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第196話 シーサーペント討伐

「さて…という事らしいんだけど。改めて何か意見は?」


「う~ん…現状じゃコズモさんの言うようにするしかないのかなぁ」


「それは…その…」


「わかってるよ、リディア」


フローラさんに言われた事を気にしてるのかな。

リディアにちょっと元気がない。


「ジュンには何か無いの?」


「ん?ん~…あるっちゃあるんだけどね」


「あるなら言ってみてよ。どんな作戦?」


「…ボクがシーサーペントが一塊になってるとこに飛び込んで転移魔法で地上に無理やり連れて行く」


「ダメです」「ダメだな」「ダメですぅ」「ダメですねー」


「ですよねー」


まぁ止められるのは分ってた。

それにボクも正直気が引ける。

水中でシードラちゃんを見た時も怖かったが、二十もいる巨大な蛇の塊に飛び込むとか。

すっごい遠慮したい。


「ん~…あ!じゃあシードラちゃんに来てもらってやっつけてもらうのはどうでしょう?」


「どうやって連れて来るかは置いとくとして、追い払うだけならまだしも倒すとなると相当激しい戦闘になるだろうから、それこそ海産物は全滅するんじゃないかな」


多分、ドラゴンブレスのあるシードラちゃんが勝つだろう。

でもそうなるとシーサーペントの毒が拡散するだろうし、余波で海産物にも大打撃だろう。


「そうね。もしドレゴンブレスがはずれたらどうなるか」


「ダメですか…」


「釣りあげてしまうのはどうでしょう。リディアの怪力なら可能なのでは?」


「釣りあげる為の釣り竿も網も用意出来ないよ。そんな丈夫な釣り竿も網も存在しないと思うから」


「海中というのが厄介過ぎますね」


「海水を抜ければいいんですけどね」


「抜く…ああ、そっか」


「何か思いついたの?お兄ちゃん」


「うん。多分、なんとかなるよ」


思いついた作戦を皆に説明。

皆から賛成をもらえたので実行に移す事に。


シーサーペントは千里眼持ちの冒険者が空中から監視。

現在はダイランの港から5km沖合、水深約30m位置で停止。

繁殖地を決めたらしい。


「じゃあ、ユウ、アイシス、セリアさん、行くよ。皆は此処で待機」


「「「は~い」」」


「ジュン様…やはり私も一緒に…」


「大丈夫だってば、一人で行くんじゃないんだからさ。行くよ」


魔法が得意な四人はシーサーペントがいる場所の上空へ。

後のメンバーはダイランから近くの開けた草原で待機。


「よし、見えた。あそこだ」


上空に千里眼持ちの冒険者がいる。

あの人の下にいるはずだ。


「いまからシーサーペント討伐に入ります。上空にいれば危険は無いと思います。決して近づかないでくださいね」


「あ、ああ。そんな少人数で大丈夫なのか?」


「ええ。それでは」


海面に近づき、準備に入る。

作戦はこうだ。

先ず水の精霊を全員で呼び出す。そしてシーサーペントを中心に半径10m。

四方に展開させる。


そして水の精霊に海水を操らせ、シーサーペント周辺の海水を操作させ海水の無い空白地帯を作らせる。

呼び出した精霊の数は、ボクが上位精霊を八体。ユウが中位精霊を四体。セリアさんが中位精霊を四体。

アイシスが…いや、【メーティス】が中位精霊を六体と下位精霊二体。

 

「これだけの数の水の精霊が居れば十分くらいは維持出来るだろうと思うけど…どうだ?」


「行けそうだよ、お兄ちゃん」


交尾中だからか元々鈍いのか。

シーサーペントは周りの異常に気が付いていないようだ。

海水の無い空白地帯がシーサーペントの数m上まで来た時、超巨大な魔力網を用意。

自身の周りに海水が無くなれば流石にシーサーペントも気付き、海水がある方へ逃げようとするだろう。

その前に魔力網で捕らえる。

三人にもそうさせないように周辺に火魔法を打ち込んでもらう。


「皆、備えて」


「「「うん」」」『了解やで』


シーサーペント周辺の海水は一気に抜くよう、精霊達に命令。

そして、海水が抜けた瞬間。


「今だ!」


超巨大魔力網を投擲。

同時に皆が周辺に魔法を打ち込む。


「よし!捕らえた!」


『シギャアアアア!!』


シーサーペントは全て魔力網に捕らえる事に成功した。

即座に全員シーサーペントの直上に集合。

魔力網が切れる前にシーサーペントごと、転移する。


「皆、お待たせ!出番だよ!」


「待ってましたぁ!でも、それ…気持ち悪~い!」


転移した先は皆が待ってる先ほどの草原だ。

此処でなら多少派手に暴れても問題無い。

そしてアイの言うように確かにシーサーペントの塊は気持ち悪い。


「奴らは海の方に逃げようとする筈だ!行かせるなよ!」


「「「了解!」」」


陸上ではそれほど速く動けないだろうが抜けられては困るので、後方には足止め用に大き目のゴーレムを五体配置。これで準備万端だ。


「魔力網が切れる!来るぞ!」


魔力網が切れた。

シーサーペント達が海の方へと動きだすが絡み合っていた為に一斉にとは行かないようだ。

そして地上でのシーサーペントの討伐難度はCに落ちる。

その理由は地上だと奴らの動きは鈍り、水中へ戻ろうと動きは単純になる。


「フゥー!」


蛇が苦手なアイだが、いざ戦闘になれば普段通りに戦っている。

拳聖の紋章の力でシーサーペントを内部から破壊。

ヌメヌメしたそこそこ堅い鱗を持つシーサーペントを打撃で仕留めている。


「せやぁ!」


バルトハルトさんも流石だ。

一振りで首を切り落としている。

剣よりシーサーペントの方が太いのに。


「シッ!」


ノエラは眉間に、セバストは眼を突き刺し、脳を貫いて仕留めている。

二人の武器は実は新調してある。

いや、改造か。

白猿にもらったオリハルコンの原石で二人の武器、短剣と鉤爪をコーティング。

ボクの【アトロポス】のように魔力の刃を出す機能を追加。

これにより得物の長さが不足しているとゆう弱点をある程度補えるようになった。

 

「ふんふんふんふふんふん~♪」


シャクティの武器、糸はアダマンタイト製の金属糸だけだったが、ミスリル製の金属糸も用意。

アダマンタイトは丈夫だが魔力を通しにくい性質があるがミスリルは逆で通しやすくアダマンタイトほど丈夫ではない。

そこで二種類の金属糸を用意。相手と状況によって使い分け出来るようにした。

今回は試しにミスリルの糸を使用しているみたいだ。

そして糸で絡め捕ったシーサーペントに糸を通して雷属性の魔法を使用。

まるでスタンガンのような使用方法で仕留めている。


「どっせええええええい!!!」


普段のリディアからは想像できない気合いの声だ。

リディアもかなり腕をあげている。

ハンマーも使いこなしてるし、周りも見れてる。

一撃でシーサーペントの頭を吹き飛ばしている。

返り血すら浴びる事のない速度と衝撃。

近くにいたらその衝撃波だけで飛ばされてしまいそうだ。

今回は自分の故郷を守る戦いだけあってかなり気合が入っているらしい。


「おっと、ボクの方に来たか」


ボクの方に来たシーサーペントが二匹。

シーサーペントは太さ3m長さが25m。

しかし、これは平均サイズであって個体ごとに大きさはバラバラ。中にはギガンティックスネークに匹敵する大きさの個体もいる。

鱗は黒一色だったり、斑模様があったり。

生息域によって多少のバリエーションがあるようだ。

今、眼の前にいるのは黒と青の縞模様。

やはり気持ち悪い。


「こいつらは太さ3mと4mってとこかなっと」


突っ込んで来た所を飛んでよけ、回転し、首を落とす。

我ながら見事な仕留め方。

上出来だと思う。


「さて、残りは?」


「クリステアとルチーナが相手してるので終わりだと思うよ」


ニ十匹いたシーサーペントも残り二匹。

皆、一体は仕留めたらしい。ハティを除いて。


「あたしの方に来なかった…」


人型に戻ってしょんぼりするハティ。

多分、神獣フェンリルの放つ気に圧されたのだろう。

ハティが居るほうへは行かなかったようだ。


「クリステア!ルチーナ!手伝おうか?」


「大丈夫、っです!」


「もう仕留め、ますっ!」


宣言したように、二人共直ぐに仕留めた。

クリステアもオーラフラッシュが使えるようになったらしい。

シールドオーラバッシュでシーサーペントを弾き、動きを止めた後にオーラフラッシュで首を落とし仕留めた。


ルチーナも意外な事にオーラフラッシュを使った。

別に剣でしか使えないわけではないのだから、使えても不思議はないが正直驚いた。

皆、努力しているのだ。確実に強くなっている。


「さて…無事、ダイランの危機は取り除けたわけだけど…」


「気持ち悪いね…血生臭いのはまぁ仕方ないとして…」


「ねぇ…魔法の袋に入れて持って行くんじゃなくて、ギルドの職員に此処迄来てもらおうよ」


「そだね…そうしよう。ノエラ、セバスト一緒に来て。直ぐに戻るから皆は此処で待ってて」


「はい。畏まりました」「了解だ」


ノエラとセバストを連れて転移魔法でダイランまで戻る。

監視役の冒険者からシーサーペントを転移で何処かに連れて行った事を聞いたのだろう。

仕留めたシーサーペントの確認に来て欲しいという話はスムーズに通った。


「おいおい!シーサーペントを仕留めちまったのか?海中じゃなく草原で?」


「あ、コズモさん。ええ、なんとか上手く行きました」


「凄いねぇ。どうやって草原まで運んだんだい?」


「ええとですね…」


今回の作戦を一から説明する。

説明を聞き終わったコズモさん達にはいたく感心したらしい。

すごく褒められてしまった。


「凄いねぇ…そんな方法で」


「フローラも水の精霊は呼び出せるが…フローラが呼び出せる精霊だけじゃ無理だし、転移魔法は使えないからなあ。俺達じゃ無理な作戦だな」


「うん…悔しいけど、私じゃ無理」


「やるじゃん、魔王子様!」


「噂は真実だったみたいだな」


「噂ですか」


また噂か。

冒険者にも何か噂が広まってるのか。

皆、好きなのかな。噂話。


「ああ。魔王子様がリーダーのパーティーはSランクパーティーに匹敵する強さだってよ。冒険者パーティーにしては人数が多いが一人一人がいい腕だって話でよ。だから一度会って見たかったんだよ」


「実際会ってみて只者じゃないのは直ぐに分かった。それにシーサーペントの討伐を被害無しでやってのけた。大したもんだね」


「ありがとうございます」


最高峰の冒険者、Sランクパーティーに褒められてしまった。

悪い気はしないね。


「そんじゃ、今度機会があったら一緒に何か依頼をこなそうや!」


「あんた達と一緒なら大概の依頼はこなせそうだ。よろしく頼むよ」


「ええ。機会があれば、ぜひ」


獲物を横取りされた形になるのに、それを気にする素振りも見せずに『ファミリー』の人達は去って行った。気のいい人達らしい。


それからギルドの職員に無事、シーサーペントの討伐を確認してもらい。

解体と回収には人を此処迄派遣してもらう事に。


領主であるオルトロイさんとソフィアさんに挨拶をして、皆でロディ君を愛でた後、城に戻った。

無事、シーサーペント討伐完了である。

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