみても堕天使には見えない。

しかし二人の子であることは間違いないようだし・・・どうなっているんだろう?


 次に紋章だが・・・これも未知だ。

さっきまで浮かんでいた紋章だが今は消えてる。

前世で中二病を患っていた時期はボクにもある。誰しもあるよね?

だけど前世ではそこそこのオッサンといえる歳で死んで転生した身。

手と目に紋章が宿ったからといって手放しで喜んでもいられない。

どういうものなのか知らなければ。

自分のことだし。


 次に魔法だ。魔王やら悪魔やら堕天使やら存在するんだからそりゃ魔法もあるんだろうが・・・。

どんな魔法があるんだろうか。父がさっき使った魔法もよくわからない。

名前を視る魔法だってのはわかるがそもそも名前を視るってのがよくわからない。


 そして肝心なのはボクにも魔法が使えるのか?という事だ。

前世ではもちろん魔法なんて使えなかった。

使えるならぜひ使えるようになりたい。

魔王や悪魔・堕天使がいるなら勇者や賢者がいて敵対するかもしれないし天使は確実にいるんだろう。

そういった存在と出会って敵対された時、身を守るすべがないときびしい。

魔法を使えるようになるのは必須だな。


 とはいえ今、一番の問題は・・・生まれたての赤ん坊だということだ。

歩くこともしゃべることもままならない以上できるのはできるのは周りを観察するくらいだ。

幸いにして父は魔王で母は魔王の妻。

それなりに仕えてる人もいるようだし

なにもできない赤ん坊のうちに危険な目にあうこともないだろう。

歩けるようになるまでは大人しくして周りを観察するとしよう。

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